6月とは思えないほど涼しかった今年の6月。
7月に入ってやっと蒸し暑くなってきた。我が家でも扇風機の出番である。
扇風機

しかし、こんなムシムシするなか、部屋にこもっていると、非常に不快である。
久しぶりに近所のNさんのお宅に行って、卓球談義でもしてみようか。

Nさんのお宅で、世間話をしながら、卓球の相談にも乗ってもらう。
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しろの「最近、フォアドライブを打つのがおっくうで…。グッと回転をかけるのに筋力が必要だし、フォアドライブを打った後、上半身が流れてしまって、次の球にフットワークが間に合わないんですよ。」

Nさん「それは左半身で壁を作らへんからや。もっとコンパクトに振ってみたらどうや?スイングの最後にグッと前腕を使うと威力が出るで。」

し「いえ、年齢的なことを考えると、ドライブを磨くよりも、ミート打ちの方にシフトしていきたいんです。ミート打ちって、あんまり力が要らないし、打った後の体勢の崩れも小さいですし。ミート打ちってやっぱり水平に振るだけですか?何かコツみたいなものはないですか?」

N「下回転を打つなら、やっぱり『のっけて』打たなあかんで。」

し「その『のっけて』というのがよく分からないのですが、どういうことですか?」

N「飛んでくるボールを横から見て、2時の辺りをラケットが触ったら、ボールは下に落ちるわな。回転が弱かったり、高かったりしたら、3時辺りを打ってもいいかもしれんが、下回転が強かったら、ボールの4時辺りにラケットを触れて、『のっけて』打つんや。」

し「つまり、面を垂直に立てるよりも、もう少し上に開いて打つということですね?しかし、4時で打ったら、ボールが10時の方向、つまり斜め上に飛んで行って、オーバーしてしまいませんか?」

N「5時ならオーバーしてしまうかもしれんが、4時なら大丈夫や。重力で下に落ちてくれる。あとは感覚や。ひたすら打ってどの方向にラケットを運べば入るか、身体で覚えるんや。」

し「4時でボールに触って、『のっけ』ないで打つことは可能ですか?」

N「???」

し「私が知りたいのは『のっけて』打つということは、ボールに触る位置だけを指すのか、触ってからのタッチまで含むかということなんです。つまり、『のっけて』打つというのは、『4時に触る+ボールを持つようなタッチ』によって成り立っているのか、『4時に触る』だけを指すのかが知りたいんです。」

N「???」
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私の知りたいことをNさんに伝えるのにかなり難儀した。『のっける』というからには、4時を触った後、弾くような短いタッチではなく、押し出すような長いタッチで打つのではないかと思ったのである。そこから10数分やりとりが続き、Nさんはようやく私の知りたいことを理解してくれたのだった。結局、Nさんの言う『のっけて』の意味は、どうやらタッチまでは含まないらしかった。卓球の微妙な感覚を誤解なく言葉で伝えることの、なんと難しいことよ。

感覚を言葉で伝えるといえば、私はようやくフォアフリックの感覚を言葉で表現できるようになったので、シェアしたいと思う。

下回転ショートサーブをフリックするには、ラケットを上に振らなければならないと思う。さきほどの例でいえば、ボールの3時に触れて上に振るのである。しかしここで矛盾が生じる。ラケットの動く方向は上方向なのに、ボールは前方向に飛ばさなければならないのである。
私はずっと台上で小さなループドライブを打つようにラケットを垂直にこすり上げてフォアフリックをしていたのだが、この「台上ループドライブ」では強い下回転が持ち上がらない。台上なのでバックスイングがほとんどとれないし、ボールの飛んでくる力が弱いので、ラバーにぶつかっても、ボールがラバーにあまり食い込まないのである。
かといって、ラケットを斜め前方向に動かしてボールにぶつけて食い込む力を得ようとすると、強く打てない。強く当てるとボールがネットを越えないのである。上方向に力を加えつつ、ボールをラバーに食い込ませ、前方向に飛ばさなければならない。そんなことが可能なのか?

私の出した結論は、扇風機の羽である。船のスクリュー、あるいは飛行機のプロペラでもいい。これらはすべて垂直方向の力を水平方向の力に変える働きをしている。つまり、ラケットで言えば、面を垂直に立てるのではなく、ほんの少し上に開いて――ボールの4時に触って小さく鋭く思い切り上に振るのである。そうすると、ボールはそこそこのスピードでネットを越えてくれる。

反対に前方向の力を上方向に変えるのは、ツッツキである。ツッツキはラケットを上方向に動かしていないのに、ボールは斜め上に飛ぶ。面を上に開いた状態で、前方向にラケットを動かせば、ボールには上方向の力が加わる。

フォアフリックとツッツキは、ラケットを動かす方向こそ異なれ、同じ仕組みでボールを飛ばしているわけである。