「息をするようにウソをつく」という言葉があるが、私がときどき相手をしてもらうLさんは、呼吸するようにナックルを出す人なのである。

Lさんは典型的なペン表で、おそろしく打点が早く、それでいてミスが少ない。練習の冒頭にフォア打ちをしていると、私はこらえきれず、わずか4~5往復ぐらいでボールを落としてしまう。バックのブロックなら、さらに返球が難しい。私がバックでLさんのロングボールを止めるときも、私がフォアドライブでLさんに止めてもらうときも、どちらも私は安定してラリーを続けることができず、ボールを落としてしまう。いろいろなペン表の人と打ったことがあるが、たいていのペン表の人のナックルは限定的である。ふだんのボールにはほんのり前進回転がかかっているので、対応するのはさほど難しくない。ナックルを出すのはこちらのドライブを待ち構えていて、表面バックでブロックするようなときだけだ。一方Lさんは意識してナックルを繰り出しているというよりも、ナックルの打ち方が染みついていて、どんな打ち方で打っても、フォアでもバックでもボールが自然にナックルになっているといった感じである。まるで「全身凶器」である。こちらが甘いボールを打つと、ナックルのプッシュで押し込まれるし、こちらがドライブ強打を打つと、それが非常に厳しいナックルで返ってくる。そんな人である。

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しかし、フォア打ちでビュンビュン飛び交っているボールがナックルになるというのはどういうことだろうか。それはおそらく錯覚なのだろうと思う。サービスでナックルボールを出すとき、メーカーのマークがはっきり見えるようなときがある、これこそまさにナックルボールと呼ぶべきものだが、このような真性のナックルボールではなく、「おそらくこのぐらいは前進回転がかかっているだろうな」という推測を下回る前進回転しかかかっていないラリー中のボールも「ナックル」と感じるわけで、ラリー中のLさんのボールの大半は多かれ少なかれ前進回転がかかっているのだろうと思う。しかしそれが想定外の弱さなのだろう。以下で私が考える「ナックル」は真性のナックルだけでなく、こういう錯覚によるナックルも含んでいる。

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「そちらに速いドライブを打ってもらうと、楽なんですよ。ゆるいロングボールだと、こっちから力を加えなきゃいけないでしょ?」

そんなことを言われた。どうやらナックルを落とすまいと、こちらからグイっとスピードのあるドライブをLさんのバックに打つのが一番危険らしい。それよりは、あまり回転をかけず、力を加えないようなボールでLさんのバックを狙うのがよさそうだ。しかし、私にとってそれが一番難しい。

私はどちらかというと、ワン・ハオ的なスタイルで、台上を除けば、バックハンドはほぼ裏面である。裏面でプッシュは難しいので、たいていドライブで打ってしまう。そうすると、Lさんのドナックルの格好の餌食となってしまう。表面でのプッシュが安定して打てれば、Lさんのナックルもそれほど脅威ではないのかもしれない。もっと表面を安定させなければと思う。

Lさんのナックルを受け続けながら、どうすれば対ナックルが安定するのかいろいろ打ち方を工夫してみた。
ナックルは落ちる。それでボールを落とすまいとドライブをかけるのだが、それがまた厳しいナックルとなって返ってくる。もがけばもがくほど苦しくなる…この方向性が間違っているのは明白である。ドライブをかけないでボールを持ち上げなければならない。

ドライブは面が下を向いているから落ちるのである。面を垂直ぎみにしてこすらないで打てばいいのではないだろうか。しかし、こすらないで後ろから弾くように打っても、やっぱり落ちるし、こすっても落ちる。こすってもミス、こすらなくてもミス…一体どうすればいいのか。現在も模索中である。

一つだけわかったことは、ボールを持ち上げる方法はこすり上げるだけでないということだ。

バックハンドで考えてみるが、頂点を過ぎたナックルボールを面を垂直気味にして打つと落ちる可能性が高い。しかし、バウンド直後を狙って面を垂直気味に当てると、今度はボールが上に上がる。こすっていないのに上に持ち上がるのだ。同じ面の角度でも、ボールの下降期と上昇期では、ボールの飛ぶ方向が正反対になる。ラケットの面の角度が同じでも打点を変えればボールが上に上がる!
当たり前のことかもしれないが、私は今になってようやくこのことに気づいた。うすうす気づいてはいた…というか、身体では知っていたことかもしれないが、この発見は大きな収穫のように思える。対ナックルに限らず、台上の弱い下回転や横回転のボールは、これまでフリックやドライブでこすり上げてきたが、打点を早めれば、こすらずに押すだけでボールがネットを越えるということになる。ほかにもいろいろな場面でこすらずにボールを持ち上げることができるなら、台上で主導権を握りやすくなる。

ただ、たしかにボールのライジングを垂直気味に当てると、落ちないことは落ちないのだが、ボールが上がるというよりは、浮いてしまい、今度は相手のスマッシュの餌食となってしまう(Lさんはスマッシュの名手である)。そこで、ライジングでボールを打つときは落ちない心配よりも、浮かない心配をしなければならなくなる。ボールを上から少し押さえるようにして打たなければならないのだ。この角度が微妙である。私にはまだまだボールを浮かないようにしてミートする角度が身についていない。しかし、ライジングで適切な角度で押すことができれば、ナックルを克服できるのではないかと思う。

表ソフトのナックルには、打点を早めることで対応するのが有効だ!と言いたいところだが、まだ模索中なので、結論は保留としたい。