しろのたつみ



卓球について考えたこと、
気づいたこと(レベル低いです)
を中心に中級者の視点から綴っていきます。




試合

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コメントについて:
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加藤美優選手の不思議な強さ――世界卓球2019 日本代表選考会から

ジャパントップ12卓球大会。
今年は土曜と日曜に分かれていて、土曜は世界卓球シングルスの代表選考会を兼ねており、男女8名がトーナメントで世界卓球シングルスの代表権を争う。代表男女各5名のうち、各4名はすでに決定しており、土曜日のトーナメントの優勝者は最後の代表に選ばれる。日曜はすでに代表に決まった「あがり」の選手たち同士のトーナメント戦。
選手のレベルは日曜のほうが高いかもしれないが、私は土曜のほうが絶対におもしろいと思う。最後のチャンスに賭けた選手たちが必死になって戦うのだから、熱いドラマが繰り広げられるにちがいない。

以下、ネタバレが含まれるので、観ていない人はご注意を。

仙台アリーナ
会場はカメイアリーナ仙台。この選手たちの巨大な表示は一体どうやっているのだろう?

今回私が注目したのは加藤美優選手。

2000年生まれの伊藤美誠選手、平野美宇選手、早田ひな選手の1学年上である。加藤選手は国際大会でも常に一定の戦績を残してはいるが、上記3人の「黄金世代」の影に隠れてあまり注目されていない。その加藤選手が準決勝で今乗りに乗っている早田選手を大逆転で破って決勝に進出したのである。

あの中国選手にも警戒されている早田選手を破るなんて一体どんなすごいプレーをするのだろうか。

紹介文では「高速バックハンドは世界トップレベル」となっている。

しかし、卓球を見ていると、失礼ながらあまり強そうには見えない。「高速バックハンド」というなら、「黄金世代」の3人のほうがずっと速いし、加藤選手のバックハンドは「高速」というより、むしろふつうよりちょっと遅いように見える。が、なぜか国際大会でも安定して勝てるし、1月の全日本卓球では石川佳純がベスト16、平野美宇はランクにさえ入れなかったなかで、ベスト8まで勝ち進んでいる。

準決勝で早田選手を破った試合後の平野早矢香選手のコメントは「早田選手は最後まで加藤選手のサーブに悩まされた」ということである。あの、そのへんの女子中学生がやっているような、鋭さのないフォアしゃがみ込みサーブのことだろうか。

サーブに限らず、加藤選手のプレーは見た目がなんだかプロらしくない。

ボールが高くて遅い。しかし相手に打ち抜かれることもあまりなく、なぜか相手のほうが先にミスする。

フットワークを使ってガンガン打ちまくるということもなく、逆に相手に振り回されて、よく姿勢を崩しながらラリーをしている。

崩れた姿勢


崩れた姿勢04

一体加藤選手の強さの秘密とはなんなのだろうか。準決勝・決勝での平野早矢香氏の解説から彼女の強さを探ってみたいと思う。





「両者ともにラリー戦、非常に上手い選手で…」
「(森・加藤)両選手ともラリー戦を得意とするタイプなので…」


加藤選手はラリーが得意らしい。といってもあまりラリーが続くことは少なく、だいたい3~5球目で終わってしまう印象がある。


「先ほど森選手の形になっていてもミスをして点数につながらなかった…なぜかというと加藤選手、非常にブロックが堅いんですよね。ですから『(打っても)返ってくるんじゃないか…」っていうプレッシャーっていうのもあるので、普段よりも1テンポ早いタイミングで打ってしまってミスということがありましたね。」(決勝3ゲーム目)
「加藤選手は準決勝、早田選手のボールに対しても距離をとってでもしっかりと粘りづよく返しましたからね」(決勝3ゲーム後のコメント)
「(守備力が高いというアナのコメントに対して)加藤選手、ミスが少ないですね。」
「自分でも決まった!と思うボールを返されるのは心理的にどうなんですか?」「プレッシャーかかりますね。」



ラリーが得意というのは、ブロックが上手く、相手の攻撃をミスせずに何本も止めてくるということを言っているようだ。加藤選手のほうが連続攻撃をしてラリーを続けるのではなく、相手のほうが攻撃してくるのを加藤選手が止めまくって最後にカウンター、あるいは相手のミスでポイントを取るというスタイルなのだ。


「(加藤選手は)ラリーの中でもちょっとしたチャンスは、やっぱ攻めてきますね?」「そうなんですよね。つないでいる、入れているだけであれば、森選手ももっといろいろな形が作れるんですけど、少しでも甘くなってしまうと、高い打点で攻め込まれるというプレッシャーもありますので、…バック半面のラリーっていうのはほとんど加藤選手が優位な形になっていますね。」


そして単にブロックが上手いというだけでなく、甘いボールを攻撃してくるというスタイルなのである。バック対バックのラリーで相手が先にミスするのを待ち、あるいはゆるいドライブなら反対にドライブで反撃に出る。なんだかカットマンのようだ。

そしてもう一つの強さはサーブである。


「加藤選手のサーブはですね、少しボールの高さはあるんですけど、ゆっくりと、そして回転量が強いので、回転の判断ミスをしてしまったりだとか少しタイミング的に取りにくいところがあるので…」(準決勝 対早田戦6ゲーム目でのコメント)
「加藤選手のサーブですね、少しアップダウンのようなサーブ、これに対して少し森選手、迷いがあるかなという…」
「加藤選手もサーブの展開を…いろいろなサーブを使いながら早く…どんどんどんどん展開してきますね。」



サーブが分かりにくいだけでなく、サーブ後の3球目も上手いのだという。


「加藤選手は試合を進めるのが非常にうまいなと、相手を見ながら、サーブレシーブの展開、コースの展開を変えていますので、そういった意味では加藤選手らしさが出ていますよね。」
「準決勝とは全く違うサーブの組み立てをしていますので、相手に応じてという…(以下、森さくら選手の絶叫でかき消される)」(5ゲーム目)


サーブからの配球、ポイントの組み立てというところが多彩で相手に容易に強いボールを打たせないということだろうか。相手の強く打てないところへボールを送り、返球コースを限定してブロックで待っている。だからブロックが堅いということになるのではないか。ただ、いくらブロックが堅くても、相手に好きに打たせていたらたまったものではない。相手のドライブ対ブロックやドライブ対ドライブのボールにも秘密があるのである。


「加藤選手は威力のあるボールだけでなく、緩いボール、回転系のボール、回転の少し少ないボールが非常に球質の変化をつけてますね。」
「加藤選手はバック対バックのラリーでもワンコースだけではなくて、少しずつコースをずらしながらミドルまで使いながらコース取りを決めていますよね。」


加藤選手のラリーというのは単に同じように返球しているだけではなく、回転をかけたり、あるいはかけなかったり、速かったり遅かったり、コースも少しずつずらしているために相手の連続攻撃を防ぎ、ミスを誘うことができるようなのである。まるで下回転とナックルを自在に操るカットマンのようなスタイルではないか。


「距離のとり方がしっかりしてますよ、動きもいいですしね。」


この「距離」とはどういうことだろう?


「加藤選手、距離の調整の仕方ですね、非常に上手いですねぇ。」「この僅かな動きなんですよねぇ。」「はい、細かい動きがボールの球質っていうものに大きく影響しますからね。」(長いバック対バックのラリーを制した後のコメント)

よくわからないのだが、下の図のようにラリー中に台との距離を微妙に変えて、あるときは下がりながら遅いボールを返球したり、あるときは前に進みながら速いボールを返球したりすることかなと理解した。

細かい動き01

細かい動き02


「(レシーブが浮いているというアナのコメントに対して)森選手の攻撃のボールに対して予め予測をして距離をとって、角度を出して、ということが正しくできていますので、いつのまにかラリーも五分の形に持って来られてしまっているような、そんな感じですね。」
「一歩前に出たり、下がったりなんですが、あの一歩が重要なんですか?」「そうですね。同じようなコースに見えると思うんですけども、少し短かかったり、少し長かったりと、ボールの長短ですよね、そういった変化がありますので、その辺りの調整が加藤選手、非常に上手いんですね。…ボールの質としては、全部が速いボール、強いボールじゃないんですけど、非常に安定感がありますよね。」



たとえボールを浮かせてしまっても、すぐに後ろに下がり、距離をとっているのでそうそう打ち抜かれない。しかも微妙にボールの深さやスピードをを変えているので、いつのまにか攻守が逆転し、加藤選手のほうが攻撃に転じるということができるようだ。


「あまり短いボールにこだわらず、長くツッツキをして、ドライブするならどうぞ、それを待ってますよという形で…(以下、森選手の絶叫にかき消される)。」(森選手に6-6で追いつかれて)


相手にしてみたら、どう対応してくるのか分からないし、球質が一定していないから、一本調子で攻め続けることはできない。サーブも分かりにくいし、コースも意外性のあるところを突いてくる…加藤選手の卓球というのは相手の嫌がるところを的確に突いてくるような卓球のようだ。


「タイミングの部分に関しましても…変化をうまく使いながら、相手のミスを誘ったり、ときにはスマッシュで攻めていったりということで、本当に加藤選手らしさが出ていると言えますね。」(1ゲーム後のコメント)
「バック対バックのラリーはこの二人のスタイルですと、避けられない部分だと思いますので、…変化の部分では加藤選手は一つ上を行っているのかと感じますね。」


卓球の強さといえば、たとえばタイミングが早かったり、ボールのスピードが速かったり、回転がかかっていたりといった「分かりやすい」強さだが、加藤選手の強さというのは速いボールや前陣でのピッチの早さというのを捨てて、相手がふだん練習で受ける機会の少ない、最適なタイミングやコースをずらされた不規則な卓球、いわば「変化卓球」なのではないだろうか。

そのようなことを実際の試合の中で実現するには試合中の相手の観察が欠かせない。

「一本ブロック、そして次のボール、フォアドライブということで、相手をよくみてますねぇ。」
「(加藤選手は)冷静に相手選手を見ながらですね、なおかつ自分のプレーを出し切るということに徹しているように感じますね。」

加藤美優

「加藤選手は試合を進めるのが非常にうまいなと、相手を見ながら、サーブレシーブの展開、コースの展開を変えていますので、そういった意味では加藤選手らしさが出ていますよね。」


加藤選手は試合中に相手の位置をできるだけ確認しながら、自分の次のボールをどう打つかを決めているらしい。これは非常に神経を使うプレーになるだろう。サーブからの展開をいろいろ変えて相手の出方を見ながら、ボールの長短、強弱などを変え、こちらから攻撃できるチャンスを作っていく。加藤選手の卓球は辛抱強く頭を使い、粘ってボールを拾う卓球、いわば「根性卓球」と言えるのではないか。

そして決勝の森選手を破って緊張感から解放された加藤選手。

泣き顔
ふだんあまり感情を出さない加藤選手が試合後に見せた表情。

この表情を見て思わず私ももらい泣きしてしまった。苦しかったなぁ。がんばったなぁ。早田選手との準決勝は首の皮一枚だったもんなぁ。

これだけのドラマを見せられたからには、世界選手権での加藤美優選手の活躍を祈らないわけにはいかない。がんばれ、加藤選手!

私の観た全日本卓球2019――最終日女子

今更ながら、全日本を観た感想などを書いてみようと思う。大阪開催なので、実際に見に行きたいと思ったのだが、あいにく都合が悪く、見に行けなかった。来年こそはと思っている。

先週末からの3連休で時間的な余裕があったので、シングルスの準決勝から決勝までまとめて視聴してみた。男子解説の河野正和氏も悪くはないのだが、やはり宮崎義仁氏の解説は圧倒的におもしろい。プレーを見ればそこから選手の考えを鋭く見抜き、技術や戦術についてのコメント、さらには国際的な視野からの比較や古いエピソードなど、いくらでもおもしろいうんちくが湧き出てくる。そこからわれわれ一般愛好家も多くのことを学ぶことができる。

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宮崎氏「今、ちょっと悩んだまんま入ってしまったっていう感じですかね。」

渡辺アナ「迷ったまま入ってしまった、そこをもう少し詳しく教えていただけないでしょうか。」

宮崎氏「チキータをやらせようか、それともチキータをやらせないでロング(サーブ)から勝負しようか、どちらかなんですよ。チキータもやらせなかったですよね?ミドル前に(サーブが)行ったら、チキータがやってくるんですけど、バック前に行ったから、チキータこないんですよ。レシーブはチキータが来ない。でもロング(サーブ)でもないから、早田もどんなレシーブが来るか分かんないで(サーブを)出してるんですよ。だから、明確にチキータさせるか、ロングサーブを出してロング戦に持っていくか、どっちかはっきりした戦術じゃなかったんですよね。ただ単にチキータやられたくないな、でもロング(サーブ)も打たれたくないな、どうしようっていう戦術のない…迷ったままサービスを出してしまったという感じですね。」

バック前サーブ
バック前に下回転っぽいショートサーブを出した早田ひな選手

打ちミス
それを伊藤選手はうっかり浮かせてしまい、突如チャンスボールが訪れるが早田選手はスマッシュミス

はたから見たら、早田選手がなんてことのないボールを打ちミスしてしまったように見える。しかし、上述の宮崎氏の解説を聞いていれば、これは起こるべくして起こったミスだということが分かる。

「どんなレシーブが来るか分かんないで(サーブを)出してる」

というのは、私がしょっちゅうやっていることである。それでどんなレシーブが来るか分からないから、判断が遅れてミスを連発する。しかし、こんなレベルの高い試合でも同様のことが起こっているというのに驚かされた。宮崎氏が「世界トップレベル」と称賛する早田選手の実力をもってしても不意に訪れるチャンスボールをミスしてしまうというのはどういうことか?つまり私のような草卓球レベルでは「必ミス」となるだろう。私のような低いレベルのプレーヤーはどんなレシーブが来るか分かっていてもミスするのだから、どんなレシーブが来るか分からないようなサーブは絶対に出してはいけないということになる。

勉強になるなぁ。

回り込みバック

女子の試合ではフォア側に回り込んでバックでサイドを切るレシーブがよく見られた。バック側に回り込んでフォアを打つというのは私のレベルでもよくあることだが、フォア側に回り込んでバックを打つというのはほとんどない。私もこれからは台上でこういうプレーを取り入れてみたいと思う。

反対の山の準決勝は森さくら選手対木原美悠選手。
木原選手は平野美宇選手を破り、佐藤瞳選手をフルセットの大逆転で破る金星を重ねてここまで勝ち上ってきた。対佐藤選手の試合を見たが、木原選手は佐藤選手のカットの変化が分からず、1、2ゲームを見た時点でもう木原選手が勝ち目はないなと思ってみるのを止めたのだが、なんとツッツキ合戦に持ち込んで促進ルールで木原選手が勝利したのだという。その戦術を授けたのがエリートアカデミーの劉楽コーチなのだという。

劉コーチ
木原美悠選手の劉楽コーチ

手ごわい森選手に対して木原選手はフォア前サーブからのミドル攻めという戦術で危なげなく森選手からゲームを奪っていく。ゲーム間に劉コーチが木原選手にまくしたてるようにアドバイスをしている。
その劉コーチのアドバイスについて福原愛氏は次のように述べている。

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福原氏「的確なアドバイスだと思います。本当にしっかりと、こういうボールに対してはこういう対応をしなさいっていうアドバイスだったので、選手としてはとてもやりやすい環境を作ってくれたと思います。」

宮崎氏「(劉コーチは)日本に来てそんなに経験が長くないんですけど、すぐ日本語を覚えたんですよ。選手のために毎日勉強してテレビを日本語で見て…ほんとに努力家です。…(木原選手は)指示通りやってますね。指示通りやれる選手と、全く指示を聞かない選手っているんですけどね。木原の場合は指示通りやれる選手なのかもしれませんね。」
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実力的には木原選手が他の強豪選手を圧倒していたという印象はない。木原選手が倒してきた選手たちにも決勝に進出するチャンスがあったと思う。とすると、この劉コーチの授けた戦術こそが木原選手を決勝まで導いたと言えるかもしれない。


木原美悠選手のバックハンドの安定感と技術がすごい。バックハンドってあんなにコンパクトでいいんだ…

https://youtu.be/WECbVzKrRWs?t=37


コーチングについて最後にRallysの宮崎氏へのインタビューが興味深かったので紹介したい。
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宮崎氏「例えば、ミックスダブルス決勝では、張本は森薗の質の高いサーブをうまくチキータできていなかった。それに気づいてやっとストップに切り替えた。まずそのタイミングも遅かったんですよね。
そしてストップに切り替えた1本目は得点になる。その次のボール、張本はもう1本ストップしてしまった。伊藤美誠がストップを待っているにも関わらず。なので待ち構えていた伊藤に強打され失点してしまった。この場面ではもう一回チキータか長いツッツキレシーブをミドルかバックに送る方がよかった。」

ーーだから先を読んだ実況解説ができるんですね。恐れ入りました。ちなみに今みたいなお話は選手たちに直接アドバイスされるのでしょうか?

宮崎氏「伝えないですよ。全て選手が自分で考えて、感じてやるもの。選手は自分でやります。人に教えられてやるなんてありえないですし、それだと遅いんですよね。
「選手をどうやって指導するんですか?」と良く聞かれますが、教えない。教えたこともないし教えようようとも思わない。」
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指導というと、なんらかの「正解」を指導者が生徒に「教える」ものだと誤解されがちだが、自分で考えられるようになったら、「正解」は自分で探し出さなければならない。国際レベルの選手ともなれば、中高生でもこのような思考を身につけておかなければならないだろう。

「先生が言ったことを生徒はちゃんとメモして忘れないようにする」

というのは自分で考えることができない子供に対する教育だと思う。レベルの高い選手には考え方や枠組みを教えるだけでいいのだ。選手一人一人が宮崎氏の上記のような試合の見方を参考にして自分自身で相手の弱点を探し出せるようにならなければ世界で勝つことなどできるわけがない。私は宮崎氏の指導方針を聞いて、現在の日本代表の未来は明るいと感じた。

俺たちのT(Tochigi)リーグ――ローカル卓球の魅力

ブルガリアオープンに続いてチェコオープン。全中も熱い戦いが繰り広げられているという。そこへアジア競技大会も続き、卓球の大会が目白押しである。

youtubeを見ていると、これらの大会の動画がたくさんアップされている。
有名選手の試合は、たしかにレベルは高いのかもしれないが、どれも同じような試合なので、それほど見たいという気にならない。10年以上前は国際大会の動画はそれほど多くなかったが、今のようにひっきりなしに国際大会の動画がアップされていると、誰か特別にひいきの選手でもいなければ、毎試合チェックしようという気にはならない。ITTFの実況のアダム氏などはいつもハイテンションで、”Unbelievable shot !!”などと必死に叫んでいるが、ああいう仕事も大変だなと思う。

日本人選手の動画のダイジェスト版を2本見て、「もうこれ以上はいいや」とyoutubeから去ろうとしていたとき、一本の動画が目に留まった。

「栃木県8位対決」

という動画である。どうやら栃木県の高校生の8位と、社会人の8位の試合(※コメント欄参照)ということらしい。
栃木県8位…ってどのぐらいのレベルなんだろう?栃木って卓球が盛んだったっけ?

栃木県は、女子は平野早矢香氏の出身地だし、レベルが高いイメージがあるが、男子はどうなんだろう?
そもそも、栃木県というのがどこにあるか、みなさんはご存じだろうか(関西の人はかなりの確率で位置を間違って覚えている)。

北関東
東京や神奈川は言うに及ばす、埼玉や千葉といった南関東の位置関係は知られているが、北関東は「どっちが群馬でどっちが栃木だっけ?」という人が多い。鳥のような形のAが群馬県(鶴舞う形の群馬県)で、ジャガイモのような形のBが栃木県である。

「めしだ会長」という人がこの動画のアップ主で、栃木県社会人ランキング?で8位の人らしい。

棒立ち

坊主頭で「無職」。第一印象はちょっと怖い人だった。

片面ペンドラの戦型だが、前傾姿勢で必死にフットワークを使って回り込むというスタイルではない。というか回り込みはあまりせず、ツッツキや遅いループドライブでまず相手に打たせてからラリーに持ち込むというスタイルのようだ。


https://www.youtube.com/watch?v=D-Pd-1Q6G0I

国際大会の動画の後にこの動画を見たら、そのレベルの差に驚いた。

めしだ氏の我流のフォームと、ゆっくりとした高いボール。それを今風のスタイルのシェークの男の子が低い速いボールで攻める。

サーブ→ツッツキ→ツッツキ(浮かす)→スマッシュ(ネットミス)

あっ、これは私たちがよく知っている卓球である。トップ選手たちの無駄のないフォームと低くて速いボールの応酬ではなく、空振りもすれば、打ちミスもする、そういう私たちの身近にある卓球である。

レシーブ失敗
回転を見誤り、ボールを浮かしてしまうめしだ氏。

動画の字幕でユーモアを交えながら戦術の説明などをしてくれている。

「サーブが甘くなってきたので、先にブロックさせてからオープンになったクロスを狙っていきます」
「(相手の)ロングサーブにも慣れてきたのでコースを散らしてレシーブ。なるべく強いボールは打たせないようにミス待ち」

この人、見かけによらず上手いぞ…。

なんとか先手を取って積極的に攻撃し、力で相手をねじ伏せるような卓球は強そうに見えるが、めしだ氏は自分からガンガン振っていくというタイプではなく、とりあえずミスせずボールを入れて、チャンスが来るのを待ち強打、あるいは相手のミスを誘って点を取るという戦い方である。しかも片面ペン。一見するとあまり強そうには見えない。

こういう戦い方で今風の若い人のイケイケ卓球といい勝負ができるというのは、相当頭を使った、繊細な卓球をしなければならないはずだ。

まず、サーブがうまい。よく切れていて深くて速いので相手が強打しにくい。さらにバックのブロックが固く、ミスが少ない。またボールのコントロールがすばらしい。そして台上での棒立ち姿勢からは想像できないほど、ラリーになると前後に大きく動く。そして時には豪快なフォアドライブ。

馬林ばりの回り込み
馬琳ばりの回り込みドライブを放つめしだ氏。

さすが栃木県8位である。私よりもはるかに強い。



https://www.youtube.com/watch?v=x2zW8uaKFjM

次の対戦は栃木県では知らない人はいないというムラムラムーラン氏との対戦。なお、ツイッターでの名前はペロペロペロンチョだそうである。
「ムラムラ?」「ペロンチョ!?」
一体どんな卓球をするのか。どうしても見てみたい。

 
https://www.youtube.com/watch?v=myzGCvqkUrg

さらにいくつか動画を見てみたのだが、どれもおもしろかった。

たとえば、栃木県の高校生の全国大会予選というのはどのぐらいレベルが高いのだろうか。
みな、整ったフォームでダイナミックな卓球をしているに違いない。おそらく、めしだ氏の動画のプレーよりもレベルが高いと思われる。しかし、私が観戦するなら、レベルの高い高校生の卓球よりも、めしだ氏(と、その仲間たち)の卓球を選ぶだろう。めしだ氏(と、その仲間たち)の卓球には個性がある。もっと見たいと思わせる何かがある。

上級者、ひいては国内トップ選手の試合というのはレベルが高すぎて、どこがどうすごいのかさっぱり分からない。見ていてあまり参考にならない。一方、めしだ氏の動画は、プレーのレベルは高いものの、手の届かない高さではない。私たち初中級者が見ても、いろいろ参考になる。

「あっ、今のミスは打点がちょっと低かったな」
「おぉ、ああいう戦い方をすれば強打者に強打を打たせずに主導権を握れるのか」
「こういうミス、私もよくやるなぁ」

自分よりレベルの低いプレーを見るのはあまりおもしろくないが、自分の手の届くレベルのうまい人のプレーを見るのはすごくおもしろい。

Tリーグ・プレミアの開幕が近づいてきて、Tリーグに話題が集まってきているが、そういう高いレベルの卓球だけでなく、地域の社会人の個性的な卓球も非常におもしろいと思う。こういう草の根ユーチューバーがもっと増えてくれるとありがたい。

哀愁のピアノ

なお、めしだ氏は現在国家試験の準備のため、動画投稿を控えると宣言している。無事合格して、動画投稿を再開してほしいものである。


卓球香港オープン2018を見た感想など

今日は卓球ができないので、しかたなくうちで試合の鑑賞である。
香港オープンで連日熱戦が繰り広げられているが、その感想などを書いてみたいと思う。
単なるおしゃべりであり、技術的なものでもなく、オチもないことを予め断っておく。

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昨日の女子準決勝の伊藤美誠選手とワン・マンユ選手の試合がすごかった。
伊藤選手はフォア面でのスマッシュ、バック表のドライブ、チキータ、フォアサイドからのバックフリックなど多彩なプレーを披露してくれた。表でドライブをかけるというプレーが多くの表ソフトユーザーに希望を与えたのではないかと思う。

前半はワン選手が伊藤選手のプレーに全く対応できず、一方的な試合になるかと思ったらワン選手が盛り返し、最終ゲームへ。

mima smiling
苦しい場面でもコーチとのアイコンタクトで笑顔を見せる伊藤美誠選手

残念ながらゲームオール、デュースで伊藤選手は敗れてしまったが、先月は劉詩文選手を破り、昨日は若手筆頭のワン選手をここまで追い詰めるとはすごいの一言に尽きる。伊藤選手の強さはいまや中国の一軍を脅かすほどになっているのだろうか。

そして男子でも意外な展開になった。
張継科選手と吉村真晴選手との試合である。いくら衰えたとはいえ、セルボール時代には圧倒的な強さを誇った元世界チャンピオンである。先の世界卓球で代表落ちした真晴選手に勝機はあるのか?

という予想を覆し、吉村選手は強かった。大きなラリーでも張選手に打ち負けていない。中・後陣からのボールのスピードや安定感が張選手と比べても遜色なかった。

真晴選手はなんとか張選手を下し、準決勝へ。2年前のリオ・オリンピックの頃なら考えられなかったことだ。

しかし、準決勝で韓国のチョ・スンミン選手にあと一歩のところで敗れてしまう。このチョ選手というのはいろいろな大会で日本代表を苦しめている実力者である。いいところまでは行くのだが、ワールドツアーで優勝を飾ったという記憶はない。今大会ではもしかしたら優勝しそうな勢いである。

そして反対の山では吉村和弘選手が兄と同様韓国のイム・ジョンフン選手と対戦する。
和弘選手はバックハンドが強い。身体の外側に外れたボール?でもバックハンドで強く返球できる。

backside外側
こんなボールに対してもバックハンドが安定している

外側2
このバックハンドも苦しい体勢ながらよく返球した

バックハンドにロングボールを打たれて、バックハンドドライブで強打しようという場面で、ボールが目測よりも10センチほど外側に来てしまった場合、急に力が入らなくなるのは私だけだろうか。
フォアハンドなら、予想よりも10センチほど外側に逸れたボールは、少し腕を伸ばしてそこそこの力で打つことができるのだが、バックハンドではそうはいかない。振って当てるのが精いっぱいで、下手をすると振ることすらできない。体幹の幅から10センチほどインパクトの位置がバック側に出てしまうと、バックハンドが強く打てなくなってしまう。和弘選手のプレーを観て、バックハンドでしっかり打つためにはポジショニングをしっかりして、体幹の幅からインパクト位置が出ないようにしなければならないと思った。

そしてしっかりした体勢で打ったバックハンドはもちろん威力抜群である。
バック強打



フルゲームジュースに及んだこの死闘を制したのは和弘選手だった。

いよいよ決勝である。

兄、真晴選手のかたき討ちである。

ところでこのイム選手のコーチはなんとも憎めない人で、実況やカメラも気になってしかたがなかったようだ。
親子?
顔がイム選手とよく似ているので親子かもと思った

ゆらゆら
ずっとイスを前後にゆ~らゆら

ゆらゆら2
緊迫した場面でもリラックス

逆転されて
逆転されて「あらら」とばかりに笑顔

こんな様子を放映されて、「緊張感が足りん!」と協会の偉い人から叱られなければいいのだが。

そして決勝戦。

両選手ともに過度に緊張していて反応が遅れたり、凡ミスを連発したりしている。
チョ選手は弱気を振り払うかのように積極的に攻め、和弘選手は後手に回ることが多かった。

強烈なフォアドライブ
威力のあるドライブを打つチョ選手

和弘選手は自分が攻めるよりも、できるだけミスをしない卓球でチョ選手に挑んだようだ。
相手に先に攻撃させる消極的な卓球ではサンドバックになってしまいそうだが、和弘選手は単に相手に先手を取らせたのではなく、相手の打ちにくいところに鋭いツッツキを送ったり、エンドラインぎりぎりの深いボールを返球したりしてチョ選手のミスを誘ったようだ。

私も草卓球レベルで経験があるが、こういう緊張する場面ではいつもどおりのショットが全く打てない。それどころか手が震えてサーブ・レシーブも満足にできなくなったことがある。ジリ貧なので強気に無理に攻めようとしても、ミスを連発してしまう。こういうときには和弘選手がやったように、強気に攻める卓球ではなく、ミスをしない卓球をするという戦術がいいのかもしれないと思った。安定して低いツッツキやストップ、コースを突いたフリックなどが打てるように練習しなければなぁと思った。



禍福はあざなえる縄のごとし。
今大会で勝利の美酒に酔った選手が安心して伸び悩んでしまったり、勝利を逃した選手が臥薪嘗胆をした結果、東京オリンピックで好成績を残せるということもあるかもしれない。


嘆き
絶好球をミスして天を仰ぐチョ選手

世界卓球2018 観戦ガイド――卓球をあまり知らない人のために

WTC-2018

口上

このGWに世界卓球がスウェーデンで開かれている。現在予選リーグが進行中である。本戦は女子が5/2から、男子が5/3から6日まで。

今大会の日本男子チームの試合は予選からかなりアツい。卓球人ならもちろん、非卓球人にもこのおもしろさを是非知ってほしいと思い、私なりに観戦ガイドを書いてみようと思った。できるだけシンプルに書きたいのだが、つい情報が多くなってしまった。

前記事「卓球の見方、楽しみ方」で非卓球人の卓球についての疑問に答えてみたので、卓球をあまり知らない方はこちらもご参照いただきたい。



世界卓球とは
正式名称は世界卓球選手権。卓球の国際大会の中で最も権威のある大会。卓球選手の多くは世界卓球かオリンピックでメダルを取ることを目標にしている人が多い。

個人戦と団体戦が交互に毎年行われ、今大会は団体戦。ダブルの試合はなく、すべてシングルの試合。国同士の対戦はシングル(3ゲーム先取)の5試合が行われ、3試合を先取した国が勝利。団体戦は各試合、5名の選手の中から3名の選手が出場できる(2名はベンチ)。組み合わせは次のようになる。

A--X
B--Y
C--Z
A--Y
B--X

AB(あるいはXY)の2名の選手が2回出場し、C(あるいはZ)の選手が1回出場する。際立って強い選手が2人いれば、残りの選手が弱くてもチームは勝てる。しかし、際立って強い選手が1人と、かなり強い選手が1人か2人というチームが多い。



各国の強さ
日本は50~60年代にかけて団体優勝を数多くなしとげたが、80~90年代に低迷。メダルに届かなくなった。しかし00年代から現在に至るまで男女ともにメダルに手が届くようになってきた。前回のクァラ・ルンプールの大会では男女ともに銀メダル。

現在の各国の強さを私なりに示すと以下のようになる(あくまで主観)。

男子
(甲)中国


(乙)日本 ドイツ 韓国
(丙)イギリス フランス 香港 台湾 
(丁)ブラジル インド ポルトガル等

中国が圧倒的に強い。次のグループに日本がつけているが、中国以外の国々はそれほど実力差がないので、コンディション次第では(丙)(丁)のグループが(乙)のグループに勝つ下剋上も十分ありうる。しかし、中国と(乙)の間にはかなり差があり、偶然が何度も重なり、運がよくないと、中国には勝てない気がする。

女子
(甲)中国

(乙)日本
(丙)香港 台湾 北朝鮮 シンガポール 
(丁)韓国 ドイツ オーストリア オランダ等

中国が強いのはもちろんだが、日本も中国の背中に手が届くような位置にいる。が、(乙)(丙)間の差もあまりないので、日本が実力を出しきれない場合は(丙)のグループに負けることもありうる。
逆に日本選手がみな調子がよく、中国選手が極度の緊張や故障などで本来の実力が出せない場合、日本が中国に勝つこともありうるのではないか。

非常に権威のある大会なので、選手はいつも以上に緊張しており、ふだんの実力が出せないこともよくある。また、今大会の水谷選手のように故障を抱えている場合もあり、例年、格下が格上を倒すケースもあるのだが、中国選手に限って言えば、大きな大会では格下の選手にめったに負けない。リオ・オリンピックで水谷選手が中国選手を破ったのは、その稀な例外である(それでも日本は1-3で中国に敗北)。運や調子が悪くても、とりあえず勝てるぐらいの実力差が中国選手とそれ以外の国の選手との間にはある。


どうやって観るか
現地に行かず、試合を観る方法としては、テレビとネットがある。ただし、ネットでは日本選手のライブ中継は行われない(Paraviというサイトでネット中継をするらしいが、有料かもしれない)。試合の翌日に録画をyoutubeで観られるのみである。結果がわかった上で観戦するのはおもしろさ半減なので、ぜひテレビで観てほしい。

テレビ東京系列(あるいはBSジャパン) 放送スケジュール

ネット上の過去の試合動画 テレビ東京卓球チャンネル

ネットの動画は数分のダイジェスト版と20~50分ほどの完全版がある。テレビ東京の動画は専門家の解説があり、分かりやすいので、オススメである。

テレビ東京が世界卓球の放映権を買っていることに対して「テレビ東京のせいでネットで生中継が観られない」と批判的な人がいるが、私は「テレビ東京のおかげでGWにテレビで卓球が観られる」という立場である。人によって意見が異なる。


出場選手
各選手についての私の個人的な見立てなので、主観が多分に含まれているが、無味乾燥なデータよりは分かりやすいと思う。なお、現在の世界ランキングは、新システムに移行した直後で、実際の実力を反映していないため、あえて記さなかった。掲載順は私の現在の評価順である。

日本代表

男子
水谷隼  選手:
28歳。総合力では世界でもトップレベル。そうそう負けないが、今大会では腰を痛めているので本来の実力が発揮できないおそれも。

張本智和 選手:
14歳。ポテンシャルは世界有数。特にバックハンドの強さに定評がある。日本では強いが、経験不足のためか世界ではときどき負ける。

丹羽孝希 選手:
23歳。サーブと前陣での早いプレーが持ち味。調子に波があり(あるいは相性で試合が左右されがちで)、格下にあっけなく負けるときもあるが、調子(あるいは相性)が良いときは大物食いをする。

松平健太 選手:
27歳。芸能人はだしのイケメン。天才的なセンスを持つが、最近はこれといった結果を残せていない。

大島祐哉 選手:
24歳。イケメン+ポテンシャル。運動能力の高さで評価が高いが、現在プレースタイルを改革中で、最近はよく負けている。

女子
石川佳純 選手:
25歳。去年は「2000年トリオ」に押されていたが、今年はより強くなったように感じる。実力と安定感は世界でもトップレベル。今大会では中国選手に勝つ可能性が一番高そう。

伊藤美誠 選手:
18歳。意外性のあるプレーを持ち味とする現在の全日本選手権保持者。今大会でも調子がよさそう。スマッシュ(こすらないで叩くショット)が得意。

平野美宇 選手:
18歳。去年の前半に全日本優勝、中国トップを3人破ってのアジア大会優勝という快挙を成し遂げたが、去年の後半は低迷。今大会では調子がよさそう。前陣での高速連続ドライブ(こすって回転をかけるショット)が得意。

早田ひな 選手:
18歳。中国選手にも対抗できるパワフルなプレーが持ち味。実力的には伊藤、平野選手よりやや劣るが、今大会では両選手に劣らないような、いいプレーを見せてくれた。「2000年トリオ」の一人。

長崎美柚 選手:
15歳。次代を担うとされている有望な選手。実力的には上の4選手より劣るため、今大会ではおそらく出場の機会はないだろう。
































…しかし、女子日本代表の顔面偏差値の高さが気になる。

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ダヴィンチ・ニュース「朝起きたらブスだった」より




メンタルタフネス――卓球ドイツオープン2018 U-21でのドラマ

前記事「卓球は人なり」があまりにも中途半端な内容だったので、後味が悪い。口直しにもう1本、記事を書いてみた。

ドイツオープンが開催中だが、スウェーデンのモアガルド選手の試合に注目している。昨年末の世界ジュニアで中国の若手二人を破り、優勝まであと一歩のところまで行った才能が今大会でどう開花するか興味があったのである。

U21の準決勝 安宰賢(AN Jaehyun)選手との試合で、モアガルド選手の個性的なプレーの数々に唸らされた。



打点の早いすごいピッチのラリーを展開していく一方で、ミスが少なく随所に独創的なプレーを繰り出してくる。バックハンドのブロックでコースを巧みに打ち分けるのだが、それを拾いまくる安選手も大したものだ。

モアガルド選手はやっとのことで安選手を下し、決勝へ。

決勝の相手はフランスのSEYFRIED Joe(読みはセイフリード? シーフリード?)選手。聞いたことがない選手だ。
SEYFRIED01
たぶん十代だと思うのだが、日本人の感覚からすると、20代後半に見える。

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フェンスを軽々とまたぐ足の長さ。


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176センチの方博選手が子供に見えるほどの長身。190センチ近くありそうだ。



モアガルド選手との決勝戦。しょっぱなのサーブでフォルトをとられる。

serve

インパクトが顔で隠れていたようだ。
気を取り直してもう一度サーブを出すも、またもやフォールト。

SEYFRIED
フランス語が分からないので、雰囲気から察すると、
「オウオウ、オッサン、俺のサーブのどこがフォールトやねん!」
のようなことを言っているのではないかと想像される。こんな大男に詰め寄られたら、さぞ怖いことだろう。しかし審判は一切抗議を受け付けない。

そして試合は大幅に中断。やがてSEYFRIED選手が引き下がり、試合再開されるも、その後もしばしばフォールトをとられ、SEYFRIED選手はどうしても納得が行かない様子。また審判のところへ抗議に行く。一般的な日本人なら「私のせいであんまり中断したらみんなに迷惑だし…」のように考えてしまうだろうが、SEYFRIED選手は一向に気にしていないようだ。ずっと審判と交渉している。

いつまで経っても再開しないので、うんざりしたモアガルド選手が「ほら!バックサーブなら絶対フォールトにならないよ」と、たぶんスウェーデン語で提案し、

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「これなら大丈夫! ね?審判さん。」

SEYFRIED選手もその提案を受け入れ、バックサーブで試合を再開することになったようだ。

SEYFRIED選手は気も強いが、卓球も強かった。バックサーブからの展開にあまり慣れていなかったようで、ちょっとミスも多かったが、フォアドライブがすさまじく速く、威力がありそうだ。そりゃあ190センチの大男が全力でフォアドライブを打ったら、とんでもないボールが出るだろう。バックサーブからの展開はモアガルド選手のほうもあまり慣れていなかったようで、準決勝の生き生きとしたプレーはすっかり影を潜めてしまった。

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自分が提案したことに責任を感じたからか、モアガルド選手も義理でバックサーブをしばらく出し続けた。モアガルド選手も自分のバックサーブからの展開はやりにくそうだ。

モアガルド選手は結局最後まで調子が出ずに敗れてしまう。

この試合を観て、モアガルド選手のフェアプレーに喝采を送りたい一方で、付き合いで自分までバックサーブを出すという甘さに15歳という年齢を感じないわけにはいかなかった。

プロの試合というのは、相手の弱みにつけこむぐらいの非情さが必要である。水泳で金メダルをとった北島康介選手は「相手をぶっ殺してやる」というぐらいの気持ちでオリンピックに臨んだとインタビューで答えている(前記事「水谷隼選手の面魂」)。

松本薫
オリンピックの柔道で金メダルを取った松本薫選手も、入場のときは鬼気迫る表情だった。口のなかで何かブツブツ言っているのをテレビで見ていたのだが、おそらく「この野郎…絶対にぶっ殺してやる」といったことをつぶやいていたのだと思われる。こういうメンタルにならないとオリンピックで金メダルなんてとれっこない(たぶん)

モアガルド選手も試合中は「このフランス野郎!てめぇがどんなサーブ出そうが結局俺に喰われる運命なんだよ!絶望の淵に突き落としてやる」ぐらいの気持ちで相手を完膚なきまでに叩きのめしてほしかった。紳士に戻るのは試合後で十分である。

その点、SEYFRIED選手の試合にかける意気込みはプロだった。自分のせいで相手にも迷惑をかけたなどという遠慮や萎縮を全く感じさせず、堂々と戦い、勝利を勝ち取った。このドイツオープンのU21では木造選手や及川選手が出場していたが、上位進出はならなかった。彼らだって相当高いポテンシャルを持っていると思うのだが、いい結果が出せないのは、もしかしたらメンタルのタフさが足りないのではないか(根拠のない推測に過ぎないが)

モアガルド選手は非情に徹しきれずに勝てる(はずの)試合を落としてしまった。残念というほかはない。

ただ、私はこれまでの試合を観て、モアガルド選手の振る舞いや態度にそれほど好感を持っていなかったのだが、この試合を観て、モアガルド選手のことがちょっと好きになってしまった。

前人未到の全日本V10――平成29年度全日本卓球男子決勝を観て

フランス革命というと、パリ市民が革命を起こし、王制を打倒して王や貴族を殺し、人民の政府を樹立したとされているが、教科書の歴史の記述は不思議なことにいつもパリ市民の視点である。王や貴族の視点からなされることはない。

水谷選手は前人未到の全日本10回目の優勝を目指して、期待の新人、張本智和選手を決勝で迎え撃つことになった。10回の優勝は、かの斎藤清選手でさえなしえなかった、日本卓球史上かつてない偉業である。水谷選手は日本卓球史に新たな1ページを書き加えることができるだろうか。

この歴史の変わる瞬間を私はお世話になっているNさんとテレビで見ることにした。

思えば、水谷選手は私が卓球を再開したころからずっと日本卓球に君臨してきた絶対的な王者であり、私にとっての「アイドル」である。

autograph
サインだって持っている

全日本では吉村選手に敗れ、丹羽選手に敗れはしたものの、そのたびに自身の卓球を見つめなおし、一回り大きくなって再び王座に帰ってきた。こんな水谷選手は私にとっての卓球のシンボルである(「面を開いてドライブは間違い?」)。

私は水谷選手の勝利を確信してNさんのお宅を訪れた。

「準決勝、観たか?もう張本の優勝は決まったようなもんや」

「張本選手はそんなに強かったですか?」

私は残念ながら準決勝を観そびれてしまったのだが、どうやら張本選手の成長は著しいものらしい。

「もう打ち方からして違うわ。普通、フォアドライブいうたら、下から斜め上にこすって打つやろ?張本はミート打ちみたいに後ろから前にぶっつけた瞬間にこすってるんや。こすらなければそのままミート打ちにもなるんや。打点が水谷よりもずっと早いし、スピードもすごい。水谷の下から上にこすり上げるドライブじゃ張本の新しい卓球には勝てへん。」

だが、水谷選手だってドイツの世界選手権で張本選手に敗れてから手をこまぬいて待っていたわけではないだろう。それにフォアドライブが最新の打ち方だとしても、水谷選手には長年の経験がある。ボールのスピードでは劣るかもしれないが、コース取りや戦術で張本選手に自分の卓球をさせないにちがいない。

「バックショートも普通のショートと違う。前陣でラケットを上から下に落とすように弾くんや。水谷も最近は威力のあるバックハンドが振れるけど、ああいう前陣での弾くようなショートはもっとらへんと思うで」

いや、だから、打法で劣っていても、水谷選手には経験があるのである。あるいは「奥の手」があるに違いない。決勝までの対戦では追い詰められるようなこともなかったので、まだそれを出していないが、世界選手権での挫折から、水谷選手はさらに大きくなって帰ってきているはずなのである。世界選手権の対張本戦のような一方的な展開になるはずがない。

「おそらく、4-0か4-1で張本の勝ちやで」

「私は水谷選手が勝つと思いますよ。なんなら、ビールを1本賭けましょうか?」

さて、歴史はどのように動くのか。

まずは女子決勝である。

平野美宇選手対伊藤美誠選手。

これは伊藤選手に分があると、試合前から思っていた。平野選手はこれまで何度もフルゲームにもつれこみ、調子がイマイチのようである。リオ・オリンピックの屈辱の後、全日本優勝、アジア選手権優勝、世界選手権3位という輝かしい戦績を残し、スウェーデンでの世界選手権の日本代表にも内定している。リオの雪辱は成り、精神的に満足している。一方、伊藤選手は去年は調子が上がらず、さんざんの結果だったのが、最近ようやく安定して勝てるようになり、平野選手に差をつけられてしまったという意識から、巻き返しを図りたいと精神的に高い状態にある。さらにイケメンのコーチに成長した姿を見せたいという気持ちもあるといったら穿ちすぎか。

試合前の試し打ちの段階から、平野選手は凡ミスをしていた。試合が始まっても、サービスミスを連発し、いつもの平野選手の目の覚めるような連打はほとんど見られなかった。果たして、伊藤選手はほぼ一方的に平野選手に勝利した。圧倒していた。

おめでとう、伊藤選手。今度は平野選手が再び雪辱に燃える番である。

いよいよ、男子決勝が始まる。

1ゲーム目、張本選手が先手を取ってガンガン攻撃し、水谷選手は一方的に受けに回るという展開。これは去年のドイツでの世界選手権のときと同じ形である。何をしているんだ!水谷選手。ドイツの時から進歩がないぞ!まったく手も足も出ないまま、水谷選手は1ゲーム目を取られてしまった。しかし、1ゲーム目は相手の出方を見るためにいろいろなことを試していたのかもしれない。老獪な水谷選手ならありうる。

2ゲーム目。まさかの同じ展開。張本選手がまず先に攻撃し、水谷選手はやりたい放題やられてしまう。どうして張本選手はいつも先に攻撃できるんだろう。水谷選手は台上のボールから先に攻撃していかないと、張本選手を止められそうもない。水谷選手は張本選手のミドルを執拗に攻めるが、張本選手はそれを苦にせず攻撃し続ける。逆に水谷選手はバックハンドを攻められると、そこから攻撃に転じることができず、受け身一辺倒である。2ゲーム目も張本選手に取られてしまう。

3ゲーム目、水谷選手もジリ貧だと思ったのか、積極的に攻める。なんだ、やればできるじゃないか。もっと早い段階から、もっとリスキーに攻めてくれ!そして3ゲーム目は水谷選手がとる。

4ゲーム目、張本選手のペースでとられてしまう。どうして3ゲーム目のようにならないのか。このへんから、水谷選手の敗色が濃厚になってきた。張本選手の弱点なり、攻略法を水谷選手は1年間考えて、準備してきたはずである。しかし、張本選手はそれを上回る成長を見せたということなのだろうか。

5ゲーム目、しりに火が付いた水谷選手は、今まで見せたことのないすばらしいサーブを連発し、そこから張本選手を圧倒する。だが、ラリーになると、どうにも張本選手には敵わない。

「みっともない試合はできんと思うて、必死でがんばってるんやろな」

このゲームを取ってなんとか2ゲームを返したが、ひいき目に見ても、ここから逆転できるとは思えなかった。結果はみなさんご存じの通りである。

このとき、思い出したのは昔の作曲家が交響曲を9番目までしか完成させられなかったというジンクスである。ベートヴェンが「第九」を完成させた後、10番目の交響曲を残せず亡くなってしまう。ブルックナーやマーラーも同様に9番目までしか完成させられなかった。斎藤清選手の優勝も9回までだった(追記:8回のまちがいだった)。水谷選手ももしかして…。

いや、水谷選手はきっとこの敗戦を糧にさらに大きくなって戻ってくるはずだ。張本選手と切磋琢磨しながら、自身を進化させ、なんとか10回目の全日本優勝を成し遂げて、日本卓球史に新たなページを書き加えてほしい。私はその日をファンとして心待ちにしている。






卓球世界ジュニア2017を観た感想など

イタリアでの卓球の世界ジュニアが終わった。
張本智和選手、平野美宇選手、伊藤美誠選手、早田ひな選手ら主力選手を欠く中、団体戦は男女とも準優勝というまずまずの成績を上げたが、個人戦は今一つ結果が出せなかった。その中で一人気を吐いたのが加藤美憂選手だった。

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みうみまひなの華々しい活躍の陰に隠れてあまり目立たなかったが、最近メキメキと実力をつけている。日本選手が次々と敗れる中、準決勝まで勝ち残った。準決勝の相手は王曼昱Wang Manyu選手。体格的にも恵まれており、数々の国際大会で結果を残し、世界ジュニアのシングルスで14・15年の二年連続優勝を成し遂げている。実力的には中国の一軍に匹敵すると言える。こんな相手に勝ち目があるのだろうか?

ちょうど日曜の晩は余裕があったので、テレビ東京のネット中継を観てみた。
日本選手が決勝をかけて戦うということで、普段よりもずっと興味をもって観ることができた。

が、男子の試合が長引いていて、なかなか加藤選手の試合が始まらない。

男子の準決勝は牛冠凱選手とモアガドというスウェーデンの選手の対戦。
日本選手の試合ではないので、なんとなく流してみていたが、引き込まれてしまった。
モアガド選手のなんと個性的なプレー!

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レベルが高いので技術的なことはよく分からないが、モアガド選手のサービスがすごい。牛選手は何度もレシーブミスをしていた。そしてツッツキが早くて速い!台上もとても上手な選手のようだ。そして極めつけはバックハンドのプッシュ。あんな威力のあるプッシュを駆使する選手を見たことがない。あんなプレーにはさすがの中国選手も慣れていないようで、牛選手はなかなか優位に立てなかった。中国選手と同じスタイルで中国選手に挑戦するよりも、個性的なスタイルで戦った方が中国選手には効くのではないかと感じた。いい試合を見せてもらった。

そして加藤選手の試合が始まった。案の定、王曼昱選手の鋭いバックハンドが炸裂し、加藤選手は対応できない。ボールのスピードが違う。やはり実力差がありすぎ…あれ?意外に善戦しているぞ。あれよあれよという間に加藤選手は王選手に追いつき、投げ上げしゃがみ込みサーブが効いて、1ゲーム目を取ってしまった。一体何が起こったんだ?サーブが効いていたのは確かだが、バックハンドのラリーでも加藤選手は意外に得点していた。ボールのスピードは王選手のほうがずっと速い。しかし、加藤選手は王選手の強烈なバックハンドをしのぎ、逆に王選手のほうがミスしている。加藤選手がバックハンドに緩急をつけているのは分かった。それだけでなく素人には分からない回転の使い分けのようなものもあったのかもしれない。そして王選手は加藤選手の遅いボールのほうを嫌がっているように見えた。速いボールよりも遅いボールのほうが効く?

私のようなレベルの卓球では「ボールの速さ、あるいは回転量こそが正義」だが、もしかしたら私のレベルでもボールの遅さや回転量の少なさというのは使いようによっては効果的なのではないかと考えさせられる試合だった。上手な人がよく「思った以上にボールが伸びてこなくてやりにくい」と漏らすのを聞いたことがある。こちらもいい試合を見せてもらった。

【付記】
youtubeでライブ中継を観戦していた時、チャットというのを表示しながら観ていたのだが、これが意外に楽しかった。変なコメントが少なかったからか、まるで友人といっしょに観戦しているような気分になった。やっぱり試合観戦は一人で観るよりいっしょに観たほうが楽しい。ただ、映像とチャットに数秒ほどのタイムラグが発生していて、映像が遅れることがしばしばだった。それで次のポイントがどうなったか映像を観る前に分かってしまうのが改善点だったと思う。

みにいくつもりじゃなかった――卓球日本リーグ京都大会(2部リーグ)観戦記

本当は観に行くつもりじゃなかった。

会場で知っている人にバッタリ会ったりしたら、

「ホンマ卓球が大好きやねんなぁ」
「他にやることがないんやろなぁ」

などと思われてしまうからである。
土曜は朝は雨も降っていたし、どうしても観たい試合があったわけでもない。私にだってしなければならないことがたくさんあるのだ…。ただ、せっかく日本リーグが京都に来てくれたのに、盛り上げないでどうする!それでも卓球人か!という義の心が私を会場へと運んだのだった。当日券は1600円。前売りなら、コンビニで買えば1100円ほど。

さて、どんな準備をしたらいいのだろうか。ビデオカメラやお弁当を持っていくのは当然として、そうだ!飲み物を持っていかなくては。ブンデスリーガなどではビール片手に観戦などと聞いたことがあるが、ビール(っぽい飲み物)を買って飲みながら観戦するというのはいいかもしれない。でも、日本でそんなスタイルが許されるのだろうか…。もしビール(っぽい飲み物)を飲んで観戦していたら、私の前後左右3席分ぐらいは誰も座ろうとしないのではないだろうか。やっぱり麦茶にしよう(なお、会場でビールが売っていたので、ビールを飲みながらの観戦は問題ないようだ。1本400円だったが)。それから選手への差し入れというのもいいかもしれない。京都銘菓「阿闍梨餅」なんかを買っていったら喜ばれるかな。でも、「阿闍梨餅」は買える場所が限られている(本店かデパート)ので、10時にならないと買えない。それに選手たちはお菓子などの余分な糖分は禁止されているかもしれない。そもそも選手と接するチャンスがあるかどうかも分からない。ジャパンオープンのように選手席が観客席と別になっていて、差し入れなんかできる雰囲気じゃないかもしれない。まぁ、そういう条件の全てがクリアされたとしても、一体誰に差し入れを渡すのか?私は選手の誰かの熱心なファンというわけでもない。行き当たりばったりで、すれちがった選手に渡すというのも味気ない…差し入れはやめておこう(最終日の「ファンサービス」というイベントで選手にサインをもらえたりするチャンスがあるらしいと後で知った)

以前、神戸で行われたジャパンオープンで松平賢二選手が熱心な女性ファンからプレゼントをもらっているのを目撃した。私もひいきの選手を作らなければならないのだろうか。

よく野球やサッカーのファンはひいきの選手の背番号の入ったシャツを着たりしているが、卓球の場合はそういう熱狂的なファンというのは想像しにくい。もちろん好きな選手がいる人は少なくないだろう。しかし、用具はその選手と同じものを使い、その選手の試合をすべてチェックしているようなファンはあまりいないのではないか。私は国際試合なら、勝敗を気にするが、日本リーグでどのチームが勝つかということにはあまり興味がない。有名選手同士の対戦が観られたら、どちらが勝とうと、それで満足である。卓球のような「やる」スポーツと野球、バスケ、フィギュアスケートのような「観る」スポーツは、観客の求めるものが違うと思う。選手グッズなどよりも、用具やアパレルのバーゲンセールのほうが会場では人気があるのではないだろうか。

会場は京都市にあるハンナリーズアリーナ。昔は京都市体育館と呼んでいた。会場ではニッタクやジュウイック、ヤサカなどがシャツなどを売っていた。会場に着くと、2部の試合が行われていた。台は15台ほどあった。客の入りは400~500人といったところだろうか。なかなかの盛況である。これが午後になると、1部の試合がはじまり、500~700人ほど入っていただろうか。寂しい感じでは全然なかった。

2部といえど、当たり前だが、みんなメチャクチャ上手い。ほとんどがシェークで、大半がドライブ主戦型である。どの試合を観たらいいか分からない。男子は台から離れてすごいスピードのドライブを打ち合ったり、カウンターで鋭く攻めたりしている。目の前でMACHIDA BEATSという卓球教室の先生たちの女子チームの試合が行われていた。同じメチャクチャレベルの高い試合でも、男子の試合よりも、こちらのほうがとっつきやすい。観ていて少しは参考になりそうだ。男子の試合は私たち一般人のプレーとかけ離れていてあまり参考にならない。

それから次にどの試合を観よう?知らない選手ばかりである。

その中で目に止まったのがボッシュの藤岡選手である。
藤岡選手は非常にコンパクトなスイングで速いボールを打っていた。どうやったらあんなに小さなスイングで速いボールが出せるのだろう。男子選手のドライブは全身で跳び上がりながらフォアドライブを打つ選手も多く、打球後はバタンと足が鳴る人が多い。その中にあって藤岡選手は非常に静かに速いボールを打っていた。中高年は身体を大きく使ったドライブではなく、藤岡選手のようにコンパクトなスイングがいいに違いない。

このボッシュというチームはおもしろい。多くのチームがシェーク裏裏ドライブ型ばかりなのに対して、ボッシュは右ペン、左ペン、粒高(あるいは半粒)の選手もいて、バリエーションに富んでいる。がんばってほしいものである。

その後、ボッシュの右ペンの選手が藤ミレニアムの左ペンの選手と対戦していた。日ペン同士の対決である(後で確認したら、一方は中ペンだった)
藤ミレニアムの選手はあからさまにテキトーに試合をしている感じだった。チャンスボールが来ても、3~4割の力でフワッとしたドライブを打ってみたり、すぐに下がってロビングしてみたり。サーブはボールを受け取るそばから出していた。たぶんちゃんと身体を静止させず、相手も見ずにテキトーにサーブを出していたと思う。

が、ボッシュの選手を軽くあしらっていた。誰だ、あの選手は。名前は…李選手か。そういえば!

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元韓国代表のイ・ジョンウ選手だった。

日本リーグに参戦すると耳にしたことがあるが、2部だったとは。
それにしても元韓国代表と日本リーグ2部の選手というのはこれほどまでに差があるのかと驚いた。

この藤ミレニアムというチームもおもしろい。監督は中国人だし、いろいろなバックグラウンドの選手が集まっているようだ。

卓球エリートばかりではないチームというのは個人的に応援したい。

今回は日本リーグのレギュラーチームではないが、京都選抜という京都の大学生を中心にした今回限りのチームが2部に参戦していた。京都人としては、彼らの試合は見逃せない。

なんなんだ!あの美人は。
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マネージャーかもしれない。本当に選手だろうか?

日本リーグ女子

選手だった。

なんなら、彼女主演で卓球映画が1本撮れそうなかわいさである。あんなに美人だと、変なオジサンに声をかけられたり、しつこく付きまとわれたりしないだろうか。心配である。名前はあえて伏せておくことにしよう。

なんやかやで2部の試合もけっこう楽しめた。みんなレベルが高いので、強さという側面よりも、選手の個性や試合のバラエティーで楽しめた気がする。


インド人のための卓球リーグ――インド卓球リーグUTTを観て

マレーシアで行われている卓球リーグT2アジア太平洋卓球リーグ(APAC)に続き、インドでもアルティメット卓球リーグ(UTT)というのが始まった(「インドでプロリーグ…」)。
T2同様男女混成の団体戦で、有名選手としては以下の選手が出場している。

ピチフォード(イギリス)
ウー・ヤン(中国)
リー・ホチン(台湾)
フレイタス(ポルトガル)
キム・ソンイ(北朝鮮)
ウォン・チュンティン(香港)
モンテイロ(ポルトガル)
アルナ(ナイジェリア)
アポロニア(ポルトガル)
アチャンタ(インド)
ハン・イン(ドイツ)
P・ゾルヤ(ドイツ)

中でもウォン・チュンティン、フレイタス、ウー・ヤン、ハン・インは世界ランクも高く、注目である。

T2と比べていろいろ違いがあるようだ。
・T2よりもさらに時間が短く、1試合が3ゲームマッチで20分弱で終わる(2ゲーム先取しても、3ゲームまでやる)。
・チームの半分はインドの選手。
・観客が比較的多い(ブンデスリーグぐらい?)。

20分弱で3ゲームの試合というのは練習試合っぽくて、やる方もリラックスできるだろうし、観る方も楽である。
インド選手が多いのは、リーグの趣旨としてインド選手の育成があるからだ。
ノリのいい観客が多く、雰囲気を盛り上げているが、私はT2の静かな雰囲気のほうが好きだ。

出場する選手のレベルはT2のほうが高いが、それでも有名選手がたくさんいる。中でもペンホルダーのウォン・チュンティン(黄鎮廷 WONG Chun-Ting)選手の試合は個人的に注目している。

それで、ウォン・チュンティン選手の試合をいくつか観てみたのだが…

納得の行かない内容だった。


このSathiyan GNANASEKARANという無名の選手(世界ランク110位)が世界ランク8位のウォン選手を圧倒している(追記:現在、グナナセカラン選手は強豪選手として頭角を現している。私の見逸れだったようだ)。というか、GNANASEKARAN選手のほとんどの得点はウォン選手の凡ミスである。最後の3ゲーム目は申し訳程度にウォン選手が獲ったが、ウォン選手が本気でやっているとは思えない。


こちらのゴーシュ選手(世界ランク85位)との試合も、ウォン選手は自ら攻めていくことは少なく、まず相手に攻めさせるような試合展開が目立った。凡ミスも連発している。最後の最後で追い上げて、2-1でウォン選手が獲ったが、なんだか釈然としない。

世界ランクが実力を反映しているわけではないが、ウォン選手の実力なら、両選手とも3-0で獲れたのではなかろうか。なんだか試合を盛り上げるためにわざと3-0にならないように手ごころを加えているように思えてならない。



たぶんインドで最も強いアチャンタ選手Achanta Sharath KAMAL(世界ランク43位)との試合も、ウォン選手が1-2で負けている。

kamal

はじめに2ゲーム取らせておいて、最後のゲームはウォン選手が普通に獲った(3ゲーム目の序盤は9-4とアチャンタ選手を引き離している)という印象である。アチャンタ選手の2ゲーム目の最後のポイントはエッジでウォン選手のポイントだと思うのだが、誰も何も言わず、そのままアチャンタ選手のポイントになっている。
https://youtu.be/fDEjlld7x38?t=486

上のウォン選手の試合を見る限り、どれも茶番のように見える。

UTTはウォン選手のプレーだけは観たいと思っていた。しかし、もう観ることはないだろう。全ての試合を観たわけではないが、強い選手が本気を出していないというより、手を抜いているような印象が拭えないからだ。もし強い選手が本気を出して、インド選手を完膚なきまでに蹂躙してしまったら、インドの卓球が盛り上がらなくなるからいろいろ操作されているのかもしれない。T2リーグが世界中の観客をターゲットに発信されているのに対し、UTTは世界中の観客がターゲットのリーグというより、インド人によるインド人のための卓球リーグという印象を受けた。


卓球のT2リーグを観て

最近、ブログの更新が滞っている。書きたいと思うことはあるのだが、実生活でやらなければならないことが多いと、自ずから趣味のブログは後回しとなってしまう。

maxfire

「やる気ないときにおもしろく書いた文章より、やる気マックスファイヤーで書いた文章のほうが絶対におもしろいに決まってるでしょ!」

という意見も一面の真理だとは思うが、そうやって自分の中で機が熟するのを待っていたら、いつまでたってもブログの方には気が行かず、ブログを放置してしまいかねないので、無理にでも何か書いておこうと思う。

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この間、遅ればせながら卓球のT2リーグというのを初めてじっくり観てしまった。
そしてもっと観たいと思わせられた。

T2リーグというのはマレーシアで行われている新しい国際卓球リーグである。さまざまな国籍の選手が男女混成チームを作り、優勝を争うというものである。日本、ドイツをはじめ、韓国、台湾等の有名選手が多数出場している。中国は女子選手はトップ選手が出場しているが、男子トップ選手は参加していない。にもかかわらず、おもしろいと感じたのは我ながら意外だった。ワールドツアーなどの国際大会を観る機会は多いが、もっと観たいと思うことはまれだ。どれも同じような試合に見えるからだ。いくらレベルが高くても、私のような下手くそには国際大会レベルなら、どれも同じに見える。

T2リーグは従来の国際大会とはいろいろな点が違う。

テレ東の記事によると、

・「1ゲーム11点制は現行通りだが、デュースはなし。」
・「1試合24分の時間制限が設けられ、時間になった時点で得点数の高い選手が勝ちとなる。」
・「ボールボーイが配置され、テニスのように次から次へと選手にボールを渡す。」
・「ユニフォームは「アンダーアーマー」が支給。【中略】ブルーやグレーの単色のTシャツが採用されている。中にはノースリーブやタンクトップもあ」る。

試合の雰囲気がなんだか従来の国際大会とは違う。

水谷選手がツイッターで「負けても失うものはない」と言っていたように軽い練習のような和やかな雰囲気で試合ができるのは、見ているほうもリラックスできる。

そして1試合の時間が30分ほどというのもありがたい。

最近の相撲人気を観ても、やはり試合時間の短さは現代のスポーツ観戦に合っていると思う。テニスの2~3時間、クリケットの数日という試合時間は現代の観客には長過ぎる。卓球の1時間というのもまだ長いと思う。30分弱という時間制限は21世紀のスポーツとしては合格点ではないだろうか。

そしてテレ東の記事中では触れられていないが、注目すべきはカメラアングルである。従来の選手の後方斜め上からという最もスピード感のないアングルではなく、斜めや真上といった、いろいろなアングルで卓球のスピード感が十分に味わえる。

観客が少ししかいないというのも部活などの練習試合のような雰囲気で新鮮である。

いろいろな選手が出ているが、私は早田ひな選手以外の試合はあまり興味がない。

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早田選手のプレーをこれまであまり観るチャンスがなかったのと、早田選手が格上を相手に健闘し、どんどん成長しているのが見えるので、観ていて楽しいのである。

T2APACには丁寧選手や馮天薇選手のようなトップ選手も出場しているが、彼女たちの試合はもう十分に観てきたので、これ以上観たいとは思わない。

ふだんあまり観る機会がない選手もいることはいる。例えば

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今年のジャパン・オープン優勝の孫穎莎選手。

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元世界ジュニア女王の王曼昱選手。

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スウェーデンのエクホルム選手等など…

…もしかしたら、見た目のかわいさで早田選手を応援してしまうのかもしれない。

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男性的な女子選手が増えている中で早田選手のかわいさは際立っている。こういうミーハーな楽しみ方はキライだったのだが、T2で卓球の新たな楽しみ方を見出した気がする。

世間でよくアイドルグループの中のお気に入りのメンバー目当てにコンサートに行ったり、CDを買ったりする人がいるが、私も早田選手目当てにT2リーグを観続けてしまいそうである。卓球の強さよりも、人気投票や選手グッズの売上などで来季のメンバーを決めるというエンターテイメント卓球というのもあればいいなと思う。強さだけを競う卓球はオリンピックや世界卓球に任せておいて、T2は別の方向性を歩んでほしい。なんなら江加良監督やロスコフ監督に選手として出場してもらい、女子選手と対戦したりしてくれたら、ぜひ観てみたい(さすがに現役女子選手には勝てないと思うが)。私はもう卓球の強さだけでは卓球観戦を楽しめなくなってきた。

自分でこの記事を読み返してみて…気分が乗らないときに書くと、やはりふだんよりもさらにおもしろくない内容になってしまった気がする。

【追記】170719
この記事を書いてから、BabyMetalのことを思い出した。
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ヘビーメタルといえば、いかつい男たちの硬派な音楽というイメージがあるが、
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その中でどうして彼女たちは評価されたのか。BabyMetalはヘビーメタルとは相反するベクトルではないのか。

男らしさというものは、つきつめると、息苦しくなってくる。演者も男、客もみんな男。
男、男、男だらけ!そうなるとやっぱりカワイイ要素も少しはほしい…(前記事「女性の視点が…」)。そういう潜在的なニーズに応えたのがBabyMetalだったのではないだろうか。

人間業じゃない――世界卓球2017丹羽孝希選手の対戦を観て

昨日の世界卓球は熱かった。
テレビ東京とはいえ、ゴールデンタイムに丹羽孝希選手対オフチャロフ選手の対戦が放映されたからだ。

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https://youtu.be/grxIJYspDOk?list=PL7mDcpZ4nKGn8S7H3QEdxWqyC8zOPKeIp&t=594

非卓球人はこの対戦をどのように観たのだろうか。

丹羽選手がオフチャロフに勝利するのはかなり難しい。オフチャロフにガンガン強烈なドライブを打たれたら、丹羽選手はそのボールをほとんど止められず、一方的で観ていて盛り上がりに欠ける対戦になってしまうのではないか…。

そんな心配をみごと丹羽選手は吹き飛ばしてくれた!

丹羽選手のなんと強かったことか。
最近の私の丹羽選手のイメージは、世界ランク一桁の相手にはほとんど勝てないどころか、無名の格下相手にも、ともすると負けてしまうというものだった(前記事「私は丹羽孝希選手を…」)。

それがあの、対オフチャロフ戦の丹羽選手はどうだ。相手のドライブをカウンターでバシバシ決めていく。相手のカウンターをさらにカウンターで迎撃することも珍しくない。

「丹羽選手はいったいどうしてしまったのだろう?あんなの人間業じゃない!」

嬉しい誤算である。そしてオフチャロフも敵ながらあっぱれである。その丹羽選手の高速カウンターに対応してすばらしいラリーを演出し、一進一退の接戦を演じてみせた。こんなすごい試合を観て卓球に興味を持たない人がいるだろうか。

「卓球王国WEB」の速報では

「今大会、今までの中でのベストゲームではないか」
「丹羽の卓球は人間の反応速度の限界に挑むような速さだった」

とコメントされるようなハイレベルな対戦だった。

きっと日本中のお茶の間が丹羽選手のすさまじいプレーを固唾を呑んで見守っていたに違いない。

以前、グーグルトレンドで卓球がどの程度盛り上がったかを考察した(前記事「リオ・オリンピック 卓球競技の注目度」)が、今回もおそらく丹羽選手に日本中の注目が集まっていることだろう。もしかしたら、一夜明けた今晩のNHKニュース7のトップニュースかもしれない。

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あれ?

なんか思ったほど盛り上がっていない…。もしかしたら錦織圭選手のテニスの試合のほうが注目されていたかもしれない。どういうことなのだろうか。あんなすごい対戦に19時のテレビ放映という最高の舞台が用意されていたのにどうして丹羽ブームが湧き起こらないんだ!!

丹羽選手はすごい!すごすぎる!!

私がこんなに興奮しているのに世間の人はどうして無関心なんだ!あの中継は夢だったのだろうか?

「人間はどこだ!?」

私は昨晩は興奮冷めやらず、深夜2時からの準々決勝、対樊振東戦も観てしまった。翌日仕事があるのに。

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そしてまた驚かされた。
化物だ…。正真正銘の化物だ。
相手のドライブを丹羽選手がカウンターで返しても、樊選手からはなかなか点がとれない。カウンターを2連発以上打たないと、安心して得点できない。

https://youtu.be/1opLx213X5s?list=PL7mDcpZ4nKGn8S7H3QEdxWqyC8zOPKeIp&t=41

丹羽選手の卓球はすごい。人間離れしている。

が、樊振東選手は明らかにバケモンだということがよくわかった一日だった。

あーつかれた。今日は早めに寝よう。


世界卓球2017 張本選手の先手必勝スタイル――対水谷選手の試合を観て

世界卓球2017をテレビで観たいのだが、なかなか時間が合わず、インターネットで少しずつ観ている。平野美宇選手は今大会も期待できそうだし、吉村・石川ペアのミックスダブルはもっと期待できそうだ。まだ観ていないが、男子のダブルも金メダルがとれるかもしれない。

ここまでいくつか試合を観ていて、最も印象的だったのは水谷選手対張本選手のシングルの試合である。
まさか水谷選手があれほど手も足も出せずに負けるとは意外だった。

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技術的なこともあるとは思うのだが、あの試合ではそもそも心理的に水谷選手は普通ではなかったように思う。この試合の水谷選手は今年のヨーロッパチャンピオンズリーグのプレーオフで全勝優勝を果たした時のような自信に満ち溢れた水谷選手ではなかった(ように見えた)。13歳の子供に大の大人、それも今、乗りに乗っている自分が本気でぶつかっていっては大人げないという心理状態だったのかもしれない。私にはその気持ちがよく分かる(前記事「時至不行 反受其殃」)。それでなんとなくモサっとしたプレーになってしまい、張本選手に先手を取られてしまったのではないか(そのへんは本人にしか分からないから、推測の域を出ないが)。

水谷選手は序盤ではいろいろなサーブを出していたが、中盤からはサービスをずっとフォア前に短く出していたような印象がある。

フォア前SV

それを張本選手に回り込まれ、バックによるフリック強打か、あるいはストップで止められ、強烈なフリックを打たれたら、防戦一方。ストップで止められたら、水谷選手もなぜかストップで応じ、ストップ合戦が続いたところで張本選手に先に強烈なフリックを打たれる…という試合展開だったように見えた。

いつもの水谷選手の冴えや閃きがなく、同じ展開をずっと繰り返し、張本選手にやりたい放題させていたように見えた。

しかし、一方で、水谷選手が絶好調で、心理状態も万全だったとしても、もしかしたら負けてしまったのかもしれないという可能性もある。張本選手のあの台上でのフリック強打である。

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水谷選手はあのフリックを打たれまいと、張本選手のサーブに対して小さいストップで応じていたが、それがことごとくフリックされてしまう。ふつうフリックは浮いたチャンスボールでなければそれほど強烈なボールはこないはずだ。ストップのような下回転のボールに対しては安定性を重視して、ややスピードを落としたボールになるはずなのだが、張本選手のフリックは強烈すぎた。下回転がかかったストップを送っているにもかかわらず、取るのが精一杯の強烈なフリックを打ってくる。しかも成功率が非常に高い。なんとかブロックできても張本選手は早い打点で畳み掛けるように打ってくるので、水谷選手はサンドバック状態である。水谷選手が攻撃する前の3球目、あるいは4球目で強烈なフリックが来て、それを受けたら怒涛の連続攻撃にさらされるのだから、水谷選手の調子がよかろうが悪かろうが負けてしまうだろう。こういう「先手を取ったら、一方的に攻めまくって勝つ」というスタイルはアジア大会での平野美宇選手のプレーを思い出させる。

試合後に水谷選手はこのように振り返っている。

試合前にこうしようという作戦はあったけど、彼がことごとく対応してきて、自分のやることがなくなってしまった。サービス、レシーブで張本は優位に立ったし、ぼくは得意のサービス、レシーブで点を取れなかったのが敗因。(『卓球王国』速報より)

張本選手のサービスとレシーブがよかったことと、水谷選手のサービスとレシーブが通用しなかったことが敗因という分析である。

サービスとレシーブだけで体勢が決してしまうということだろうか。私はもっと心理的なものに原因を求めたい。が、私の見立てが外れていて、心理的にも水谷選手は充実した状態だったとして、あのように負けたとしたらどうだろう?

卓球では先手を取ったほうが有利とはいうものの、レベルの高い試合では、必ずしも先手を取ればポイントを取れるというわけではなく、「後の先」で、相手に先に打たせておいて、ブロックで厳しく返球したり、カウンターで返したりして、先手を渡した方にも十分に形成を逆転できる余地がある。

しかし、張本選手(あるいは平野選手)のように強打(あるいは厳しいコース)で先手を取ったらそのまま前陣でミスなく攻め続けて、相手に主導権を渡さないというスタイルでは、後手に回ったら挽回できるチャンスもない。この強烈なフリックから攻めきるというのは新しいスタイルでこれから主流になっていくかもしれない。そうすると、今までの戦術は通用しなくなり、新しい戦術やスタイルが生み出されていくのかもしれない。

…などということを考えて、おおけなくも想像をたくましくしてしまったが、上級者から見たら、的外れでちゃんちゃらおかしい考察かもしれないので、このへんで擱筆しようと思う。

とにかく、日本選手、ガンバレ!

東京オープン2017のペンホルダーの選手【紹介のみ】

去年も東京オープン(正式名称は「TOKYO OPEN 2017 第69回東京卓球選手権大会」)を観戦に出かけたが、今年は最終日を観戦した。ペンホルダーの選手をビデオ撮影したので紹介したい。

入場待ち

卓球東京オープンを知らない人のために簡単に紹介すると、

・毎年3月の初旬(今年は3/1~5)の5日間に行われる。
・場所は千駄ヶ谷駅前の東京体育館。
・レベルは上は日本代表に準ずる選手まで出場。海外からの出場も少し。韓国からの出場が多い(去年は世界ジュニアチャンピオンの張禹珍選手も出場)。
・個人戦(ダブルも)のみ。混合はなし。一般のレベルの他にカデット~90歳代までの幅広い年齢別のカテゴリーあり。
・入場料は一日あたり1000円(中高生は500円)。一度出ても再入場可。
・去年は4日めに観戦に行ったが、3階席はまばらだったものの、2階席は半分以上埋まっていた。
・ビデオ撮影可。

最終日ではなく、一日前のほうが多くの選手が残っている可能性が高いので、4日めに行きたかったが、都合が悪く、最終日の観戦になった。タイムテーブルをみると、16時ごろに一般とジュニアのシングルの決勝があるが、その時間まではいられなかったので、一般男子シングルの準々決勝が終わった13時頃に会場を後にした。

最終日までにペンホルダーの加藤由行選手、松下大星選手、松村夏海選手が敗退。最終日に残っている有名なペンホルダーの選手は宋恵佳選手、温馨選手だった。
宋選手はビデオに撮った。

宋恵佳(中国電力) 対 成本綾海(同志社大学)
https://youtu.be/Vz3Xp0hhR4U


宋恵佳(中国電力) 対 椛澤かえ(エクセディ)
https://youtu.be/2U5l1PpaPUo

宋選手はボールはそれほど速くないものの、安定性が高く、コースが厳しい印象である。

カデットでは麦進琳選手(東京学館浦安中)が最終日に残っていた。

麦進琳(千葉県) 対 玉井嵩大(北海道)
https://youtu.be/vqT6d74-sOE

ジュニアでは佐藤弘毅選手(明徳義塾)がいた。フォアドライブの威力が凄まじかった。フルセット・デュースの激戦だった。佐藤選手はストップなどをあまり使わず、豪打で打ち抜くスタイル。

佐藤弘毅(明徳義塾) 対 吉田俊暢(専修大北上高)
https://youtu.be/yb0RrzFGMzs

ペンホルダーではないが、アツい対戦として印象的だったのは月舘駿介選手(日大豊山高)対 柏友貴選手(関西高)の試合だった。こちらもフルセット・デュースの接戦。
https://youtu.be/GgXV7Yu97NQ



押して参る――こわい卓球の話

先日、地域の大会に出場したのだが、強い人に当たって自分の卓球を全くさせてもらえなかった。
対戦相手のTさんは物腰が柔らかく、みんなに愛されるキャラなのだが、卓球は怖かった。

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一方、後日、中高生と練習試合をさせてもらう機会もあった。
とてもきれいなフォームで切れたカットや速いドライブを打ってくるのだが、彼らの卓球はあまり怖くなかった。この違いが一体どこから来るのかを考察してみたい(非常に低いレベルの反省で恐縮である)

まず、Tさんはサービスが怖い。対角線上の角ギリギリに低くて速いロングサービスを送ってくる。そうかと思うと、今度は同じフォームでストレートに切れた速いロングサービス。これも台の角ギリギリに入ることが多い。その一方でやっぱり同じフォームからネット際にショートサービスが来る。私はその日は裏面バックハンドがちっとも入らず、バックにロングサービスが来たら、裏面でうまくレシーブできる自信がなかった。そこで少し台から離れて回り込んでレシーブしてやろうかとも思ったのだが、ロングサービスのスピードが速かったので、なかなかチャンスがつかめない。回り込めるかどうかの判断は一瞬である。そうやってロングサービスを警戒していると、今度はショートサービスである。私は腕を伸ばしきってだらしない、当てるだけのレシーブをしなければならなかった。
Tさんがサービスを出すときは、どこに来るか分からず、非常に不安な気分になる。

一方、中高生と試合をした時は、サービスのスピードがそれほど速くはない上に台のエンドギリギリの深いボールはほとんど来なかった。ロングサービスの落点は無難に台から20センチは内側である。回転はよくかかっているのだが、スピードが普通だったので、落ち着いてレシーブできた。相手のサービスを待っているときも、相手が打つ直前に大体どの辺にボールが来るか分かった。

サービスが良ければそのポイントの大勢が決まってしまうことも珍しくないというのは常々感じていたことなので、それは想定内だった。しかし、サービスの後の台上での鍔迫り合いは想定外だった。

Tさんは台上も怖い。こちらがサービスを出したときのTさんのレシーブはガンガン押してくる。ツッツキだったら、軽く押すのではなく、ガンと押してくる。台上のボールのスピードが速い。速いと言っても一発で抜かれるほどではないのだが、ふだんの練習でゆっくりしたツッツキのスピードに慣れている私は、テンポが合わず、差し込まれてしまう。その結果、私は弱々しく返球してしまったり、あるいは少し浮いたボールを送ってしまうことが多く、そのボールをガンとスマッシュされる。Tさんは浮いたボールなら台上でも積極的にスマッシュを打ってくる。ミスが少ない。遅いボールや浮いたボールは簡単に打たれてしまうから、こちらも台上で低くて速いボールを打たなければならない。

中高生と試合をしたときは私がいつも練習しているようなゆっくりとした台上の展開である。台上ではあたかも「休戦協定」が結ばれているかのごとく、台からボールが出るまではお互いに積極的な攻撃に出ない。フリックなどは来ないし、ツッツキも軽く押すだけのゆっくりしたボールである。そして台からボールが出てはじめて「戦闘開始」である。が、こちらも「打ってくる」と心の準備ができているためにやや下がって相手の攻撃に備えている。ドライブのスピードは速いものの、前中陣からのボールだし、遅い打点で、コースも鋭くないので、安心してブロックできる。スマッシュはほとんど来ない。

上手な人同士の試合で、台上が終わり、ラリー戦が始まって、スピードの速い派手なボールが飛び交うのを見ると、すごいなと思うけれど、実は台上の段階で戦闘は始まっていたのだ。台上でできるだけスピードの速いボールを送り、相手をつまらせて、こちらがガーンと強打するという展開を作らなければいけなかったのに、私は迂闊にも台上の段階ではまだ本格的な戦闘が始まっていないとばかりにのんびり構えていたわけである。

上手な人と試合をすると、いろいろ勉強になる。

これからは台上の段階から攻める気マンマンで、ツッツキ、プッシュのボールスピードを高めて攻めの姿勢で臨み、フリックも積極的に使っていく、軽く当てるだけのショットは打たない、といった怖い卓球――速い攻めの卓球を目指さなくては。

【追記】170302
後になって思い出したが、Tさんはツッツキでガンと押してくるだけでなく、こちらが中途半端にバックにドライブを打つと、それを単にブロックするだけでなく、ガンとプッシュしてくる。強烈なボールでなければ、台上だけでなく、ラリーで守備に回ったときでも基本的に押してくるような印象を受けた。
それで題名を「台上での鍔迫り合い」から「押して参る」に改題した。

サムソノフ選手の卓球――リオ・オリンピック男子シングルス3位決定戦を観て

リオ・オリンピック卓球準決勝。
馬龍選手対水谷隼選手の試合は、4-2で惜しくも水谷選手が敗れた。



しかし、敗れたとはいうものの、あの馬龍選手から2ゲームを奪った実力は称賛に値する。去年までの水谷選手からは考えられなかったパフォーマンスで、試合後半は「もしかしたら」という場面もなかったわけではない。前記事「ジャパンオープン2016の水谷選手の新境地」で述べたように世界最強の馬龍選手に対しても水谷選手は手の届くところまで来ているように感じる。少なくとも全くチャンスがなかったわけではない。



それにしても馬龍選手の強さはすさまじい。ふつうの選手なら2発も打てば決まるボールが4発、5発打たなければ決まらない。ミスが少ない。

そして今日の3位決定戦のサムソノフ選手である。
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朝からテレビに釘付けだった。

非卓球人のためにコメントすると、サムソノフ選手は20年ぐらい世界のトップで活躍している息の長い選手(97年の世界選手権準優勝、98年ヨーロッパ選手権優勝)で30代になってからも安定して世界ランキング10位前後を維持している。世界ランキング1ケタというのは、国際大会で入賞できるチャンスがある実力である。また、人格的にも優れていて、フェアプレー賞を受賞したこともある。尊敬すべき偉大な選手である。プレースタイルは無理な攻めはしない、ブロックが固いという安定性重視の選手である。


過去の松平健太選手との対戦。この試合もしびれた。

水谷選手が普段通りの実力を出せれば十分勝てる選手である。ただ、オリンピックなので普段通りの実力を発揮するのは難しい。

そのような対戦で、1ゲーム目は水谷選手が危なげなく先取したが、次第にサムソノフ選手がじりじりと点差を詰めていく展開となった。水谷選手が馬龍戦で見せた果敢な攻めが発揮できればサムソノフ選手には余裕で勝てるはずだった。しかし、なかなか軽く勝たせてくれない。サムソノフ選手は年齢的にも体格的にも俊敏に動くスタイルではない。ボールもコースも馬龍選手に比べれば遅いし、厳しくない。守備が固いといっても、馬龍選手のようにエースボールを何本もミスなく返し、あまつさえカウンターで反撃に転じるといった強さはない。ふつうのエースボールを2本も打てばポイントが決まるはずだが、決まらない。なぜか。水谷選手がチャンスボールを何度もミスしていたからだ。試合中盤でのサムソノフ選手の得点源は大部分が水谷選手の打ちミスだったのだ。

水谷選手も安定性やミスの少なさという点では非常にレベルの高い選手のはずなのに、ここぞという決定打であっけなくミスを連発している。これはどういうことなのだろうか。

馬龍選手と比べてボールスピードや回転量のギャップが激しいのかもしれない。前日?に強烈な馬龍選手のボールを受けていたためにサムソノフ選手のボールにうまく合わなかったのかもしれない。

水谷選手のある打ちミスに対して解説の松下浩二氏が次のようなことを述べた(文言は正確ではない)。

“水谷選手はあと1歩踏み込みが足りないですね。サムソノフ選手のさきほどのボールは少し浅かったので、もっと踏み込まないとミスしますね”

もしかしてサムソノフ選手は意図的にボールを遅くしたり、台上の短いボールを浅くしたりして、巧みに相手のタイミングを外しているのかもしれない。

トップ選手なのだから、どんなボールも厳しく、速く飛んでくるのがふつうである。サムソノフ選手ももちろん明らかに甘いボールは返さないはずだ。しかし、厳しいことは厳しいのだが、通常の選手の返すボールよりも意図的に少しだけ甘くしたり、遅くしたりといった緩急をつけているのではないだろうか。私の憶測にすぎないので、当たっているかどうかの保証はないが、世界のトップで20年ほども戦ってきたのだから、当然いろいろな駆け引きを知っているはずである。オリンピックという晴れの舞台であるにしても、あの水谷選手が試合の中盤であれほど打ちミスを連発するのは、緊張のせいだけではないような気がする。サムソノフ選手は相手の打球感覚を敏感に察して、相手がちょうど打ちやすいスピードのボールよりもほんの少し遅く、弱く、相手にボールを送ってミスを誘っていたのではないか。

こういう卓球というのは、われわれ中高年がもっと取り入れる必要があるだろう。若い人と同じように常に全力で打ち合っていたら体力が持たない。相手の感覚を上手に外すような卓球ができれば、格上の若い人に勝てるチャンスも出てくるかもしれない。



リオ・オリンピック 卓球観戦入門

福原愛選手と水谷隼選手がオリンピックで準決勝に進出した。

日本の卓球が世界の頂点に近づいている証である。

テレビでも福原選手の試合は何度も取り上げられており、日本中で卓球に対する関心が高まっているのを感じる。しかし、卓球についての基本的な知識を持たないまま、非卓球人が卓球のおもしろさを十分に理解できるのだろうか。

「細かいことは気にせず、観ていて楽しければいいじゃないか」

と思われる非卓球人も多いかと思われるが、卓球の基本的な技術や用具について知ることによって卓球選手の駆け引きが多少なりとも分かるようになり、卓球観戦の楽しみが増すのではないだろうか。

と考えて非卓球人のために卓球の基本的なことを記してみることにした。

【各国の卓球のレベル】
中国は60年代から安定して強いが、ここ10年ぐらいは男女ともに無敵と言えるほど強い。中国のトップ選手が国際大会で外国選手に負けるのは年に1~2回である。年に数十回の対戦があって1~2回である。相撲でいえば、白鵬に勝つよりも難しい。

数年前、エキシビジョンマッチで「中国対世界」というイベントがあった。中国のトップ選手のチームと、中国以外のトップ選手(ドイツや日本、韓国、台湾等)のチームが戦うというものだが、中国の圧勝である。中国の一軍にはどこの国の選手もかなわない。中国の二軍と世界のトップ選手が同じぐらいのレベルなのである(ただ、オリンピックのシングルスには日本と同様、中国人は2名しか出場できない)。

中国以外では、男子はドイツ、日本、韓国、香港、台湾が強く、女子はドイツ、シンガポール、オランダ、香港、台湾、北朝鮮が強い。といっても、女子は中国からの帰化選手がかなり含まれている。北東アジアとヨーロッパが強いが、ブラジルも近年かなり強くなっている。

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水谷選手と反対側のブロックで準決勝まで勝ち上がったサムソノフ選手。

【用具について】
福原選手のラバーが特殊なラバーということはテレビの解説で何度も触れられているが、一体どんなラバーなのかというと、自分から回転がかけにくいラバーである。卓球は回転のスポーツなので、強力な回転をかけられるラバーが有利である。そのため大半の選手はひっかかりがよく、回転のかけやすいラバーを使用している。しかし、逆に回転がかかりにくいラバーは、相手のボールの強烈な回転をそのまま返す(滑る)ため、通常のラバーとは逆の回転になる。それでこの特殊なラバーを使うと、意外性のあるボールが打てる。中途半端にそのような特殊なラバーを使うと、上手な人に一方的に攻められてしまうが、福原選手はこの特殊なラバーを使いこなしているために、通常の回転とは異質な回転で鋭いボールが打てる。そのようなボールは、受ける側にしてみれば、鋭いボールを思い切り打つことが難しい。通常のボールのつもりで打つと、ネットに掛けたり、オーバーしたりしてしまう。そこで安定性を重視してゆるいボールを返さざるを得ない。しかも福原選手の場合はフォア面は通常のラバーで、バック面が特殊なラバーなので、フォアとバックを混ぜて打たれると、回転が分からなくなってしまう。

【テクニックについて】
卓球において主要な打法は大きく分けて3つである。

・下から上にこすり上げて順回転をかける(ドライブ)
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・あまり回転をかけず、ボールを弾いて叩く(スマッシュ)
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・こすって下回転をかける(カット)
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ほとんどの選手はドライブを使う。ドライブは山なりの弧線を描いてコートに入ることから低いボールでも安定して鋭いボールが打てる。そのためたいていの攻撃型の選手は、ほぼすべてのボールをドライブで打つ。スマッシュはある程度高いボール(ネットから10センチ?以上浮いたボール)しか打てない。スピードは出るものの、直線的な軌道のため、コントロールが難しく安定しない。カットは守備型の選手が主に用いる。非常に回転量の多いボールと回転量の少ないボールを相手に分からないように混ぜて、相手のミスを誘う。
他にも、はじく系の技術であるブロックや、回転をかけつつ、高くボールを上げて相手の攻撃をしのぐロビングなどもある。

【戦術について】
台の中で2バウンドする短いボールを強打するのは難しい。そこで相手に強打させないために自分はできるだけ台から出ない短いボールを打つ。逆にこちらが強打するためには相手に台から出る長いボールを打たせるようにする。国際レベルの男子選手なら、台から出るサービスは一発で持っていかれてしまうので、基本的に台上で2バウンドする短いサービスを出す。女子でもフォアハンド側に長いサービスを出すと、一発で決められてしまうので、長いサーブはバック側に出すことが多い。

サーバーが短いサーブを出したら、レシーバーは台上で2バウンドするドロップショット、「ストップ」という打法で対応することが多い。台上で2バウンドするほどの短いボールなら強打されにくいからである。台上のカット(ツッツキ)で長くボールを打った場合、強打を打たれて相手に先手を取られてしまうおそれがある。しかし、そのような短いボールを強打することもできる。その技術が「チキータ」である。

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チキータ

バックハンドで斜め横上方向に強い回転をかけて下回転のボールを持ち上げるわけである。
似たような技術に「フリック」というものもある。これは台上の短いボールを上方向にひっかけるようにして素早く払う打法である。

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フォアフリック

要するに台上の短いボールの攻防で先手をとるためにチキータやフリックを使うわけである。

フォアハンドとバックハンド
プロの試合の場合、フォアハンドを完全な体勢で打たれたら、それを止めるのは至難の業である。
そこで、威力でやや落ちるバック側にボールを送る展開になりやすい。

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女子の試合でバックハンド対バックハンドで高速ラリーが続くのをよく見るが、あれもフォアで思い切り打たせないようにお互いにバックハンドを狙っているのだと思う(たぶん)。あのラリーを見て

「どこに打つのも自由なのにどうしてお互いに示し合わせたようにバック側ばかりに打つのだろう?」

と疑問を抱く人もいるかと思われるが、卓球台の対角線上(クロス)は距離が長いので、オーバーミスをしにくい。それに対してこちらのバックから相手のフォア方向(ストレート)は距離がやや短いためミスなく鋭いボールを打つのが難しい。バック対バックですごいスピードで打ち合っているときにコースを変えてストレートに打つのは怖い。それでクロスに来たボールは安定性を重視してクロスに返してしまうのである。

人間の反応速度の限界に近いラリーでは、クロスに打たれたら、反射的にクロスに返してしまう。そんな場面でストレートに強打を打てれば決定打になりやすい。しかし速いラリーの中でそのコースに打つのはリスキーなのである。

【カットマンについて】
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カット主体でプレーする選手をカットマンと呼ぶ。
女子にはこのタイプの選手が多い(男子のボールは強烈すぎてカットマンはなかなか勝てない)。
石川佳純選手がカットマンに敗れたが、カットマンは石川選手のような速いボールよりも、福原選手のようなフワッとしたボールのほうがやりづらいらしい。福原選手の、相手のカットをゆっくりした浅いドライブで返球し、相手を前に寄せておいて鋭く速いボールで仕留めるというプレーが印象的だったが、カットマンにはスピード一辺倒のボールではなく、緩急をつけたボールが有効らしい。

以上、簡単ながら卓球の観戦に役立つと思われる予備知識を紹介した。

次の試合は

福原選手:NHK総合で11日(木)午前8:15から
水谷選手:TBS系で11日(木) 20:00から? BS1では21:55から

である。その次の団体戦での伊藤美誠選手と吉村真晴選手の活躍にも期待である。

【追記】160812
団体戦について補足したい。
卓球の団体戦は3名対3名で行われ、シングルスが4戦、ダブルスが1戦となる。個人戦は4ゲーム先取だが、団体戦では3ゲーム先取で勝敗が決まる。全5戦のうち、3戦で勝利したチームが勝ち抜ける。
1人だけシングルスに2回出場し、残りの2人はシングルス1回とダブルス1回出場することになる(このページが分かりやすい)。
日本男子なら、エースの水谷選手を2回シングルスに出場させ(2点づかい)、吉村選手と丹羽選手をダブルスで組ませ、この2人を1回ずつシングルスにも出場させるということになるだろう。そしてシングルスでは同じ相手と2回戦わないように組み合わされる。

例:1吉村 2水谷 3丹羽・吉村 4水谷 5丹羽

ダブルスは、テニスと違い、必ず2人が交互に打たなければならない。コンビネーションが大切なので、たとえ強い選手2人のペアでも、ダブルスの練習をしておかないと、十分なパフォーマンスが発揮できず、格下に負けることもよくある。

団体戦の組み合わせを見ると、以下のような対戦となると思われる。
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男子
初戦:ポーランド
なかなか強いチームだが、日本がいつも通りの実力を出せれば、ストレートで勝てる相手。

第2戦:香港
丹羽選手が個人戦で破った黄鎮廷選手(今では珍しいペンホルダーグリップ)を倒すのはかなりしんどい。2016年の3月に行われた世界選手権では黄選手を水谷選手と吉村真晴選手がともに破ったが、きわどい試合だった。黄選手としても捲土重来を期しているはずなので、厳しい試合になるだろう。唐鵬選手も地味に怖い存在。

第3戦:ドイツ
ロンドンオリンピックの銅メダリスト、オフチャロフ選手と2011年の世界選手権銅メダリスト、ティモ・ボル選手を擁する難敵。オフチャロフ選手と水谷選手はライバルで実力は伯仲している。ボル選手は最近故障などで成績がよくないが、ここ10年で中国のトップ選手とも対等に渡り合えた唯一の選手。水谷選手が1回ぐらいしか勝ったことのない実力者。水谷選手はここ1~2年ほどで急成長したとはいえ、この二人に勝つのは至難の業。

第4戦:中国(決勝)
--------
女子
初戦:ポーランド
あまりイメージがない。隻腕のパルティカ選手はパラリンピックでは金メダリストだが、健常者の大会では結果を残していない。

第2戦:オランダ
リー・ジャオ選手という40歳近いベテランのペンホルダーの強い選手がいる。世界卓球2014では、福原愛選手と石川佳純選手を破っている。また、カットマンのリー・ジェ選手は最近の試合で石川佳純選手を破っている。強敵である。

第3戦:香港か台湾かドイツ
どこも楽に勝てる相手ではない。そしてどこが勝ち上がってきてもおかしくない。

第4戦:中国(決勝)

【追記】160813
団体戦の日本選手についての情報が欠けていたので補足したい。

男子
水谷隼選手(27):言わずと知れた日本のエース。中国の一軍以外にはそうそう負けることはない。青森山田高校→明治大学卒。現在はプロ。高校生の時、全日本選手権のタイトルを獲り、それから現在まで10年連続決勝進出(うち8回優勝)。世界ランキング6位。性格的には群れるのが嫌いで、「日本にいたら強くなれない」と、求めて海外のプロリーグに参戦。現在はロシアのプロリーグに所属している。台に近いところでも、台から離れたところでも、どこでも戦えるオールラウンダー。ボールタッチは天性のものを持っており、中国の監督に天才的と評されたこともある。安定性重視のスタイルから、近年より攻撃的なスタイルに転換してから勝率も上がった。静岡県出身。

丹羽孝希選手(21):ジュニアのころから注目され、高校生の時、世界ジュニアで中国選手を破り、シングルス優勝。同じく高校生のとき、全日本選手権優勝。ロンドンオリンピック予選で馬龍選手を破り、世界中を驚かす。2015年の世界卓球では、松平健太選手とのダブルスで銅メダル。青森山田高校→明治大学4年生。しかし、最近は国際大会で負けることが多く(前記事「私は丹羽孝希選手を絶対的に支持する」)、いい成績を残せなかったが、リオ・オリンピックでは個人戦ベスト8(これはかなりすごい成績)。現在世界ランキング22位。前陣での速い展開の卓球を得意とするが、トリッキーなプレーも多い。感情を表に出さず、無表情で淡々とプレーする。性格的にドライなところがあるのかもしれない。北海道出身。

吉村真晴選手(22):それまでは無名の選手だったが、高校生のころ、全日本選手権6連覇中の水谷選手を決勝で破り、注目される。同年の世界ジュニアシングルスで中国選手に肉薄し、3位。野田学園高校→愛知工業大学卒。現在はプロ。世界ランキング21位。卓球選手にしては珍しく身長が高く(177センチ)、ボールに威力がある。回転の分かりづらいサービスも有名である。3月の世界卓球2016クァラ・ルンプール大会では団体銀メダルに大きく貢献する。茨城県出身。

女子はみんな有名人なので、女子の情報は割愛。

男子は水谷選手が頭一つ出ているので、水谷選手が2勝するとして、あと1勝できるかどうかがポイント。
女子はバランスよくみんな強いが、逆に言うと飛びぬけて強い、必ず勝てる選手がいない。
男女ともに決勝までは行けるはず。

今朝の一回戦の結果を見ると、女子の日本対ポーランドは予想通り、危なげなく日本のストレート勝ち。
伊藤美誠選手のプレーを見たが、伸び伸びと良いプレーができていたようだった。
しかし、次戦はオランダが上がってくると思っていたが意外にもオーストリアに負けてしまったようだ。オーストリアには勝てると思うので、その次の相手、香港かドイツは苦しい戦いになりそうだ。

【追記】160816
女子はギリギリのところでドイツに敗れ、3位決定戦へ。男子はドイツを破り決勝進出。
テレビ放送予定は以下のとおり。

女子:16日(火)NHK 22:45-【追加】
女子:17日(水)NHK  8 :15~(10:00)録画
男子:18日(木)NHK 8:15-10:45

女子の相手はシンガポール。なかなか手ごわいが十分勝てる相手。

【プロフィール】
フェン・ティアンウェイ:中国からの帰化選手。シンガポールのエース。ロンドン五輪のシングルスで3位決定戦で石川佳純選手を破って銅メダル。強敵であることは確かだが、最近の日本選手との対戦成績は日本選手のほうが優位。今大会では福原選手がフェン選手を4-0で破っている。

ユー・モンユ:地味に強い選手。今大会はベスト8で北朝鮮のキム・ソンイに敗れているが、2ゲームをとっている。カタカナ表記のところから、帰化選手ではなくて、現地人か。

周一涵:よく知らないが、まぁまぁ強いらしい。

---------

男子の相手は言わずと知れた中国。実力差では日本よりも明らかに上。3人とも異常に強く、日本選手が倒すのは、何かの偶然が重ならない限り至難の業。

【プロフィール】
馬龍(マロン):現在世界最強と言われている。安定してミスが少ない。10年ほど前から世界チャンピオンになると言われていたが、先輩の中国選手、王皓やチームメイトの張継科にずっと決勝進出を阻まれてきた。2015年の世界選手権でようやく世界チャンピオンの座につき、そのあたりから世界のトップに君臨。まじめな性格で中国で大人気。


張継科(ツァンジークー):前世界チャンピオン、前オリンピックチャンピオン。それまであまり目立たない存在だったが、彗星のごとく現れて2011年の世界卓球でチャンピオンの座につく。それから2012年のロンドンオリンピック、2013年の世界卓球パリ大会まで無敵の強さを誇り、優勝。しかし、故障が多く、去年あたりから格下の選手に何度か負けている。2015年の世界卓球蘇州大会でチャンピオンの座を馬龍に譲った。リオオリンピック決勝で馬龍に敗れたが、腰を痛めていたらしい。自由奔放な性格で、派手なタトゥーを背中に入れている。ワールドカップでは優勝したものの、マナーの悪さから賞金を没収されることも。今はかなり丸くなっている。


許昕(シューシン):珍しいペンホルダーの選手。3人の中ではもっともとっつきやすいか。フォアドライブとフットワークは世界最高かもしれない。いろいろなテクニックをもっており、引き出しが豊富な選手。上の2人がいるために今まで大きなタイトルは取れていないが、しばしば上2選手に勝利することもある。

ジャパン・オープン2016の水谷選手の新境地【画像大量 閲覧注意】

いまさらながら、ジャパンオープンのビデオを観ている。最近ゆっくりビデオを観るゆとりがなかったのである。
日本選手は最終日には残れなかったが、それでもいい試合を見せてくれたのではないだろうか。

xia氏の「ジャパンオープン観戦記」に以下のような記述がある。

生で観ていて「おっ」と思った部分は馬龍選手にスタートを遅らせて、バック前を普通にツッツキレシーブさせることが出来た時。
このレシーブをさせることが出来たら水谷選手が先に攻める機会が出来、勝つチャンスが生まれてきそうな気がしました。

この動画の中で言うと1:20~と3:26~のプレーが挙げられます。
馬龍選手が普通にツッツキをしてくれると水谷選手が先にドライブを打てます。先にドライブを打てるとやはり得点確率が高いです。


なるほど。上級者は目の付け所が違う。先にドライブをかけて先手を取れば、主導権を握ることになり、ひいてはそのポイントを得ることができるというわけである。

ITTFのダイジェスト版ではカットされてしまった部分にも参考になるプレーが多いというので、完全版を観て、水谷選手、馬龍選手のどちらが先手を取っているか確認してみた。我ながら、あまりおもしろい考察ではないと思うので、よほど暇な人でなければ、読まないほうがいいかもしれない。

「先にドライブをかける」というのにはフリックやチキータも含めている。

参考にしたのは以下の動画である。


【ジャパンオープン2016】男子シングルス準々決勝 水谷隼 vs 馬龍(完全版)

以下、画像が大量にあるのでご注意。






第一ゲーム
00
水0 馬1

次の1ポイントはレシーブミスだったので、ドライブをかけるシーンがなかった。

02
水1 馬1

03
水2 馬1

13
水3 馬1

14
水4 馬1

15
水5 馬1

26
水5 馬2

36
水5 馬3

37
水6 馬3

38
水6 馬4

49
水6 馬5

410
水7 馬5

510
水7 馬6(ちなみにこのバックドライブはミス)

610
水7 馬7

これで第一ゲームが終わりである。
ドライブを先にかけた回数は7対7で五分であった。このゲームは顕著だったが、全体的に派手な打ち合いに発展することは少なく、台から出るボールをしっかりとドライブできるチャンスは少なかった。両者ともに台上から小さくストップの応酬だったり、台上のフリックやチキータから先手を取るケースが多かった。そして馬龍選手が水谷選手を圧倒していたという印象はない。これは水谷選手が先手を取る回数が五分だったからということになりそうである。

第二ゲーム
10
水0 馬1

11
水1 馬1

21
水1 馬2

32
水2 馬2 点数が飛んでいるのはどちらかがレシーブミス等でドライブをかけるチャンスがなかったからである。

42
水2 馬3

52
水2 馬4

53
水2 馬5

54
水3 馬5

64
水4 馬5

74
水4 馬6

75
水4 馬7

85
水5 馬8

86
水6 馬8

87
水6 馬9

88
水7 馬9

89
水8 馬9

810
水9 馬9

なんと、このゲームも先手を取った回数は五分であった。その結果、点数的にも競っており、印象的にも馬龍選手に一方的に押されていたという感じではなかった。


第三ゲーム
00
水1 馬0

10
水1 馬1(このバックドライブは上に高く持ちあげるだけの攻撃力の低いドライブだった。)

20
水1 馬2

21
水1 馬3

31
水1 馬4(馬龍選手のバックドライブはフリーハンドが独特である。)

32
水1 馬5

43
水1 馬6

53
水1 馬7

54
水2 馬7

64
水3 馬7

65
水3 馬8

75
水3 馬9

76
水4 馬9

77
水4 馬10

ここで馬龍側からのタイムアウト。
水谷選手からすると、追いつかれて流れが悪い中でのタイムアウトだったので、ラッキー。
先手の回数は馬龍選手が倍以上だが、点数は五分である。
とにかくドライブをかければいいというわけではなく、水谷選手がわざとフォア側に長いレシーブをして、馬龍選手にドライブを打たせる場面もあった。宮崎氏の解説によると、相手に先に打たせる場合は心の準備ができているから、ドライブを打たれても、しっかりブロックでコースを突ける(実際には「大丈夫」という言葉だった)のだという。というわけで

「ドライブを先にかけている=先手を取っている」

と単純に言い切ることはできない。先手のドライブを打とうとしてフリックやチキータでミスする場合もあるからだ。より正確に言うなら

「先手を取っている=ドライブを先にかけている」

というのがよさそうだ。


coach egao
「よくやっている」と言わんばかりの邱建新コーチのこの笑顔

egao
2ゲーム連取され、せっかくリードしていた第三ゲームも追いつかれてしまったにもかかわらず、水谷選手も笑顔。


sekkyou
劉国梁監督は相変わらず険しい表情。

水谷選手は1ゲームもとっていないにもかかわらず、なんだか達成感がにじみ出ている。おそらく後ろに下がらず、前陣を維持し、カウンターを狙っていくという対中国対策に手応えを感じているのだろう。それに対して中国側は水谷選手のプレースタイルを非常に警戒しているようにみえる。今までの水谷選手とは一味違うと感じているのかもしれない。

78
水4 馬11

79
水4 馬12

89
水4 馬13

99
水4 馬14

910
水5 馬14
このゲームは馬龍選手が三倍近くドライブで先手を取っているにもかかわらず、点数は序盤で水谷選手にリードを許し、ぎりぎり11-9でゲームを取っている。


第四ゲーム
00
水1 馬0

01
水1 馬1


02
水2 馬1

12
水3 馬1

23
水3 馬2

24
水3 馬3

34
水3 馬4

35
水3 馬5

45
水3 馬6

55
水4 馬6

65
水5 馬6


57
水6 馬6

58
水6 馬7

59
水7 馬7

69
水8 馬7

79
水8 馬8

89
水8 馬9

810
水9 馬9

水谷選手は0-4で馬龍選手に敗れるという結果に終わった。
しかし、点数は7,8,9,8と、あと一歩というところまで来ている。去年まで中国選手の一軍と当たった場合は全く勝てる気がしなかったが、今年の水谷選手をみると、3回やれば1回ぐらい勝てるのではないかと思わせる内容だった(素人目には)。このまま行けば、中国と渡り合える日も近いのではないだろうか。なにせ相手は今、最強と言われる馬龍選手なのである。

長かった…。今まで押しても引いてもびくともしなかった中国の鋼鉄の扉がちょっと持ち上げて横にスライドさせたら動きそうなのだ。この調子でいけば、水谷選手がリオ・オリンピックでとんでもない結果を残してくれるかもしれない(楽観的すぎるか?)。

ともあれ、「先にドライブを打てるとやはり得点確率が高い」ということは以上の調査から概ね首肯できそうだ。ただし、あくまで「確率が高い」ということである。第三ゲームのように先にドライブをかける回数の少ない水谷選手が五分の戦いをすることも十分可能である。先にドライブをかけるというのは相手の意表を突くという要素が多少なりともなければ効果が薄いと思われる。相手に先に打たせてカウンターやブロックで待ち構えている場合もあるからである。


【おまけ】
docchiga docchida
下がってしのぐ馬龍選手。役柄があべこべだ。


東京選手権2016雑感

まだ行ったことのない人のために、今回の東京選手権2016の紹介と、観戦して感じたことなどを記してみたい(前記事「東京選手権2015観戦記」も併せてご覧いただきたい)


今年の東京選手権も例年通り千駄ヶ谷の東京体育館で行われた。
入場料は一日あたり1000円。安い!

出場選手はナショナルチーム選手を除いた有力選手(ナショナルチーム候補選手含む)。

最終日1日前の土曜日はこの客の入り。

kankyaku


2階と3階が客席で、3階はかなり余裕があったが、2階席は7~8割方埋まっていた。

大会プログラムが1000円だったので買ってみたが、組み合わせとタイムテーブル(どちらも東京卓球協会のサイトでDL可)と、歴代優勝者が載っているだけだったので、1000円の値打ちはなかった。ただ、もし観戦に行くなら、有名選手の試合がさりげなく行われていたりするので、タイムテーブルが分からないと、見逃してしまうかもしれない。要注意である。

東京選手権プログラム


バタフライやニッタクといった国内メーカー、ドニックやヨーラといった海外メーカーのブースもあって、新製品などを展示していた。安売りの商品(Tシャツが1000円、ジュウイックのソックス3足1000円とか)はあまり多くないので、何も買わなかった。ジャパン・オープンのほうがお得感のある商品が多かった。

喫煙所にいると、新井卓将兄弟が来たり、松下雄二氏、渋谷浩氏などに出会ったりした(もちろん、話しかけたりはしなかったが)

有名選手にもよく出会える。私はトイレにいく途中で松平賢二選手とすれ違ったり、試合後のジャン・ウジン選手とすれ違ったりした。神戸のジャパン・オープンでは選手たちはあまり一般観客席の方には出てこなくて、そのへんで遭遇しにくいが、こちらでは選手用の特別な観客席というのがないようだ。ジャパン・オープンは純粋に観る大会で、東京オープンは観る大会というよりも、出る大会なのかもしれない。

今回もビデオ撮影をしようと思って持参した。ビデオ撮影できるのはありがたい。ただし、充電ができるような場所はない。バッテリーが2時間ほどしか持たないので、撮る試合数は限られてくる。今回もyoutubeなどにあまり上がっていないペンホルダーの選手を中心に撮るつもりであった。
しかし、加藤由行選手は前日までに敗退し、松下大星選手はシングルスには出場していなかった。そこで私の最大のお目当ては宋恵佳選手だった。

宋恵佳選手
https://youtu.be/BDZu2k4-3s0

宋選手は最近、女性らしさが増した気がするのだが、それなのに以前に増して強くなった気がする。通常は女性らしさが乏しくなったほうが強くなるのに、不思議である。派手でパワフルなボールはないが、ミスが少なく、安定している印象を持った(追記:改めて観たら、ミスが少ないというより、サービスが上手だった)。こういう卓球ができたらと思う。

yamada

今年も斎藤元選手が出場していた。苦戦していたようだった。片面ペンには未来はないのだろうか。

そんなことを考えていたら、意外な選手の試合に目が止まった。信号機材の平野信幸選手である。

hirano


この選手も片面ペンだが、私はまったく知らなかった。専修大学の田中選手に惜しくも敗れたが、片面ペンでこれほどのプレーができるのに驚いた。裏面を使わなくてもバックハンドの威力がものすごい。プッシュで打点の早い、すごいスピードのボールを打つのはもちろんだが、中・後陣からの表面バックハンドドライブの威力も裏面に遜色ないように見えた。

平野信幸選手
https://youtu.be/lvqhhZuPj9Q

片面ペンも極めればこれだけのプレーができるのだと認識を改めた。

その他のペンホルダーの選手
https://youtu.be/ABK2hFW7_E0

https://youtu.be/rSiLMpoH2PY

中央のコートで華々しくプレーしていたのは引退を表明した平野早矢香選手

https://youtu.be/Sfy9d_QEbes

優勝した馬克選手に敗れたとのこと。

他に印象的だったのはジュニアの試合で張本智和選手が川上尚也選手(静岡学園)にストレート負けしていた試合。川上選手のことは全然知らなかったが、1年前の全日本選手権にも出場していたらしい。とにかくコースが厳しかった。台の角ギリギリのところを早いバックプッシュで広角に攻められて、さすがの張本選手も対応できなかった。マッチポイントの最後のラリーで決着がついた時には観客席からどよめきが起こった。川上選手、これからブレイクするかもしれない。この試合を観て、バックハンドのプッシュと厳しいコースを狙うことが大切だと感じた。

そして牛嶋星羅選手の優雅なカット(前記事「蝶のように舞い…」)。相手が鋭いボールを打ってきても、セカセカすることなく、ゆったりとしたリズムでカットし、隙を見て攻撃に転じる。すべてのプレーが流れるように自然で、観ていてうっとりしてしまう。

最後に印象的だったのは早稲田の平野晃生選手のフォア打ち。
平野晃生


小柄で華奢な日本選手が多い中、平野選手は長身でガッチリした体格で、美丈夫という言葉がよく似合う。そしてフォームが非常に美しい。あの恵まれた体格から放たれる力のこもったフォアロングは外国の選手にも見劣りしない。あんなフォア打ちができるようになりたいと思った。


鹿屋良平選手のこと――Tokyo Open 2016 第68回 東京卓球選手権大会を観戦して

去年も東京オープン2015を観戦に行った(前記事「東京選手権2015観戦記」)が、今年も行ってしまった。
私が観戦したのは最終日の前日、19日(土)である。
この日は男女シングルス一般・ダブルスと、ジュニアの試合がメインである。
前回も東京選手権は非常にレベルが高く、日本代表を除いた多くのトップ選手が出場していた。今年も張一博選手や上田仁選手をはじめ、実業団の有名な選手が多数出場していた。

今年は去年と比べて韓国勢が多かったように思う。その中でも注目すべきはジャン・ウジン(張禹珍)選手の参戦である。
wujing


言わずと知れた、世界ジュニアチャンピオンで、世界選手権での韓国代表であり、過去に張継科選手を二度も破った実力の持ち主である。去年のお客さんとは格が違う。

日本のトップ選手は、今や日本代表でなくとも、相当な実力があるので、まさかお客さんに選手権を持っていかれることはないと思われるが…その「もしも」が起こらないとも限らない。心配である。

ジャン選手はこんなに実力がありながら、スーパーシードではない。案の定、順当に勝ち進み、とうとうスーパーシードの鹿屋(かのや)良平選手と対戦することになった。

鹿屋選手のことは、失礼ながら、あまりよく知らなかった。法政大学のエースで、現在はリコーに所属している。ときどき雑誌等に取り上げられるが、国際大会で活躍したという話も聞かない。ジャン選手の勢いを止めるのは難しいのではないか。そんなふうに考えていた。

しかし、試合が始まってみると、ジャン選手と互角に渡り合っていた。はじめこそ鹿屋選手はジャン選手の守備力の高さに面食らっていた(決め球のボールをブロックされて、ちょっと慌てる場面が数回あった)ようだが、その後は2ゲーム先取してしまった。

鹿屋選手はこんなに強かったのか。
kanoya


https://youtu.be/fkl88DRVY5g
(バッテリー切れで、4ゲーム目までしか撮れていない)

鹿屋選手の強みは後陣からのすさまじいバックハンドドライブと、打球点の早さだったように感じた。ジャン選手も相当速いボールを打つのだが、鹿屋選手もちっとも負けていない。むしろ押していた。

が、さすがに世界ジュニアチャンピオンだけあって、そこから挽回し、2-2に追いつく。それからは一進一退のシーソーゲームとなったが、ギリギリのところで鹿屋選手が5ゲーム目を取り、3-2とリードする。そして運命の第6ゲーム。…残念ながらジャン選手にあっけなく取られてしまった。やはり世界ジュニアチャンピオンはダテじゃない。なんだかジャン選手のほうが余裕があるようにも見える。あまり焦っている様子もない。

もう泣いても笑ってもこれが最後の7ゲーム目。鹿屋選手のサービスが効いた。他にも勝敗を分ける要素はあったのかもしれないが実力的にはほぼ互角。ただ、ジャン選手はバック対バックで大きなラリーになった時、回りこんでカウンターをしようとするのだが、そこを鹿屋選手は厳しくバック側にボールを寄せ、回りこませない。鹿屋選手が早い打点で畳み込むように連打。結果、ジャン選手は詰まってミスをするという場面が目立った。私の見立てなので、当たっているかどうか疑わしいが、ジャン選手はバック対バックのラリーを避けたかったのではないだろうか。というのは、鹿屋選手のすさまじいバックハンドを振らせたら、ラリーで優位に立てそうになかったからである。もしジャン選手が無理にフォアを使おうとせず、抜群の守備力でブロックしたとしたら、鹿屋選手は負けていたかもしれない。

とにかく、韓国最強の刺客を鹿屋選手は返り討ちにしてくれたのだ。

この調子でもしかしたら、決勝に進むのではないか?などと思っていたら、次の相手伊丹雄飛選手に負けてしまったようだ。世界ジュニアチャンピオンに勝ったのに、日本のジュニア選手に負けてしまうなんて…。まぁ、それだけ日本のジュニアのレベルが上がっているということだろうか。

とにかく、いい試合をみせてもらった。今回の観戦の中でこの試合が最もシビレた。決勝には行けなかったが、鹿屋選手、最高にカッコよかった。

東京選手権についてはいろいろ書きたいことがあるので、追って記事にしてみたい。

私は丹羽孝希選手を絶対的に支持する――世界卓球2016予選リーグを観て

世界卓球2016 マレーシア大会予選リーグ。
下手をすれば負けるかもしれないと思われていた北朝鮮に快勝し、順風満帆の日本女子チーム。
ベンチでは笑顔が絶えない。

kanki

 
それとは対照的に、まるでお通夜のような男子チームのベンチ。

shirake

 
その最大の原因は丹羽孝希選手の不調だろう。
niwa

 
 対シンガポール戦で、パン・シュエジエという無名の選手に敗れてしまったのだ。



私はテレビ中継は観られなかったので、後ほどITTFのハイライト動画を観たのだが、丹羽選手のミスが目立つ。しかもチャンスボールから丹羽選手が強打を打ち、相手を下がらせてもなかなか得点できないポイントも目立った。いいとこなしである。丹羽選手はどうしてしまったのだろう。

私は昼に速報でシンガポール戦の途中経過を知り、嫌な予感がした。
このシンガポール戦では水谷選手を休ませている。2番の大島選手はなんとか勝利したが、3番の吉村選手はフルセットまでもつれている。そして4番はまた丹羽選手である。まさかとは思うが、シンガポールに敗れるのではないだろうか…。

3番の吉村選手もギリギリで勝利し、4番の丹羽選手もギリギリで勝利。結果は3-1で圧勝だが、内容的にはかなり危なかった。



そして丹羽選手の試合後のコメントを読んでびっくりした。

「4番は(トップと)同じ左の選手で、展開も同じだったからまた負けるのかと思ったけど、最後は勝ててラッキーでした」
「正直4番の試合は何で勝ったかわからない。足が動かなくて連打ができなかった。全勝で日本に帰ると行っていたので、負けてしまってすごく悔しい。正直まだ立ち直れていないですけど、次から相手も強くなって、自分の気持ちも高まってくるので、良いプレーがしたい」
『卓球王国』速報

「また負けるのかと思った」とか「勝ててラッキー」とか「何で勝ったか分からない」といった言葉に丹羽選手の自信の無さがうかがえる。

そしてその一方で大島選手が大活躍である。水谷選手からも一目置かれ、チームのムードメーカーとして重宝されているらしい。

丹羽選手はつらいだろうな。

この世界選手権はリオ・オリンピックの前哨戦という位置づけらしい。ここで調子を上げ、自信をつけて、オリンピックでメダルを獲得するというのが、代表チームの偉い人たちの狙いのようだ。

そしてオリンピックの代表に選出されず、涙を呑んだ大島選手が今大会では大活躍で、オリンピック代表の丹羽選手が絶不調。口さがない人はきっとこう言うだろう。

「丹羽選手がオリンピック代表で残念。大島選手が出たらよかったのに。」

チーム内ではこんなことを口に出して言う人はいないだろうが、そういうプレッシャーを丹羽選手は感じているにちがいない。日本男子チームはもっと丹羽選手の心情を察して、笑顔や言葉で丹羽選手を励ますべきだろう。ベンチがあの表情では丹羽選手はますます萎縮してしまう。女子チームのように元気よく声を出して応援してあげればいいのにと思う。団体戦はチームワークが大切なはずである。

「団体戦といっても個人戦が5つあるだけだから、一人ひとりがただ勝てばいいだけの話だ」

というのでは、チームの雰囲気が悪くなり、ひいては一人ひとりの選手のモチベーションにも影響すると思われる。

「勝てないなら、去るべきだ」

という雰囲気が、もし仮に男子チームにあるとしたら、そんなチームのために命を削ってがんばろうという選手はいないだろう。私は日本代表がどのようなメンタリティーで戦っているか想像もできないが、私の社会人としての経験から想像するに、「命を削って」というのは決して大げさな表現ではないと思われる。

子供の頃から天才として注目され、トントン拍子で数々の輝かしい成功を収めてきた丹羽選手は、最近行き詰まっているように見える。そして今大会の不調である。丹羽選手が初めて経験した大きな挫折と言えるかもしれない。

丹羽選手は今、必死だろう。なんとかチームの足を引っ張るまい、調子を上げようと焦っていると思われる。

そんな丹羽選手を温かく応援してあげたい。大丈夫。きっといい結果が出せる。

私はたとえ今大会で丹羽選手がいいとこなしで終わったとしても、丹羽選手の可能性を信じている。この大会で丹羽選手は自身の卓球を見つめなおし、大きく成長するきっかけをつかむことだろう。オリンピックでは一回り大きくなった丹羽選手を見ることができそうだ。丹羽選手の捲土重来を期待している。

そして『易経』から私の好きな言葉を送りたい。

尺蠖之屈 以求信也

尺蠖(せっかく)の屈するは  伸びんがため  

尺取虫がからだを縮めるのは、次にからだを伸ばして前進しようとするためであるということから、将来大きく飛躍しようとする人間は、一時、人の後ろに下がって待機する心掛けが必要であるということ。
慣用句辞典」より

本人による解説――「スポーツ追体験ドキュメント」を観て

レベルの高い試合というのは素人が見てもチンプンカンプンである。もし良質の解説がなかったら、我々に分かることはせいぜい「ボールのスピードがすごい!」とか「コースが厳しい!」といった程度である。しかし、上級者同士は私たちには理解できないボールという言語で対戦中に激しく対話している(前記事「あの人は卓球を知らない「ロンドンオリンピック卓球の解説」)。

全日本卓球2016でも、そのようなコミュニケーションが交わされていたのだろうが、宮崎氏と松下氏の解説を聞いてはじめて、選手の駆け引きがおぼろげながら分かる程度だった。

もし、水谷選手と張選手、石川選手と美宇選手が自身の対戦したビデオを観ながら「感想戦」をしてもらえたら――対戦中にどんな狙いがあって、何を警戒していたのかなどを1ポイントずつ解説してもらえたら、トップ選手がどんなことを考えながら試合をしているかが分かり、戦術の勉強にもなるのではないだろうか。良質な解説者なら、ある程度選手の思考を汲みとって我々にも示すことができるだろうが、やはり選手本人の解説には及ばないだろう。

選手本人による解説付きのビデオ――残念ながら、そのようなビデオがあるかどうかは寡聞にして知らないが、もしあったら、ぜひ購入したいものである。世の中には数えきれないほどの試合のビデオがあるが、解説、それも本人による解説があれば、解説のないビデオに比べてその価値は数十倍するだろう。別に国際レベルの選手の対戦でなくても、全国大会クラスの選手のビデオでも私たち初中級者には十分すぎるぐらいである。

選手本人による解説付きのビデオ。それに近い映像が実はある。NHKの 「スポーツ追体験ドキュメント」 である。



ここで石川佳純選手が去年の全日本の準決勝(対 前田美優選手)と決勝(対 森薗美咲選手)のビデオを観ながらポイントを解説してくれている。

以下、森薗選手との対戦を振り返ってみると(引用は大意)

石川「森薗選手はフォアハンドがすごく強いので、それに注意しながら、全力で打たれないようにコースを突いていこうと思いました。」

石川選手と森薗選手は子供の頃から何度も対戦しているのでお互いの卓球を知り尽くしている。石川選手は対戦前から森薗選手のフォアハンド強打を警戒していた。

fore


そのためフォアで強打を打たせないフォア前とバック深くにサーブを集めた。

honnin

本人による解説。ぜいたくすぎる!

fore mae


back e


そして石川選手の以下のコメントが興味深い。

「3球目を打ちやすいように攻撃しやすいように計算して出しています。」
「卓球のラリーというのを、来たボールを打っていると思っている方もいるかもしれませんが、 来たボールを打っていたら、もう間に合わないので…相手の動きを見て、コースを読んで打っています。」


私などは相手が打球して、ボールが自分のコートに入ってから動き出し、どう打つかを考えるが、そのように「来たボールを打っていたら、もう間に合わない」のである。上級者はサーブを出すときに、3球目でこちらが打ちやすいように計算して、サーブを出し、相手の打球前、相手の移動やバックスイングを見た時点で動き出しているということだ。

そうだったのか。
とすると、相手に多様なレシーブをさせてしまうサービスを出すのは、有効ではないということか。私はふだん、サービスで得点するために回転量を増したり、回転を分かりにくくしたりといった方向でがんばっていたが、そんなことよりも、レシーブが1~2種類に限定されるシンプルなサーブを出したほうがサーバーには断然有利ということではないか!

ナレーション「森薗選手がすぐに対抗策をとってきます」「バックに回りこんでフォアで強打。森薗選手も戦い方を変えてきたのです。」

石川選手に露骨にフォアハンドを警戒されてるため、森薗選手は回りこみで現状を打開しようと試みる。
結果、2-11で石川選手はゲームをとられてしまった。

宮崎「森薗がバックに回りこんで打ってくる。このパターンを石川は読んでいなかったということですね。」

テレビ解説者の宮崎義仁氏の言葉通り、石川選手は森薗選手のいわば「オールフォア」は想定外だったのだろうか。

しかし、森薗選手の「オールフォア」に対して石川選手はバックへのロングサービスのスピードを上げ、回転を強くすることで対抗した。バック深くへのロングサービスを限界までスピードを上げた結果、森薗選手は回り込めないと判断し、バックでレシーブ。あるいは無理に回りこんだとしても十分な体勢で打てないので、安定重視のループドライブになってしまう。そしてそこを待っていた石川選手に強打されてしまう。

レシーブでもバックに深くつついて、回り込みからのスピードドライブを封じ、ループドライブを打たせてカウンター。

こうして石川選手は森薗選手を攻略した。

この試合の要点を一言で言えば森薗選手のフォアをどうやって封じるかだった。そのために石川選手はサービスを工夫し、森薗選手は回りこみを多用した。工夫と対策、そしてさらなる対策。これが上級者の駆け引きか。おもしろい!

私は名作映画を観たかのような満足感を覚えた。
良質の対戦とは選手の知恵と知恵のぶつかり合いである。良質の対戦には必ずドラマがある。しかし、残念なことに私たちに見えるのは単なる上っ面のボールのやりとりだけである。それではなんとも味気ない。良質の解説の付いたこういう卓球の名作ビデオがもっと観たいものだ。

技術よりも大切なもの――平成28年 全日本卓球選手権決勝を観て

全日本卓球選手権2016が終わった。
決勝だけをNHKで観たのだが、その感想などを綴ってみたい。
ネタバレになってしまうので、結果を知りたくない人はご注意いただきたい。

















女子決勝は石川佳純選手 対 平野美宇選手。

最近、伊藤美誠選手に差をつけられた感のある美宇選手が今大会は美誠選手を破っての決勝進出とあって大いに期待していた。美宇選手の早いピッチのラリーが決まれば、石川選手も危ないのではないか。
しかし、結果はあっけないものだった。美宇選手は得意のラリーにあまり持ち込めず、石川選手にいなされたような形で敗れてしまった。

そして男子決勝は水谷隼選手 対 張一博選手。

中年の私としては張一博選手には、ぜひともがんばってほしい。いままで日本の卓球界を引っ張ってきた一人なのに、あと一歩というところで大きな結果を残せていない。若手が台頭する近年の卓球界で、ベテランの金星もみてみたい。他の選手が相手なら、張選手を絶対に応援するところだが、私は水谷選手の大ファン(前記事「面を開いて…」)なので、やっぱり水谷選手に勝ってほしい。そんな気持ちでの観戦だった。

言うまでもないことだが、私ごときのレベルでは、両選手がどれほど高い技術でしのぎを削っていたかなどはさっぱりわからない。私にも分かる程度の低いレベルの話である(技術・戦術的にレベルの高い分析はぐっちぃ氏のブログにある)。例のごとく、上級者にとっては当たり前のことにすぎないことを予めお断りしておく。

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張選手といえば、バックハンドが固いという印象がある。水谷選手はどうやって張選手のバックハンドを打ち破るのか。それが観戦前に考えていたポイントだった。

1ゲーム目が始まると、両者の豪快な強打が正面からぶつかり合った。ラリーなら、ミスの少なさで定評のある水谷選手が優位かと思ったが、張選手もちっともミスをしない。何度か派手なラリーになったが、張選手のほうがラリーで優位に立っているように見えた。バックハンドが固いのはもちろんだが、解説者によると張選手は「フォアハンドが得意」なのだという。

「得意なのはバックハンドではなく、フォアハンド!?じゃあ、水谷選手はどうやって張選手を攻略すればいいんだろう?フォアもバックもメチャクチャ強いじゃないか!」

もしかしたら、今度という今度は水谷選手も負けるかもしれない。得意のラリーで劣勢だったら、水谷選手はどうやって勝てばいいのか。ボールの威力においても、体格に恵まれた張選手に分があるだろう。スピードならどうだろうか?台に貼り付いて早いピッチでボールをさばいていけば?いや、スピードで定評のある丹羽選手も張選手の前に敗れ去った。張選手には死角がない。水谷選手はどうやって勝機を見出すのか…。

しかし、2ゲーム目からは水谷選手が優位に立って試合を進めていく。私には何が何だかさっぱりわからない。実況者の「やはり張選手はバックサイドを突かれるとちょっと弱いですねぇ」といったセリフにピンときた。

もしかしたら、コースどりで相手の強打を封じることができるのか?

おそらくそうなのだ。張選手はフォアもバックも鬼のように強いし安定している。そこで水谷選手は張選手のいろいろなところにいろいろな球種のボールを送り、それに対するレシーブから相手の弱点を瞬間的に見抜いているのだ。もちろん、初中級者のように

「バックに深いツッツキを送られると弱い」
「チキータすると、甘いレシーブを返してくる」

といった分かりやすいものではないだろう。実際はどうなのか、私の想像の及ぶところではないが、たぶん

「フォア前に送ったショートサービスを相手はバックかフォアサイドに払ってくるから、それを一度ミドルに強打して相手にバックでブロックさせた上で、相手のバックサイドを突く」

といったぐらいに複雑な「棋譜」のようなポイント(サービスから得点までのラリー)を組み立てているのだろう。

「何を当たり前のことを」

と思われる読者も多いと思うが、私にとっては発見だった。

卓球というのは「すごいスピードの強打」とか、「すごい早さのピッチ」とか、「回転がぜんぜん分からないサービス」といった技術的・体力的な部分で勝敗が決まると思っていたのに、技術的・体力的には同等か、やや劣勢といった場合でも勝てるというのはすごいことではないか。

そういえば、先日、60歳から卓球を始めたという70近いおじいさんと対戦したのだが、フルセットデュースの末、なんとか勝利した。おじいさんはシェーク・バック半粒で、ドライブなどは使わず、フォアはほぼ全部ロングボールかスマッシュという独特の戦型だった。ちょっとフォア打ちをして「私のほうが技術的に上だ」などと感じていたのだが、いざ、試合が始まってみると、サービスを半粒の流しレシーブでとんでもないコースに送られ、やっと返球すると、フォアスマッシュで待たれていて、パシンと決められてしまう。システム練習だったら、私のほうがミスなく続けられるし、体力、反射神経なども私のほうが上だと思うが、試合ではおじいさんのほうがずっと優位に立っていた。
私は自分の持っている限りのサービスを使ってなんとか勝てたが、もしおじいさんがレシーブが巧みで、私のサービスが効かなかったら負けていただろう。
この試合の経験から、技術等が多少上回っていても、 負けることは十分ありうると感じた。

水谷選手の技術が張選手に劣っているかどうかは分からないが、1ゲーム目のラリーでは水谷選手は張選手に対して、打ち合いで優位に立っているようには見えなかった。しかし、試合では水谷選手の圧勝だった。

くどいようだが、技術や体力よりも、戦術やコース取りといった分析力で勝てるのが卓球なのだ!

この試合ではそれが非常に分かりやすい形で現れており、私は感動した。卓球は体力や技術ではなく、知力がものをいう競技なのだと(もちろん技術に大差がないという前提なら)

私は途中から水谷選手の立場に立って相手を分析しながら観戦し始めた。どんなときに水谷選手が得点できるかを1ポイントごとに分析し、張選手の弱点を探ろうと試みたのだ。しかし、途中で頭がパンクした。張選手だって自分がミスしたところをなんとか修正しながら今までと違う対応をしようとするだろうし、張選手に対して「実験」できる回数も限られている。そのような中でどこに送れば相手は予想通りの甘い球を返球するのかを「実験」しながら分析するのは非常に神経を使う作業である。1ポイント終わって、相手のミスしたパターンを記憶に止め、相手の弱点を予想し、それをポイントを重ねながら修正してく。とんでもない情報量である。しかもポイントが終わって集まった情報をまとめるために考えこむわけにもいかない。相手の弱点がはっきりしないままに、すぐに次のサービスを出さなければならないのだ。

この緊張感はどこかで見たことある。なんだっただろう?
そうだ!パネルクイズ アタック25の最後の映像クイズだ。

atack25


映像クイズというのは、

優勝者が獲得した自分のパネルを全部外した時点で「ある○○とは何(誰)でしょうか、問題スタート!!」と言ってVTRが始まる。【中略】 映像終了後、司会者に「その○○とは!?」と尋ねられ、5秒以内で正解を解答する(wikipediaより)


saigo

自分が得点したパネルの部分は見えるが、他の回答者が獲得した陣地は上の写真のように隠れていて見えない。それで2~3秒ごとに5~6枚の映像が矢継ぎ早に映し出され、映像終了後、回答者はその映像に縁のある人物なり、都市なりを答えなければならない。子供のころ、日曜の午後におもしろい番組がなかったので、よくアタック25を見ていたが、最後の映像クイズは非常に難しく、回答者といっしょにドキドキしながら考えていたものだ。

卓球でも相手の苦手な球種やコースを全て試せるわけではない。上の写真のように虫食い状態で部分的に相手の苦手そうな部分が見えるだけだ。そしてそのようなヒントが考えるいとまもなく次々と与えられる。選手は身体では目の前のボールを返球しつつも頭では相手の弱点を探り出さなければならない。体力的というより、精神的な負担が大きすぎる。

「こんな膨大な情報量を選手一人で限られた時間内で処理するのは至難の業だ。しかし、もし相手の弱点を分析する頭が2つあればどうだろう?」

そうだったのか…。

水谷選手が高いお金を払って邱建新コーチを雇っているのはそういうわけだったのか。コーチというのは「打点が遅れているぞ!」とか「もっと足を使って回り込め!」とかそういう技術的なアドバイスをする人かと思っていたが、そういうのよりも、選手と一緒に相手(および自分)の弱点を分析するのがメインの仕事だったのか。

卓球では、反射神経や技術よりも戦術(分析力)が勝敗を左右することが多い。卓球とはなんとも奥深いスポーツであることよ。

こんなことを今年の全日本を観ながら考えさせられた。
 

第82回 全日本大学総合選手権 観戦記

また更新が滞ってしまった…。
が、今日は卓球について考えず、うちでゴロゴロしていたい…。
しかし、とりあえず動画だけでも紹介しておきたい。
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大学生日本一を決める全日本大学総合選手権の個人戦が京都市立体育館(通称ハンナリーズアリーナ)で3日間にわたり、行われた。いまごろ決勝戦が行われていることだろう。

私は昨日の午後のみ観てきたのだが、出場選手は錚々たる顔ぶれだった。
国際大会でも結果を残している森薗政崇選手が第一シード。最近世界的に注目されている京都出身の大島祐哉選手。海外でも大活躍の吉田雅己選手。インターハイ三冠王、坪井勇磨選手。全日本準優勝の町飛鳥選手。
去年のインターハイを沸かせた渡辺裕介選手、郡山北斗選手、田添健太・田添響兄弟。拙ブログでも取り上げた厚谷武志選手(前記事「東京選手権2015観戦記」)。ただ、吉村真晴選手は棄権、丹羽孝希選手も不出場だったのが遺憾だった。

しかし、私はそのようなキラボシの如き選手たちには目もくれず、愛工大の加藤由行選手と松下大星選手の試合だけに注目していた。両選手ともに日本を代表するペンホルダー(両面)でありながら、動画などであまりプレーをみる機会がないからだ。

本来なら高い交通費と入場料を払って、年に一度の自分へのご褒美として全日本選手権などでしか観られないのだと思っていたのだが、なんと、数百円の交通費だけで入場料はタダ!客席もインターハイのときのようなコミコミではなく、適度に空席がある。京都に住んでいることのありがたさよ。

ペンホルダー両面卓球に興味がある方はぜひ以下の動画をご覧いただきたい。

全日学 松下大星選手 対 岡本光市選手1 

mvso

https://youtu.be/SXCBT6weJzU

https://youtu.be/mCm5sIfyVTk

https://youtu.be/1EZMYb94GEw


加藤由行選手 対 町飛鳥選手

kvsm

https://youtu.be/DR6Pp236bPA

https://youtu.be/7JI5-ksHmaE

https://youtu.be/f8l1MrZfET8

https://youtu.be/eNXrXHLbw_g

https://youtu.be/6DOqjOnoXww

https://youtu.be/4sJu4Dxj6qg

https://youtu.be/KGXHmaIVOpo

松下大星選手 対 福田修也選手
mvsf

https://youtu.be/YZpVhz2LcGE

https://youtu.be/fLGcdO8Lb6E

https://youtu.be/kCec_exlM2A

【続く】

あまり気の利いたことは書けないのだが、観戦した感想などを記しておきたいと思う。
去年の滋賀の高校選抜をみたときと比べて(前記事「平成25年度 高校選抜観戦記」) 、今回の全日学の試合は落ち着いた雰囲気だった。高校生の試合は1ポイント毎に選手が複数回絶叫しながらピョンピョン跳ねていたが、さすがに大学生ともなるとそういう人は少なかった(法政大学の選手で何度も絶叫していた選手もいたが)。また、客席の応援も控えめで、高校生の試合のように会場内が異様な熱気に包まれているということもなかった。喩えて言えば、ロックバンドのコンサートと、ジャズライブのようなものだろうか。オジサンにはジャズライブのほうが居心地がいい。

それから男子では明治大、専修大、愛工大の存在感が際立っていた。早稲田や中央にも強い選手がいるのだが、明・専・愛の3校の選手のほうに目が行ってしまう。近年差が縮まってきたとはいえ、関西勢と関東勢の差はいかんともしがたい。ただ、女子では同志社の健闘が光った。

今回は加藤選手と松下選手の試合しかちゃんと観なかったのだが、加藤選手は町選手にあと一歩まで迫ったが、あと2点がとれなかった。ちょっと運がよければ、町選手に勝っていたのではないかと思わせるが、上級者の試合というのは、その2点がどうしてもとれないものなのだろう。松下選手もスコアをみると、1・2ゲームはデュースまで迫ったものの、酒井明日翔選手に敗れてしまったらしい。

技術的なものは私にはよくわからないが、加藤選手の両ハンドのラリーの安定感がすごかった。また、松下選手のバックハンドのコースがエグかった。裏面のバックハンドはシェークのバックハンドよりもサイドを切るキツイ角度が出しやすい。あのスピードであんなキツイコースを狙われたら、相手は相当苦労するのではないかと思った。


加藤選手 対 小池選手
 

緩急・深浅・広角――チェコオープン2015の福原愛選手

チェコオープン2015女子シングルス決勝の福原愛選手と田志希選手の試合を観て、感じたことなどを記そうと思う。オチはない。チェコオープンの結果についていろいろ書いてしまうので、結果を知らない人はご注意。




今回のチェコオープンはオリンピック代表選考に影響するということで、多くの日本人選手が参加していた。
中国選手は不参加だったものの、韓国、香港、台湾の選手が参加しており、なかなかレベルが高い。あれだけ日本人選手が参戦していたのに、準決勝に残った日本人選手は、男子が吉村真晴選手、女子が福原愛選手のみ。
両選手ともに決勝に進出し、吉村選手の相手は香港期待のペンホルダー、黄鎮廷選手。福原選手の相手は田志希選手だった。

男子は吉村選手が準優勝。女子は福原選手が優勝だった。吉村選手はバックハンドのミスが多く、あまりいいプレーが多くなかった。対照的に福原選手はすばらしいプレーで田選手をストレートで破った。

といっても、福原選手の試合はどのゲームも気が抜けず、圧勝というわけでは決してなかった。

そもそも田志希JEON Jihee選手とはどんな選手だろう?私はあまりよく知らなかったのだが、中国出身で2011年に韓国に帰化したらしい。今、23~24歳ぐらいだろうか。現在世界ランク20位前後。子供の頃は中国代表にも選ばれたらしく、実力がある。今年のワールドツアー、スペインオープンで平野早矢香選手を破り、優勝している。最近、ワールドツアーに出場する機会が多いようだが、今年のワールドツアーでは石川選手や若宮三紗子選手、前田美憂選手に破れている。福原選手とはなんと3度も対戦している。


オーストラリア・オープン2015決勝


ブルガリア・オープン2015準決勝


チェコ・オープン決勝

田選手は、フットワークもいいし、ミスが少ない。無駄な動きがなく、体勢があまり崩れない。崩れても戻りが早い。まるで機械のように正確に厳しいボールを打ってくる。対して福原選手は動きが大きく、比較的体勢も崩れることが多かったように思う。両者ともにすごいスピードで長いラリーに対応しているのだが、真っ向からラリーを挑むと、福原選手は分が悪い。しかし、今大会を含めて、今年の対戦結果は福原選手の3勝0敗のようだ(たぶん)。

福原選手はどうして田選手に勝てるのだろうか。

はるかにレベルの高いプロの駆け引きがどうなっているのか、私には知る由もないが、福原選手の緩急が効いていたように見えた。フォアにバックに早いピッチのラリーが続いている最中に福原選手はバックの浅い、ゆっくりしたブロックを混ぜてくる。おそらくナックルなのだろう。こういうボールに田選手のリズムが狂わされてしまう。速くて低いボールの連続攻撃なら、田選手のほうがミスなく続けられそうである。しかし、逆にゆっくりしたボールや切れていないボールには田選手はうまく対応できないようだ。

そしてサービスが効いていた。初めの2ゲームは3メートル以上の高い投げ上げサーブだったが、3、4ゲームは2メートル程度の高さの控えめな投げ上げサーブだった。

また、コースも厳しかった。ダイジェスト版にはあまり映っていないかもしれないが、エッジやネットがふつうの試合よりも多かったと思う。両者ともにラインギリギリの非常に厳しい場所を狙っていたのだろう。

福原選手のプレーは気持ちだけが前に行って空回りしているという印象を持っていたのだが、最近、無理に打ちに行かず、落ち着きが出て、スマートなプレーをするという印象に変わってきた。これも馬場美香コーチの指導のおかげなのだろうか。

というか、馬場美香コーチというのは不思議な人である。
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旧姓、星野美香選手は80年代に日本女子卓球をリードした稀有な選手で、全日本シングルス7度優勝というとんでもない記録を持っている。しかし、解せないのは出身地である。群馬県利根郡片品村の出身なのである。

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そもそも群馬県という卓球のレベルの低い県で、全日本チャンピオンを輩出する環境がない。しかも片品村というのは、群馬の中心からはるかに隔たったところで、尾瀬に接しているところである。wikipediaによると、関東唯一の特別豪雪地帯だそうである。比較的近くに卓球の盛んな沼田市や中之条町があるが、それでも沼田まで約30キロある。高校からは前橋東高校に通っていたので、環境もずいぶん良くなったとは思うが、それまではおそらく全国的な指導者に教えてもらっていたわけでもなく、十分な練習相手もいなかったことだろう。そんな中学生が全国でベスト8に入るなんて、どんな魔法を使ったんだ?

馬場氏は福原選手の専属コーチになる前は特に指導らしい指導はしていなかったと思われる(前記事「福原選手が丁寧選手をやぶった」)が、なんで短期間で福原選手がこんなに強くなったんだろうか。馬場氏は他の指導者にはない何かを持っているのだろうか。

まったくまとめになっていないが、まとめ的なことを記すと、緩急を有効につかって厳しいコースを狙えば、強い選手にも勝てるかもしれない。それにしても馬場美香氏は謎である。

穴のなさ――王皓選手のすごさ

引退した王皓選手の過去の動画(2011年の世界選手権)を観ていて驚いた。とても強いのである。



元世界チャンピオンなんだから、強いのは当たり前なのだが、上の水谷選手との対戦をみると、水谷選手に勝てる要素がない。

ふつう、プロの試合では台上から始まり、どちらか一方がチキータやフリックなどで起こしてロング戦になる。主導権を握った方(攻め)と握られたほう(受け)に分かれ、「攻め」に立ったほうは強打で打ち抜こうとし、「受け」は相手の攻撃をなんとかしのいで、機を窺って「攻め」に転じようとする。「受け」といっても、プロなのでブロック等でも、速くて厳しいボールを返球するのだが、それは決定打を狙うボールではなく、相手の連続攻撃を防ぎ、攻撃のターンをこちらに引き寄せるためのボールである。

しかし、上のビデオをみると、王皓選手は「受け」に回ることがほぼない(ビデオ中で1~2回だけブロック的なボールを打っている)。常に「攻め」である。王皓選手の攻めが早いというのがあるにしても、水谷選手だって時には早く攻めて「攻め」に回るポイントもあった。しかしその「攻め」に対しても王皓選手はカウンター等の「攻め」で応じ、「受け」には回らないのである。

おかしな話である。私のレベルの低い卓球の話で恐縮だが、私のレベルの試合では、相手がドーンと打ってきたら、こちらはブロックなりハーフボレーなりで受けなければならない。ドーンと打たれたボールをドーンと打ち返したら、ミスを連発する。ドーンと打たれたボールは固く守り、相手が攻めあぐんだ時に今度はこちらからドーンと打ち返し、それを相手はブロックなりハーフボレーなりで受ける。こういうのが通常の試合だと思う。

それはプロの試合でも、程度の差こそあれ、基本的には同じなのではないだろうか。ドーンと打たれたボールをドーンと返すこともあるけれど、どちらかというと、ドーンと打たれたら、確実に受けるほうが一般的なような気がする(逆に言うと、ドーンと打ったのにドーンと返されるような「ドーン」しか打てないのではプロとしてやっていけない?)



上の水谷選手が張継科選手と対戦した場合(2010年のワールドカップ)と比べてみると、上の動画では、水谷選手が主導権を握り、ドーンと打ち込む場面も少なくない。それを張選手は下がってドーンと打ち返すこともあるが、ブロックで確実に止めにいく場面も見られる。プロの試合でも「ドーン」を「受け」るのは珍しいことではない。

昔の水谷選手は、プロの中では比較的守備的だったために王皓選手が必然的に攻撃的になったのかと思ったのだが、準決勝の馬龍選手との対戦をみると、同じように王皓選手がずっと「攻め」である。

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馬龍選手の豪打を物ともせず、カウンターで返し、相手にほとんど主導権を渡さない王皓選手の卓球をどうやって攻略すればいいのか。

こんな王皓選手に勝った張継科選手はどんな試合運びをしたのだろうか。

 
世界選手権2011 ロッテルダム大会 決勝

私の見立てなので、的を射ているかどうか甚だ疑わしいが、張継科選手のサービスが効いていたように感じた。そのため王皓選手のレシーブが少し遅れたり、ややボールが浮いてしまったりして、張継科選手に先手を取られてしまうポイントが多かったように思う。

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王皓選手のすごいところはたくさんあると思うが、バックハンドでどんな位置からでも、どんなボールでも攻撃できるのが最も印象的だった。ペンホルダーは、裏面が使えたとしても、やはりバックにドーンと打たれたボールを、バックハンドでドーンと返すことは難しいし、台から下がってのバックドライブなども、とっさに打つのは難しい。

私の低いレベルで考えてみても、ふつうはバックハンドに比較的速いボールが来ると、合わせるだけの「受け」のボールになりやすい。だから試合で打てるボールが来たら、私はとりあえずバック側に打つ。そのボールの威力が微妙でも、バックハンドならカウンタードライブなどが打ちにくく、次にこちらが連続攻撃をしやすいからだ。しかし、相手がバックハンドでガンガン攻められるとしたら、そういう安易なコースどりは危険ということになってくる。

ときどき上手な人と試合をさせてもらうと、自分の卓球を全くさせてもらえないという状態になる。それはつまりどこに打っても相手が「受け」に回らず、攻撃されてしまい、終始自分が「受け」に回らされるということである。私は相手によってはこういう状態になりやすい。相性のいい相手なら、自分の力が100%発揮できるのに、相性が悪い相手だと、50%以下の力しか発揮できない。

それに対してどんな相手でも安定してある程度戦える、安定して自分の卓球ができるという人がいる。私の回りにもこんな人がいる。私と実力はさほど変わらないのだが、その人は格上の人と対戦しても、ちゃんと自分の卓球をして負けている。私は格上の人と対戦すると、全く自分の卓球ができずに手も足も出ないで負けてしまう。この違いは何なのか。それを考えてみると、私の卓球には多くの穴があるからだと言わざるをえない。その穴を突かれると、合わせる「受け」のボールしか返すことができず、相手に一方的に攻められてしまう。王皓選手のようにどこに来たボールでも攻められるという穴のなさがあれば、おそらく自分の力を全く発揮できないということにはならないだろう。穴のなさ、言い換えればどこからでも攻撃できるというのはとても大切なことなのではないか、と上のビデオを観て考えさせられた。




 

卓球ジャパン・オープン2015観戦記

今年のジャパン・オープンは神戸だった。
去年、一昨年と二年連続横浜だったのが、ようやく神戸に戻ってきた(前記事「ジャパンオープン2012観戦記」)。
しかも今年は中国の一軍が出場するという未曾有(私の経験の中では)の事態だったのでぜひとも観戦したかった。平日は仕事で行けそうもないので、土曜か日曜の最終日となる。最終日は中国選手しか残っていない可能性が高いので土曜に観戦に行った。まだ観戦に行ったことがない人が、将来観戦するときのために役立つ大まかな情報を残しておこうと思う。

昨日は早朝から夕方までずっと観戦したので、帰宅したときはクタクタになってしまった。

アクセス:神戸地下鉄 山手線の「総合運動公園駅」下車。

総合運動公園2

三宮駅から22分。
以下、「ジョルダン」の乗り換え案内のデータより。JRならもう少し高くなるが、もっと早く着く。
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発着時間:08:19発 → 09:57着

所要時間:1時間38分
乗車時間:1時間26分
乗換回数:2回
総額:960円
距離:88.1km

■烏丸    2番線発
|  阪急京都線快速急行(阪急梅田行)   44.4km   前・中
|  08:19-08:59[40分]
|  620円
◇十三    6番線着・1番線発 [4分待ち]
|  阪急神戸線特急(新開地行)   29.9km   やや後
|  09:03-09:27[24分]
|   ↓
◇神戸三宮[阪急]/三宮    2番線発 [8分待ち]
|  神戸市営西神・山手線(西神中央行)   13.8km
|  09:35-09:57[22分]
|  340円
■総合運動公園    2番線着
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グリーンアリーナ

駅から公園内を徒歩10分ほど。

入場料:2000円(自由席)、3000円(スタンド席)、4000円(フロア席)
当日券、土・日の料金。前売りや平日、高校生以下などで料金体系に幅がある。
朝イチで行くなら、自由席でいい場所を取るのもありかもしれない。しかし、自由席のフロアに近い所はすぐに埋まってしまうので、スタンド席が無難。視力が弱い人や、間近で見たい人はフロア席がいいだろう。今回のように中国のトップ選手が出場するジャパンオープンなんてもう二度とないかもしれない。そう考えたら、1000円や2000円をケチるのは、かえってもったいない。

撮影:がんばってビデオや三脚を持っていったのだが、動画・静画撮影一切禁止!以前はそんなことはうるさくなかったのに。まぁ、これで卓球がテレビ放送されたりして、卓球の一般化に役立つならガマンしよう。しかし、そういうことは先に言ってくれ。というわけで、今回、試合の写真などは撮れなかった。

店舗:バタフライ等、大手卓球メーカーはブースを開いていた。ただ、バタフライは毎回おもしろくない。特価品がないのはもちろん、今回はユニフォームを中心に展示していただけだった。せめて新製品のインナーフォースレイヤーや、ガレイディア、ハッドロウといったラケットの試打のサービスぐらいあってもよかったのに。毎回バタフライのブースは工夫がない。ニッタクは紅双喜と共同?で入り口に一番大きなブースを開いていた。ユニフォームの販売が中心だったが、アコースティックインナーとアコースティックカーボンとプラボール各種の試打ができた。TSPは今回も特価ユニフォーム(1枚500~1500ぐらい?)があって一番賑わっていた。TSPありがとう!
弁当や飲み物も売っているが、やや高めなので、三宮等で購入しておくのがオススメである。

会場:土曜日は午前中は4台出ていて、午後からは2台になった。
10時から女子D準々決勝、男子D準々決勝。
11時から女子S準々決勝
12時から男子S準々決勝
13時半から女子D準決勝
14時から男子D準決勝
14時半から女子S準々決勝
15時半から男子S準々決勝
最後の男子S準々決勝が19時半から

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会場にそれほど不満はないのだが、掃除があまりなされていないのが気になった。
イスがくたびれているのはいいとして、折りたたみ部にホコリが溜まりまくっているのには閉口。

観客:7~8割ほど入っていて、いい雰囲気だった。サインくれくれ小僧が以前より少なかった。しかし、客席を走り回るならまだしも、フロアを走り回ってサインもらいに奔走していた子供がいたのにはうんざりさせられた。

選手:早い段階で馬龍選手と水谷選手が敗退してしまったのが残念だったが、ダブルスでは馬龍選手のプレーを生で観ることができて満足した。ほかにも許昕選手のフォアドライブのスピードはすばらしかった。また、劉詩雰、丁寧、樊振東選手を生で観られて満足した。
意外な収穫は閻安選手だった。

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織田信成選手のようなルックスが

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イメチェンで濃さが倍増し、いい味を出していた。

樊振東選手といい勝負を演じていたのだが、惜しくも敗れた。閻安選手は表情が豊かで愛嬌がある。これからもっとがんばってほしい。

私は個人的に吉村真晴選手を応援している(前記事「吉村真晴選手の豪快な両ハンドドライブ」)。

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吉村選手と世界最高のカットマン、韓国の朱世赫選手との試合はぜひ観たかった。しかし、時間が遅すぎて観るのを断念した。最終日に開催国の選手が誰も残っていないというのは寂しすぎるので、吉村選手の活躍を期待したい。

以上、簡単だが神戸グリーンアリーナでのジャパン・オープンの観戦案内である。

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そうそう、今、思い出したが、私はちょうど日本選手団の席の後ろぐらいで観戦していた。
日本女子選手はかわいらしい選手が多かったのだが、ひときわ目を引いたのが早田ひな選手だった。平野美宇選手もかわいらしいが、早田選手の純和風の容貌が忘れられない。まだ平野・伊藤選手のかげに隠れて目立たないが、早田選手にも遠からず一般メディアの注目が集まるに違いない。

【おまけ】
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「何をしてくるか分からない」――伊藤美誠選手の卓球

テレビ東京で伊藤美誠選手の世界卓球2015の試合を観て、大いに興奮させられた。

以下に伊藤美誠選手の試合結果についての記すので、まだ結果を知らない人はご注意いただきたい。












伊藤美誠選手は現在14歳の中学3年生。バックに表ソフトを貼り、前陣で速い卓球をするタイプ。同学年の平野美宇選手(前記事「いつだってフルスイング」)、早田ひな選手とともに次世代の日本女子卓球界を担う逸材である。

今回の世界卓球では4回戦でウクライナのカットマン、ビレンコを破り、準々決勝で世界最強の李暁霞選手に対して前半はリードさえしていた。

後半は李選手が次第に対応してきて負けてしまったが、それでも最後まで主導権はとられていなかった。あそこまで李暁霞選手を追い詰められる非中国選手は伊藤選手以外にいないのではないか。畏るべき中学3年生である。

バックハンドスマッシュ
目にも留まらぬバックハンド

以下に伊藤選手の強さの理由について考えてみたい。

伊藤選手の持ち味は、前陣での電光石火のバックハンドだけではない。
解説者の言を借りれば、伊藤選手は「何をしてくるか分からない」選手ということである。伊藤選手のプレーを観れば観るほど、なるほどと納得させられる。

伊藤選手は台上のボールさばきが多彩で、フォア前にストップするかと思えばバック深くに鋭いツッツキ。2球目をいきなりバックで強打してきたり、はたまた2球目でフォアサイドを切る厳しいコースのバックフリックを放ったりする。

フォア前にフリック
しれっとフォアサイドを切る、こんなボールを打ってくる

私には分からないが、おそらくツッツキの回転にも変化をつけているのだろう。このような変幻自在なレシーブに振り回されて、相手はなかなか主導権を握れず、李選手は思い通りに強烈なドライブが打てない。

伊藤選手が先手を取って、強烈なスマッシュを放てるのは、この台上技術、とりわけ正確なツッツキやフリックのおかげなのではないかと思える。私のようなヘタクソの見立てなので、伊藤選手のプレーをうまく言い当てている自信はないが、伊藤選手の低く短いストップと深くて速いツッツキ、台から出るか出ないかのストップなどは、相手に待ちを許さない。

同じサービスを出しても、

あるときはフォア前にストップ、
あるときはバック深くに鋭いツッツキ、
あるときはバックハンドで深いフリック、
あるときはバックハンドで強打、
あるときは台から出るか出ないかのツッツキ

しかも、どれも打点が早いとなると、3球目で心理的に待てない。普通の選手なら、おおざっぱにフォアで7割、バックで3割などと、2つの場所ぐらいである程度待てるが、伊藤選手の場合、レシーブが多彩で打点が早いので、そうそう待てないのではないだろうか。例えばこちらがサービスを出した時、3球目はバックハンドドライブ狙いで3割ぐらい待っていなければならないし、フォアドライブでも3割ほど待っていなければならない。さらに早くて短いストップに対しても3割待っていなければならないし、バックに強打が来る時もある…などと考えてドキドキしながら3球目を迎えると、あにはからんや、ふわっとしたループ気味のバックドライブがエンドラインギリギリに入ってきたりする。こんなふうにどの「球目」でもどこにどんな返球が来るか予想しにくいとなると、相手はギリギリまで攻撃の姿勢に入れないと思われる。

私のレベルでも、上手な人は「何をやってくるか分からない」。こちらが的を絞れないので、どうしても後手後手にまわり、主導権が握れない。

なるほど。主導権を取るためには、レシーブを散らしていけばいいのか。私なんかは相手のサービスに対して2パターンぐらいのレシーブしかできないが、4~5パターンのレシーブを見せることによって「次はどこに来るのか」と相手を足止めすることができる。

今まで「主導権を握る」というのは、短いボールでも無理やり打っていって先手を取ることだと思っていたのだが、このように相手に的を絞らせないというのも主導権を握ることになるのだと教えられた。

このような変幻自在のレシーブは何によって支えられているのか。それは厳しいコースに絶妙の長さで打ち分けられるコントロール能力だと思われる。伊藤選手は相手のサービスやレシーブに対して安定して低いレシーブができていた。うっかり浮かせてしまい、相手に強打されるような場面は少なかった。言い換えれば、主導権を取るというのは、何を措いてもまず思い通りの場所に低く打てるコントロール能力にあるのではないか。

それと、解説を聞いていて気になったのは「相手をよく見てますねぇ」という発言だった。伊藤選手は相手の動きをよく見て、相手が回りこみそうだったら短いレシーブやフォアサイドへの鋭いレシーブといった対策をとって相手に打たせないようにしているようなのだ。そのためには自分の打球を見る時間を最小限にし、相手の様子からできるだけ目を離さないようにしなければならない(前記事「ワリヤゴナドゥ」)。相手をよく見ているから相手の裏をかくコースどりもできる。フォアスマッシュをクロスに打って、相手が戻ろうとしたところにもう一度フォアクロスにスマッシュ2度突き。こんなシーンが対ビレンコ戦でよく見られた。

最後に駆け引きである。
普通の選手なら、リードしている場面や、デュースの場面等になると、慎重に行きたくなるものだ。レシーブは短く、厳しいコースよりも、とりあえず入るコースを狙うものだと思う。しかし伊藤選手の場合は逆にふつうの選手が萎縮するような場面でかえって思い切った攻めのボールを放つことが多い。

李選手との試合でも、2ゲームを先取しながら、こっちがハラハラするようなボールを何度も放っていた。普通は、「せっかく世界チャンピオンを相手に3点リードしているのだから、ミスの少ない堅実なプレーをしよう」と思うところだが、伊藤選手は逆に「今こそ勝負の時だ」と言わんばかりに臆することなく果敢に攻める。

フォアスマッシュ
いい流れでデュース。緊張する場面なのにかえってイケイケ。

ゲームカウント2-2で迎えた5ゲーム目をデュースで落としたのが痛かった。あれを取っていれば大金星もありえたかもしれない。

【まとめ】
以上、伊藤美誠選手の特徴を「多彩なレシーブ」「相手に対する観察」「かけひき」の3つの観点から考察してみた。 とりわけレシーブで相手に的を絞らせないことが、これほど対戦で効果を発揮するというのは発見だった。これは私の低いレベルの対戦でも十分活かせる技術なので、これからは安定したラリー能力よりも、むしろ深浅自在なツッツキ能力を磨きたいと思う。
 

東京選手権2015観戦記――厚谷武志選手のプレー

先週、第67回東京卓球選手権大会を観に行った。
私はレベルの高い大会というのは、過去に神戸で行われたジャパン・オープン、大阪の日本リーグ、大津の高校選抜を観に行ったことがあるが、全日本選手権はまだ観に行ったことがない。東京選手権は私が観に行った大会の中でも極めてレベルの高い大会だった。来年、東京選手権を観戦したいという人のために、どんな雰囲気か感想のようなものを記しておきたい。

まず、会場だが、JR千駄ヶ谷駅前の東京体育館で行われた。東京駅から30分ほどのところだろうか。JR総武線と都営地下鉄大江戸線でアクセスできるようだ。

入場料は一日1000円。安い。しかもビデオ撮影なども禁止されていない(ストロボを使った写真撮影は禁止)ので、いろいろな選手の動画が撮れた。

そして出場選手の顔ぶれがすごかった。日本代表を除いた超有名選手が勢揃いといった感じだった。しかも、その辺を歩いていると、上田仁選手が客席のそばに立っていたり、張本智和選手がそのへんを歩いていたり、森本耕平選手に至っては、私の後ろに座って観戦していた。他のスポーツは知らないが、雑誌などで目にする超有名選手が手の届くような距離で観戦していたり、すれ違ったりといったいうのは試合会場ではふつうのことなのだろうか?サインや写真撮影を求める人は誰もいなかったが、みんなそんなことをしたいと思わないのだろうか?自分のお気に入りの選手と卓球の話ができたら、一生の思い出になるのではないか。私は有名選手にちょっと声をかけてみたいという欲求にかられたが、試合のことで頭がいっぱいだろうから、遠慮した。しかし「がんばってください!応援しています」ぐらいの言葉はかけても迷惑じゃないだろう。

卓球メーカーのブースも7~8店舗でていたが、特価品のようなものはあまり多くなかったので、よく見ていない。バタフライのカタログをもらってきた。

私は会場の端っこで観戦していたのだが、選手との距離がとても近く、興奮した。座った目の前で中央大学の山本怜選手がプレーしていた。評判通りの美人だった。

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私が訪れたのは15日の4日目だったのだが、シードの有名選手が次々と登場するとあって客の入りは7割ほど、なかなかの盛況だった。

その中で私の関心を引いたのは専修大学の厚谷武志選手だった。『卓球王国』などでよく名前だけは目にするし、前記事「TOKYO OPEN 2014 第66回 東京卓球選手権大会のスコアを眺めながら」で触れたこともあったのだが、どんな選手か全然知らなかった。しかし、名前だけはよく目にする。

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大きく分類すればカットマンなのだが、後陣からの攻撃力がすごい。ボールのスピードもあり、単なるカットマンというより、カットもできる攻撃型といった感じに見えた。そしてなによりすごかったのは、ミスの少なさである。3m以上下がったところから全力でドライブを放つのだが、それがほとんどミスしない。カットも同様にミスが少ない。そして相手の強打をカットでしのいだ後に、全力のドライブで反撃という、フロアを大きく使った派手なラリーをするので、見栄えがいい。ふつう、豪快なプレーをする選手はミスが多いというイメージがあるが、厚谷選手の場合、非常にボールを丁寧に扱っているように感じられた。ボールのスピードや回転量などには注目があつまるが、私はミスの少なさにこそ注目したい。どうすればあんなにミスが少なくできるのだろうか、何かコツがあるのだろうか。もし厚谷選手と話す機会があれば、そんなことを聞いてみたい。豪快でいて、かつ繊細なボールさばきというのが多くの人の注目を集める理由なのだろう。結果はベスト16だったようだ。 


専修大学というのは今では明治大学や早稲田大学ほど注目されていないが、過去には伊藤繁雄氏、河野満氏、今なら王凱選手、田添健太選手と常に強い選手を揃えている名門なんだなぁと気づかされた。

試合は朝の9時頃からはじまり、18時頃までやっているようだ。次から次へと有名選手が登場するので、16時ごろにはビデオのバッテリーが切れてしまった。しかし、16時以降にはもっと有名な選手が登場したので、ビデオ撮影をするなら、夕方までバッテリーの余力を残しておいたほうがいいと感じた。

東京の人は恵まれている。こんなレベルの高い試合が一日あたりたった1000円で観戦できるのだから。
 

姿勢の崩れ――台湾卓球名人賽2015から

新年早々台湾で卓球の大会があった。
台湾卓球名人賽である。
たしか、蒋智淵選手の故郷、高雄市で卓球を振興するために去年から始まったイベントだったと思う。



以前、水谷選手のブログで ”世界ランキングに関係ないので、リラックスしてプレーできる” といったことが書いてあったように記憶している。新年の和やかな「お祭り」のような大会で、今後も末永く続いていってほしいものだ。

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試合中にこんな笑みをこぼす水谷選手は珍しい

本大会には日本からは水谷選手が招待されており、調子も上々らしく、順調に決勝までコマを進めた。去年から水谷選手の強さは際立っており(前記事「やられっぱなしじゃないぜ」)、ワールドツアーグランドファイナル優勝をはじめ、多くの大会で好成績を残している。今年の水谷選手にも期待大である。

去年の本大会では相性のいい蒋智淵選手選手を決勝で破り、水谷選手が優勝したが、今年は残念ながら、決勝でオフチャロフ選手に敗れてしまった。

この試合を水谷選手がどのように失点しているかよく観察してみると、だいたい以下の4つのタイプに分かれそうである(絶好球をスマッシュされて、なすすべがないような場合は除く)

A:感覚的なミス
サービスミスや、絶好球なのにネットミスといった凡ミス。

B:回転の読み違い
相手のサービスの回転を読み違えてネットミス、あるいはブロックで準備していたのに、予想を上回る回転のドライブを打たれて、ブロックが飛ばされてしまった場合等。

C:タイミングのずれ
ラリーの途中でふわっとしたドライブが来て、タイミングが合わずにミスしたり、きちんと相手の打球が来る位置で待っているのにボールが予想以上に速くてオーバーミス等。

D:体勢の崩れ
まだ構えができていない状態で速いツッツキを打たれたり、ミドルに速いボールを打たれて詰まったり等。

平板に4つの項目を並べてみたが、実は構えができているかどうかでDとそれ以外に大きく分類し、構えができているのにミスをした場合をさらにABCに分類してみた。

ミスの原因
構えができているかどうか
→できていない(D)

→できている
  →タッチ(A) スピン(B) タイミング(C)


水谷選手ほどのレベルになると、「世界のトップ選手がラリーの中で、体勢が整っている状態でミスをすることはほとんどない」(前記事「日本代表レベルの視点」)。そこでDとそれ以外に分けたわけである。

おそらくプラスチックボールで行われているためか、水谷選手らしからぬサービスミスが何本かあった。Aである。そして強打者のオフチャロフ選手の回転のかかったドライブでブロックが弾き飛ばされてしまったり、オフチャロフ選手のサービスが読めず、浮かせてしまったりしたボールもある程度あった(B)。オフチャロフ選手のすさまじいスピードのドライブに打ち抜かれてしまうことも、もちろんある(C)。しかし、注目すべきはDの、構えが不十分なところへ打たれて間に合わず、苦しい姿勢で打った結果、ミスという類である。

前記事「「正しい」とか「間違っている」とか」で卓球は腕で打つスポーツではないと書いたが、この試合を観て、その思いをますます強くした。水谷選手ほどの選手でもミスするのは、Dの姿勢の崩れに起因するものが多いと感じたからだ。相手の打球に即座に反応できず、あるいは予測の裏をかかれて判断が一瞬遅れ、構えが間に合わなかったことが結局ミスにつながっているのではないか。
腕の振りがどうの、ラケットの角度がどうの、というのは卓球では本質的ではない。ボール打つのに最適の場所に移動できさえすれば、A~Cのミスの多くは防ぐことができる。卓球では十分な構え・姿勢から打てるかどうかが勝敗を分けるのだ。もちろん私のような低いレベルのプレーヤーは構えが十分にできていても、A~Cのミスが多いのだが、しかし、Dがしっかりしていれば、A~Cのミスは激減すると思われる。本記事の分類ではDとA~Cのミスを同レベルに並べてみたが、実はDが前提となってA~Cのミスが引き起こされると考えたほうがあたっているかもしれない。

今年は姿勢や構えを安定させるような下半身を中心にした練習を心がけたい。

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