赤ちゃんが自分の手をじっと見つめることがある。

hand regard

ハンド・リガードというそうだ。
赤ちゃんにとって世界の境界は未だあいまいである。なにが自分で、なにが自分でないかがはっきりしない。

自分の外にあるものは自分の思い通りにならない。
お母さんにだっこしてほしいのにお母さんは近くにいない。安らかに眠りたいのに不快な音が止まない。下腹部が湿っていて気持ち悪い…どうして自分の思い通りにならないんだろう?赤ちゃんはその理不尽さに声を上げて泣く。

しかし、自分の外にあるにもかかわらず、自分の思い通りに動くものがある。自分の手である。自分が右に動いてほしいと思えば右に動くし、開きたいと思えば手は開く。そして時には口の中に入れて、自分と自分ならざるものとの境界を確かめてみる。この不思議な手を眺めるという行為を通して、赤ちゃんは次第に自分の範囲がどこまでなのかを確定していく。

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卓球のボールというのも自分の思い通りにならないものだ。
ネットを越えて相手コートに突き刺さるようなボールを打とうと思っても、ボールは台を越えてオーバーしてしまうし、相手のサービスをフリックしようとすればネットにかけてしまう。

だが、あるタイミングとスピードでラケットを振ると、不思議なことにボールは私の思い通りに飛んでいく。そのタイミングとスピードがどこなのか…まだはっきり分からない(前記事「死角を減らせるかも」)。

私は未だその境界を確定している途上にある。