練習できず、悶々としているとき、『卓球グッズ2018』という本を読んだ。
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私は用具音痴(新製品とかには詳しいのだが…前記事「用具についての断想」)で、新しい用具を試そうなどとあまり思わないのだが、最近行き詰まりを感じているし、練習もできないので、なんとなく手に取って読んでみたのだった。

あまり用具に興味のない私でも、引き込まれてしまうのはどういうわけだろう。こういう本を毎年読んでいて、毎年魅力的な新製品が紹介されるのだが、購入してはみたものの、ろくに試さず、もとの用具に戻してしまうということの繰り返しである。

そうなることは分かっているのだが、こういう記事を読むと、また新しい用具を買いたくなってくるからタチが悪い。

おすすめのラバーを特集した記事の中で、フェニックス卓球クラブのコーチがこんなことを書いている。

うちでは初心者にまず「730」と「マークV」を貼らせて自分でボールを飛ばす感覚を磨かせます。

「へぇ…TSPの730かぁ。中国ラバーみたいな硬い粘着ラバーだったよなぁ。マークVを初心者に使わせるというのはよく聞くが、730を初心者に使わせるなんて聞いたことがないなぁ。」

しかし今を時めく指導者が勧めるのだから、きっと何かしら理由があるのだろう。730ってどんなラバーなんだろう…。

次の記事は作馬六郎氏の指導理念の特集である。

ラケットは重いほうが打球も重くなります。スマッシュも相手の威力に押されずに打つことができます。ラケット重量は使っていくうちに慣れるので、気にせず使い続ける。すぐに戻してしまうのは決心が弱い選手です。
確かに重いラケットはラリーが長く続くと不利になるでしょう。しかし、フルスイングで打つチャンスをどうやって作るのか、スマッシュをいつ打つかなど、決め球へつなげるために頭を使うようになります。

作馬氏は女子の指導で定評のある指導者である。「ラケットの重量は使っていくうちに慣れる」というのは若い男子選手ではなく、非力な女子選手を念頭に置いての発言であるはずである。200グラム近いラケットをブンブン振り回すのは何も男子高校生や男子大学生だけの特権ではないということである。「決め球へつなげるために頭を使う」かぁ…。そういう頭を使ったことがないなぁ。「振ろうと思えばいつでも全力で振れる」という油断があるんだろうなぁ。重い用具を使って、全力で振れるのは「1ポイントに一度だけ」という制約があれば、私もラリーの組み立てに意識が向くのかもしれないなぁ。

そんなことを考えながらページをめくっていくと、「中国ラバーを探る」という特集。

そういえば、私の周りでも中国ラバーに変えたという人がチラホラ見受けられる。しかもけっこう上手な人である。中国ラバーってどうなんだろう?飛ばないから台上ではミスが減りそうだ。

翔龍を使用している岩崎栄光選手は次のようにコメントしている。

テンション系は少々適当に打っても入りますが、粘着性だと1球1球良いフォームで打たないと良いボールが入らない。

これは粘着ラバーを批判しているのではなく、粘着ラバーのメリットとしてのコメントである。時間がないとき、つい手を伸ばして手打ちで打ってしまう癖のある私が中国ラバーを使えば、どんなときでもしっかり体幹を使って打つクセが身につくのかもしれない。

偉関晴光氏は次のように述べる。

日本は伝統的に、上回転のラリーを重視する傾向があります。しかし中国卓球では、「下回転」をより重視しています。卓球ではラリーになる前の段階、つまりサービス・レシーブからドライブに至るまでの段階で、様々な回転に対応する必要があり、中でも「下回転に対していかに攻撃するか」が重要。その点で、中国ラバーは大きな武器になります。

言われてみれば、私もラバーを選ぶときは上回転でのラリーを基準において、上回転のラリーで良いショットが打てるラバーがいいラバーと無意識に考えていた。しかし初中級者の実戦では上回転のラリーよりも台上の下回転でのやりとりのほうが重要なのは言を俟たない。対下回転の強さというのがラバーを選ぶときに初中級者が最も重視することなのではないだろうか。

新井卓将氏は自らの指導経験からこう述べている。

私が指導している選手にも、”修行”の意味で1カ月ほど中国ラバーを使わせたことがあります。最初は威力が出ないし、練習でも疲れるのですが、それがトレーニングになり、また台上技術などで新たな感覚をつかむことができました。

旧製品に比べて「スピードが出る」とか「回転量が増した」といった特徴は私の琴線には触れない。新製品は次々と出るが、当社比〇%アップ!と言われながら、試してみたら、旧製品とほとんど変わらなかったということを何度も経験してきたからだ。実際には微妙に性能が上がっているのかもしれないが、用具音痴の私には誤差の範囲内で、その恩恵が体感できないのである。
それに対して「良い打ち方が身につく」とか「訓練になる」とか、そういう言葉には弱いのである。私も中国ラバー(あるいは硬質の粘着ラバー)を使うようになれば、しっかりと全身を使ったいいフォームで打てるようになるのではないだろうか。しかも目下の課題である台上のミスが減り、重い中国ラバーを貼れば「決め球へつなげるために頭を使う」ようになるかもしれない。

ちょっと試してみようかな。新井氏も「誰もが一度は試してみる価値あり」と言っているし。

そういえば、うちに昔使っていたラバーがあったような…。あった、あった。古いキョウヒョウ。中年になって卓球を再開したばかりのときにもらったやつだ。これを使っていないラケットに貼ってみよう。

先週の練習でキョウヒョウを貼ったラケットをワクワクしながら使ってみた。ワンコースで相手にブロックしてもらってこちらはフォアドライブを全力で打ってみる…あれ?なんだか想像していたのと違う。打っていて気持ちよくない。なんだかモアっとした打球感で、力がボールに伝わらず、力を入れてもその大半がラバーに吸い取られるような気がする。喩えて言えば、硬い牛筋を噛んでいるような、噛んでも噛んでも噛みきれないような、そんな気持ちの悪い打球感だった。すぐにいつものテンションラバーに戻した。

これが中国ラバーが敬遠される理由か。世間で言われる通り「1球1球良いフォームで打たないと良いボールが入らない」というのが分かる気がする。しかし私が打ったときはワンコースの単純な練習だから、体勢が崩れていたり、時間がなかったりということもなく、私なりに万全の体勢で打っていたはずなのに、それでもまだ「良いフォーム」ではなかったということだろうか。これ以上、良い体勢で打つなんてできるのだろうか。これじゃまさに”修行”だよ。あ、台上を試してみるのを忘れた。

ある程度の期間、いろいろなボールを試してみたら中国ラバーの良さが分かってくるのだろうか。しかし週に1回ほどしか練習できないのにこんな”修行”をやっていたら、中国ラバーの良さが分かるのに1年ぐらいかかるんじゃないだろうか。現実は厳しい。このまま使い続けるべきかどうか迷うところである。