甘い初恋の思い出…などとは無縁の人生であった。

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仲間との絆…友情…夢…そんなものもなかったなぁ。

振り返ってみると、私の青春時代というのは先がどうなるか分からない中、人間関係や進路に悩み、ストレスも多く、何もかもが中途半端で、悶々とした期間だった。あの頃に戻れと言われても、絶対にイヤだと思う。まして子供時代は人間未満、動物以上の存在だったので、もっと嫌だ。

それに比べて、中年の現在のなんと充実していることよ。

卓球という一生をかけるに足る趣味とも再会できたし、自分がどこにいて、何をすべきかも分かってきた。忙しいことは忙しいのだが、心に余裕がある。たいていのことは自分で考え、自分で決めることもできる。不本意なイベントに参加させられることもほとんどないし、精神的に自由である。

一般的には青春期や青年期が輝いていて、中年期というのは人生のたそがれ時のようなイメージがあるが、私にとっては中年こそが今までの人生で一番明るく楽しい時代だと感じる。

…いや、私は今回、中年の楽しさについて語りたいのではなくて、中陣の楽しさについて語るのだった。

閑話休題

現在の私の「陣」は、たぶん前陣だと思う。あまり後ろに下がって打つことがない。
やっぱり前陣で打つボールが一番速いし、後ろに下がると動く距離も大きくなるので、体力的に厳しくなる。それによく利用する練習場はそれほど広くないので、あまり後ろに下がると壁とか柱にぶつかってしまわないか心配である。

しかし、先日、広い体育館で練習する機会があって、相手にブロックしてもらって、ドライブの練習をする機会があった。相手はあまりブロックが上手じゃなかったので、前陣で強くボールを打つと、ほとんど続かない。そこで、普段よりも後ろに下がってドライブを打つことにした。

ちゃんと測ったわけではないが、おそらく私は台のエンドから30~80センチぐらいのところに陣を取っているのではないかと思う。広い体育館だったので、それを80~150センチぐらいまで、ぜいたくに下がって打ってみたのである。すると、今まで見慣れた風景が一変したように感じた。

ボールがこちらに到達するまでに時間の余裕がかなりある。今までだったらこちらが打ったドライブを厳しくブロック――押されたりすると、第一歩を歩みだす間もなくミスしてしまったところが、中陣でボールを迎えると、一瞬考えてから、ポジショニングをする余裕もでてくる。ブロックのコースが逸れて、フォア側に大きく動かなければならないときも、大きくフットワークを使って何とか間に合うことも多かった。

狭い室内で飼われていた犬が、広い公園に放たれて、自由に駆け回っている――そんな気分だった。

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もしかしたら、私には中陣が合っているのではなかろうか。

試合で中陣を実現するためにはいろいろな工夫が必要かもしれない(前記事「いつかは中陣で」)が、とりあえず基本練習の時に中陣を試すだけでも、楽しい。精神的な余裕がなく、いつもピリピリしていたかつての青春時代のような前陣では味わえない心の豊かさが中陣にはある。

中陣での練習、おすすめである。