東京に行く機会があったので、以前から訪れてみたかったWRMに行ってみた。今回はその感想などを書いてみたい。

WRM高田馬場店はJR高田馬場駅を出て左に曲がったすぐ近くの路地裏にあった。あたりには一癖ありそうな店が。
busumuryou
改札口正面のBAR 信「美人半額 ブス無料」 オッサンなら何割引なのだろうか?

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WRMの近くにある野郎ラーメンのイチオシメニュー「豚野郎」

WRMは普通の卓球屋と違うのだろうか?WRMのウェブサイトにはこんな宣伝文句がある。

「ラケットにラバーが張って試打できて嬉しいぃぃ!」
「こんなラバーみたことねぇぇぇ~」
「見てるだけで楽しいぃぃ~~~~~~~」

来て見て触って楽しいお店です

「ラケットにラバーが張って試打できて」というのはどういう意味だろうか?「ラバー張って試打できて」という意味だろうか。現実的に考えると「ラバーが張ってあって試打できて」という意味だろう。 いや、もしかしたら試打用のラバーが用意してあって、ラケットを持って行ったら、貼って打たせてもらえるのかも?とにかく「楽しい」店にはちがいない。

そんな期待を胸に高田馬場店の入り口をくぐった。6畳一間のワンルームマンション、そんな感じの店内にラバー、ラケット、DVD、雑誌、小物などが売られており、中央に小さな卓球台が置いてあった。そして若い男性の店員さんが1人いた。WRMのネットショップと比べると、それほど在庫は多くないように感じられた。そこで、上の疑問――自分のラケットにラバーを貼って打たせてもらえるかどうか聞いてみたところ、そういうサービスはないとのこと。残念。そうではなく、王道シリーズに店で販売されているラバーが貼ってあり、試打させてもらえるという。そんな試打用ラケットが10本強あっただろうか。どれもラバーフィルムが貼ってあり、きれいな状態が維持されている。

私は現在、特に用具を必要とはしていなかったが、せっかくWRMに来たので、ここでしか買えないような中国ラバーを記念に買っていこうと思った。実店舗でラバーを買うのは久しぶりだ。私は指導者から柔らかく、それほど弾まないラバーを使って基礎を固めるよう言われていたので、一般的な硬い中国ラバーではなく、柔らかい中国ラバーを買ってみようと思った。ヴェガのようなシートの柔らかい、粘着なしの、安価なラバーがあればよかったのだが、そういう製品は扱っていない。安価なラバーはあるのだが、「シートが柔らかい」と「非粘着」を兼ね備えたラバーは中国ラバーではほとんどないらしい。私の示した条件に近い製品として土星PROというのがある。スポンジが柔らかく、2500円ほどで、なかなか安い。ただ、微粘着である。試打させてもらったところ、なかなか扱いやすかったので、購入しようと思ったが、あいにく在庫切れだった。MAZE PROというのも比較的柔らかめだったのだが、私の基準では硬すぎた。
せっかくWRMに来たのに、何も買わないで帰ったら、もったいない(?)ので、ラケットでも買っていこうと思い、店員さんに相談してみたところ、天王星Uranus3【スタンダードな7枚合板】 が3000円ほどだったので、これにしようと思った。

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ウラヌス3 中国式 2980円!

店員さんイチオシとのこと。いまどき、信じられない価格である。
ただし、過剰な期待はしないほうがいい。品質的にはそれほど高いとはいえない。

uranusside
写真中央(上板に亀裂が入っている)に注意

信頼性を考えるなら、実売4000円ほどになるが、スワットのほうが間違いがないかと思われる。

swat

私はラケットはたくさん持っているし、ウラヌスは気分転換用ラケットとして購入したので、値段を考えれば不満はない。3000円のラケットに5~6000円のラケットと同等の品質を期待するほうが間違っていると私は思う。
それよりも、店員さんに聞いたラケットの話のほうが値打ちがあった。

当たり前のことかもしれないが、店員さんによると、「いい」ラケットというのは、つまるところ、人それぞれだということなのである。
高級ラケットというのは素材や品質が「いい」というだけで、使う人に合うかどうかまでは保証していない。2万円近い高級ラケットよりも、5000円ほどの入門者向けラケットのほうが、気持よくボールが打てるというのは十分あり得る話なのだ。現に、さまざまなラケットを試してきたであろう店員さんのお気に入りラケットはスティガのオールラウンド・エボリューション(実売6000円ほど)だった。

また、ラケットは木材を使用しているため、どうしても個体差が出てくるのだという。同じラケットでも重量が重い個体と軽い個体があることはよく知られているが、打球感にも私が思っていた以上に幅があるらしい。
店員さん曰く
「海外で売られているスティガのラケットは、自分にとって60点の個体もあれば、120点の個体もある。一方、バタフライのラケットはどれも80点ほどの個体ばかりである。」
だから、海外のスティガのラケットは「おもしろい」のだという(国内に出回っているものはそれほどの個体差がないという)。
1つのラケットに惚れ込んで、何本も同じラケットを買って、それぞれの個性を比べてみるぐらいの執着がなければ、真に満足できるラケットには出会えないということなのかもしれない。私の購入したウラヌスは傷やひび割れといった細かい問題点はあるが、そういった小さな瑕疵を帳消しにしてくれるような、私好みの打球感であることを期待する。

ラケットの「しなり」についても質問してみた。私は「しなり」というのが分からない。あれは気のせいなのではないかと。
店員さんの答えは「しなりは確かにある。それは否定しようがない」ということだった。ただ、ペンホルダーの場合は、中指で支えてしまうため、それが感じにくいとのこと。しなりとは、打球時のブレードの反発の遅れであり、ボールのインパクトの力をそのままストレートに伝えて反発するのは「しならない」ラケット。ボールのインパクトを柔らかく受け止めて、やや遅れて反発するのが、「しなる」ラケットなのだという。しなるラケットは反発までに微妙なタイムラグがあるため、球持ちがよくなり、ボールをコントロールしやすいというメリットがあるという。そうすると、上板が硬いタイプのブレードはしなりにくいということになるだろうか?

…などと、店員さんにいろいろな質問をぶつけて1時間以上、長々と話し込んでしまったのだが、高校生らしき別の客が来店したため、そろそろおしゃべりは切り上げたほうがいいと判断した。高校生はあれこれラケットを触ってみて、おもむろに試打用ラケットのフィルムを黙って剥がし、弾力などを確かめ始めた(試打用とはいえ、こんな狭い店で、黙って店のラケットを触るのは印象悪いよー。一言断ろうよ)

WRM高田馬場店訪問は、お目当てのラバーを買うことはできなかったが、激安ラケット(ネットショップでは完売)を購入でき、店員さんの用具論などを聞かせていただき、とても楽しく過ごせた。WRM高田馬場店を訪問するなら、用具についての疑問を店員さんにぶつけてみれば、いろいろおもしろい話が聞けるのではないかと思う。ただ、店員さんは何も疑問を持っていない人には講釈をしてくれないと思われる。「憤せずんば啓せず。悱せずんば発せず」である。

【謝辞】
怪しいオジサンのおしゃべりに長時間付き合ってくれた店員さん、どうもありがとうございました。また機会があれば、訪れてみたいと思います。

【追記】150110
ウラヌスをある程度使ってみた感想を書いてみたい。
レビューというほど詳しいことは分からないのだが、普通にいいラケットだったと思う。
「いい」というのは、打球感に満足したという意味である。
私は用具の「味」が分からないので、その程度の感想しかない。
普通に弾むし、普通にボールが入る。高級ラケットほど心地よい打球感ではないが、値段を考えれば十分満足の行くラケットだと思う。