先日、地域の大会に出場したのだが、強い人に当たって自分の卓球を全くさせてもらえなかった。
対戦相手のTさんは物腰が柔らかく、みんなに愛されるキャラなのだが、卓球は怖かった。

T

一方、後日、中高生と練習試合をさせてもらう機会もあった。
とてもきれいなフォームで切れたカットや速いドライブを打ってくるのだが、彼らの卓球はあまり怖くなかった。この違いが一体どこから来るのかを考察してみたい(非常に低いレベルの反省で恐縮である)

まず、Tさんはサービスが怖い。対角線上の角ギリギリに低くて速いロングサービスを送ってくる。そうかと思うと、今度は同じフォームでストレートに切れた速いロングサービス。これも台の角ギリギリに入ることが多い。その一方でやっぱり同じフォームからネット際にショートサービスが来る。私はその日は裏面バックハンドがちっとも入らず、バックにロングサービスが来たら、裏面でうまくレシーブできる自信がなかった。そこで少し台から離れて回り込んでレシーブしてやろうかとも思ったのだが、ロングサービスのスピードが速かったので、なかなかチャンスがつかめない。回り込めるかどうかの判断は一瞬である。そうやってロングサービスを警戒していると、今度はショートサービスである。私は腕を伸ばしきってだらしない、当てるだけのレシーブをしなければならなかった。
Tさんがサービスを出すときは、どこに来るか分からず、非常に不安な気分になる。

一方、中高生と試合をした時は、サービスのスピードがそれほど速くはない上に台のエンドギリギリの深いボールはほとんど来なかった。ロングサービスの落点は無難に台から20センチは内側である。回転はよくかかっているのだが、スピードが普通だったので、落ち着いてレシーブできた。相手のサービスを待っているときも、相手が打つ直前に大体どの辺にボールが来るか分かった。

サービスが良ければそのポイントの大勢が決まってしまうことも珍しくないというのは常々感じていたことなので、それは想定内だった。しかし、サービスの後の台上での鍔迫り合いは想定外だった。

Tさんは台上も怖い。こちらがサービスを出したときのTさんのレシーブはガンガン押してくる。ツッツキだったら、軽く押すのではなく、ガンと押してくる。台上のボールのスピードが速い。速いと言っても一発で抜かれるほどではないのだが、ふだんの練習でゆっくりしたツッツキのスピードに慣れている私は、テンポが合わず、差し込まれてしまう。その結果、私は弱々しく返球してしまったり、あるいは少し浮いたボールを送ってしまうことが多く、そのボールをガンとスマッシュされる。Tさんは浮いたボールなら台上でも積極的にスマッシュを打ってくる。ミスが少ない。遅いボールや浮いたボールは簡単に打たれてしまうから、こちらも台上で低くて速いボールを打たなければならない。

中高生と試合をしたときは私がいつも練習しているようなゆっくりとした台上の展開である。台上ではあたかも「休戦協定」が結ばれているかのごとく、台からボールが出るまではお互いに積極的な攻撃に出ない。フリックなどは来ないし、ツッツキも軽く押すだけのゆっくりしたボールである。そして台からボールが出てはじめて「戦闘開始」である。が、こちらも「打ってくる」と心の準備ができているためにやや下がって相手の攻撃に備えている。ドライブのスピードは速いものの、前中陣からのボールだし、遅い打点で、コースも鋭くないので、安心してブロックできる。スマッシュはほとんど来ない。

上手な人同士の試合で、台上が終わり、ラリー戦が始まって、スピードの速い派手なボールが飛び交うのを見ると、すごいなと思うけれど、実は台上の段階で戦闘は始まっていたのだ。台上でできるだけスピードの速いボールを送り、相手をつまらせて、こちらがガーンと強打するという展開を作らなければいけなかったのに、私は迂闊にも台上の段階ではまだ本格的な戦闘が始まっていないとばかりにのんびり構えていたわけである。

上手な人と試合をすると、いろいろ勉強になる。

これからは台上の段階から攻める気マンマンで、ツッツキ、プッシュのボールスピードを高めて攻めの姿勢で臨み、フリックも積極的に使っていく、軽く当てるだけのショットは打たない、といった怖い卓球――速い攻めの卓球を目指さなくては。

【追記】170302
後になって思い出したが、Tさんはツッツキでガンと押してくるだけでなく、こちらが中途半端にバックにドライブを打つと、それを単にブロックするだけでなく、ガンとプッシュしてくる。強烈なボールでなければ、台上だけでなく、ラリーで守備に回ったときでも基本的に押してくるような印象を受けた。
それで題名を「台上での鍔迫り合い」から「押して参る」に改題した。