卓球はおもしろい。練習すればするほど上達するからだ。ミスや敗北には必ず合理的な理由がある。原因を考えたり、上手な人に解説してもらって、どうしてミスしたかを悟るたびに卓球の奥深さを実感する。

カタールオープン2013男子シングルスの準決勝を見た。馬選手と許選手のラリーがすごい。
凄まじい回転量とスピードでうねるドライブ、それを的確な角度でブロック。さらにドライブで攻撃すると、相手もドライブで応じる。
お互いに台から何メートルも離れて引き合いをしている。こんなラリーを一度でいいからやってみたい!この2人のドライブを一生に一度でいいから受けてみたい!
しかし、この2人、なぜか淡々とプレーしているように見える。豪快なラリーが続いても、あまり楽しそうでない。
まるでリラックスした練習をしているような感じで、勝利への執着のようなものが全く感じられない。



これだけ頂点を極めてしまったら、目標がなくなって、勝利をかみしめる喜びのようなものが薄れてしまうのだろうか。現在、世界の頂点を極めてしまった中国のトップ選手たちは卓球に飽きつつあるのかもしれない。ほとんどの中国選手がいつも無愛想なのは、勝つのが当たり前になってしまって、卓球があまり楽しくないからなのだろう。

しかし、卓球に飽きるのは頂点を極めた人だけではないようだ。ある程度上手になると、卓球に対する情熱が薄れてしまうものらしい。おそらくいくら練習しても、進歩が感じられなくなってしまうのだろう。

私は卓球のトップ選手のブログをときどき読むのだが、卓球のことを書いている人はほとんどいない。書いてあったとしても簡単に「来週☓☓オープンに出ます。がんばります。」といったスケジュールや、「ベスト8でした」といった結果報告ばかりだ。ほかに何が書いてあるかというと、「こんな珍しいおみやげを発見して買ってしまいました」とか「友達の○○選手と☓☓のパフェを食べに行った。めっちゃおいしかった」といった日常の小さなしあわせとか、そんなことが多い。卓球選手がどうして芸能人のブログのようなことばかり書くのだろうか。誰が読むんだ、そんなもん!どうして卓球のことを書かないのか。スケジュールや結果報告のことではない。卓球について自身が考えていることをだ。

馬龍選手のドライブがどれだけすごいか私は知りたい。実際にあのドライブを受けたことがある選手に教えてほしい。「日本のインターハイレベルのドライブがイノシシだとしたら、馬龍選手のドライブはダンプカーだ!」といった、直接受けた人にしか分からない実感とか、「張継科選手の強さの秘密は、実は…」といった分析とか、「これからの卓球で重視されるのはスピードだけでなく…」といった卓球論をトップ選手に展開してほしいのだ。

このような卓球論を語る人はたいてい指導者であって、選手ではない。どうして選手はああも卓球について語らないのか。もしかしたら国際大会に出るようなレベルの選手は、卓球は仕事と割りきって、趣味の時間は卓球以外のことを考えるようにしているのかもしれない。あるいは卓球をやりすぎて、飽きてしまっているのかもしれない。しかし、われわれのような一般人としては、国内トップレベルの選手―高みを踏んだことのある選手にぜひその経験や卓球哲学を語ってもらいたいものである。

【追記】
「私のオススメの小説を紹介します!」とか「今年のマイブームは…」とか、そんなことを卓球のトップ選手がブログで書くのは、なんというか、受験競争のチャンピオンである東大生がブログで近所のお気に入りの店の紹介をしているようなものだ。
あるいは宇宙飛行士がブログで政治や経済について語っていたりしたら、読者はどう感じるだろうか。
違う、あなたに求められているのは、効率よく数学や英語を勉強するにはどうすればいいかとか、宇宙空間での生活といった経験談やノウハウのはずでしょ?そんなおいしい店の紹介とかその店の雰囲気とか、季節の移ろいについての感慨とか、最近の日中関係についての展望なんかを書いてほしいわけじゃない。そういうのを詳しく書かれれば書かれるほどイライラする。頼むから、そういう話じゃなくて、卓球のトップ選手は卓球について書いてくれ!そういうことをトップ選手に分かってほしいと思い、この記事を書いた。卓球のトップ選手に伝わるかどうか分からないが。

【追記】171809
私の求めていた世界トップ選手と対戦した人の体験談がぐっちぃ氏の記事にあったので紹介したい。
東京アートの大矢選手…
サーブが切れすぎていて、打てる位置まで伸びてこないらしい。