私はマナーとエチケットこそが世界に平和をもたらすと考えている。学校で、会社で、店で、駅で、人生のいろいろな場面で私たちは面識のない人や親しくない人と数えきれないほど出会わなければならない。そのときマナーやエチケットが悪ければ、不必要な摩擦や疑念を生み、それがこじれると、修復不可能な関係にまで発展してしまう。

卓球においてもマナーとエチケットは非常に大切だ。卓球は1対1の対人関係なので、他の団体競技よりもそれが際立つと思う。練習している時にマナーやエチケットが悪い人と練習するのは耐え難い苦痛だ。卓球が上達するかどうかは練習相手次第だとはよく言われることだが、たとえ相手が自分より格上で、上手な人であっても、やる気がなさそうにしている人や、つまらなそうにしている人とやるぐらいなら、初心者と卓球したほうがマシだと思う。
私が前に通っていた卓球教室は、地域でもレベルが高く、有名なところで、私よりもずっと上手な人がいたのだが、その人たちの相手をするのが非常に苦痛だった。あるとき、おたがいに2球ずつ自分の課題練習をするという場面で、おたがいに自分の希望を伝えた。私は「短いサービスを出すので、フォア側につっついてください」のように頼んだ。すると、相手の上手な人は、何も言わず、無表情でラケットで自分のバック側を指すだけなのだ。どうやら自分のサービスを、自分のバック側につっつけということらしい。私は内心ひどくイヤな気分になった。まるで動物に指図しているかのようではないか。また、ある人は、全く表情を変えずに淡々と練習相手を務めていた。いいボールが入ったときは「よし!」とか、あらぬ方向に打ってしまったときは「すみませ~ん」とか言うべきではないだろうか。表情も嬉しそうな表情や済まなそうな表情を示すのがエチケットではないだろうか。しかしその人は自分よりも下手な相手と練習するのはおもしろくないと言わんばかりに無言・無表情で相手をするのだ。
私はその感じの悪い人たちと練習させられるのが苦痛で、結局その教室を辞めてしまった。

マナーとエチケットは何か。
NHKのサイトによると、
「「マナー」はどちらかというと「社会・集団」を意識した場合に用いられているのに対して、「エチケット」は「相手・個人」を意識した場合に使われている傾向がある」ということらしい。
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/116.html
おおざっぱにいうと、観客・クラブのメンバーに対するものがマナーで、相手に対するものがエチケットということらしい。

卓球は試合後に相手と審判と握手を交わす。これはいい習慣だと思うが、ハイファイブのように手を合わせただけで握らない選手が多い。汚いものでも触るかのようにタッチで済ませてしまうような場合は、いくらレベルの高い試合だったとしても、見ていてあまり愉快ではない。アジアの選手は握手の習慣に慣れていないせいか、淡白なハイファイブで済ませてしまうことが多いように思う。一方ヨーロッパの選手の中にはしっかりと握手をする選手、プラス相手の肩をポンポンと叩く選手などもいて、見ていて気持ちがいい。逆に試合で負けたときにラケットを放り投げたり、落としたりする選手は見ていて嫌な気分になる。またダブルスで相方がミスをした場合に「大丈夫、大丈夫」といわんばかりにうなずきながら、相手の目を見つめている選手がいる一方で「やってられないよ」といわんばかりに相方と一切目を合わせない選手もいる。

頼もしいことに日本選手は比較的マナーがいい選手が多いと思う。特に女子選手は試合が始まると観客席と審判に一礼する人が多い。平野早矢香選手は、厳しい表情の中にも要所要所で笑顔を作っているし、福原愛選手や石川佳純選手なども必ずきれいなマナーで試合を始めているように思う。できることなら、試合終了後に相手の健闘を称えるような笑顔もほしい。国際試合を見ていても、たぶんこんなにマナーがいいのは日本の女子選手だけではないかと思われる。そんなマナーがいい選手はこちらも応援したくなるし、たとえその選手が負けても清々しい気持ちにさせられる。いいものを見せてもらったと思える。強いとか、上手いというのも大切かもしれないが、いくら上手くてもエチケットが悪かったら、心の底からは楽しめない。「強さ・技術が全てだ」という態度は間違っていると思う。格下の相手とプレイするときでも、感謝の気持ちを表せる選手は尊敬に値する。逆に「相手してやった」という不遜な態度の選手は、いくら強くとも尊敬できない。
譬えるなら、客が店員に投げつけるようにお金を払ったとしたら、店員は不愉快な気分になるだろう。私が店員なら、1万円札を投げつけられて、「釣りはいらない」といわれるよりも、「これでお願いします」と丁寧に言われてお釣りを出すほうがずっと嬉しい。「こっちは客だ。買ってやってるんだ」という態度では、店員も「もう来ないでほしい」と思ってしまうだろう。

そんな中で最近私が注目している選手は松平志穂選手だ。

しほ

松平賢二・健太選手の妹、彼女はまだ高校生にもかかわらず、とても気分のいい試合マナーを見せる。しかも強い。オーストリアオープン2013のアンダー21で優勝している。

こんな選手には国際大会にたくさん出場してほしい。たとえ上位に進出できなくても、観客は温かい気持ちにさせられるのではないだろうか。最近注目されている小・中学生の女子選手には親や指導者がしっかりとマナーを教えてあげてほしい。勝つことも大事だが、見落としがちなマナーを洗練させてほしい。そうすれば世界中から愛される選手に育つと思う。

先日、私の住む地区の交流大会に参加したのだが、となりからボールが転がってきたので、拾ってあげたが、何も言わない人とか、試合を始めるときに大きな声で「お願いします」と言わない人とか、絶好のチャンスボールをミスして、ラケットを上に放り投げる人とか、ダブルスで相方のミスに「はぁ~」と聞こえるようにため息をつく人とか、いろいろな人がいた。こういう人を反面教師にして自らのエチケットを磨こうを思った1日だった。