世知辛い今の世の中では、安価なラケットばかりを無駄に買ってしまいがちだ。そうやっていたずらにラケットの本数を増やして、しょっちゅうラケットを替えていては、感覚が狂い、上達が遅れるばかりだ。そうではなく、高級なラケットを1本だけ買って、もっぱらそれを使うようにしたほうがいいのではないか。

そこでちょっと高いラケットを購入し、大切に使ってきたある日、ラバーを貼り替えようとしたら、ペリっと表面の板が少し剥がれてしまった。幅2ミリほど、長さ数センチほどがラバー側にくっついている。

目の前が真っ暗になった。

「剥がす角度を真横からにしてみよう。これ以上剥がれないように慎重にはがさなければ…」

という私の気持ちとは裏腹に1か所、また1か所と剥がれていく。6割ほど剥がしたとき、もうどうにでもなれと、強引にはがした結果、まるで虎の毛皮の模様のようになってしまった。

虎

まだ3回ぐらいしかラバーを貼り変えていなかったのに。サイドも傷つかないように細心の注意を払って大切に使ってきたのに。このラケットはもはや使い物にならない。貼り方が悪かったから剥がれたのか?いや、今回は接着シートだったから、貼り方は問題にならない。ラケットコートも塗っていた。おそらく以前貼り替えたときのダメージが重なって今回の悲劇が起こったのだろう。

用具レビューとかで、球持ちがいいとか、打球感が最高だとか、振り抜きがいいとか、グリップが持ちやすいとか、そんな項目でラケットが評価されているが、たとえそれらの項目の評価が最高であっても、ラバーの貼り変え3~4回で板がはがれてしまうようなラケットは、ラケットとして評価するに値しない。というか、不良品と言ってもいいのではないか。

天然の木材を使っているラケットなので、板がはがれる不良品というのが数パーセント混じってしまうというのはしかたがないのかもしれないが、板がはがれるラケットに当たる確率は数パーセントどころではなく、実感としては数十パーセントぐらいありそうだ。というのは私が板を剥がしてしまったのは、このラケットが初めてではないからである。数年使って何度もラバーを貼り替えていると、小さな板剥がれが起こるのは珍しいことではない(さすがに今回のような虎模様になってしまったのは2回しかないが)

多くの場合、ラケットの寿命というのは、折れたり、ぶつけたりして尽きるのではない(そういう人も稀にいるだろうが)。板剥がれによって尽きるのである。そう考えると、板剥がれはもっと問題にされてもいいのではないだろうか。球持ちや打球感を犠牲にしてでも、現在の数倍強力に、板剥がれを防ぐ加工がなされたラケットを購入したいと思う。そうでないと長く付き合っていこうという気にならない。

昔、有機溶剤の接着剤を使っていたころは板がはがれたことはなかった。板剥がれを起こさない接着剤が開発されれば値段が倍になっても私はぜひ購入したい。

卓球メーカーさん、〇〇カーボンだのといった新素材の開発よりももっと優先されるべきことがあるんじゃないですか?