「こちらが9の力で打ったら、相手は1の力で打たなければなりません。逆にこちらが3の力で打ったら、相手は7の力で打つようにするといいでしょう」

初心者向けビデオでバックハンドについてこんな説明があった。「押さば引き、引かば押せ」という言葉どおりで、なるほどと思った。この言葉が意味しているのは、卓球では両者の力を均衡させるのが基本ということだが、これはあくまでも基本であって、この均衡を破らないと勝てないのが上級者だと思う。相手が押してきた時にこちらからも押し返すというのは非常に高度な技術が必要であり、中級者には身に余る。
私のような高度な技術を持たない者は、相手に8の力で打たれたとき、本来なら、2の力で打ち返さなければならないのに、4や5の力で打ち返してしまい、ボールがオーバーしてしまう。世間でのオーバーミスというのもこうやって生まれているに違いない。

私はふだんあまり弾まないラケットを愛用しているが、それは私がそれほど前後に動かないから使いやすいのではないだろうか。いつも比較的前陣に位置しているので、ラケットが弾むと、逆にオーバーしてしまう。2の力で打たなければならないところを高性能なラケットなら4や5の力で打ってしまいがちだ。なので、私にはあまり弾まないラケットがちょうどいい。前陣からなら、弾まないラケットでも力を入れれば威力のあるボールが打てるし、力を入れなければ、弱いボールも打てる。

一方上級者の場合は頻繁に前後に動くので、弾まないラケットで中後陣から打つ場合はパワー不足になってしまう。したがって上級者はよく弾むラケットを使ったほうがいいと思われる。上級者でも、もちろん前陣でプレーすることもあるから、前陣ではパワーを出さない、あるいは殺しつつ打ち、中後陣では全力で打ち、遺憾なくラケットの性能を発揮するという打ち分けをしていると考えられる。大は小を兼ねる。上級者なら「牛刀を以って鶏を割く」こともできるのだ。


ボールの威力をうまく殺せない初・中級者が弾みも、ひっかかりもいい上級者用のラケットを使って、前陣の辺りでプレーするのは、たとえば近接戦闘で銃筒の長いライフルを使うのに似ている。いくら飛距離が長く、精度の高いライフルでも、接近戦では拳銃に軍配が上がる。前陣プレーにおいてラケットの性能の高さは「諸刃の剣」なのではないだろうか。

上級者はボールの威力を殺したり、軽い力で安定して打球することに長けている。私は以前、全力で威力のあるボールを打つことに熱心だった(前記事「省エネ卓球」)が、そのような一発で抜き去る強いボールを打つのは、上級者の真骨頂ではない。中級者でも絶好球ならとんでもないボールが打てる。我々はつい上級者が放つ強打に目を奪われがちだが、上級者こそ、弱いボールを打つのがうまいのではないだろうか。台上のデリケートなやりとりで、うまくボールの威力を殺せる、あるいは低く素早くボールを打てると同時に、中陣から強烈な一発を打ち込めるというのが本当の上級者ではないだろうか。

以前、ぐっちぃ氏のブログに以下の記述があった。テナジー05のインプレッションである。
05は非常に安定性が高く、回転がかかり、ラリーに強いとのこと。しかし、氏は05を使いこなせなかったと述懐している。
元の記事は改行をふんだんに使ってあったのだが、見づらいので、適度に改行を削った。
-------------------
サーブは切れるけど台から長くなってしまう・・・
レシーブは05のシートは回転が強くかかる分相手の回転にも敏感です
なのでレシーブがボロボロになるという結果になり05の持前のラリー戦になる前でやられかけましたね汗
あとプレーの回転量は強いものの変化が少なくなってしまい相手に大当たりをされるような感じになりやすくなりました
自分の持ち味のサーブレシーブそして変化が少なくなってしまったので・・・
やっぱりラリー戦やドライブがいかによくても断念してキョウヒョウPRO3に戻したという形でした!
ただでも正直思ったのが・・・
台上の細かいタッチを弾んだり回転に敏感なラバーであってもミスなく駆使できるような強い選手であれば・・・
ラリーやドライブ戦まで普通にいく形なので・・・テナジー05の良さが存分に出そうです(*・ω・)ノ
自分は高性能で使いこなせない場面がありましたがテナジー05を使った日本代表クラスの
高木和卓選手、健一選手、坂本選手、大矢選手
実際対決したことがありますが
みなさん・・・台上のボールタッチが非常に繊細なタッチを持っています
豪快なラリーに目がいきがちですが実はその前のレシーブがみなさん違うんですよね(((( ;゚д゚)))
このクラスのようなレシーブテクニックが相当ないとテナジーのラリー能力を生かすのが難しいのかもしれません(´;ω;`)
トップ選手は弾むラバーでもレシーブがしっかりできるのでテナジー05の得意なドライブラリーに持ち込めます!!

-------------------
このように日本のトップ選手たちの卓球は繊細なレシーブと強烈な一発を兼ね備えているのだと思う。

この記事を読んで、私の用具は低性能な方がいいと再認識させられた。
よく弾み、よくかかるラケットを私が使うなら、陣地を中・後陣中心にしたほうがいいだろう。
高音から低音まで幅広く1つのスピーカーで鳴らすのか、高音、低音はあきらめて、中音重視でいくのか。私には高音から低音までカバーできるような戦型は無理だ。弾みの悪いラケットと、引っ掛かりの弱いラバーの組み合わせで前陣のあたりでプレーするのが合っている。

ラケットはズシリと安定感があり、ラバーは引っ掛かりがよく、特厚で弾みもよいもの。


これが世間で人気の組み合わせだろう。しかし、現在私は全く正反対に軽いラケットと引っ掛かりのほとんどない、使い古しのラバーを使っている。引っ掛かりの弱さというのは意外にメリットがある。たとえばフリックがやりやすい。最近フリックを安定させようと練習しているのだが、回転に鈍感なラバーのため、乗せて掬えば結構入る。相手の切れたサービスをレシーブする際も、相手の強烈なドライブをブロックする際も、鈍感なラバーならそれほど影響を受けない。いろいろな場面で相手の回転の影響を受けにくいというのは意外に大きなメリットではないだろうか。

【まとめ】
私のようなレベルのプレイヤーが前陣でのボールを安定させるには低性能ラケットのほうが有利だと思われる。前陣で高性能ラケットを使うと、弾みすぎてオーバー、引っかかりすぎてオーバー、台上でのレシーブやブロックも短く止まらない、相手の回転の影響をもろに受ける、使いこなせない。低性能ラケットで中陣から威力のあるボールを打つのは難しいが、これは私にはあまり必要のない技術だ。そのような豪快なラリーになることはほとんどないのだから。コクタクの安いラケットに1年ほど使い込んだスレイバー(中)。こんな組合せも慣れれば悪くないものだ。


ラバー選びについては

「初心者のうちは弾まず、引っかからないコントロール系ラバーを使い、上達するにしたがって高性能ラバーに替えていく」

という考え方は今では流行らないらしい。

「いずれ高性能テンションラバー特厚にするんだから、初めのうちからそれに慣れておくべきだ」

という考え方のほうが今は主流のように思われる。ただ、私の用具選びにはその「古くさい」考え方のほうが合っている気がする。

ラケットもそれほど弾まないラケット(前記事「弾まないラケット」)のほうが合っているようだ。用具の合う合わないは人によって違うし、人によっては前陣でも引っかかって弾む高性能ラケットが合うという人もいるだろう。一概にこれがいいとはいいにくいが、用具選びでは「古くさい」考え方にも一理あると主張したい。