ワールドカップ2014が終わった。結果だけを見れば、水谷選手は2011年参戦のときと同様4位。準決勝の馬龍戦は0-4で敗退。前回と何も代わり映えがしない結果にみえるが、確実に水谷選手は進化していた。少なくとも私には3年前とは全く違って見えた。【※追記参照】



その違いは何かというと、

・クロスに打たない
・入れに行かない
・チャンスを待たない
・下がらない
・甘いボールは見逃さない

というナイナイづくしだった。
一言で言えば従来の安定性重視の戦術からリスキーに攻める戦術への転換ということに集約される。そのためだろうか、試合中はオーバーミスを連発していたように感じた。

以下、レベルの低い私の目から見た感想などを綴ってみたい。細かいテクニックやフットワーク、得意なパターンに持っていくための試合の駆け引きなどは私にはわからないので、結果として目に見える限りの範囲にとどまる。

安定して入れるために距離の長いクロスではなく、ストレートへ打ってポイントするボールがかなりあった。
相手が打ってきたら、基本的にカウンターである。ブロックはほとんどしない。

counter1
台上でフォアドライブを打たれても

counter2
ブロックしないでカウンターバックハンド

counter3
強烈な馬龍選手のフォアドライブ

counter4
それを全力でドライブし返す水谷選手

馬龍選手に完全な姿勢で強烈なフォアハンドを打たれてしまったら、従来ならばブロックで止めるだけ、あるいは合わせるだけといった対応だったが、あの強烈なフォアハンドをカウンターで迎撃しているのである。打点が早い!これには馬龍選手も刮目させられたようだ。

「こんなのオレの知っている水谷じゃない…」

馬龍選手にしてみれば、親の言うことを何でもよく聞くおりこうさんに育った息子に、思春期になって初めてキレられたときのような衝撃だっただろう。

douyou
動揺のあまりサービス時に何度もボールを落とす馬龍選手

回り込んでからのボールもサイドを切る厳しいコースが多かった。
side
倒れ込みながらもサイドを狙う水谷選手

side2
エース!

それだけに今までの水谷選手らしからぬミスが多かった気がする。馬龍選手も早い段階で全開で攻めてくるが、水谷選手も負けずに早い段階から全開で攻めていった。水谷選手があんなにチキータを多用するのは珍しい。少しでも先手を取りたいということなのだろう。

foremae
フォア前チキータを狙う水谷選手

苦しいコースに打たれても、フォアで打てるまでガマンして、つなぐといったプレーがない。フォアでもバックでも、早い段階でとにかくバシバシ厳しいコースに打っていく。
ボールのスピードも中国選手に対して遜色ない。用具が変わったのか(グリップは旧版の水谷隼だったが)、あるいは自らのリミッターを解除したのか、とにかく伸びのあるすばらしいスピードのドライブだった。
今までだったら、中国の一軍と10回対戦したら、せいぜい10回に1回ぐらいしか勝機がないと感じさせられたが、今回の水谷選手なら5回に1回ぐらいは勝機があったのではないか。結果は0-4での敗退だったが、いつ番狂わせが起こってもおかしくない感じだった。

3位決定戦の対ティモ・ボル選手の場合も水谷選手は果敢に攻めた。息をもつかせぬ対戦だった。今年の世界選手権団体戦で0-3で完敗したウップンを晴らすかのような爽快なプレーだった。

今年の水谷選手は一味違う。今年こそ中国の一軍を倒してくれ!

【付記】
優勝した張継科選手がまたやってくれた。優勝を決めた後、フェンスを蹴って破壊したのだ(「ギロチンキック炸裂」)。その後ユニフォームを脱いでタトゥーを披露するのもお約束。いくら卓球が強くても、あんなパフォーマンスをしていたら、敵を増やすばかりだということに早く気づいてほしいものである(「忘れられる権利」)。


【追記】141027
対馬龍戦をダイジェスト版を改めて観てみると、水谷選手のプレーがあまりインプレッシブではなかった。
よく下がるし、ブロックも多用している。 昨日観た時は、もっと攻撃的だった気がしたのだが…。
改めて完全版も観てみたいと思う。