打球時に手首を使ってはいけない。そう固く信じてこれまで卓球をしてきた。
しかし、この間の練習で、上手な人がこんなことを言っていた。
「手首を使えるかどうかが卓球上達のカギだ」と。

しかし、打球時に手首を「こねる」と、ラケット面がぶれて、安定性を損ない、ボールがあらぬ方向に飛んで行ってしまうことになる。
最近見た動画でも、田添響選手はバックハンドの時手首を使わないと言っていた。
hibiki
https://www.youtube.com/watch?v=hC8ZElucsjc&t=0s

打球時に手首を使うなんて無謀ではないか?

前記事「スケール・メリット」でテニスの技術動画を取り上げたが、その延長で小澤康祐氏の「ゴルフスイング物理学」というチャンネルにたどりついたのだが、その解説が非常にわかりやすかったので、紹介したい。

テニスの動作と物理学
https://www.youtube.com/watch?v=ODeIc59Mp6g

氏は「プロネーション」という言葉を使ってテニスのスイングを解説していた。プロネーションというのは簡単に言うとバイバイするような手首の動きのことらしい。「回内」とも言うそうだ(このへんの術語の理解が私はあやふやである)。この「回内」というのは、おおざっぱに言うと、指を上に向けて、手の甲を相手に見せた状態から、手のひらを相手に見せるような動きである。

テニスのスイングの過程に、プロネーションの動きを入れることによってスイングスピードが速くなるということらしい。

ただし

「筋力で回外から回内に力をグッとかけてる、んではない。」

手首の力でラケットをひねるというわけではないらしい。

「グリップエンドをやや下から上に引っ張って…」
grip end

grip end

「で、最後グリップエンドの方向を変えてあげているだけなんです。」
grip turn

氏はこの動きを高速走行している車が急にハンドルを切ってスピンする動作に譬えている。車がスピンするようにラケットのヘッドが回転運動をするということらしい。

「手がラケットの回転によって回転させられてる」
「つまり、手が回外から回内に自分でローテーションさせてるんじゃなくて、…グリップエンドを(横方向に)引っ張っていけば、(ラケットが)回転してくれる。その回転に手が回転させられてるが正解の動き…。」

手首を固定して斜め下から斜め上にラケットを移動させるだけでは「何も起こらない」。手首を脱力し、斜め上にラケットを移動させている途中で、グリップを横方向に引っ張ると、ラケットに回転運動が生まれ、「バイバイ」のような動きになり、そのラケットの運動に引っ張られて、手首も自然にひねられるということらしい。

「8の字を描くように運動させると、グリップでグッと握って回外・回内させなくても、勝手にプロネーションていうのは慣性の力で起きてくれるということですね。」

これは高島規郎氏の提唱していた「8の字打法」のことではないか?
手首をどう動かすかなどは意識しないで、ラケットを8の字に動かそうとすれば、自然に「プロネーション」が起こるのだという。

卓球で手首を使うかどうか、という冒頭の疑問に対する答えがなんとなくわかってきた。手首でがんばって何かをしようとするのではなく、ラケットのグリップを後ろから前に引いていく途中で横方向(卓球なら下方向?)に引っ張れば、自然に手首も使われることになるのだ。テニスでフォアハンドのフォロースルーが左肩のあたりまで来ているのをよくみかけるが、卓球でもあのように左肩でラケットを「担ぐ」ような、あるいは「巻きつける」ようなフォロースルーを心がければ、ヘッドがよく回り、スイングスピードが速くなるのかもしれない。

finish
フェデラー選手のフォロースルー

しかし、待てよ。卓球でグリップエンドを前に出すようなスイングは見たことがない。最近見た、吉村真晴選手のフォアハンドのスロー動画を確認してみたところ、グリップエンドが相手のほうに向いていることはないし、手首をひねっているようにもみえない。

https://www.youtube.com/watch?v=sg7f9_RFrg8&t=0s

maharu01

maharu02

maharu03

ラケットの進む方向を急に横方向にしてヘッドを回すという理屈は卓球にも応用できると思うのだが、回内という動きは必ずしも必要ないのではないだろうか?卓球ではプロネーションを使うメリットはあまりないのだろうか?フォアハンドでは手首をひねる動きは効率が悪いのだろうか?ラケット形状が異なるテニスの振り方を卓球にそのまま応用するのは難しいということなのだろうか?

また分からなくなってきた。