しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




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目下、私を悩ませている大きな課題は次のとおりである。

・裏面バックハンドの安定性
・戻りの遅さ
・フットワークの遅さ
・ブロック(表面ショート)の安定性

挙げ出したらキリがないのだが、さしあたってはこのぐらいである。
最近、これらをまとめて解決してくれるチャンネルに出会ったのである。今まで数々の技術指導動画を見てきたが、このチャンネルが私には最も役に立ったと思う。こんな有益な情報を惜しげもなく無料で公開してしまっていいのだろうか。なんだか申し訳ない気持ちになる。

kodera
ワンハオの打ち方そっくり

Table Tennis Brothers chより
https://www.youtube.com/playlist?list=PL13h_2KFGeimVVEb7Td8ewKIji3AAc8O_

このチャンネルを運営しているのは大阪の難波にある卓球教室、ピンポンプラザ・TAMA(あるいはHPC西ナンバ卓球センター)のコーチである小寺敬太氏。なんと、関西の卓球情報誌『TAMA』の編集長なのだという。

tama

氏は現役時代はペンだったらしく、シェークのみならず、ペンホルダーの指導にも強い。

氏の指導理論は長年の指導経験から築き上げたもので、初中級者にも非常に分かりやすい。それでいて詳しく、あいまいさがない。例えばグリップが開いているか、巻いているかという説明の中にこんな説明があった。

mannaka

「グリップどうもったらいいのって…もちろん正解いっぱいあるんですけど、僕が一番よく言うのは真ん中に持つっていうことです。」

氏の説明は排他的に一つのやり方だけを取り上げるのではなく、他の正解も認めたうえで、初中級者にとって最も適したやり方を自身の意見として述べるところである。ほかの意見を排除しないところに好感が持てる。そして、他の選択肢を選んだ場合、どんなメリットとデメリットがあるかも説明してくれる。シェークのグリップは真ん中に持つのがいいと述べて、ふつうの指導動画なら、それ以上の説明はしないが、氏は「真ん中って何なのかというと、…」と「真ん中」の定義を始めるのである。

siwa
親指と人差し指のシワに沿ってラケットを持つのが「真ん中に」持つということ。

こんな丁寧な説明、普通の指導者がするだろうか?これも様々な年代の生徒(卓球リテラシーが低い人もたくさん指導してきたに違いない)を長年指導してきた経験がそうさせるのだろう。非常に分かりやすい。

また、氏の指導理論の特徴としてグリップを重視していることが挙げられる。

grip
これだけペンのグリップについての考察がある

詳細は割愛するが、グリップによって打ち方や安定性に差が出てくると述べるのである。特にペンのグリップについての説明は詳しい。ペンの指導ができる人が少ない現在、こういう説明はあまり聞いたことがないが、これも非常に説得力があった。

なんといっても圧巻だったのは裏面バックハンドの説明である。
yokoni hiku
ただ横に引くだけ

https://www.youtube.com/watch?v=G9L_16zmne0&list=PL13h_2KFGeimVVEb7Td8ewKIji3AAc8O_&index=17&pp=iAQB

「ほんとにただ横に…肩を開くだけですね。あんまりこう、手首つかうとか、腕まわすとか、そういうことは意識せずに横に引っ張っていくと。それが一番シンプルなんで、ミスが少ないなって…。」

sitakara
「ペンのいいところは、ラケットを下から持てるんですね。下から持てるから、ただ(横に)開くのがすごいやりやすいんです。」

uekara
「シェークは上から持ってるんで、ただ横にやるっていうのがすごくやりにくくて、(ワイパーのようにラケットを)ねじらなきゃいけないんですけど…」

中陣からのバックドライブは、ペンの場合、ラケットを6時の方向から3時の方向に横に引っ張るだけ。こんなに簡単なやりかたで安定するのである。何年も裏面バックハンドであれこれ悩んでいたのがバカバカしくなってくる。

2番目の課題、「戻りの遅さ」というのも簡単に解決しそうである。
modori
このように打った姿勢のままミスを見届けてはいけない

https://www.youtube.com/watch?v=bmNrJYMF3ec&list=PL13h_2KFGeimVVEb7Td8ewKIji3AAc8O_&index=18

もちろん氏の提唱する「振る・戻る」が身に付くにはある程度の時間がかかるだろうが、簡単なルールなので、普段の練習でひたすら気を付ければいいだけのことである。

これ以上、このチャンネルについては語るまい。これ以上は蛇足にすぎるので、実際に自身でyoutubeで確認してほしい。

世間ではよく「トップ選手から学ぶドライブ」などという技術動画や雑誌記事を見かけるが、多くの初中級者にとって国際レベルの技術というのは、たとえ本人に解説してもらったところで理解できないものだ(前記事「技術の再現性」)。トップ選手と初中級者では前提が違うのである。一方、小寺コーチは長年の経験から、初中級者がどんなところでつまづくか、何が理解できていないかを把握しており、私たちでも身に付けられそうな技術を、飲み込みやすいよう簡単に、そして詳しく解説してくれる。このチャンネルの動画を見れば、多くの初中級者は少なからずレベルアップするに違いない。

【付記】
小寺氏は青森出身だということだが、びっくりするほど自然な関西弁を操っていた。私よりも関西在住歴は短いはずなのに…。

「あっ!もしかしていけるかも?」
以前プロの指導者に教わったフォアハンドの打ち方のことである。
腰を回してフォアドライブを打つのは昭和の打ち方で、現代では膝で打つのが効率がいいのだという。
そのとき膝で打つ打ち方を試してみたのだが、違和感がひどくて全くものにならなかった。それから2年近くになるだろうか。この間の練習で、ふと膝で打つフォアドライブを試してみたら、今までの打ち方よりも威力が出て、振りも小さく安定するのである。これが現代のフォアハンドの打ち方か。

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最近、「卓球平社員」というチャンネルの動画をよくみる。
https://www.youtube.com/@user-ht5pj9ch9n
hirashain

平社員氏はどうやら日本リーグの選手らしい。フォアハンドはすさまじい威力と安定性だが、バックハンドは(このレベルでは)あまり上手ではないようだ。卓球人脈が豊富で、有名選手を招いて技術動画をよく配信している。今回は加藤美優選手にバックハンド下回転打ちを習うという動画だった。

sekai8i

https://www.youtube.com/watch?v=XSO4whOxuKM

加藤選手は自身のバック下回転打ちのコツを伝授する。
・手は使わず、体重移動で打つ
・体重移動というのは横方向――左から右へ――に体重を移動させるのではない
・体を「絞って」、一度ねじってから、ニュートラルの状態に戻すことが体重移動
・手でバックスイングを引かず、手が体についていくように体の前に置いておくだけ
・下回転打ちは体の前ではなく、やや左で打つ

teuti

平社員氏は加藤選手の指導通り打ち方を試みるのだが、体をひねってバックスイングするのではなく、どうしても手で引いてしまい、振るときも、手が先行してしまうようだ。体と腕が一体化せず、バラバラに動いている感じなのだ。

どうしても指導通りにできない平社員氏を見て、加藤選手はこんなことを言った。

kekkatosite

「(このバックハンドは難しいのはしかたがない。私も)いろいろ考えてやって、今のバックだから、…あれも、これも全部融合してこれだから、…(指導動画が)第三部ぐらいまでないと、分からないよ」

結局平社員氏は、このバックハンドを習得することはできなかった。セミプロの実業団選手でさえ人の技術を我がものとするのは長い試行錯誤が必要なのだろう。

私が膝を使ってフォアハンドを打つというのを教わって、それがストンと肚に落ちて、自分の技術として使えるようになるまで2年近くかかった。加藤選手のバックハンドも、いろいろな指導を受けて、それを自分なりに消化・融合し、さらに発展させて、自分の技術として完成させるまでに数年かかったに違いない。技術を教わって、それを自分のものにするというのは時間のかかるものだと改めて実感した。あるいはいくら時間をかけても身に付かないということもあるかもしれない。

そもそも指導者の指導どおりに人の技術を完全に再現するなどというのは不可能なのかもしれない。指導によってインスピレーション――方向性ぐらいは教わることができるかもしれないが、それを自分の技術として自分のプレーに落とし込むにはどうしても自分なりの工夫や改変を経なければならないのかもしれない。そしてその過程は少なくとも年単位に及ぶのであろう。現役を引退したトップ選手に1回ぐらい個人レッスンを受けたぐらいでは、その技術が身に付くはずがない。それを私は上級者に技術を教えてもらえば、上級者の技術を(質は落ちるにしても)すぐに使えるものだと勘違いしていた。技術というのは結局のところ自分で築き上げるしかないのである。

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