今はもう聞けなくなってしまったが、ナウ・ボイスというサービスで水谷選手が卓球全日本選手権2021について予想のコメントしていた。早田ひな選手について

「レシーブがあまり上手じゃないので、そこがちょっと。他の技術がいいだけに、なんだかモヤモヤする」

というようなことを言っていた。

ふ~ん。トップ選手から見ると、早田選手のレシーブはあまりレベルが高くないのか。そもそもレシーブが上手ってどういうことだろう?サービスが上手というのはよく話題になるが、レシーブが上手というのはあまり考えたことがなかった。チキータとかで2球目を強打できるとか、低く深く返せるとか、ストップの精度が高いとか、そういうことだろうか。

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先日、ゲーム練習をしてコテンパンにやられてしまった。そのとき、レシーブが下手ということがどういうことなのか、身をもって知った。なんと私はレシーブが下手だったのだ!

それまで私は、自分がレシーブが下手という自覚がなかった。というより、どちらかというとうまいほうなんじゃないかとさえ思っていた。あまりレシーブミスをしないし、サーブを浮かせないで返せる率も高いし、チキータやフリックだってやろうと思えばできる。しかし、「レシーブが上手」というのはそういうことではなかったのである。

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全日本卓球2021の決勝はちゃんと見たのだが、準決勝は忙しくて見る余裕がなかったので、あとでスポーツブルというサイトのアーカイブで確認してみた。石川佳純選手対木原みゆ選手の試合である。

試合前は石川選手が木原選手に滅多打ちにされるのではないかと思っていたが、ふたを開ければ石川選手が無難なスコアで勝っていた。何が起こったのか、攻撃力の高い木原選手の猛攻をどうやって封じることができたのか、そういうことに興味を持って観戦してみた。

木原選手はバック表である。バック表は相手がとりにくいバック強打が打てる一方で、低い下回転ボールには弱いという欠点がある。そこを石川選手はみごとに突いてきた。

木原選手のバックに深いロングサーブを送る。木原選手はバックハンド強打で応じるが、入ったり、入らなかったり、安定しない。1、2ゲームは石川選手が危なげなく連取した。

石川選手のサービスの組み立てがよかったですね。1ゲーム目、長いサービスを多く出したことによって、木原選手のレシーブが非常に甘かったかなと思うんですね。木原選手のサービスも、石川選手がうまくレシーブできてるので、自分から先に攻めるというパターンがあまりなかったんですよね。そしてバックハンドの自分の打つ位置も今、まだ少し定まらない状態でプレーしていますので、ラリーの中でも非常に苦しいラリーが多かったかなって思うんですね。
やはり、今のところは石川選手の戦術というところが非常に上手いかなと思うんですよね。(森本文江氏の2ゲーム終了後の解説)

石川選手は「うまくレシーブできてる」? 特に鋭いレシーブをしていたという印象はないが、ここまでの石川選手のレシーブというのが「上手い」レシーブ?

3ゲーム冒頭。木原選手のサーブを石川選手は、相手のミドルあたりへつっつく。鋭いボールではない。ほわーっとした深いツッツキである。
kihara reveive
木原選手はバックハンドでこすり上げようとするが、勢い余ってオーバーミス。どうやらあまり切れていなかったようだ。バック側(ミドルだったが)への深い下回転が木原選手の弱点だということを見抜いたレシーブである。

そうやってバック側を意識させておいて、次のロングサービスを石川選手は浅く相手のフォア側にストップ。台からギリギリ出る微妙なレシーブとなり、木原選手はフォアドライブを空振り。
kihara karaburi

なるほど、レシーブが上手いというのはこういうことだったのか。

全日本卓球2021 | スポーツブル (スポブル) (sportsbull.jp)


たとえば、ツッツキにしても、低くて速いツッツキを送れるに越したことはないが、そればかりやっていたら、当然相手に対応されてしまう。切れた速いツッツキの後にゆっくりした切れていないツッツキを送ったり、バック奥の後にフォア前に送ったりと、相手に的を絞らせず、相手の待ちをうまく外すことができるのが「レシーブが上手い」ということになるのだろう。そのためにはボールの高さや深さ、コースといったコントロールの技術の高さも必要だが、それよりも読みや予測といった心理面が重要になってくる。よく上級者のユーチューバーとかが「私はレシーブが苦手で…」などと話しているが、あれは低いツッツキができないとか、フリックをミスしがちだとか、そういう技術的な意味ではないだろう。そうではなく、戦術的に「相手の待ちをうまく外せない」という意味なのではないか。

私は試合にめったに出ないで、基本練習ばかりしているので、相手の待ちを外すとか、次のボールを読むといった試合の駆け引き等はめっぽう苦手である。ゲーム練習で負けたら、レシーブ時に「バックドライブの威力が足りなかった」とか「フリックの精度が低かった」などと考えて、またそのような技術を高める練習にばかり励んでしまうのだが、そういうことをして、技術面の課題を克服できたところで、よほど実力差がある相手でないと勝てないだろう。同じぐらいの実力の相手に勝つには頭を使って相手に打たせない、「上手いレシーブ」を送らなければならない。別に厳しいボールでなくてもかまわない。ゆっくりしたツッツキやストップでも相手の待ちを外したり、強く打たせなければ、レシーブとしては合格点である。

となると、「レシーブが上手い」ということは、つまり3球目を相手に厳しく攻撃させないということに近づいてくる。

早田ひな選手と伊藤美誠選手の準決勝をみると、伊藤選手が3球目で厳しく攻撃している場面が多かった。これは早田選手が有効なレシーブができなかったということになるだろうか。
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伊藤選手の和柄てんこもりのユニフォームがかっこよかった。

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そういう視点で考えると、「サーブが上手い」というのも、3球目の攻撃につなげられるかどうかということになる。一般的には「サーブが上手い人」というと、回転が分かりにくく、サービスエースを連発するような人をイメージするが、そうではなく、相手の待ちを外して、自分の3球目攻撃につなげられる人は、たとえ凡庸なサーブしか出せなくても「サーブが上手い人」になるのではないだろうか。

こういう視点で上級者の試合を見ると、戦術とか、試合の組み立てということが意識されるようになってくる。派手な打ち合いではなく、サーブ・レシーブでどのような工夫をしているかに注目すると、試合観戦がより楽しくなってくる。

私が先日のゲーム練習で負けたとき、私はどんなレシーブをしていただろうか。
たぶん、低く速いボールを送ることに汲々として、相手が3球目で待っているところにばかり送ってしまったのだと思う。自分では悪いレシーブではないと思っていたのだが、結果は3球目強打を浴びまくった。相手の狙い通りのレシーブを送ってしまっていたのである。

これまで卓球で頭を使うのが苦手で、ずっと避けてきたのだが、今回の全日本の女子準決勝の試合を見て、私も少しは頭を使わないとダメだと反省させられた。