谷本道哉 編著『スポーツ科学の教科書』(岩波ジュニア新書)がおもしろかったので、紹介したい。

全体の構成は以下のとおり
1.運動生理学
2.機能解剖学
3.スポーツバイオメカニクス
4.トレーニング科学
5.スポーツ栄養学
6.運動と健康の科学

各章はそれぞれ読み切りの形で4~10程度の節 で構成されている。私が関心を持ったのは第3章「スポーツバイオメカニクス」である。わかりやすい例を用いて素朴な疑問を平易に解説している。以下、各節に対して簡単にコメントしたい。

3.4 ボールは脚で投げるってホント?
3.5 手足をムチのようにしならせるってどういうこと?


野球の投球動作では腕で発生する力よりも、脚や腰などから発生する力のほうが大きいという。そこには身体の使い方の原則が働いている。すなわち手や足を使うスポーツでは、力は身体の幹から先端に(近位から遠位に)順次働いていくという原則である。手足をムチのようにしならせるというのは、感覚的には分かるが、そのメカニズムを言葉で説明するのは難しい。それが簡潔に説明されている。

3.6 投球動作では「腕は振らずに内側にひねる」ってホント?

ピッチャーの投球動作では腕を振る動作が目につくが、実際にボールにスピードを与えているのは内旋という運動だという。なお、内野手は腕の振りで素早く送球することもあるという。

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卓球でも内旋の重要性をよく聞くが、どうしてひねる動作が力を与えるのだろう?

3.8 走り幅跳びの空中で手足をくるくる回すのはなぜ?

諸手を挙げて、バンザイをすると、腕以外の部分には下に向かう力が発生する。これが反作用である。よく卓球でもテンポよくハーフボレーをするときにラケットを前に押し出すと同時に上体を後ろに下げているが、この反作用を利用することによって身体の一部を素早く動かすことができるのだという。とすると、ループドライブを打つと同時にしゃがみ込めば、スイングがより速くなるということになる。

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そういえば、プロの選手がこのようにかなり低い体勢でドライブを打っているのを見かける。

3.10 テコの原理ってスポーツにも使える?
手足が長い選手のストロークと短い選手のそれはどちらが速いか。最終的な速度は長い選手のほうが速いが、起動するのに時間がかかるため、すばやいピッチで連打するのは短い選手のほうが有利だという。

他の章にも有益な情報が数多く散りばめられている。たいていの図書館で見られるので、身体の合理的な使い方に関心のある人には一読を勧めたい。