前記事「理想的なショット」のコメント欄で読者のバルサミコ氏が三木圭一氏の卓球理論について言及されていた。三木圭一氏とは誰だろう?ネットで調べてみると、1961年の全日本チャンピオンらしい。1961年といえば、中国の前陣速攻に日本卓球が完敗し、荘則棟氏が世界選手権シングル3連覇をなしとげた時代だ。
youtubeを検索してみると、ちょうど三木圭一氏の卓球教室という動画が上がっていた。かつてスカパーで放送されていた番組のようだ。ビデオの中で「去年のパリ大会で、シュラガーが優勝した」などと語っていたから、2004年ごろのビデオらしい。画質はずいぶん悪いが、その内容には驚かされた。私にとって非常に納得の行く理論なのだ。しかもシンプルで体系的なので分かりやすい。

たとえば、

1.重心は足ではなく、腰。それによって体幹がよく回転する。右足から左足への体重移動は必要ない。

 

フォアハンドを打つとき、右足から左足への重心移動をしがちだが、それをするとスイングが大きくなり、姿勢も崩れやすく、戻りが遅れる。腰を中心にして体幹を回転させることによって打球すれば、コンパクトで姿勢も崩れず、威力のあるボールが打てるという。
私も以前、ペンギンのようなポーズで、「イヤイヤ」をするように体幹を自転させてフォアドライブを打ってみたところ、スイングの半径は非常に小さいのに速いボールが出てビックリしたことがある。

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また、フォアドライブは後ろから斜め上(前)方向に振るものだと思っていたが、スイングが胸のあたりをめぐるように水平ぎみに打つという三木氏の理論には説得力がある。三木氏のフォアハンドは徹底的に体幹の中心を軸にした回転運動というのがポイントのようだ。

もちろん、これだけが「正解」と言うつもりはない。たとえば、世界レベルの岸川聖也選手のフォアドライブは下から斜め上に非常に直線的なスイング軌道を描いている。

岸川FH

だが、私には三木氏のコンパクトで体幹の周囲をめぐるようなスイング軌道が合っているような気がするのだ。

次にバックハンドの打ち方にも感心させられた。





ビデオの中で一般的なバックハンドとして、バックスイング時に面をかぶせ、その後、面を開きながら下から上に振っている人がいた。三木氏は、それではナックルボールに弱いから、初めから面を開いてインパクト時に面をかぶせて打つように指導していた。

つまり

かぶせ→開き
下→上(前方)

という一般的なバックハンドに対して三木氏は

開き→かぶせ
上→横(水平)

というバックハンドを提唱していた。
初めから面を開いているのでナックルが来ても、落ちにくい。かつスイングを横方向に面を返しながら打つことによってすばらしいスピードのボールが出る。

この、ラケット面を返す力を利用するというのが私には新鮮だった。返す力を利用するかしないかでずいぶんと威力に差が出るように見えた。
フォアフリックも同様に面を開いてから、面を返してかぶせる力で打つのだという。私はフォアフリックというのは上にこする力で打つものだと思っていた。

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ビデオ中の惚れ惚れするようなバックハンドドライブ

この「返す力」というのは、たとえば自転車でカーブを曲がる場面をイメージしたら、理解しやすいかもしれない。

keirin

上の図のように自転車競技のバンクで、アウトコースからインコースに一気に駆け下りつつカーブを曲がるとき、スピードが一気に上がる。バックハンドで面を返しながら横に振るというのは、この自転車でカーブを曲がるときのイメージに似ている。

このような卓球理論はおそらく最新の理論からすると、異論もあるのだろうが、私には三木氏の理論で十分というか、これが私の求めていた卓球の基本のように思えた。

こんな興味深いビデオをアップしてくれた人、そして三木氏の理論を教えてくれたバルサミコ氏に感謝したい。

他にもいろいろな興味深いポイントがあったので、以下に挙げておく。

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2.当たる瞬間だけ力を入れる。それ以外は力を抜く。

3.グリップで裏の指を伸ばさない。それによって指の力が抜け、手首の可動域も広がる。

4.前傾しすぎない。重心が前後に移動してはいけない。体の中心に軸を作って回転運動で打つ。

5.膝を固く深く曲げると、体が回転しにくい。

6.スイング方向は、後ろから前ではダメ。体幹の周囲を平行にめぐるように肘、手首を使う。

7.肘から先を使って速いボールを打つ

8.フォアフリックではヘッドを遅らせて(開いて)入る=手首を使う 

9.バックハンド強打は、前腕中央を支点にして肘を内側へ入れると、テコの原理で強いボールが打てる

10.ブロックは、縦回転のドライブに対して横回転で対抗すると安定する。斜め上からラケットをかぶせて、横回転を入れてやると、強いドライブを安定して返球できる

11.ナックルを打つときは面をかぶせない。順回転のボールのときよりも面を開いて打たないと安定しない。ドライブもふだんよりも面を開いてドライブをかけなければならない。

12.切り替えのコツは、フォアハンドのスイングの延長線上がバックハンドの始点にならなければならない。その時のバックハンドはバックスイングなしで、水平方向に打つ。下から出してはいけない。

13.表ソフトは相手のボールの威力を利用して打つ。自分から持ち上げながら打ってはだめ。回転をかけないで打ったほうがスピードが出る。

14.スマッシュの打ち方は頂点まででインパクトを迎える。回転をかけないで打つ。

15.フォアハンドは軸を崩さない。正面あたりで体幹を止め、肘から先がスイングの内側にくいこむように振る。

16.フリーハンドはラケットと同じ方向に動いてはいけない。ラケットハンドのスイングにブレーキをかける方向に動かして、バランスをとれば、姿勢が崩れない。

17.フォア前フリックのとき、フリーハンドは台の外に残す。そうすればバランスが崩れずにすぐに戻れる。フェンシングと同じ。

18.フォア前の払い方は、ペンなら裏の指を小さく曲げる。それによって手首の可動域が広がる。打球時に親指に少し力を入れて、ラケットを返す力で打つ。

【追記】170303
上掲のビデオは今、視聴不能となっている。
が、親切な人がまた上げてくれたようだ。
https://www.youtube.com/channel/UCHbQIEP5DvfEAoEUNVH6r8w/videos?shelf_id=0&view=0&sort=dd