今回もあまり卓球に関係ないのだが、デザインの重要性について思うことがあったので、語ってみたい。

先日京都精華大学のオープンキャンパスに参加してみた。ここはマンガ学科があることで有名だが、実際に行ってみると、美大だった。マンガや文学だけでなく、日本画、洋画、テキスタイルデザイン、インダストリアルデザイン、建築、版画、立体造形と、美術関係なら一通り?学べる。オープンキャンパスでは各専攻の学生・先生がその専攻に関するいろいろな体験をさせてくれる上、作品の講評までしてくれるのだという。

私はプロダクトデザインという専攻で「ドッグタグ」を作らせてもらった。アクリル板に好きな文字をレーザーで彫ってもらうというものだ。教室にはマックが10数台並んでおり、「イラストレーター」「フォトショップ」というソフトを使ってドッグタグのデザインを決めるのだ。

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ドッグタグ


名前や連絡先を入れるのが一般的だが、私のにはイラストと名前、メアドを入れてもらうことになった。
ふつうの人はイラストをできるだけ大きく、そしてフレームいっぱいに入れようとするのではないだろうか。しかし学生さんの勧めに従って、イラストをあえて小さくし、フレームは通常のタイプよりもグッと横長に、フォントもバランスをとって、しっかりしたオーソドックスなフォントにしてもらった。

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学生さん曰く
「日本人はデザインに対する意識が希薄で、乱雑になんでも詰め込めるだけの情報を詰め込み、目立つ色や大きな文字を随所に配置してしまい、結果として全体のデザインをぶち壊してしまう。デザインは日本人の国際競争力が劣っている分野の一つである。」

それは日本の繁華街の街並みを見ればよくわかる。それぞれの店がいくつもの自己主張をケバケバしい色で競い合っている。ネット上のショッピングモールなら、「楽天」にその傾向が著しい。


rakuten














いくら高い売り上げを達成しているからといって、こんなにも「1位」を連呼することはないと思うのだが。見ようによっては「ハッキングされて、画面をメチャクチャに改ざんされた!」と言ってもおかしくないデザインである。
情報が多すぎて、どこから見たらいいかわかりにくい。しかも1ページが恐ろしく長く、全部の情報を見ながら最後までスクロールさせていく人はおそらくいないだろう。

反対に優れたデザインの例として挙げられたのはアップルのサイトだった。


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画像を中心にして、左肩に簡単なコメント、下段に詳細についてのリンクとシンプルな構成である。画面をZ字に目で追っていけるようにデザインされている。

最近でこそ「分かりやすい文章の書き方」とか「論理的な文章構成」といったことを大学で学ぶようになったが、デザインに関してはまだまだ手が回っていない気がする。私は高校までの美術の時間に画面をどのように構成し、文字をどのように配置したらセンスがいいかといったことを習った記憶がない。しかしデザインというのは生活の隅々にまで効力を持つ大切な概念である。一般的にセンスのいいとされているデザインがあるのなら、それを義務教育で教えてほしいものである。そうしないと私たちの日常生活にあふれる広告や街並みは私たちを惹きつけるどころか、逆にストレスになってしまう。

デザインの知恵というのはつまるところ、必要な情報だけを厳選し、空白を上手に使うことだと思われる。できるだけ多くの情報を詰め込もうとするのは品がない。知性が感じられない。私も今までの記事で必要以上に冗長な説明が多すぎたのではないかと反省している。これからはもっと読者のことを考えて、シンプルなデザインで必要な情報だけを発信しようと思う。

卓球にはこのようなデザインを考慮する場面がないだろうか。卓球雑誌や卓球書のレイアウトなどはもちろん、ユニフォームやバッグ、ラケットのグリップなど、多くの場面でデザインが関係してくる。特に卓球のユニフォームは改善の余地があると思われる。ゴルフやテニスのユニフォームが、そのまま普段着としても使用できるものが多いのに対して、卓球のド派手なユニフォームを普段着として着るのは勇気がいるものだ。

どんな年齢の人でも、どんな場面でも着られるような落ち着いたシンプルなデザインのユニフォームや、部屋に飾っておけるようなしゃれたデザインの卓球用具がもっと増えることを願わずにはいられない。江戸時代の日本人のファッションはシンプルでもっと落ち着いた地味な色を好んでいた。卓球のユニフォームも蛍光色や鋭角的な模様(個人的にはミズノのギザギザラインはいかがなものかと思う)ではなく、普段着としても着られるような、自己主張の少ない模様、渋い和風の色合いのものをもっと出してほしいものである。