ラージボール卓球のボールは不思議だ。
ラージボールは直径44ミリで、硬式の40ミリよりわずかに大きい。つまり空気抵抗が大きい。それだけでなく、硬式よりも軽いので、独特の軌道を描く。譬えて言うなら風船を叩いたような感じだ。風船をバレーボールのように叩くと、叩いた瞬間は速く飛ぶが、すぐに減速して落ちる。ラージボールを硬式のつもりで打つと、同じようにポトッと落ちる。単に弾まないだけかと思うと、ときどきほとんど力を入れていないのにボールが台から出てしまう時がある。かなり力を入れてプッシュをしたら、ネットにかかってしまうと思ったら、ラケットを動かさず、ブロックしただけでポ~ンと飛んで行ったりする。ラージボールの弾み方は硬式球とは少し違うらしい。
そんなわけで硬式が上手な人はラージを敬遠する。「勘が狂う」というわけだ。
ラージをすることは硬式にとってマイナスにしかならないのだろうか。

私はラージは硬式にも益するところが大きいと思う。その最大の利点は打点の早さが身につくことである。
ラージボールが飛んでくる勢いを真正面から受け止めると、落下率が高い。その一方でボールの勢いの軸を外して、言い換えればボールの勢いを利用して掬うように返球すると、さほど力を入れずともボールが気持ちよく飛んでいく。それが如実に現れるのは、バウンド直後のボールを返球した場合である。ラージボールで気持ちよくラリーするにはかなり早い打点で打ち返すのが有効である。ラージのラリーはこのような早い打点での打ち合いになる。このタイミングが身につくと、硬式でも現代的な早い打点の卓球ができるようになるのではないかと考える次第である。

また、ラージのボールの遅さも美点の一つである。ボールが遅いことによってフットワークの練習にもなる。ラージのボールは遅いので、台の前後左右に大胆に動いても間に合う。硬式だったら、ボールが速すぎて動く前から諦めてしまうところをラージなら一所懸命動こうという気になるボールの遅さなのだ。これによってフットワークの足使いが身につけば、それを速めることで硬式にも対応できると思う。私のようなヘタッピは硬式のラリーでは速すぎてきちんとしたフットワークが練習できない。また、ラージボールは遅いので、自分のフォームを確認するのにも役に立つと思う。テイクバックが大き過ぎないか、戻りが素早くできているかなどを確認する時間的な余裕がある。

ラージはこのように硬式にも役立つ要素がある。ラージ人口がもっと増えてほしいものである。

今、ラージボールは中高年向けの特殊な卓球という位置づけだが、20年後はラージボールが一般的な卓球になり、硬式のほうが特殊で専門的なスポーツになっているかもしれない。

昔、日本にスノーボードが紹介されたばかりの頃は、スキーが一般的なスポーツでスノーボードは物好きな人のスポーツだったが、最近の統計によると、スキー人口は減少の一途をたどり、スノーボード人口とほぼ同じになっているらしい。しかし、今の若い人にとってはスノーボードのほうが親しみやすいスポーツなのではないだろうか。

ラージは卓球未経験者を取り込めるポテンシャルを持っている。若い男女がデートの一環として硬式卓球をするのは想像しにくいが、ラージなら想像できる。ラージのスター選手が生まれて、メディアが盛り上げでもすれば、ラージがボーリングのような若者のメジャーな娯楽になるのも夢ではないと思う。ただ、そのためにはラージで遊ぶ工夫が必要だろう。経験者と未経験者がプレイをすると、硬式ほどではないにしても、やはり能力的にかけ離れているので、長時間楽しむことは難しい。経験者と未経験者が楽しめるようにハンデを付けられるような工夫があればいいのだが。たとえば、未経験者側の台の上にタオルを広げて、そこに落ちたボールは失点扱いにするとか。