しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




タグ:戻り

先日の東京選手権(前記事「東京選手権大会のスコアを眺めながら」)の男子シングルス決勝戦の動画が上がっていたので、観てみた。

http://www.youtube.com/watch?v=Xavss4s-FXc
http://www.youtube.com/watch?v=gksPAvfVV8E


http://www.youtube.com/watch?v=auKCRRAgTlo
http://www.youtube.com/watch?v=UFcORsitLOw
http://www.youtube.com/watch?v=ppdqAv2lX64

決勝のカードは

三部航平選手(山形出身) 対 
sanbe02 

坪井勇磨選手(埼玉出身)。
tuboi02

青森山田高校の後輩・先輩対決を、セットオール、デュースの末、制したのは三部選手だった。三部選手は今年度の全日本のダブルスで森薗政崇選手と組んで優勝。一方の坪井選手はシングルスでベスト8と両者とも輝かしい実績を持っている。
しかし、意外な結果だった。見た目からして、農耕民族っぽい三部選手が狩猟民族っぽい坪井選手に勝つだなんて。

卓球は先手を取ったほうが有利である。台上からガンガン攻めていって、相手に攻めさせる暇を与えず、一方的に打って打って打ちまくるイケイケ卓球。これが試合では推奨されている。
逆に相手に合わせて、すぐに台から下がったり、打点を落としたり、守りに入ってしまうことは、自分を不利な形勢に陥らせることになる。

三部選手の卓球は丁寧につないでいく後者の卓球で、無理に打ちに行くことは稀だ。台上からチキータ等で先手を取るようなことはせず、無難にストップ。相手が打ってきた場合も、カウンターなどのリスキーなことはせず、台から下がって打点を下げて後ろから威力のあるドライブで大きなラリーに持っていく。


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全身を使った三部選手の大きなドライブ

そして想定外のボールが来たら、少し浮いてもいいから確実に入れていく。
普通の人はそんな「どうぞ打ってください」的なボールを打つのを潔しとせず、ちょっと横回転をかけてみたり、厳しいコースを狙ったりと、スケベ心が出てしまうが、三部選手は素直に確実に入れにいく。

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ネットにかかったボールを素直に入れる三部選手

一方、坪井選手はまず自分から先手を取って攻めていくタイプのようだ。台からあまり下がらず、台上から果敢に攻め、相手の返球に対してカウンターを狙うという、攻める気満々のスタイルである。ボールのスピードが三部選手よりも明らかに速い。

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台上から積極的に攻めていく坪井選手

こんな正反対のスタイルの卓球が激突した場合、坪井選手のイケイケ卓球が有利なはずだが、坪井選手が一方的に攻めているという印象はない。というのは、坪井選手のミスが非常に多かったのだ。

単に坪井選手の調子が悪いということかもしれないが、レシーブやカウンターのミスが著しく目立った。組しやすそうな三部選手なのに、坪井選手の攻撃は不発に終わることが多かった。
三部選手の勝因としてサービスのうまさが挙げられるだろう。もしかしたらツッツキなども回転量を変えたものを巧みに混ぜているのかもしれない。坪井選手がそれらの甘い球をガツンと強打するときのミスが目立った。そして三部選手のコースどりもうまかった。コントロールが抜群で、相手の読みを外したために坪井選手の一撃をかわすことができたのかもしれない。私のレベルでは残念ながら、三部選手のプレーのどこが奏功したのかよくわからない。とにかくあまり派手なラリーは多くなかったように感じた。

三部選手のような鷹揚なゆったりとした卓球に憧れる。無理をせず、つないで、ときには中陣から高い弧線の強打を放ち、最後に勝利するそんな卓球に。

最近よく感じるのだが、セカセカと忙しい卓球をする人(私もその一人だが)は、戻りが遅く、打球に間に合っていないことが多い。だから慌てて腕だけでボールを打ってしまい、ミスをする。余裕がない。反対に、ゆったりと打っている人は戻りが早く、打球までに時間的な余裕があるため、身体全体を使った、大きなスイングで打っても間に合い、安定するのではないかと。また、三部選手のプレーは全体的に力が抜けているような気がする。「ここで決めてやろう」という気負いがない。だから身体が無駄なくスムースに動いているように見える。

三部選手のような余裕のある卓球をするためには戻りの早さと力の抜き方が重要なのではないだろうか。これから練習時にその2点に留意してみようと思う。
 

こんな動画を見た。

 

3:16と5:18のフットワーク、信じられない。
この人はなんでこんなに速く動けるのだろうか。バック面にラバーを貼っている意味がないではないか。
この選手は張超選手。国際大会にはあまり出ていないようだが、中国の一軍の選手に準ずる実力者のようである。
どちらのプレーもフォア側で強打した後に驚異的なスピードでバック側に移動している。私なら、フォア側で強打した時になんとなく達成感を感じてそのままボールの行方を見守ってしまうだろう。その結果戻りが遅くなって逆に攻め込まれてしまう。
戻りが遅い多くの場合、この心理状態が影響しているように思われてならない。
それは強打に限らず、通常の打球においても同様である。相手の強打をバックブロックで止めたとき、「やった…」という充実感に満たされてしまい、そこで以降のプレーを忘れてしまう。この傾向は自分にしては上出来のプレーをした後にやってくることが多い。
しかし、卓球では戻りの早さこそが安定性を左右する。上出来なプレーのあとこそ、すばやく戻らなければならない。

「戻る」にもいろいろある。さきほどの張超選手のようにフォアからバックに戻るのもあれば、スイングした後に基本姿勢に戻るというのもある。私が最近気づいた自分の悪い癖は前後の戻りの遅さ、あるいは後ろへの戻りを忘れてしまうことである。

最近ITTFのオフィシャルページにアップされていた1999年の世界選手権決勝の動画。劉国梁選手 対 馬琳選手の対戦を見て、興味深く思った。前陣でビシバシ連続強打する劉選手に対して馬選手はプッシュやドライブを駆使して対抗している。ほとんどの場合、劉選手が先手を取って攻め、それを馬選手が防ぐという展開が目立つ。フルセットデュースまでもつれ込む展開は見ごたえがある。



これを観て気づいたのだが、劉選手はラリーの序盤、強打で先手を取った後、常に半歩後退している(例えば9:00あたり~、14:00あたり~)。私だったら3球目でガーンと強打を決めたらその場所にとどまってしまうだろう。いや、むしろ少し前進しているかもしれない。というのは、以前の練習で、ドライブをバックで受けてもらったとき、相手にこんなことを言われたのだ。

ドライブを連続して打ちながらだんだん前に来ているみたいです。
だから安定しないんだと思いますよ。

私は好打したとき、充実感に満たされて、ついわずかに前進してしまう癖がついているらしい。前進しても、きちんと戻ればいいのだが、そういうときは夢中で強打しているので、半歩戻るということに思い至らない。
同様にカットマンと練習させてもらった時に「攻撃型の選手は、前後の動きにむとんちゃくな人が多いですよね。」と言われたこともあった。

そういえば、徒然草にそんなことが書いてあったと思いだして、調べてみた。表題は徒然草109段「高名の木登り」の話。弟子に木に登らせて、枝の剪定をさせているとき、師匠は何も言わなかったが、すべての仕事をつつがなく終え、降りる段になって「気をつけろ!」と注意したという。その理由が表題の言葉である。苦しく、難しい場面では人は精いっぱい緊張して、ミスをしないように気をつけているが、失敗はむしろ、その難しい場面がおわり、楽なところにさしかかったときに訪れるのだという。兼好はこの言葉に感心し、

あやしき下﨟なれども、聖人の戒めにかなへり。
鞠も、難き所を蹴出して後、安く思へば必ず落つと侍るやらん。

とコメントし、スポーツ(蹴鞠)にも通じるものとしている。
人生にも通じる真理だと思うが、うまくいったときの、その直後の「戻り」が肝心なのである。


 

JUIC卓球教室の偉関晴光氏の指導ビデオをみた。



指導者は大変だ。
このビデオを見ると、受講者のミスが多くて、見ていてイライラする。私のレベルでイライラするのだから、偉関氏はさぞイライラしていることだろう。いや、偉関氏ほどのレベルになると、かえって下手な人を見てもあまりイライラしないのかもしれない。なぜなら今まで自分よりも上手な人を見ることがほとんどなかったのだから。

その中で、フォアスイングについてのコメントがあった。14:10ぐらいのところだ。振り切ったあと、スイングを止めてはいけないということだった。私もよく言われる。それが戻りの遅さにつながっている。偉関氏の模範スイングを見て思うことがあった。

最後まで振っていない?

最後まで振り切ると、打ち終わった時にスイングが止まってしまう。偉関氏のスイングは、ボールが当たった瞬間からブレーキをかけ始め、戻る姿勢に入ればいいと教えているのではないか。
つまり、スイングが100%完成してからブレーキをかけるのではなく、 打球後のフォロースルーの途中、スイング全体の70~80%の時点で身体を戻し始めるというのはどうだろうか。
しかしそれはかなり難しそうだ。スイングし終わったあとの反動を利用して戻るのなら、身体を戻しやすいが、スピードが一番乗っているところでブレーキをかけるのは難しいだろう。

では、どうすればフォロースルーを短くできるのだろうか。スイングの頂点付近で打球できるようにスイングの長さを調整すればいいのではないだろうか。つまりスイング全体の60%ぐらいのところで打球するからフォロースルーが40%もできてしまうのである。だとしたら、80~90%のところで打球するようにすれば、フォロースルーは10~20%で済む。
そもそもスイングが長すぎるのだ。たとえば、時速70キロのドライブをうつのに60センチのスイングが必要だとする。それを私たちは90センチも使っているのではないだろうか。そして50~60センチほどのところで打球しているから、30~40センチのフォロースルーができる。もしこの仮説が正しいならば、まずスイングを短くすることが先決だ。スイング全体を30%短くして、60センチにする。そしてその60センチのスイングの50センチ付近にインパクトを持ってくるようにすれば、フォロースルーは10センチで済む。戻りも早くなるはずだ。

結局、結論のみを見れば、「スイングを小さくすれば戻りも早くなる」というありふれた結論だった。しかしこの考察を通じて多くのことを学んだ。

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