世界卓球での戸上選手の活躍にひそかに期待している。シングルス2回戦の相手は王楚欽選手。神様はなんと無慈悲なことをするのか。王選手は世界チャンピオンになってもおかしくない実力者である。そんな選手を2回選の早い段階で戸上選手に当ててしまうなんて。

しかし、戸上選手なら、もしかして奇跡を起こしてくれるのではないか。いや、そうはいってもやはり予定調和だろう…そんな複雑な心境でダイジェスト版を見てみた。

ダイジェスト版はつまらない凡ミスなどはカットされ、見ごたえのあるラリーばかりが取り上げられていた。そしてそのラリーを見る限り、戸上選手と王選手は互角のように見えた。しかし1ゲーム目は3点、2ゲーム目も3点。3ゲーム目もまさかの3点で抑えられてしまう。

あんなにいいラリーを繰り広げていたのに3回連続3点でゲームを取られるというのは尋常なことではない。3点なんて私が全国レベルの選手と対戦するようなスコアである。どれだけ実力差があるというのだろう。4ゲーム目こそとったものの、5ゲーム目も6点に抑えられて、簡単に負けてしまった。

試合後のインタビューで「サーブが全く分からなかった。実力差を感じた」と語った戸上選手だが、私には納得がいかなかった。ラリーでは互角に打ち合っていたではないか。サーブが分からないだけで実力にそれほど差があるとは思えない。

togami interview

ダイジェスト版ではなく、完全版も見てみた。
https://www.youtube.com/watch?v=d8YjWNuvD9Y

本当にレシーブミスが多かった。そしてそれ以外にも凡ミスが非常に多かった。精密機械のようなプロの選手は、一度歯車が狂うと、凡ミスを連発してしまうのだろうか。

「サーブは1球目攻撃」。よく言われる言葉だが、サーブが分からないだけでこれほどまでに点差が開くというのはどういうことなのだろうか。初・中級者の試合でサーブが分からなくて惨敗するというのは分かる。しかし、プロの選手がサーブが分からないだけでこれほど一方的な内容の試合になるのだろうか。たとえば水谷選手のような試合巧者だったら、サーブが分からないにしても競っていたのではないか。サーブはあくまでも卓球の実力の一部に過ぎない。

卓球の実力というのはいろいろな種類のものがあるんだなと痛感した。点数だけが実力を図る指標だとすれば、王選手は戸上選手よりも2倍も3倍も強いということになる。しかし私は試合の点数だけが実力を測る指標だとは思えないのである。サーブが分からないなら分からないなりに戦う戦術というものもあるだろう。戦いようによっては戸上選手はもっと王選手に迫ることもできたのではないかと思う。

戸上選手には個人的に非常に期待している。たとえサーブがよく分からなくても、それなりの戦いようがあるはずである。相手のサーブをうまくレシーブできなくても、あるいは苦手なタイプの選手に当たってもなんとか勝てるような試合の駆け引きというのを戸上選手に身につけてほしいと願うばかりである。