前記事「卓球のマナーとエチケット」は主に国際大会でのマナーとエチケットについて取り上げたのだが、私たちがふだん実践している、あるいは目にするエチケットについても書いてみたい。

先日、ゴルフが趣味の年配の方と打ったときのことである。その方が回転のかかった厳しいボールを無理にスマッシュしてミスしたので、「練習でイチかバチかの強打を打つのはマナー違反ですよ」とコメントしたところ、「えっ?そうなんですか」と驚かれた。卓球のエチケットというのは、挨拶をすることや、ボールを率先して拾いに行くことだけだと思っていたというのである。そういう目に見えるエチケットではなく、練習では、目に見えないエチケットもあると告げると、その方は部活で多少卓球をなさっていたので、すぐに納得してくれた。

「ゴルフでも最近マナーの悪い若いもんが多いんですよ。前にまだ人がいるのに打ち始めたり、芝生をえぐっても埋め直さなかったり、バンカーで打ったら、そのままにして行ってしまったり。しかし、卓球のマナーは少しわかりにくいですね」

それで「目に見えないエチケット」について少し話し合った。

そういえば、ネット上でのエチケットはネチケットとして明文化されている(といっても「ウィルスを仕込まない」といった当然すぎることが多い)が、卓球のエチケットというのは明文化されていないように思う。ルールブックに「バッドマナーの例」としてラケットを放り投げることや、相手を威嚇すること、ボールをフェンスの外に蹴りだすことなどが挙げてあったが、そんなことは当然すぎることで、実際にやる人は非常識な人だけだ。そうではなく、ふだんの練習でのエチケットというのがクラブを運営する上で大きな問題となる。卓球は相手と1対1でするスポーツなので、相手のエチケットが悪ければ、場合によってはクラブが解散に追い込まれることさえある。私が以前通っていた教室を辞めたのもエチケットが原因だった。上下関係の厳しい部活等では上の人間がしっかりしていれば、問題は起こらない。悪いところを先輩が率直に指摘するからだ。レベルの高い部活なら、先輩のボールを一定のコースに返せないと―ほんの20センチ程ずれても怒られ、相手にされなくなるという。しかしそういう技術的な問題ではなく、もっと内面的なエチケットが問題なのだ。

しかし「エチケットやマナーが悪い」というのはなかなか言いづらいものだ。人によって気にするレベルが違い、ある打ち方や行為がとても気になる人もいれば、気にしない人もいる。例えば、落ちたボールを足でとることを不快に感じる人もいれば、効率がいいから気にしない(屈むと腰が痛くなる)という人もいる。

ともあれ、私の考える練習における「目に見えないエチケット」の原則というのはシンプルなものだ。「相手の練習にもなり、自分の練習にもなることをする」というだけである。挨拶や表情・態度などは目に見えるエチケットだが、目に見えないエチケットを知らない人が多い。社会人になってから卓球を始めた方、卓球を始めて日の浅い方はこういう目に見えないエチケットを知らない方が多い気がする。自分の好きなようにガムシャラに打ってくる方もいる。

相手の練習にもなり、自分の練習にもなることをする」という原則に悖る行為とは具体的にどういうことだろうか。

相手が取りにくいボールを打つ
基本練習でサイドを切るボールを打ったり、横回転や下回転を混ぜて打ったりすることがこれに該当する。基本練習ではボールの感覚を取り戻すために調整しているのに、イレギュラーな回転のかかったボールを打つのはエチケットが悪いと思われる。同様に突然スマッシュを打ってくるような人もエチケットが悪いと思われる。初級者の中には強いボールを打てば、中上級者は喜ぶと思っている人がときどきいる。
あるいは3球目攻撃の練習をするとき、2球目を非常に厳しくつっついたり、厳しいコースに打ったりするのはエチケットが悪いと思う。
一定のコースに返球できないのも取りにくいが、これは意図的にやっているわけではないので、しかたがないと思う。

ミスをする(ラリーが続かない)
ミスというものは意図的にやっているわけではないが、これを頻発するというのは問題である。自分のレベル以上のボールを打とうとしているからミスを頻発するのであって、自分の身の丈にあったボールを打って、できるだけミスを防がなければならない。いくら上手な人でもミスしたボールは取りようがない。したがってミスされるとそこでラリーが止まってしまい、お互いの練習にならない。オールの練習で3往復ぐらいラリーが続いてミスするならお互いに練習になると思うが、2球目で強打を打ってネットミスというのでは、相手はうんざりするだろう。上に挙げた例にもあったが、イチかバチかの強打を打ってミスを連発する人はエチケットが悪いと思われる。

常に先に打ちに来る
「サービスを出したほうがドライブを打つ練習をしましょう」といっているのに、少しでも甘い球がくると、レシーバーが先に打とうとする。こういう人の相手をすると、落ち着いてドライブの練習ができない。ツッツキの練習をしながら、「さぁ、次のボールを打とう!」と思ったら、その前に打たれてしまうからである。

これを逆から見て、どんなことをすればエチケットがいいかというと、

相手の打ちやすいボールを返す
基本練習では深いボールを打たず、打ちごろのボールを打ちやすいコースに送ってやる。ドライブを打つときも決めに行くのではなく、8割ぐらいの力で打って続けるようにする。

お互いにミスをしないように努める
ラリーを続けることを最優先し、相手が体勢を崩しながら打ったら、次は相手が打てるようなゆるいボールを送ってやる。こちらが体勢を崩して緩いボールを返したら、追い打ちとばかりに強打で応じる人がいるが、非常に気分が悪い。

相手に打たせてやる
相手にばかり打たせていたら、自分の練習にならないが、できるだけ相手に打たせてやり、相手の練習になるよう心がける。

以上はあくまでも私の考える「目に見えないエチケット」だが、上級者には別のエチケットがあるかもしれない。上級者の方で「私はこんな人はエチケットが悪いと思う」というご意見を持つ方がいたら、コメントしていただけるとありがたい。

【追記】2013/6/23
先週、gmailのデザインが大幅に変更された。それにともない、障害が発生していたようである。
私の送ったメールが届かなかった、あるいは私にメールを送ったのに返信がないという報告を数名の方からいただいた。
もし、私のgmailにメールをくださって、返信がない方がいらっしゃったら、ご一報おねがいします。

【追記2】
一つ忘れていたので付け加えたい。
指導を求める人」はエチケットが悪いと思う。
こちらは自分の練習をしたいのに、相手が「バックハンドはどう打てばいいですか」的な一言で答えにくい質問をしてこちらの練習時間を奪おうとする人がいる。これではむこうの練習ばかり で、こちらの練習にはならない。