Sさんは大学までガッツリ卓球をしてきた、とても上手な人である。ものすごくフットワークがよくて、フォアドライブが強烈である。

そんな人と先日ゲーム練習をした時のことである。Sさんのサーブを私がレシーブすると、ものすごい3球目強打が返ってくる。私がなんとかブロックすると、Sさんはさらにドライブを連打してくる。しかもコースが厳しい。うまくブロックできた時は、2回、3回とブロックするが、結局打ち抜かれてしまう。私はSさんに強打されないようにレシーブのコースを散らし、サイドを切ったりするのだが、Sさんはフットワークがいいので、どんなコースに返しても最終的にドライブ強打を打たれてしまう。

2ゲーム目の途中で気づいた。

今まで私のほうから攻撃したことってあったっけ?サーブを持っても、レシーブでも、とりあえすSさんが先に攻撃して、それを私がブロックするという展開ばかり。私が得点できるのはSさんが凡ミスしたときや、打ちミスをした時だけだといっても過言ではない。こんなに攻撃されてばかりでは勝てるはずがない(まぁ、ふつうにやったら勝てないのだが)。いつかきっと反撃のチャンスがめぐってくる。そのときになんとしても私の方から攻撃しなくては!

そんなことを考えていたのだが、結局0-3であっけなく負けてしまった。私からの攻撃は?
なんと、ほぼ一度も私の方から攻撃できなかったのだ!

「いやぁ、強いですね。私もいつか攻撃できるチャンスをうかがっていたんですが、全く攻撃できませんでしたよ。」
「しろのさんのレシーブって、基本、ツッツキか、フリックじゃないですか。台から出たら、だいたい(ドライブを)かけれるので、ストップとかも使って、前後にゆさぶった方がいいですよ。」

そうだったのか!自分では全く気づかなかったが、私はストップをほとんど使っていなかったらしい。レシーブが苦手だというのは頭では分かっていたが(前記事「上手いレシーブとは」)、これはあまりにもひどすぎる…。そりゃそうだ、あんなに縦横無尽に動き回るSさんなら、台から出るボールはどんなボールでもチャンスボールになってしまうにちがいない。

台上技術って基本がツッツキで、それにフリックやストップというアクセントをつけるものだと思っていたのだが、Sさんの言葉から察するに、台上技術の基本はストップで、それに深いツッツキやフリックでアクセントをつけるのがいいんじゃなかろうか。

今までの私の認識:台上ではツッツキが基本。たまにストップやフリック。
Sさんの認識?:台上ではストップが基本。たまにツッツキやフリック。

最近見た、2006年の全日本決勝、水谷隼選手 対 吉田海偉選手の試合を思い出した。
水谷選手は当時高校2年生。対する吉田選手は全日本2連覇(2年間、全日本で無敗。17勝0敗)という当時の日本最強の選手。解説の宮崎義仁氏によると、吉田選手のフォアドライブのスピードは「世界でも5本の指に入る」というもの。

吉田選手が考えていることはおそらくこうだろう。「先にフォアドライブさえ打てれば勝てる!」。いくら守備力の高い水谷選手でも、吉田選手にフォアドライブを振らせてしまったら、勝てる見込みは薄い。そこで水谷選手のサーブは基本的に台から出ないショートサーブ。レシーブは基本的にストップを徹底していた。これではさすがの吉田選手も得意のフォアドライブを封じられてしまう。試合を通して両者が台上でしのぎをけずっているのがよくわかる。

水谷ストップ
フォア前をストップする水谷選手

https://www.youtube.com/watch?v=nE1MzWDBoNg

私がSさんにやっていたことは――レベルは全然違うが――吉田選手に対して台から出るツッツキレシーブを送ってしまうようなものだったのだ。どんなに速いツッツキでも、コースが厳しくても、台から出してしまったら、Sさんのとんでもないドライブが飛んでくる。
私も水谷選手のようにサーブは基本、フォア前に台から出ないショートサーブ。そしてときどきアクセントとしてバックに速いロングサーブ。レシーブは基本、ストップ。そしてときどきアクセントとして深いツッツキ。こういう戦術にしなければ、こちらから攻撃するチャンスは永遠にめぐってこないのである。

一発強打を持っている相手に対してチャンスを作るためには、台上技術がカギになる。この敗戦がきっかけで私はようやくそのことに気づき、遅ればせながら、レシーブを研究しようとし始めたのだった。

レシーブ巧者への道のりは長く険しい。