付き合いで団体戦に出ることになった。
試合会場で、空いている台で30歳前後の若い二人が練習している。
お互いにすごいスピードのドライブを打ち合い、攻守を転換しながら、凡ミスもせず、延々とラリーを続けている。台から2メートル以上も離れてのドライブの打ち合いは豪快そのものである。明らかに私のチームとはとは違うレベルの卓球だった。

「あんな人たちと当たるんだろうか。もしそうなら試合になんかならないぞ…。」

そこには知り合いのS君も来ていた。S君は関西学生リーグ1部校出身の上級者である。もしかしたら、全日学とかにも出場したことがあるかもしれない。だが、さすがのS君もあの二人と当たったら、勝てないのではないか?

案の定、私のチームは早々に敗退してしまった。私はS君のチームがあの二人のチームとどんな試合をするかが気になって両チームの対戦を見ていたのだが、S君はあっけなく二人の一方を撃破してしまったのだ。さきほどの練習の時とは違い、その若者はなかなか攻撃させてもらえず、凡ミスを連発していた。

それを見て私は理解した。

中級者の上のほうのレベルと、上級者の違いとは、素人目には分かりにくいところにあるのだと。
中級者でお互いの手のうちを知り尽くしているチームメート同士が練習をすると、それは一見、上級者のプレーに近いものがある。しかし、中級者はふだん打ちなれている相手と違う球質の相手や、不慣れな戦型と対戦すると、ふだんのプレーが発揮できず、格下相手にも苦戦したりする。

しかし、上級者はどんな相手とやっても自分の最低限の実力は発揮することができ、めったなことでは崩れない。S君のプレーはそれほど派手なプレーではないが、台上は相手の打ちにくいところを突き、ブロックはしっかり止める。チャンスが有れば両ハンドでミスなくドライブを放ち、カウンターだって決めてしまう。

「当たり前」のことを当たり前にこなすのがS君のプレーなのである。

では「当たり前」のプレーとはなんだろうか?

【続く】

最近、忙しくて更新が滞っているので、未完成だが、とりあえず前半部分のみ公開したい。後日時間の余裕のある時に加筆するつもりである。

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【続き】

卓球における「当たり前」のプレーとはどのようなものだろうか。
・短いサーブにはネット上ボール2個分の低いツッツキ

・台から出るサーブ、あるいはツッツキには両ハンドでドライブ強打。

・それほど切れていないショートサーブにはチキータ、あるいはフリック。

・ループ気味のドライブに対してはカウンター、あるいはスマッシュ。

…書いていて虚しくなってくる。これはかつて「標準世帯」と呼ばれたものと同じだと思うからである。標準世帯とは夫が働き、妻は専業主婦、子供が二人いる家庭のことである。昭和の頃にはこれが典型的な家庭だったのである。そして年に月給2ヶ月分のボーナスが2回出て、手厚い社会福祉と退職金によって守られているサラリーマンの家庭が思い浮かぶ。

令和の現在、このような家庭がどれほどあるか分からないが、少なくとも「標準」ではなくなっている(「30代で月に48万必要」)。世には結婚できない人があふれており、妻は働かず、家事や育児に専念するなどというのは相当恵まれた家庭だろう。かつての「標準世帯」というのは、今や「理想世帯」とさえ言えるかも知れない。

「夫になる人の年収は少なくとも800万はほしい」

などと言って結婚せずに出会いを待っている人にはかなり厳しい現実が待っている(たぶん)

卓球だって同じである。
相手のサーブに対して常にボール2個分の低さで返球するなどというのは、ふだん打ちなれている人ならいざしらず、初見の相手には難しい。台から出るツッツキはすべてドライブ強打?私だっていつも練習している人のサーブやレシーブに対してはかなりの確率で2球目のドライブ強打や、3球目強打も決まると思う。しかし、実際の試合では相手がどこにどんなボールを送ってくるのか分からないのだから、ドライブ強打なんてそうそう打てるものではない。ミスしないようにとりあえず高くてゆるいドライブを打つのが精一杯である。チキータだの、フリックだの、コースが決まった練習なら打てないことはないが、実戦では入る確率が半々である。こんな技術は実戦では使い物にならないし、相手のドライブに対するカウンターなど恐ろしくて打てない。ブロック一択である。

試合ではできない





ちょうど同じようなテーマで上の2つの動画がアップされていた

初中級者が自分の実力をかえりみず、実戦で上記の「当たり前」のプレーをしたら、厳しい現実が待っているだろう。低くレシーブするのだって、対下回転強打だって、ふだんの練習相手になら高確率で決まるだろうが、初見の相手にはなかなか安定しないものである。

私たち初中級者が「当たり前」と思っていることは、試合ではちっとも当たり前じゃないと思う。上級者になって初めてどんな相手のどんなボールにもある程度は対応できるようになり、私たちがイメージする「当たり前」のプレーができるようになるのだと思う。「当たり前」のプレーは、ちっとも当たり前じゃない。