賭博黙示録カイジ09_144

賭博黙示録カイジ09_145

私は卓球の「戦術」という言葉の意味を間違えていたのかもしれない。

WRM卓球塾講習会vol.4 戦術編

というビデオ(以下「戦術編」)を見て衝撃を受けた。
「戦術」というのは、例えば

相手のフォア側に短いサービスを出す
A 相手がそれをミドルに突っついてきたら、フォアドライブで打つ
B 相手が払ってきたら…まぁ適当につなぐ

というものだぐらいに考えていた。
Aだったらラッキーで、Bだったら仕方ない、という程度の「戦術」である。

ビデオ「戦術編」は何をするのかよくわからないうちに打ち合いが始まる。いろいろなタイプの相手と試合形式の「ALL」で1セットぐらい淡々と打ち合うのだ。なんだか私が予想していた内容とは違った。私はてっきり

使える戦術NO..01
「相手が自分のバックに横回転ロングサービスを出してきたら、それをフォアに速く返すと、チャンスボールが来やすいので、それをドライブで仕留めましょう」

というような試合で役立つパターンをいくつも紹介してくれるのかと思っていたのだが、講師の原田隆雅氏はそんな分かりやすいパターンではなく、いろいろなコースに返球し、いろいろなフィニッシュで得点している。1セット分ぐらいのALLが続いた後で、原田氏が振り返ってコメントをするのである。細かい語句は覚えていないが、だいたい次のようなことを述べていた。

「初めはどう攻めたらいいか、よく分からなかったのですが、相手のサービスを下回転で相手のフォア側に突っつくと、自分のバック側に返球されることが多いです。そこで今度は相手のフォア側に横回転のツッツキを混ぜてみたら、横回転の時は自分のフォア側に返球されやすいと分かったので、それを狙ってフォアで打ちました」

これが原田氏の考える「戦術」なのである。上級者の考える「戦術」というのは初めから決まっているパターンのようなものではなく、相手との打ち合いを通じて、相手の反応のパターンを見極め、相手に応じて作り上げるもののようである。それはつまり、上級者に対したとき、自分では自由にいろいろなところに返球しているつもりが、実は相手には自分の行動パターンが読まれていて、すべてお見通しということである。

お釈迦様の掌の上で大暴れしているつもりの孫悟空…

しかし本当にそんなことが可能なのだろうか。おそらくある程度は可能なのだろう。

・豊富な経験を持つ試合巧者は初めのうちは相手の反応を見るために1セット目を落とすことが多いという。
・また、上級者が初対戦の相手にはけっこう苦戦するけれど、何度か当たっている相手にはほとんど負けないというのも聞いたことがある。
・それから水谷隼選手は『カイジ』の大ファンである。

以上の根拠から、上級者は相手の反応を観察・分析し、すぐに相手に有効な「戦術」を作り上げてしまうのではないかという仮説が成り立つ。
もちろんわずか1セットかそこらで相手の行動パターンを完璧に把握することは不可能だろう。しかし、おそらくいくつかポイントがあって、多くの経験から「このレシーブをすると、弱く払う人が多い」のような傾向があって、それを試してみたところ、「やっぱりここが狙い目だ」のように弱点を読まれ、それを要所要所で使われて得点されてしまうということなのではないか。
また、下手な人が上級者と同じように分析しようとしても、相手はなかなかボロを出さないだろう。原田氏の場合は単純な下回転のツッツキだけでなく、横回転のツッツキというバリエーションを持っていたためにこのような「戦術」が可能になったわけである。つまり相手を分析するためにはこちらの返球のバリエーションがたくさんなければならないということなのだ。

私のような中級者は相手のボールをなんとか返球するだけで精一杯なのだが、上級者は常に考え、相手の反応を分析しながら返球を行なっているのだろう。
卓球では上のマンガの利根川のように相手に「自分はお前の行動を読みきっている」などと親切に言ってくれる相手はいない。自分の反応が読まれているなどと、夢にも思わず、なんとなく(実は必然的に)勝てない。負けた試合をビデオにでも撮っておいて、後でなぜ負けたかを分析しないことには永遠にその相手に勝てないのである。

畏るべし、上級者。