「アスリート解体新書」20卓球を観て違和感を感じた。



 この動画で大きく取り扱われているのは卓球選手の反応速度の早さなのだが、「卓球=反射神経のスポーツ」というのに私は納得できない。

卓球がテレビに取り上げられるとき、反射神経との関連で番組が構成されることが多いような気がする。

jikken

ランプが点灯した瞬間にボタンを押すといった実験で卓球選手と一般人を比べて卓球選手の反射神経がいかに秀でているかを浮き彫りにするというテレビ番組を何度も見たことがある。しかし、反射神経ということなら、ほとんどの競技に要求されるもので、卓球選手の専売特許ではない。バレーボールの選手はスパイクが打たれた瞬間にどの地点に来るかを一瞬で判断するだろうし、バスケの選手は視界の端っこをかすめる味方のプレーヤーの動きから瞬時に形勢を判断し、パスを送る。これは卓球に劣らず、素早い判断力が要求されるはずだ。純粋に反射神経ということなら、剣道や最速のスポーツと言われるアイスホッケーのほうが要求されるかもしれない。

さらに私は卓球の上級者の反射神経が特別発達していると感じたことはない。上級者だって想定外のコースに来たボールを瞬時に判断して何度もブロックできるというわけではないだろう。上級者だって裏をかかれたら、そうそうとれるものではないし、いくら素早く反応しても、身体が間に合わなければボールはとれない。 反射神経を鍛えるトレーニングとして、前陣でどこに来るかわからないスマッシュを取らされる練習とか、電車に乗って通過駅の看板の文字を読み取るとか、そんな卓球トレーニングなんてきいたことがない。

よって卓球において反射神経がそれほど大切だとは思えない。 反応速度の早い若者よりも予測やかけひきに長じた年配者のほうが強いのが普通である。

それぞれのスポーツにはそれぞれを特徴づけるものがあるわけだが、卓球の場合はスピンだろう。戦術やボールのスピードなら他の競技だって相当なものだ。私はやったことがないが、スカッシュのスピードは卓球に近いのではないだろうか【追記:スカッシュの試合を観てみたが、ピッチの早さは卓球にはるかに及ばなかった】。フットワークならバドミントンのほうが端から端まで動かされる気がする。しかし回転ということなら、卓球がもっとも複雑で強烈だろう。卓球のテレビ番組を作るならもっと回転に焦点を当てて作ったほうが卓球らしさが伝わると思うのだが。