試合中に安定しないフォアドライブを安定させようと打ち方を変えてみたり、新しい技術を会得したりする人は稀だろう(たまに「練習時間がとれなくて試合で練習する」という人もいるが)。試合というのは、それ以前に繰り返し練習してきたことを試す場だからである。安定しない技術を調整したり、新しい技術を会得するのは「対人練習」(相手がいて、台上でボールを打ち合う)のときにするものだ。

しかし考えようによっては、「対人練習」のときだって、今まで繰り返してきたことを試す場とは言えないだろうか。

我ながら分かりにくい説明になってしまったので、他の例を挙げてみよう。

試験というのは、そこで新しいことを学んだり、覚えたりする場ではない。そういうことは授業でするものだ。しかし、本当にそうだろうか?授業で知らないことをゼロから学んだり、覚えたりするのは時間の無駄ではないだろうか。授業の前に予習とか、自主学習などがあり、自分である程度は学ぶことができる。理解できていないことや、新しいことを学ぶのは、その時なのではないだろうか。授業というのは、ある程度の予備知識をもって臨んで初めて機能するものである。いわゆる反転学習というやつである。何も知らない学生に教師がゼロから教えるというのでは時間のロスが大きすぎる。

「毎日授業をちゃんと受けているのに成績が上がらない」

というのは、授業の中だけで学ぼうとするからである。授業というのは学びの氷山の一角であり、水面下の大部分は自主学習によって支えられているわけである。

honoka
画像がないと寂しいので、橋本選手のプレー中の一コマを。

卓球に話を戻すと、たとえば卓球教室の個人レッスンを週に1回受けて、それ以外に練習しなければたとえ一流のコーチに習っているとしても上達はかなり遅いだろう。

「毎週高い料金を払って個人レッスンを受けているのにちっとも上達しない」

という人は、レッスンの中だけで練習しようとしており、前回習った技術を対人練習で何度も繰り返して自分のものにするというプロセスが欠けているのである。

試合(あるいは個人レッスン)<対人練習(複数回)

というのが一般的だと思うのだが、もっと上達を早めたいならどうするだろうか。対人練習に望む前にも予備練習をしておくのがいいと思うのである。

試合<対人練習<予備練習

私のようにほとんど試合に出ない人間にとって対人練習は貴重な発表の場である。対人練習でゼロから新しい技術を練習するなんて時間がもったいない。対人練習に臨む前に予備練習である程度、アタリをつけておきたい。

去年、コロナ禍で対人練習が全くできないときに自宅でできる練習を紹介した(「この何気ない日常が…」「卓球一人練習」)。布団の上でサーブ練習とか、素振りとか、シャドープレーとか、そういう練習を自宅で十分やってイメージを作っておいてから対人練習でその成果を試せば週に1~2回しか対人練習ができない人でも少しは上達のスピードが上がるのではないだろうか。