この間、久しぶりにツイッターを見ていたら、「ドコデモ」というサービスの予告があった。

dokodemo

スカイプを使って、Liliの村田コーチをはじめとした卓球のコーチが私たちのプレーの問題点を指摘してくれて、指導、練習方法の指南などをしてくれるらしい。

この試みが成功したら、卓球界の大事件になるのではないだろうか。

全日本に出るほどの実力を持っているが、卓球関係の仕事に就けない人たちが卓球である程度の収入が得られるのである。そんなレベルでなくとも、今まで卓球に全てを捧げてきて、卓球がアイデンティティとなっている人が卓球で食べていけるということが現実になったら…、これは日本卓球がロンドンオリンピックで銀メダルを獲得したぐらいの大きな事件になると思う。このような流れができれば、卓球界に勢いが出て、20代で卓球をやめるという人は確実に減るだろう。

この試みが成功することを祈ってやまない。

ただ、本業にはできないように思う。副業の一つという位置づけだろう。

このサービスはどういう人にとって有益なのだろうか。

・長年卓球を続けているが、上達を実感できない人
・地方に住んでいて、近くに卓球の指導者がいない人
・指導者に習っているが、セカンドオピニオンを聞きたい人
・部活などで勝率を上げたい人
・指導者を目指している人

というのがターゲットかなと思う。逆に次のような人には関係のないサービスだろう。

・健康卓球、あるいは交流メインの卓球をしている人
・近くに卓球教室などがあって、信頼できる指導者のいる人

コーチ側からすれば、指導するために卓球場のようなところで実演しなければならないし、場合によっては相手も必要である。それなりの手間と集中力を割いて指導をするのだから、その対価として月に20万ぐらいは稼げないと意味がない。1日に1万ぐらいは稼げないとダメだ。となると、1時間で最低でも3000円ぐらいは払ってもらい、1日に最低でも3人の客がいなければならないということになる。専門知識・技術のある人が時給2000円とかでは安すぎる。

1時間で3000円払うとなると、大半の客は社会人(あるいはリタイアした年配者)だろう。

リタイアした年配者だと、スカイプでのやりとりというのが大きな障害となる。レッスンを申し込んではみたものの、機器がうまく使えず、キャンセルするということにもなりかねない。なお、wifiが使えない環境なら、スカイプでビデオ通話をすると1時間あたり約200~300MBかかるそうである。

ある程度ITを扱えて、3000円ほどの出費が苦にならない人が全国にどのぐらいいるだろうか?最低でも毎月70人は利用してもらわないと困る。都道府県一つに月1~2人利用者がいれば大丈夫だが、それが毎月となると、難しくなってくる。実際に「治療(練習)」できるのではなく、自分のプレーの問題点を「診察」してもらうだけなので、毎月利用する人は少なくて、半年に1度ぐらいの利用が大半かもしれない。今の時点で競合する他の事業主がいなければ問題ないが、このモデルに追随して、あちこちに同じようなサービスができてくると、月70人の利用が難しくなってくる。

リピーターがたくさんできて、「かかりつけのお医者さん」的な感じで頻繁に利用してくれる顧客をたくさん作ることが課題なのかなと思う。しかし、そうすると、単に技術の指導だけでなく、人間的な付き合いも求められるだろう。お得意さんの名前や特徴も頭に入れておかなければならないし、それらの客の「カルテ」も作らなければならない。時には客の興味のない話にも付き合わなければならないだろうし、偉そうな態度を取る客にも笑顔で接しなければならない。

スタディサプリのようなインターネットの学習サービスのように不特定多数に動画を提供するだけで済めば楽なのだが、「ドコデモ」のようなサービスだと、どうしても一人ひとりに対応しなければならないので手がかかる。

顧客にしてみれば、ネット越しの付き合いだけだと物足りないので、オフ会のようなことも定期的に行ってほしいと思うだろう。そう考えると、楽な事業じゃないと思う。というか、地域密着型で地方の卓球教室のコーチが定期的な出張講習会などを前提とした、オンライン指導という位置づけなのかもしれない。

Tリーグの観客動員数が1戦あたり1000人ほどだという(おそらく実際はもう少し少ないだろう)。その一方で「13時間卓球」では1開催あたり200人ほどの参加者がいるのだという(これも場所によって増減が激しいと思うが)。コスパで言えば「13時間卓球」は圧倒的である。一流の選手のプレーを観戦するイベントよりも、参加型のイベントの需要のほうがはるかに高いと感じる。ネットでの指導というのも、参加型のイベントと抱き合わせればうまくいくのではないだろうか。

そしてもう一つの解決策は、できるかどうか分からないが、個人ではなく、法人を顧客にすることである。具体的には学校の部活を取り込むことだと思う。全国の中学や高校などと提携して、ネット上の外部コーチになるのである。やる気はあるのに指導者がいないという中高は非常に多い(おそらく9割以上)はずである。これならまとまった固定客が確保できて、安定した収入と安定した指導が両立できる。

あるいは大学のサークルや企業の卓球部の外部コーチをさせてもらうのはより現実的だと思う。有名な指導者が毎週自分たちの練習を見て、アドバイスや練習メニューを作ってくれるなら、かなり需要があるだろう。

このサービスはまだまだ道は険しそうだが、なんとか軌道に乗ってほしいと思っている。