兄弟のような関係にあるスポーツ、テニスと卓球。両者には多くの共通点があるにも関わらず、比較しようという試みはあまり多くないように思う。実際これまで私はテニスにほとんど関心を払ってこなかった。
----------
大きなスポーツ店に行くと、テニスの専門コーナーが設けられていて、広々としたスペースにラケットやらシューズやらが贅沢にディスプレーされている。専属の店員もいて、用具の相談に乗ってくれたりしている。その一方でフロアの目立たない場所に卓球用具の棚がひっそりと設置してあったりするものだ。

この売り場の扱いからテニス用具と卓球用具の売上の差がよく分かる。

テニスのグランドスラムで優勝したら賞金が3~4億円だそうな。卓球ではグランドファイナル優勝で1000万円強。その差、30倍以上。
https://sportsmania1.com/prize-money-table-tennis-surprisingly-low/

これだけ動くお金が違うと、仕事としてテニスに関わる人の数も卓球とは比べ物にならないだろうし、競技に対する研究にもかなりの差が出てくるものと思われる。

テニスのことはよく知らないが、おそらくテニスは卓球よりも研究や指導方法がずっと進んでいることだろうgoogle scholarで検索してみると、過去5年の「卓球」関連の論文は1280件。テニスは3250件だった。日本語の論文だったからか、思ったほど差は開いていなかった)

学問研究では、新しい流れというのはたいてい欧米で起こり、それを日本の研究者が翻案・転用して、日本で発展させるということが多い。卓球の指導メソッドというのも、元ネタはテニスの指導メソッドというのがけっこうあるのではないだろうか。

Tennis-Serve-Follow-Through-2-scaled-e1591583249371

インターネットでテニスの技術動画を探してみたところ、こんなサイトが見つかった。いわばテニス版『卓球王国WEB』である。

テニスマガジン オンライン
https://tennismagazine.jp/

みんなのテニス研究所(みんラボ)
http://www.min-labo.net/

もちろんテニスの技術がすべて卓球に応用できるというわけではない。ボレーやスマッシュの打ち方というのはあまり参考にならないが、打球時の体の使い方というのは大いに参考になりそうだ。

卓球はボールが軽いので、下半身を使わなくても、手打ちでボールを打ってしまっても、かなり強いボールが打ててしまったりするが、ボールの重いテニスではそういうわけには行かないだろう。下半身や体幹をしっかりと使わなければ、ボールの威力に負けてしまい、いいショットが打てないに違いない。私は腰を使って打つというのはたぶんできると思うのだが、下半身を使って打つというのがよくわからない。足を蹴った力をショットにつなげるのだと思うが、具体的にどうやってやるんだろう?

フォアハンドの手打ちを直す方法
https://www.youtube.com/watch?v=23k2laOwU3w

テニスでは歩くような動作でショットを打つのがいいとされているようだ。

駒田研究員「(歩行の際の)手と足をクロスする動作を使いたいんで、足を前に、体をひねる感じでテイクバックをして打ってもらうと手打ちに、まずなりにくいです。」
tennis takeback

「気をつけてほしいことは、せっかく最初に体をひねっているのに、(左)足を前に着いたときに、ひねってためておいたパワーがなくなってしまうことですね。」

tukene
「体重がここ(右足の付け根)に乗っていなくて、もう先に前の(左)足に乗ってしまって(から)ボールを打つと、これも同じように手打ちになってしまうので…」

ようするに体重が右足から左足に乗る前にインパクトを迎えろということらしい。右足に体重を乗せて、右足の付け根に力を入れてインパクト。そのあと左足に体重を乗せるというのが正解なのだという。

「(右足に体重が)乗っているこの状態をキープして足を前に着くのが重要です。で、蹴り出してから体重が前に移動すると思ってください。」
migiashi keep
下半身を上手に使う練習法。インパクトの瞬間に左足を一瞬上げて軸を意識し、バランスをとる。

この動画のおかげでフォアハンドでの下半身の使い方のイメージができた!今度の練習で試してみよう。この打ち方がそのまま卓球に応用できるかどうか分からないが、少なくとも参考にはなるだろう。

次はドライブの掛け方である。

ドライブ回転をかけるコツ
https://youtu.be/PiNJ5dTCp-I?t=291

「同じ速度でラケットのスイングが行われると、ラケットの先端が速く動かないですね。」

もちろん当たる瞬間にスイングを加速させるのが正解なのだが、具体的にどうやって加速させるのか?卓球ではよく、インパクトの瞬間にグリップをギュッと握ると言われているが。

「テクニックとしては当たるときに…引くような感じです。」

impack01
インパクトの瞬間

impack02
インパクト後

「引く」といっても、真後ろにラケットを戻すわけではない。実際には画像のように左側にスライドして「バイバイ」のような動きになる。

こんな打ち方が卓球に応用できるのだろうか?ちょっと疑問だが、もしかしたらフリックには応用できるかもしれない。
 
以上、テニスの技術指導が卓球に応用できないかどうかを考察してみたわけだが、私は参考になることが多かった。卓球の技術指導とテニスの技術指導を比較していくと、共通点や相違点がいろいろ見つかっておもしろそうだ。