以前、こんな記事を書いた。

 卓球がもし、ビデオゲームのように一人で上達できるスポーツだったらと想像してみる。ビデオゲームなら、自室にこもって一人でひたすらプレーすれば、かなりの程度まで上達することができるだろう。卓球もそのように一人で上達できるとしたら、自分のことだけ考えて、自分の時間を自分のためだけにつかって、自分の練習だけをすればいいことになる。…しかし、幸いにも卓球は自分ひとりでは上達できない(サービスは例外だが)。どうしてもパートナーや指導者の協力がなければ上達できないようになっている。

卓球は一人では上達できない。ふだん当たり前に存在するパートナーがいなければ自分の上達もないということを肝に銘じてパートナーの上達を手助けするような練習をするべきだ。それが「情けは人のためならず」で、結局は自分に返ってくるのだから。

効果的な卓球の練習はどうしても相手との協力が必要だということを主張したのだが、最近考え方が変わってきた。卓球の練習は一人でも、ある程度ならできるのではないかと思うようになってきたのである。もちろん対人練習が理想的だとは思うのだが、自分と相手の時間の都合がなかなか合わず、練習できないときが多いと、一人効果的な練習ができないものかと思う。私が最近試している練習は以下の二つである。

まず、シャドープレーである。
家のテーブルを卓球台に見立てて、オールフォアで、フォア・バックの1本1本のフットワークをやってみる(前記事「四の五の言わず、フットワーク練習」)。30秒×5セットぐらいやれば、かなり疲れるのだが、ただ左右に動いてラケットを振っているだけでは味気ない。これにちょっとした調味料を加えてやると、とたんに質の高い練習に早変わりする。

metronome

メトロノームを使って実際にブロックしてもらうテンポを再現しながらフットワーク練習をするわけである。しかも最近はわざわざメトロノームを買わなくても、ケータイなどのアプリでメトロノームが無料で使えるのである。

メトロノームのアプリが数えきれないほどあって、どれを使っていいのかよく分からないが、私は広告などが一切入らない、無料のシンプルな下のメトロノームをインストールしてみた。今のところ、満足している。
simple metronome

simple metronome

これで120BPM(first beat accent:every3beats)という設定で1本1本のフットワーク練習をやってみたら、良い練習になった。

もう一つは家ではできないが、台を使った独り練習である。
前記事「独り練習」でリターンボードというのを紹介したが、アマゾンでも「ラリーパートナー」という製品が売っていた。残念ながら、今は売り切れらしい。

同じようなリターンボードを自作している卓球教室があった。
板コーチ
板コーチチャレンジ
https://www.youtube.com/watch?v=0UQbepx5qdE

このような製品はとても便利だと思うが、持ち運びが難しい。私が卓球場に持って行って、よく使うのは100円ショップで売っているMDFボードとまな板立てである。これを「板トレーナー」と名付けよう。

MDF

まな板立て

これを卓球台の隅に立てて、ボールをぶつける。ラバーを貼っていないから、軽い下回転になって返球される。それをドライブ強打するという練習である。特にドライブの感覚をつかむのに適していると感じる。

市販のリターンボードのように何球も連続して打つことは難しい。たいてい1発ドライブを打ったら、高く跳ね返ってしまい、2発目は打てない。だが、それで問題ない。下回転打ちの感覚は十分つかめるからである。

まず、1本板にぶつけて(サービス相当)、返ってきた下回転(あるいはナックル)をドライブ。大きく跳ね返ってきたら手でキャッチ。それの繰り返しである。ちゃんとキャッチできないことも多いので、かごにボールを山盛りにしておくといい。プラボールは弾みすぎるので、セルボールがおすすめである。1本目の「サービス」は、台の奥ではなく手前にバウンドさせると返球が低くなりやすい。そんな調整をしながら上手に続ければ、5秒に1本ぐらいのペースでドライブが打てる。1分で12本。10分で120本。対人練習で相手に「下回転サーブを出すのでバック側につっついてください。それをこちらがバックドライブするので…」とか、そんな練習をすると、こちらがサーブミスしたり、相手がツッツキをミスしたりして、けっこう時間をロスするので、板トレーナー練習のほうがずっと効率がいいだろう。

板トレーナーによって、どのポイントでインパクトしたら力が伝わるか、ボールとの距離や体の向き、姿勢の低さ、スイングの大きさなどをいろいろ試してみて、理想的なスイングが固まってくると、ミスも減ってくると思われる。

今まで一人練習というと、サーブ練習や球突きといった練習が一般的だったと思う。サーブ練習は確かに効果があるが、球突きのほうはあまり効果がある練習とは思えなかった。それで一人練習はあまり効果がないと思い込んでいたのだが、上述のメトロノーム・フットワーク練習と板トレーナー練習はかなりやりがいのある練習である。これを数か月続ければ、効果が現れるのではないかと思う。