新緑の美しい春のある日、私は相変わらずゲーセンで遊び呆けていた。

新緑


そこに久しく姿を見せなかった一年上のO先輩が久しぶりに姿を現した。O先輩は、私がひそかに憧れている人だった。O先輩は天才肌の人で、そんなに熱心にゲームに取り組んでいるようには見えないのに、どんなゲームでも器用にこなし、ちょっと気の利いた作品が入荷すると、この辺りで一番最初に全面クリアを達成するのはO先輩だった。

「先輩、お久しぶりです。なんだか浮かない顔をしていますね。受験疲れですか?」
「あぁ…受験はオレが思っていたよりもずっと難敵だったよ…」

O先輩は3年生。あと10ヶ月もしないうちに大学受験を迎える。私はO先輩ほどの人なら、直前に受験勉強を始めたとしても、そこそこの大学に合格してしまうのではないかと漠然と思っていた。そのO先輩が受験までまだ半年以上も残している時点で「全く歯が立たない」と嘆息しているのだ。これは尋常なことではない。

「シロノも2年の夏休みからエンジンをかけても遅いぞ。今からエンジン全開じゃないと、とても間に合わん。」

その一言が妙に心に残った。高校の先生からはいつも「2年生になったのだから、受験を見据えてちゃんと勉強しないとダメだぞ!」などと耳にタコができるほど聞かされていたのだが、全く心に響かなかった。それに対してO先輩の一言は、私の心に訴えかける何かがあったのだ。

「これは掛け値なしの真実だ。この忠告を聞かなかったら、きっと後悔する…」

と私は直感的に思った。その日から私は必死で勉強に打ち込むように…はならなかったが、その言葉がずっと頭に残っていた。そして少しずつだが、受験勉強を始めるようになった。無情にも夏休みはあっという間に訪れ、周りのみんなも本気で受験勉強を始めだした。私も同じように2年の夏休みから受験勉強に本腰を入れるようになったのだが、何分、毎日うちで5時間も6時間も勉強することに慣れていなかったので、計画通りには進まなかった。もっと早い時期から身体を受験モードに慣らしておけばよかった。夏休みもあっという間に過ぎ去り、気づけば冬の足音が…。

やがて3年生になり、「あの時のO先輩の言葉は本当だった」と改めて思った。もっと早くに気づいていればよかったが、それでもあの時点で、気づけてよかった…。結局私は第一志望の大学には入れなかった。
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神山氏のこの動画を見て、私は高2の春のできごとを思い出した。
氏は言う、ボールの深さを意識することがミスを減らす上で非常に有益だと。



ボールの「深さ」を普段の練習で意識することはとても重要

「卓球のミスって深すぎてオーバーミスするか、浅すぎてネットミスするかだと思うんですね。」
「深さっていうのを意識すると、結局ですね、自然とボールの高さも意識せざるを得なくなるのかなと思います。」

これは掛け値なしの真実だ!
この意識をもって卓球に打ち込まないと、私はきっと後悔する!

私の直感がそう告げている。根拠はない。

卓球上達に必要なことは人によって違うし、優先順位も人によって異なる。世の中には卓球における重要事項というものが多々紹介されている。しかし、今の私にとって「深さ」を意識した練習こそが最優先であるに違いない。

そんなことを感じた。

【付記】
九州の皆さん
大雨や洪水で大変な思いをなさっていることと思います。お見舞い申し上げます。