セルビアのカラカセビッチAleksandar Karakasevic選手の試合がアップされていたので観てみた。
なお、相手のPete Zolt選手も同じセルビアの選手のようだ。



この選手を知らない人のために簡単に説明すると、有り余る才能を持ちながら、勝利への執着が薄いのか、勝つことよりも相手の意表を突くプレーを繰り出すことに心血を注いでいるように見える。トリッキーで独特なプレースタイルから、世界中にファンが多い有名なオジサンである。ウィキペディアによると、ワルドナーは「あいつが酒を止めたら、誰も勝てない。」とコメントしたのだとか。

北斗の拳に喩えれば、雲のジュウザのようなオジサンである。

juuza

前記事「かつてない才能」で取り上げたチェコのシュトルビコバ選手を思い出させる。日本や中国にもこういう選手はたぶん存在する(比較的近いのは丹羽選手か)と思うのだが、国際大会でもこういう選手が観られるのは、ヨーロッパ卓球のおもしろさだろう。

カラカセ選手のプレーをみて気づくのは、

コースの打ち分けがすごい。
たとえば、2ゲーム目の冒頭ではフォアに打つのかバックに打つのか全く分からず、相手が逆を突かれまくっている。
https://youtu.be/7AVP6-uYtw0?t=88

また、バックハンドの打ち方というか、ラケットをボールに当てるタッチも、多彩である。
たとえば、3ゲーム目の4-2や4-4の場面

https://youtu.be/7AVP6-uYtw0?t=152

https://youtu.be/7AVP6-uYtw0?t=166


バックハンドで連続ブロックしているが、おそろしく浅いブロックの後にギリギリまで深くブロックで返球したりしている。

他にもサイドの切り方がエグいとか、いろいろ見どころがあるのだが、カラカセ選手のボールタッチをみて、ボールタッチについて思うところがあったので記事にしてみたい。

ボールタッチというのは、感覚的なものなので、言葉ではなかなか説明しにくい。それで技術記事などでは、「厚く/薄く 当てる」とか、「弾く」といった表現ばかりで説明されることが多い。そういう微妙な感覚は、言葉で説明するより、動画をみたほうが手っ取り早いからだろうか。しかし、タッチを説明するには、ラケット上でボールをどの方向に転がすかというのが初中級者には大切な情報なのではないかと個人的に思う。

ボールをラケットに当てるのは一瞬であるが、私たちはその一瞬のインパクトの中に、後ろから前に押すというタッチと、下から上にラケットを擦り上げるというタッチを区別している。前者はプッシュやミート打ちで、後者はドライブである。「こする」といっても、実際にはわずか数ミリにすぎないのだろうが、私たちのイメージの中では、ボールはラケットの上を数センチは転がっているように感じる。

たとえば、ドライブというのは、ラケットを下から上に擦り上げるので、ボールはラケットの下方向に転がるし、ツッツキやカットはラケットを上から下方向に移動させるので、ボールはラケットの上方向に転がることになる。

私は最近、ボールを上方向に転がす新たなタッチを覚えた(前記事「ボールを持ち上げる方法」)。ボールを上方向に転がすタッチは、ツッツキやカットのようにしっかりと下回転をかける打ち方しかできなかったが、ツッツキやカットのように下回転をかけないで、ボールを上に転がして押し出すようなタッチができるようになってきた。このタッチは、上手な人はみんな身につけており、もちろん冒頭のカラカセ選手のバックハンドでも用いられているが、初中級では身につけていない人も多いと思われる。

表面バックショートではこの打ち方が特にやりやすい。例えば吉田海偉選手対ロビノ選手の5ゲーム目冒頭のラリー。

https://youtu.be/yuoYLENvV0s?t=576

吉田選手はバックショートで前半はボールを上方向に転がし(つまりラケットを下に移動させて)、後半は下方向に転がして(ドライブっぽい打ち方で)返球している。

私も最近はあまり切れていない下回転を表面のプッシュで押し出すとき、ボールを上方向に転がすことを意識しながら打つようになった。それによって軽い下回転を安定してそこそこのスピードで相手コートに返球できるのである。この打法はチキータや台上バックハンドドライブなどに比べると地味だが、試合では非常に効果を発揮する。

以上、タッチについて最近考えていることを、記事にしてみた。相変わらずレベルの低い考察で申し訳ない。
前記事「ボールを持ち上げる方法」では、言葉足らずでうまく表現できなかったのだが、ブレード上でどの方向(たとえば「1時の方向」のように時計になぞらえたらもっと分かりやすい)にボールを転がして打つかというタッチを意識することによって安定性が高まるのではないかというのが言いたいことである。ブロックやプッシュだけでなく、流し打ちやフリックも転がす方向という視点が大切なのではないかと思う。