この世の自然現象の基礎的な法則を記述した物理学という学問がある。
私もはるか昔にちょっと勉強したような記憶があるのだが、何一つ覚えていない。
この世の法則を数字の言葉で記述したのが物理学だと思うのだが、よく分からない。
いったいこの学問は卓球に役立つのだろうか。
一流の指導者や選手は物理学を学んで卓球に応用したりしているのだろうか。
そういう話を聞いたことがない。
おそらく物理学が卓球の役に立つこともあるのだと思うが、物理学を勉強しなくても卓球の指導はできるし、卓球は上手になるのだと思う。
とすると、卓球の上達のために、あまり楽しくなさそうな物理学を無理に勉強する必要はないと思われる。

私は卓球における自然現象を数字の言葉ではなく、私の通俗的な言葉で記述してみようと思う。
数字を使わず、おおざっぱな記述になってしまうが、分かりやすいならそれでいいのではないだろうか。学問のような高度なものではなく、現在の私の卓球における物理現象に対する感覚的な理解だと考えていただきたい。したがって、正しい記述だという保証はない

----------
卓球でドライブを打つときのことを考えてみよう。
このとき、大切な要素が二つある。
一つは押す力、もう一つは引っ張る力である。

下回転の低いボールが来た。これをドライブで返球するなら、ラバーに食い込ませて引っかける、一般的な言い方を使えば、「こする」必要がある(引っ張る力)。だが、こするだけでは勢いがつかないので、押す力もある程度加えてやる必要がある。

前記事「カットマンの嫌がること」で卓球丼氏の力がなくてもできるカット打ちというのを紹介した。バウンドして、ボールが上に跳ね上がる力を最大限に利用して、バウンド直後に真上方向にちょっとだけラケットを振り上げ、こすり上げるというカット打ちである。これはいわば、こすり(引っ張る力)が9で、押しが1のドライブである。この打ち方は安定性は高いが、押す力が極端に小さいので、威力のあるボールは打てない。

したがって、下回転のボールをある程度威力のあるドライブで返球しようとすると、押す力をもっと強くしなければならない。

私はバックドライブの時によくボールをネットにかけてしまうのだが、不思議に思うことがある。ドライブではスイングスピードが大切だから、スイングスピードをできるだけ速くしようとがんばって振ったのに、持ち上がらなくてネットに引っかけてしまったり、そうかと思うと遅いスイングスピードでやさしくゆっくりこすり上げた、ふわっとしたドライブが悠々とネット越えていったりする。これはいったいどういうことなのだろう?全力で振ったバックドライブがネットにかかり、ゆっくり振ったバックドライブが危なげなく入ってしまう。

ドライブの安定性は、スイングスピードではない、別の要素が関与していると判断せざるを得ない。

この場合、おそらく押す力が強すぎて、引っ張る力が弱すぎたのだと考えられる。つまりボールがラバーに引っかかって、これから引っ張ろうとするときに、押す力がボールをはじき出してしまい、ボールを十分引っ張れなかったというわけである。

安定したドライブをかけるためには押す力を控えめにして、引っ張る力のほうを強くしなければならない。押す力2、引っ張る力8だと、まだ威力が弱いから、押す力を3~4、引っ張る力を7~6にしたら、ちょうどいいあんばいのドライブが行くのではないかと思っている。

押す力が弱まると、ボールの威力も弱まるとは一概に言えないと思う。スイング方向が前方向で引っ張る力が強烈なら、押す力が弱くても、引っ張る力だけで威力のあるボールが行くはずである。そして安定性と威力を両立させるには、引っ張る力を優先的に活用しなければならない。

引っ張る力を強めるには、スイングスピードが必要である。ラバーにボールがひっかかった状態のまま強い力で引っ張ってボールを相手コートに、いわば「投げ入れる」わけである。押す力はボールの引っかかっている時間を短くしてしまう。速いスイングスピードで、引っ張る力を最大限にしつつ、押す力を弱めるのが理想である。

押す力を弱める方法はいくつかある。

たとえばボールがラケットに接触するまで力を入れないという方法――つまりボールを「引き付ける」である。逆に言うと、ボールが当たってから力を入れるということである。これはたとえばバルサミコ氏が3hit理論という考え方で提唱しているものに近いものかと思う。ボールとラケットが数十センチも離れた状態からスイングスピードを上げて、ボールとラケットが接触すると、押す力が強すぎて、ボールがラバーに引っかからず(ボールを持てず)、ネットに引っかけたり、逆に直線的に飛んで行ってオーバーしてしまう。氏がスイングスピードを加速させるのはボールとラケットが接触する寸前にするというのは、押す力をできるだけ抑え、引っ張る力を確保するための工夫だと思われる。

そしてもう一つの工夫はボールを当てる角度、あるいはボールを触る場所である。

こすり方
上の図はバックハンドドライブを上から見たものと考えていただきたい。三次元のものを二次元でむりやり表現しているので、いいかげんな図である。

左の青いラケットのほうは、ボールの内側をさわってバックドライブをかけている。こうすると、ボールとラケットが衝突する力が左に逃げ、押す力が弱まる。一方右の赤いラケットのほうはボールの外側をさわってドライブをかけるので、ボールとラケットの衝突する力が逃げる場所がない。すべての押す力がボールに加わってしまい、押す力が強くなりすぎて、引っ張る力が弱まってしまう。
クロスにドライブを打つとき、シュートドライブ、つまりボールの内側を捉えれば、思いきりボールを打っても、押す力が逃げてくれるので、押す力が弱く、ボールがしっかりひっかかる。逆にカーブドライブ、つまりボールの外側を捉えると、ボールとラケットが真正面からぶつかりやすく、タッチでうまく調整しないとボールが吹っ飛んで行ってしまうおそれがある。

前記事「スイングの弧線」でデッパリ弧線とヘッコミ弧線というのを考えてみたが、この記事のデッパリ弧線というのも、上の法則に当てはまると思う。デッパリ弧線でドライブを打つと、ボールの押す力を弱めつつ、安定した威力のあるドライブが打てると思うのである。コメント欄でベルゼブブ優一氏がご教示くださった動画を見ると、よく分かる。

フランツ選手の4:07のバックドライブはデッパリ弧線のバックドライブである。

https://youtu.be/ylSIkIwKUH8?t=246


他にも打点やラバーの柔らかさも、押す力や引っ張る力に影響するだろう。またボールをラバーに押し付ける力というのも考慮しなければならないが、集中力が切れてきたので、今回はこのへんでおしまいである。

【追記】
球突きをして、バウンドさせずにボールをキャッチするという技がある。あれはボールの押す力を最小限にする練習だったのではないか?

【追記2】
週末になったので、平日は観ないようにしてきたyoutube卓球動画を観てみることにした。
そこでOKP氏とフェニックスクラブのコラボ動画で上の記述と同じようなことを言っていた。
https://www.youtube.com/watch?v=fRGRCTt6myQ
したがって、「押す力を弱める」という部分は、おそらく正しい考え方だろうと思われる。