季節はすっかり春で、桜も盛りを過ぎてしまった。
京都の桜の名所というと、嵐山に行く人が多いようだが、私のオススメは高野川である。
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京阪出町柳駅から川沿いに北上すると、延々と1.5キロにわたって桜が咲き誇っている。

下鴨

京都屈指の高級住宅街、下鴨の松ケ崎浄水場のあたりの桜も穴場である。

以上、卓球には何の関係もない情報である。

桜と言えば、「花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは」という兼好の言葉があるが、卓球でいえば「球は高くて、遅きをのみ打つものかは」ということができるだろう。

先日の練習でペン表の人と練習したのだが、相手の調子が悪く、ボールが乱れていた。こちらがなんてことのない横下ショートサーブを出したところ、相手はツッツキの角度を誤って、台から30センチほど(ネットの倍ほどの高さ)浮かせてしまった。ボールが浮いたからチャンスだと思うかもしれないが、下回転がかかっているし、伸びてこないし、非常に打ちにくい。思い切って打ったらミスしそうだったので、こわごわと押して入れるだけのボールを返球せざるを得ず、逆に相手に攻め込まれてしまうということがあった。こちらが横回転ロングサーブを出した時も、払ったりドライブをかけたりしてそこそこのスピードのボールを返してくれればこちらも打ちやすいのに、ラケットを動かさずに角度を調節して当てるだけのぽわ~んとしたレシーブだったので、肩透かしを食らったような感じで強打できず、ループドライブで情けないボールを返すしかなかった。

中途半端に高いボールよりも低いボールのほうが打ちやすいし、ふわっとした伸びてこない遅いボールよりも適度に速いボールのほうが打ち慣れているので強打しやすい。

卓球にはブロックやツッツキのような守備的なボールと、ドライブやスマッシュのような攻撃的なボールがあるが、そのどちらとも言い難い、微妙なボールもある。これを「つなぎのボール」と呼ぶことができよう。私は昔、高いボールや遅いボールは何が何でも強打するというムチャ打ち卓球だったのだが、そうするとあまりにもミスが多いので、つなぎのボールを打つようになった。

そしてこのつなぎのボールというのが意外なことに卓球の中で大きな役割を果たしているのではないかと思うようになった。つなぎのボールというと、棒球というイメージがあるが、必ずしもそれは当たらない。上述したように相手の意外な返球に驚いて、打とうにも打てず、しかたなく腰の引けた情けないヘロヘロ球を送ってしまったら、それはたしかに棒球である。相手に「どうぞ打ってください」と首を差し出しているようなものである。しかし、つなぎのボールは質の高いつなぎのボールと質の低いつなぎのボールがあるように思う。相手に高いボールやゆっくりしたボールを送られたものの、強打できない、という場合にとっさに低くつっついて返したり、チョリっとドライブをかけて相手のミドルを狙ったりすれば、相手も一発で抜くことはできないだろう。このようにつなぎのボールの質を高めれば、次にこちらの強打につなげることもできるのである。

絶好球を強打するのはレベルの低い人でもできるが、やりにくい相手の難しいボールに対して隙を見せずになんとか返球し、次に自分の打ちやすいボールを返球させた上で強打するというのは思ったよりも難しいものだ。こういう相手に対してはつなぎのボールの良し悪しで勝敗が大きく左右されるのではないだろうか。

もっと分かりやすい例でいうと、上手なサービスを出されて、強打できない場合、なんとかして相手に強打させない程度のレシーブをするというのもつなぎのボールの質が高いと言えるだろう。

強打の質を高めることに熱心な人は多いが、つなぎのボールを磨く人というのはそれほど多くないように思う。しかし、とんでもない強打を打つ人よりも、つなぎのボールの質が高い人のほうがどんな相手にも安定して勝てるのではないかと思う。