今週末は「関西文化の日」。
関西の多くの文化施設が無料で入場できる日である。
日本文化の中心は関西である。ということは、「関西文化の日」は日本文化を最も濃厚に体験できる日なのである。

そこで私は「大阪市立自然史博物館」というところを訪ねてみた。

大阪、といってもいろいろある。実を言うと、私はまだオオサカを知らない。

京都にいれば買い物でも何でも事足りるので、私は大阪に行くことがほとんどない。年に1~2回大阪に行くといっても、それは梅田(大阪駅)周辺、いわゆるキタだけである。しかし、いろいろな情報を総合すると、どうやら梅田は大阪の中でもあまり大阪らしくない大阪のようなのである。梅田はビジネスの中心なので、ちょっと澄ました、よそ行きの大阪であるらしい。しかも他府県から来たヨソモノがたくさんいるので、大阪特有のニオイが希薄である。しかし、難波、天王寺周辺、いわゆるミナミのあたりまで来ると、大阪は突如牙をむく。

戎橋
難波にある有名な戎橋

コテコテの大阪弁を話す人の割合が増え、ド派手な看板の店が立ち並び、昼間から缶ビールを片手に歩いている人や、公園で熱心に将棋を指すおじいさんたち、大阪名物の「オオサカのオバちゃん」たちの割合も増えてくる…らしい(私の周りの人はみんなそう言っている)

今回訪れた自然史博物館は地下鉄御堂筋線の長居駅の近くにある。長居駅というのは難波や天王寺よりもさらに南にあるのである。岸和田ほどではないにしても、私はどうやらディープオオサカに足を踏み入れることになるようだ。期待と不安を抱きながら、長居駅を出ると、意外にも私のイメージしたオオサカではなく、ふつうの街であった。道路が広く、人の往来が多いこと以外はふつうの街と変わらない(コテコテの大阪弁を話す人は多かったが)。なんだか肩透かしを食ったような感じである。

目指す自然史博物館は駅から歩いて800m。予想通り多くの人出で賑わっていた。

館内には多くのブースが出店しており、「公益財団法人日本野鳥の会」といった、有名なところから、「オルドビス造形工房」という、復元模型を扱う専門的な店。
造形工房

はたまた大学の研究室から、「大阪自然環境保全協会」などというアカデミックな団体も参加していた(商品は売らず、主に啓蒙的な展示だったと思う)
私が感心したのは、そのような本格的な団体ではなく、「オオサンショウウオが好き」「クラゲのことをみんなに知ってほしい」といった個人の人たち、あるいは「鉢ヶ峰の自然を守る会」「すいた市民環境会議」といった地域のボランティアの人たちの出典が目立ったことである。「ジュニア自然史クラブ」などという賢そうな中学生たちのサークルが冬虫夏草の標本を紹介してくれたりもしていた。ほかにも「大阪変形菌おっかけ隊」とか「骨好き中学校教師の会」「はねはね団」「大阪石友会」「きのこ好きのためのキノコサロン」等、いかにも「趣味が高じて…」という団体がたくさん参加していた。
大阪人の立派なところは、こういう地域や民間がとても力強いことである。京都人から見ると、大阪人は独立独歩の気概に満ちている人が多い。

そのような出典団体だけでなく、常設展示もおもしろいものばかりだった。ナウマンゾウやマチカネワニの骨格標本から、大阪で現在見られる動物、鳥、魚、虫、植物などまで、模型やイラストで分かりやすく解説してあり、入館料300円+往復の交通費約1500円以上の値打ちがあった。とても充実した週末だった。

翻って卓球文化にこのような深みがあるのかというと、すこし物足りなく思った。
吹奏楽部よりも文化系に近い運動部と言われる卓球だが、卓球の文化系サークルというのは聞いたことがない。卓球サークルは数え切れないほどあるが、どれも運動系である。卓球でも「ジュウイック応援団」とか「コクタクをこよなく愛する会」のようなサークルがあっても良さそうだ。メーカーを考察の対象にしたサークルだけではなくて「表ソフト研究会」「5枚合板こそ正義」といった用具系サークル、「ツッツキでノータッチエース!」「サーブ研究所」といった技術系、卓球イラストサークル、卓球コスプレサークル、卓球川柳サークル、卓球マンガ部、卓球造形部など、文化系サークルがたくさんできて、それらが年に一度集まってイベントなどが開かれるような世の中にならないだろうか。卓球はもちろん体を動かしてプレーするのが一番楽しいが、卓球の文化的な活動ももっと盛んなってほしいと思う。