先日、卓球世界ジュニア2018の男子決勝を見て、日本の将来は明るいと感じた。
田中佑汰選手、宇田幸矢選手、戸上隼輔選手の3名はそれぞれに才気にあふれ、中国選手とも対等に渡り合っていた。
第一試合の田中選手はなんと1ゲーム目を9-2でリード。中国選手相手に勝るとも劣らない、というより、田中選手のほうが実力は上(まぁ、それが「勝るとも劣らない」の意味なのだが)なんじゃなかろうか。しかし、そこからなんやかんやで9-8まで追い上げられ、ヒヤリとさせられたが1ゲームを何とか獲る。中国選手もあなどれない。2ゲーム目は田中選手がゲームポイントを握るも、デュースで落とす。ブロックをオーバーさせる場面が目立った。3ゲーム目は田中選手が3点で抑えられる一方的な試合。何が悪かったんだろう。実力的には差はないと思うのだが。そして4ゲーム目。一進一退の展開だが、田中選手のミスが出て、8-11で中国選手の勝利。内容は悪くなかったと思う。田中選手が攻める展開が多く、田中選手のミスがもう少し少なければ勝ててもおかしくない試合だった。やはり粘着ラバーのイレギュラーなボールに対応できず、ミスが多くなってしまったのだろうか。
第2試合の宇田幸矢選手の最近の国際大会でのパフォーマンスはすごい。パワフルな両ハンドとよく動くフットワークで期待が持てた。第1ゲームは宇田選手のミスが多く、獲られてしまう。相手のボールに慣れていないのだろうか。第2ゲームも惜しいところまではいくのだが、あと一歩のところで勝てない。
結局宇田選手は1ゲームをとったものの、惜しくも敗れてしまった。実力的には伯仲していたのに、相性が悪かったのかもしれない。
第3試合。インターハイチャンピオンの戸上隼輔選手。もう後がない日本チームの切り札である。
どのゲームもいいところまでは行くのだが、結局0-3で戸上選手敗れる。これで日本チームも敗退である。
あれ?おかしいな。日本の3選手ともに実力的に中国選手に劣っているとは思えない。が、終わってみると、1ゲームを獲るのがやっとで、いつのまにか負けてしまっていた。一体どういうことなのだろう。今回の中国選手はそれほど強い選手が出ていないはずだし、日本選手もいいプレーをしていたと思う。なぜ一人も中国選手に勝てなかったのだろう。
おそらく例の粘着ラバーのせいである。あの独特のボールに最後まで慣れることができなかったために惜しいところまではいくが、勝てなかったのだろう。私はこのように分析した。日本代表が中国ラバー対策をしていないとは思えないのだが、対策が不十分なのではないか。でなければなんてことのないドライブでブロックミスをしたり、逆にこっちが攻撃しているのに相手のブロックしたボールに対してドライブミスを連発するはずがない。中国ラバー対策さえ十分にすれば、今の日本代表なら勝てないはずはないのである。
その後、卓レポで田勢邦史監督のコメントを読んで、私の考えが素人考えであると気づかされた。
3人とも、もしくは日本の卓球がそうなのかも知れませんが、少しチキータに頼りすぎているところがあると思います。今はみんなチキータ処理がうまくなってきているので、あまりチキータにこだわらなくていいと思います。昨日は、チキータをさせられて、台から距離を取られてという展開が見受けられました。そこで、ストップはもちろん選択肢の一つですが、そのストップがうまくいかない。みんなチキータをしようとしてバックハンドの構えで入るので、バックでのストップはできますが、フォアでのストップができないというのも課題だと感じました。
なるほど。チキータでこちらから先手をとってはいるが、そのチキータを待たれているので、相手はさほど崩れない。こちらの展開にはならない。それならチキータとストップをまぜて相手の判断を一瞬でも遅らせたほうが得点できる確率がグンと上がる。
中国を見ていると派手なプレーもなければ、特別攻撃的でもないですよね。彼らが将来世界のトップに立つかどうかは分かりませんが、決勝の差は中国の方が「なんでもできた」ということだと思います。サービスもそうだし、レシーブもストップ、チキータ、ツッツキができて、ブロックもカウンターもできる。それと比べると、日本選手はチキータと自分から攻撃するだけだったので、ツッツキやフリック、流し、ブロックなどが全体的に足りなかったと思いますね。
たしかに中国選手が日本選手を力でねじ伏せるという展開はほぼなかったように思う。むしろ日本選手のほうが速いドライブ連打で押していた印象さえある。にもかかわらず、中国選手は日本選手の攻撃にしっかり対応し、日本選手は押し切れず、ラリーが続くと日本選手のほうが先にミスをしてしまったような印象が強い。
決勝では、日本のスタイルとして、少し攻撃的になりすぎたところがありました。日本の選手がリスクを負わされてミスを誘われる場面はありましたが、こちらがミスを誘うようなプレーは少なかったので、そこもジュニアの課題だと思います。
そうだったのか。中国選手はいわば「後の先」を採り、自分から無理して先手を取らず、相手の攻撃を受け止めて、チャンスを見て反撃したり、相手のミスを誘うような場面がしばしばあったということか。
そういえば、私の周りにも、レベルは全く違うが、こういう人がいる。
Gさんは、非常に攻撃的で、台上からも果敢に攻撃してくるし、こちらがドライブをしても、ブロックはせず、ほぼカウンターを狙ってくる。練習などではこちらが打った厳しいドライブをさらに厳しいカウンターで返球されて、ガックリくることも多い。Gさんが調子がいい時ははるかに格上の人ともいい勝負ができる。しかし、私はGさんと試合をして負ける気がしない。というのはGさんは決して受けには回らず、相手が弱いボールを打っても強打。相手が強いボールを打っても強打なので、ミスが多い。ボールは速いが、コースは厳しくないので、攻撃を2~3球しのげば、たいていGさんのほうが打ちミスをしてくれる。
もう一度動画を見なおしてみると、日本選手はものすごいスピードのドライブを何発も打っている、が、相手の体勢が崩れるような厳しいコースに打つことは少なかった。相手の取りやすいコースに渾身のドライブをガンガン打っていたので、日本が優位に立っているとはた目には見えるが、相手はその強打をさほど脅威とは思わず受け止めていたのではないか。ドライブの威力のことを考えたら、ふだん練習している中国選手のほうが上ということもありうる。もしかしたら、中国選手は攻撃を受けているときに余裕さえあったかもしれない。これでは中国選手を打ち抜くことは難しい。中国選手はそのような堅いブロックから一転し、今度は日本選手のコースを突き、日本選手のほうがミスをするという場面が多かったように思う。
私は日本選手の敗因を、単に相手のボールに慣れていなかったからといった用具の原因に帰してしまっていた(それも少しはあったと思うが)のだが、田勢監督は日本選手の攻撃の単調さと、中国選手の技術の多彩さといった原因を敗因として挙げていた。やはりプロは見ているところが違うと思った。
卓球では、よく「常に攻める気持ちで」などと言われるが、速いボールをガンガン打っていても、攻撃が単調なら、効果が薄い。こういう「こちらが攻撃していたのにいつのまにか負けていた」という試合展開は草卓球でもよくあることである。他山の石(こういう使い方は微妙だが)としたい。
コメント
コメント一覧 (9)
田中選手のお姉さんに以前教えてもらったことがあります。
だから弟さんにも勝手に親近感をもって応援しています!!
なるほど!やっぱりプロの目には一般レベルには見えていない部分が
見えているんですね~。
前の記事についてですが、
私も以前から「インパクト」がよくわからずモヤモヤしていました。
最初は
「食い込ます=ラバーにボールをめり込ます(?)」ことだと思ったので
直角に当てた(弾いた)方が食い込むのではないかと思ったのですが
現在の理解では
「食い込ます=ラバーでひっかける」なのかな?となり
うすく当ててボールとラバーの摩擦でギュッと回転をかける事が
インパクトが強いって事かな?と思うのですが・・・
あれ?書いていてやっぱりわからなくなりました。
インパクトドライブってボールを食い込ませながら弾くってことですよね?
その理解が違うのかな?ん?どういう事だ??
長々書いて一人で混乱して終了してスミマセンm(__)m
シロノ タツミ
がしました
コメントありがとうございます。
田中選手のおねえさんも相当上手なんでしょうね。
「インパクト」は真正面から、ボールの進行方向に対して垂直だったら、絶対「ボールとケンカ」してしまうと思うんです。だから、角度をずらして、斜めから強く食い込ませて、それでいて板にはできるだけ当てない、ということだと思うのですが、「インパクトドライブ」というのはもしかしたら私の考える「インパクト」と違うのかなと疑っています。どうなんでしょうね、本当のところ。
シロノ タツミ
がしました
「それでいて板にはできるだけ当てない」という表現で
ちょっと分かった気がしました^^
ありがとうございます!!
はい、田中選手のお姉さんもと~ってもお上手でした!
確か今は実業団で活躍されていると思います。
シロノ タツミ
がしました
中国卓球から学べることは一般層にも多いなと感じています。
球の速さもトップ層の中ではそれほど速いわけでもないのにしっかり得点を重ねているのは、
・打球点が安定している
・打ちやすい場所まで移動できるフットワーク
・自分のフォームを持っている
など
自分の中で強い打球ができるフォームを見つけて打球点を追求していくことが強くなる近道ではないかと極論ではありますが改めて思いました。
だからといって馬龍や張継科のような大砲みたいな球を出せるわけではないのは言うまでもありませんが汗
シロノ タツミ
がしました
こんばんは。宇田選手は私も大好きです。でも、少し打点を下げすぎと思うこともあります。強力なドライブが打てるせいか、相手の打球が高くなってもフラットなスマッシュではなく、ドライブ強打する場面が多いですね。相手も一流だと、ほんのちょっとのタイムラグでも受けやすいんだと思います。
シロノ タツミ
がしました
コメントありがとうございます。
打球点の大切さ、私もこれから注意して見てみようと思います。
シロノ タツミ
がしました
コメントありがとうございます。
宇田選手、惜しかったですね。準優勝も立派なものですが。
日本男子選手もスマッシュを主力にするトップ選手が現れてほしいです。
シロノ タツミ
がしました
このレベルであろうともやはり凡ミスの少なさが大事なんでしょうね。
監督のコメントについてですが、日本の若手が今のスタイルになっているのは指導者の責任だと思います。
口を開けばチキータ、カウンター、攻めなければ勝てないばかりです。勿論それらが大切なのはわかりますが、攻め一辺倒ではない戦い方を教えることも必要ですよね。
シロノ タツミ
がしました