人間は猿から進化した…いや、猿から分岐したといったほうが分かりやすいだろう。

先史時代
こんな質のいい動画が無料だなんて…代ゼミが潰れるわけだ。
先史時代1

類人猿と猿人とを分かつものは何か?
二足歩行とその結果としての腕の可用性こそがヒトの証なのだという。
その有り難い「腕」というものが卓球の上達をどれほど阻害しているかはみなさんよくご存じだと思う。私も頭では理解していたのだが、最近身を以てそれを思い知ることになった。


肩が急に痛くなって、腕を伸ばせなくなった。
これはおそらく五十肩である。
そのうち元に戻るだろうと思っているのだが、いつになっても元のように腕を伸ばせない。職場の人に相談してみると「私はもう一年以上そういう状態ですよ」とのこと。もしかしたら完治しないものなのか?

しかし、このために卓球の調子が非常にいいのである。

腕がまっすぐ伸ばせないので、いつも脇を締めたような状態でプレーすることになる。フォア側に適度なスピードのドライブなり、ロングボールなりが来て、「カウンターできる!」と手を伸ばそうとしてもラケットが届かない。ツッツキ打ちをしようとしてフォアドライブをかけようとしても力がこもらない。フルスイングしようものなら激痛が走り、ラケットを落としそうになる。バックドライブはもっと深刻である。軽く打っただけで激痛が走る。どうしてもボールにちゃんと近づいて打たなければならない。

今までいかに腕力に頼ったプレーをしていたのかと反省させられた。

ビュン!っと速いドライブを打つのはもうあきらめて、とりあえずそこそこのスピードで安定したドライブを打てるようにしなければ。そのためにはこまめなフットワークで常に足を動かすようにしなければ。

ちゃんとボールに近づくようにすれば、ボールを打てることは打てるのだが、あまり威力が出ない。腕を伸ばさず(痛くならないよう)に強いドライブを打つ方法はないものか。腕に力を入れずに強いショットを打つには、イヤでも身体の他の部位を使わなければならない。そんなこんなで試行錯誤しているうちにお腹でバックドライブが打てることが分かった。迫ってくるボールと一緒にお腹を凹ませて、バウンドと同時にお腹を前に突き出すと、腕に力を入れずに自然にバックドライブが打てる。

「うわっなんだこれ?腕にほとんど力を入れなくてもそこそこの裏面ドライブが打てるじゃないか!」

決定打を狙うような、スピードの乗ったドライブを諦めたのがよかった。限界までスピードを乗せようとは思わないから、力が自然と抜ける。腕の力が完全に抜けると、今まで感覚のなかったお腹や腰骨を動かす感覚が生まれてくる。よくトップ選手が「腕は振るのではなく、自然に振れるのだ」などと言っているのはこういう感覚だったのか。今まで、強すぎる腕の感覚にかき消されてしまい、プレー中に腰や肚の感覚というものを感じることはあまりなかったが、腕の感覚を最低限のスリープ状態にすると、今まで感じ取れなかった感覚が感じられるようになる。喩えて言えば、強烈な甘みで素材の味が全く分からなかった料理が、甘さ控えめにしたら、素材の味が分かるようになったような感じである。

次は回転のキツい下回転に対するバックドライブである。お腹の凹みだけではボールが持ち上がらないので、今度は打球前に姿勢を低くして、伸び上がる力とお腹の力を重ねてバックドライブを打ってみると、キツい下回転が持ち上がるではないか。そのときに私はおそらく初めて膝の感覚を感じることができた。よく膝を使ってドライブを打てと言われるが、こういうことだったのか。

腕を伸ばせないので、脇をキュッと締めているために体幹が回るのも感じやすい。

おそらく腕の感覚というのも、何らかの役には立つのだろうが、今は腕の感覚を徹底的に排除して、その他の感覚を「開発」するのが楽しい。

五十肩に感謝!