とある練習風景。

10分ぐらいに時間を区切ってお互いに練習したい課題での練習。

「バックドライブからの展開を練習したいので、こちらのサーブをバック側につっついてください。それをそちらのバッククロスにバックドライブを打つので、そこからオールでお願いします。」

相手が格下で、あまり強く打つとラリーが続かないから、ほどほどのスピードの安定性重視のバックドライブからゆるくラリーを続ける。こういう練習をして、だんだん慣れてくると、相手の人は、つっつくと同時に回り込んで、こちらの打ったバックドライブに対し、フォアでカウンターを試みてくる。

「ありえない…。」

実戦で、こちらのバックドライブを回り込んで前陣でフォアカウンターするというのは一か八かの博打行為である。そんなショットが決まる可能性は相当低い。初心者に毛が生えたような人に限ってこういうありえない行動を取る。もちろんそんなショットが入るわけがない。しかし10球に1球、偶然入ることがあって、その「成功」がますます相手を勇気づけ、その「練習」に駆り立てる(その時間はこちらの課題練習の番なのに)

カウンターなんて私のレベルでそうそう打てるものではない。あれはたまたま相手の打つコースをうまく誘導でき、球種やタイミングが予想どおりだったときに限って打っていいショットであって、初中級者がふだんから打つようなシロモノではない。

私は常にそう思い、自分を戒めてきた。たとえ相手に「打たれる」と分かっている瞬間であっても、私は手堅くブロックで対応すると決めている。胸のすくようなスーパーショットが10球に1度決まるよりも、50%以上の確率でブロックしてラリーを続けるほうがよっぽど生産的ではないか。カウンターなんて打つのも打たれるのも大嫌いである。

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嫌い、というか私の苦手なものはダブルである。ダブルではラリーが続く気がしない。シングルならある程度ラリーが続き、卓球らしいプレーもできるのだが、ダブルとなるとろくにラリーが続かない。なんてことのない台上のツッツキをミスしてしまったり、シングルなら確実に止められるドライブもブロックミスしてしまったりする。
そもそも一つのボールを二人で交互に打つなんて不自然すぎる。ボールを2球使ってラリーを続ける(もちろんシングルで)という曲芸を見たことがあるが、ダブルというのはそのような曲芸に近い超絶難度の種目だと思うのである。

コーナーのたびにドライバーとナビゲーターが運転を交代しながら走るラリーというのが想像できるだろうか。

rally

ドリブルを1バウンドずつ2人で交互に行いながらプレーするバスケというのは競技として成立するのか?

卓球のダブルというのは、そのような曲芸じみた不自然なことを行っているのであって、上級者のような熟練した技術がなければ「卓球」として成立しない。初中級者には難易度が高すぎる。神経を集中させ、一瞬の判断の遅れが命取りになる卓球で、1球打つごとに打ち手をパートナーに渡し、自分は休む。反対に自分が休んでいるところへ唐突に打ち手が回ってくる。こんなこと、できるほうがおかしい、ダブルはシングルの息抜き、仲間との絆を深めるためのレクリエーションの一環。そう思っていた…。

先日の練習で久しぶりにダブルでゲーム練習をすることになった。
かわり映えのしない、いつもの下回転ショートサーブからゲームが始まる。それを相手が無難につっついて私の打つ番になるのだが、フォア前ぐらいに返球されるかと思ったら、バック奥に深くつっつかれてしまい、つまって私がミス。はぁ~、こんなツッツキでポイントが決まってしまうなんて情けない。次も同じようなショートサーブから始まる。今度はほとんど切らないナックルサーブだったのだが、相手が払うようなそぶりを見せたので、ブロックで止めようと思ったが、反応が遅くて、また私のミス。パートナーに申し訳ない。そうこうやっているうちにだんだんダブルのタイミングに慣れてきて、凡ミスが減ってきたのだが、どうしてもこちらから攻められない。相手が先に攻めてきて、こちらはそれをなんとか棒球で返すことしかできない。まるで役割が固定しているかのような試合である。相手は一方的に攻める役、私たちはそれをなんとか拾い続けて相手のミスを待つ役。全く勝機が見いだせない。「先に攻めなければ」とは思うのだが、ミスしないようにするのが精いっぱいで、どうしても攻められない。
ダブルは、台上の段階は非常に窮屈でイヤである。そういう心理もあってか、上回転のラリーになってから、つまり4球目以降は私もパートナーも少し台から距離を取って展開していることが多い。そのポイントもそんな展開だった。相手が3球目で先にボールを起こし、上回転のラリーになると、すぐに私は一歩下がり、相手のドライブに備えていたのだが、冷静に見てみると、相手のドライブはそれほど速いボールではないことに気づいた。相手も交互にボールを打ちながら動いているので、ポジショニングがしっかりできていなかったり、予測外のボールが来たりして、万全の姿勢で打てないことが多いからである。

「ブロックのつもりで待っていると、ちょっと時間を持て余すかもしれない。あのボール、カウンターできるんじゃなかろうか。」

私は中陣とまではいかないが、台のエンドから1メートル以上離れていたので、相手のドライブをカウンターする時間的な余裕があった。そこで相手が打つ姿勢になったのを確認すると、そのボールを狙ってカウンターを打ってみたのである。入った!この試合で初めてこちらから攻められた!
もしかしたら、ダブルでは相手のドライブをカウンターで狙っていけばいいのではないだろうか。それからは、私は相手が起こしてくるボールをほぼすべてカウンターで狙うことにした。もちろん打てない場合やミスする場合もあったのだが、カウンターを狙っていくと、おのずとタイミングを早くしなければならなくなる。相手が打った瞬間にバックスイングを完了させておかなければならない。そのように打つ姿勢、心的態度が早まると、たとえカウンターが打てなくても、ポジショニングも早くなり、ボールに届く位置まで素早く移動できるようになる。
今までは「打たれるんじゃないか…」とビクビクしながら、なんとか相手のボールに合わせるのに精いっぱいだったのが、カウンターを狙おうと待っていると、こちらから攻められるチャンスが増えてくる。ダブルってこういう心の持ちようが有効なんじゃないだろうか。いや、ダブルに限らず、シングルでもすべてカウンターを狙う心構えでいれば、判断が早くなり、急に相手に打たれてもしっかりブロックできるのではないか。

レベルが高くなれば、そうそうカウンターなど打てないだろうが、心構えとしていつでもカウンターを打つつもりで待っていると攻めるチャンスが増えてくるのではないかと思う。