最近、卓球の情報が多すぎてついていけなくなってきた。ツイッターでいろいろな発信をフォローしていたが、キリがない。youtubeも有名選手の試合やTリーグ関係の動画が大量にアップされている。

Tリーグ開幕前夜ということで、なんとしてもTリーグを盛り上げようとたくさんの人が情報発信をしているが、その中で福原愛選手の引退表明はひときわ注目を集めた。この発表によってTリーグのことを知った一般人も多かったのではないだろうか。
福原愛

福原愛選手は選手としては世界選手権団体戦やオリンピック団体戦で活躍したが、個人戦ではあと一歩のところで大きな成果をあげることはできなかった。しかし、福原選手の偉大さは、競技成績とは別のところにあるように思う。
もちろんテレビ等で卓球の認知・普及に大きな貢献をしたことにもわれわれは感謝しなければならない。某コメディアンの心無い発言で卓球がネクラだとか、カッコワルイというイメージが定着し、日本全国の卓球人が肩身の狭い思いをしていただけに福原選手の存在は卓球にとって闇夜の灯火のようなありがたいものだった。
しかし、福原選手の卓球に対する最大の貢献は、その人間性にあったように思う。卓球をやっていると、あんなに周りに配慮のできる、責任感の強い人に成長するのだと、その見本を示してくれたのである。

世の親たちが子供にスポーツを習わせるとき、最も気にするのは人間性の陶冶なのではあるまいか。私が親だったら、それを最優先するだろう。卓球教室に通わせて、卓球がみるみる上達し、中学生ながら大学生にも勝てるほどの実力を身につけたといっても、試合に負けてラケットを投げつけたり、台を蹴っ飛ばしたりするような子供に育ってしまったら、その教室に子供を預けたのは間違いだったと後悔するだろう。反対にたとえ技術的には大して上達しなかったとしても、礼儀や相手への気配りを涵養してくれるなら、お金を払った甲斐があるというものだ。福原選手を見て卓球は人間性を育ててくれると思った人もいるかもしれない。少なくとも子供が卓球をすることに対して悪いイメージは持たれなかっただろう。そういうイメージを醸成してくれたのは福原選手の大きな功績ではないだろうか。

福原選手ほど批判されない選手は少ないだろう。彼女の人間性を悪く言う人を聞いたことがない。それどころか海を越えた中国でも大人気である。あれだけ露出が多く、人に注目される人なのに誰からも愛されるというのはオリンピックで金メダルを獲ることよりも難しいのではないだろうか。オリンピックや世界選手権で金メダルを獲る選手は今後日本から出てくるかもしれないが、この意味で福原選手を超える逸材はもう二度と出てこないかもしれない。それほど偉大な選手だったと思う。

卓球界に福原選手が出てくれたことに対して感謝の気持ちでいっぱいである。しかし、現役時の本人の精神的な負担は並大抵ではなかったことだろう。引退後は表舞台に立たずに伸び伸びと自分のための人生を送ってほしい。