卓レポアーカイブの中に「世界一への道」という記事がある。今までの日本人世界チャンピオンがいかにして世界を獲ったかを、その生い立ちから紹介する記事である。

「長谷川信彦 ――人の3倍練習し、基本の鬼といわれた男」

の中に群馬県桐生市にある故長谷川氏の卓球場――テーブルテニスガーデン・ハセガワに次のような道場訓があると書かれている。

強くなるには
・常に試合と同じ気持ちで練習する
・フォーム、フットワーク、3球目、4球目攻撃など抜群にせよ
・世界で勝てる選手になれ
・自分から進んで素振り、体力作りをやれ
 '01・6・10 長谷川信彦

この中で目を引いたのが、4番目の素振りと体力づくりの奨励である。これが長谷川氏流の卓球原理なのかなと思う。というのは記事を読んでいると、素振りとランニング、フットワーク練習の描写がしょっちゅう出てくるのだ。

現役時代には毎日2時間をトレーニングに費やした。その半分はランニングだった。「試合前にランニングをたくさんやったときには負けなかった。反対にランニングをあまりやらなかったときには、勝てなかった。走ると体のバランスがよくなるし、心も鍛えられる。孤独に強くなる。長距離ランニングは自分の卓球の命だ」と言い切る。

長谷川氏はランニングにかなり重点を置いているようだ。また、素振りのほうもすごい。

元明治大学監督の渋谷五郎は、学生に素振りを見せてやってほしい、と長谷川にお願いした。翌日「長谷川の素振りを見て、一瞬背筋がピーンとなった。宮本武蔵の剣の素振りもこのようだったのだろうな、とすごく感動しましたね。本物は違うね」と語った。長谷川の素振りやシャドープレーに関する伝説は数え切れないほどある。

剣道の素振りのように気迫のこもった卓球の素振り…。ぜひ見てみたい。
このように素振りを重視するのは

「今の日本の選手は、トップ選手から小学生に至るまでみんな体の軸が崩れている。だからフォームが崩れて、いいボールが打てないし、いい動きができない」との考えからだ。

まとめると、足腰を中心にした筋力トレーニングと、フォームを崩さないようにするための素振りというのが長谷川卓球の中で大きな位置を占めていたようだ。

長谷川氏の卓球指導は現代でも通用するのだろうか?

長谷川氏が群馬で指導をするようになってから、卓球の有力選手が出たという話はきいたことがない。今のところ長谷川氏の卓球理論は全国レベルの選手の養成には成功していないのかもしれない。

しかし、私には長谷川氏の卓球理論――足腰の筋トレと素振りというのが有益に思えてならない。

根拠はない。

自分の卓球を振り返ってみて、それらの点が絶対的に欠けており、それが自分の卓球の障害になっていると感じるのである。私のようなレベルの人間には長谷川氏の卓球指導は合っているのかもしれない。

昭和の卓球選手の練習の話を聞くと、長谷川氏だけでなく、多くの選手がランニングをはじめとした筋トレを非常に重視している。

前記事「特徴のある人」で足腰の重要性について触れたが、長谷川氏の卓球人生を読んで、私も筋トレをしなきゃなという気持ちになった。しかし、何度も述べているが、私はあまりランニングが好きじゃない。しかし筋トレはしたい。どうしよう。

部屋の中で筋トレができるアブローラーという器具をアマゾンで買ってみた。

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Soomloom腹筋ロズウィル スリムトレーナー

1200円ほどだった。ホイールの部分がプラスチックに近い固い材質なので、床によっては傷がつくかもしれない。他に不満はない。

膝を床につけて四つん這いになり、薬研を転がすように前に押して、それを引き戻すという運動である。

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ひざまづいて前に転がしてみる。

「ぐゎは!」

今…腹筋の細かい繊維が大量にちぎれたにちがいないと思わせるような痛みを覚えた。この薬研を引き戻せない…。

体にかかるなんという負荷。
たったの1回もできずにその場に倒れ伏してしまった。これは思った以上にハードな運動である。

あまり前に押しすぎて、上半身が伸びてしまうと、引き戻せなくなるので、まず短い距離でキコキコやって、だんだん距離を伸ばしていく。すると、胃袋のあたりがすぐに筋肉痛になる。

しかし、達成感はあった。

それから2週間ぐらい毎日続けていると、膝をついたままなら、上半身を最後まで伸ばしても、腹筋で引き寄せられるようになっていた。腹筋がついてきた気がする。

そして腹筋に力を入れて上半身をまっすぐ姿勢良く立てて座ってみる。今までのふだんの姿勢は軽く猫背気味だったのが、腹筋ができてきたことによってピンと背筋を伸ばして長時間座ってもあまり疲れなくなった。姿勢が良くなると、気分もよくなる。筋トレが少し楽しくなってきた。

この調子で続けていれば、年末ぐらいには腹筋が割れてくるかもしれない。いい買い物をしたなぁ。

あれ?でも当初の目的は足腰を鍛えるはずだったのに、腹筋のトレーニングになってしまった。

まぁ、いいか。

この筋トレがその後、私の卓球に大きな変革をもたらす契機になろうとは、このときはまだ想像だにできなかったのである。