卓球の練習といってもいろいろある。
単純なワンコースを延々と続ける練習もあれば、「フォア前をクロスにフリックして、そこからフリー」のような特定の場面を想定したシステム練習。はたまた実戦そのままの、オール形式の練習等々。

私は実戦的な練習よりもワンコース切り替えとか、1本1本といった基本的な練習のほうをよくやるのだが、周りの人の意見を聞くと、こういう基本練習をやりたがる人は少数派である。練習はそこそこにすぐに試合をしたがる人、あるいは場面を想定した実戦的なシステム練習が好きな人がほとんどである。

私はラリーを続ける練習なら、2時間でも3時間でも飽きずに続けられる自信がある(それだけ課題が山積しているということなのだが)。ある日、私がフォアとバック1本1本の切り替えの練習を楽しんでいると、相手はこの練習が単調に感じられたのか、カウンター気味に強く打ってきたり、サイドを切ってきたりと、とりにくいボールを送ってきたりする。おそらくもっと実戦的な練習をしたかったのだろう。

調和のとれた一定のリズムで延々とボールをやりとりするのは本当に心が落ち着く。それだけでなくいろいろな発見もある。切り替えのような単純な練習でミスが出るのは自分のフットワークやスイング、タイミングの取り方に何らかの問題があるからであり、それが何かをラリーを続けながらあれこれ探ってみるのである。

例えば体重移動がうまくいかないから、フォア・バックの切り替えに微妙な遅れが生じ、その結果ミスが出る、とか、打球点が遅いとか、自分の最適な打球ポイントで打っていないとか、そんなことが基本練習を続けていると分かってくる。少しずつ不具合を調整していけば、自分なりにプレーを高めることができる。動きにキレが出てくる。それが楽しみでもある。

システム練習や試合でも、自分の不具合を調整することはできるではないか、という反論もあるだろうが、それらの練習は効率が悪いと思う。ボールを打つ時間よりも、ボールを取りに行ったりして、休止している時間のほうが圧倒的に長いのである。ちゃんと数えたことはないが、実戦的な練習で5球目までいったとすると、基本練習なら30球目ぐらいは行っていることだろう。

というと「システム練習を多球でやったらいいじゃないか」という反論もあるかもしれない。

たしかに球出しをしてくれる人がいて、環境が整っていれば多球のほうが効率がいいかもしれない。しかし、効率とか上達とかではないのである。私は一定のリズムで延々と打球する基本練習が純粋に楽しくて仕方がないのである。私はダンスというのは全く経験がないが、私にとって基本練習はダンスを踊っているような感覚なのである。

over night success
テリー・デザリオの「オーバーナイト・サクセス」。大好きな曲だった。
https://www.youtube.com/watch?v=UC3dE8TUwNc

基本練習と言っても同じボールを返すわけではない。方向も深さも速さも1球1球微妙に違うし、相手のミスでフォアに来るはずのボールがミドルに来るということもよくある。それらのイレギュラーなボールにもうまく対応して一定のリズムを崩さずにラリーを続ける。そこにステップが入ると楽しさはひとしおである。必死に追いかけなければ間に合わないスピードのボールでは楽しくない。ほどほどのスピードがいい。

切り替え練習で言えば、バック側に素早く移動して小さく体をひねり、戻すところでインパクトを迎え、その勢いのままにフォア側に素早く移動しフォア側に体をひねり、スイングを止めないようにフォアハンドのインパクトを迎える。まだ私は下半身の体重移動をうまく使いこなせないが、これらの要素をすべて含んで、完璧に流れるように打てた時は、ダンスの美しいステップに比べても遜色ない美しい動きだと思う。

左右に来るボールをコンパクトなスイングで淡々と打ち続ける。すると自然と声も出てくる。静かで穏やかなラリーである。しかし時にはイレギュラーなボールもやってくる。まるで人生のように。そのときはステップやスイングが大きくなったり、リズムを崩して高いボールを送ったりしてなんとかしのいだりする。そしてまた平穏なラリーが続く…。リズムに合わせて体を動かし、ときにはミスする危機が訪れたりもする。こんな起伏に飛んだ練習が楽しくないわけがない。

実戦的な練習ばかりしている人にはぜひ基本練習の楽しさを見直してほしいと思う。