リオ・オリンピックの卓球競技がすべて終了した。
男女ともに悔やまれる点はあったものの、無事メダルを獲得できた。特に男子シングルスの水谷選手の銅メダルと、男子団体の銀メダル獲得はいくら称賛してもしたりないぐらいの素晴らしい成果である。

だが、卓球日本代表の挑戦はこれで終わったわけではない。新たな挑戦はすでに始まっている。

リオ・オリンピックでの卓球競技に対する注目度は今までにないほどのものだった。連日新聞に大きく取り上げられ、女子の日本代表は言うにおよばず、今や、水谷選手の名前はおろか、試合中はノーパンだという一部の卓球ファンしか知らない水谷選手の下半身事情までその辺の一般人がふつうに知っているのだ。

サッカー日本代表が早々と負けたこともあり、日本国民は目が覚めたようだ。

「リオ・オリンピックが始まる前は、サッカー、サッカーって日本中で大騒ぎしていたけど、予選も突破できないサッカー日本代表よりも、メダルを取ってきちっと結果を出した卓球のほうがはるかに観る価値あるんじゃね?」

卓球は確実に日本国民に受け入れられつつある。それには解説と実況の方々やトレーナー、スタッフの方々の後方支援も忘れてはいけない(「卓球“神解説”の宮崎氏…」)。それから男子の卓球をもっと盛り上げるためには、次回の男子の解説はぜひ宮崎氏にお願いしたい。

卓球日本代表の次なるミッションは日本国民に卓球の魅力をアピールし、卓球のイメージ向上、メジャースポーツ化、ひいては卓球選手の引退後のセカンドキャリアの創造である。

卓球は、ダサい、暗い、かっこ悪いというレッテルを貼られて以来、そのイメージをいまだに引きずっている(前記事「卓球の「暗い」イメージ」)。女子日本代表がずいぶんイメージ向上に貢献してくれたが、それでもまだ足りない。男子もそれに続かなければならない。

前記事「世界卓球2016の注目度をデータから振り返る」「世界卓球2016を非卓球人はどう見たか」で一般人の卓球に対する関心の高まりを見たが、本稿でもリオ・オリンピックの注目度をグーグル・トレンドを使って見てみたいと思う。

trend


調査範囲は8/11から8/18の一週間(日本時間)。

青い線が卓球。平均値は15ポイント。
赤い線がテニス。平均値は8ポイント。
黄色い線がサッカー。平均値は4ポイント。
緑の線がバドミントン。平均値は6ポイント。

「卓球」「テニス」「サッカー」「バドミントン」という語がグーグルでどのぐらい検索されたかを示している。詳しくは知らないが、関連語句も含めて、これらの語句がどのぐらい注目されているかが分かるしくみである。

テニスが一時的に非常に検索されているが、この一週間の平均値では卓球が他を圧倒している。まだオリンピックが終わったわけではないが、このオリンピック期間の中盤から終盤にかけて日本を最も盛り上げたのは卓球と言っても過言ではない。いや、もしかしたら全期間を通して卓球が最も注目されたのかもしれない。

卓球の一番大きな山は17日の01:00である。この時間には女子団体の3位決定戦が行われている。
次は18日の09:00である。この時間には男子団体の決勝が行われている。
3番目は15日の11:00である。この時間には女子団体の準決勝が行われている(早朝には男子の準々決勝)。

やはり、女子団体の注目度が高いが、18日の注目度は男子団体に対するものであろう。

テニスの一番大きな山は15日の04:00である。錦織選手の3位決定戦である。
次は14日の01:00。錦織選手の準決勝。
3番目の13日の06:00は錦織選手の準々決勝だろうか?

サッカーはずっと低調で、山らしき山がない。私はこの調査をするまで女子サッカーが行われていたことさえ知らなかった。この注目されなさぶりはどうだろう?外国では注目されているとはいえ、結果を出さなければ、人心は離れていくものなのである(前記事「観るスポーツとしての卓球」)。

バドミントンは15日の21:00が一番高い山である。おそらく高松ペアの準々決勝が影響している。
次は16日の21:00で、奥原・山口両選手の試合と、男子ペアの試合があったためだろう。
3番目は13日の22:00で、バドの各選手の初戦が影響しているのだろう。

バドミントンの日本代表は実力もあり、これからメダルに絡んでくるので、注目度は18・19日が最も高いと思われるが、卓球には及ばないだろう。

次に日本のどの都市で卓球に関する検索がなされたかというと、やはり水谷・伊藤選手の地元、磐田市が圧倒的である。石川佳純選手の地元、山口も強い。しかし、3位の秋田や4位の松江はちょっと意外だった。関西は14位の越前市、18位の福井市がランクインしているが、主要都市ではさっぱりである。

1 磐田市 100
2 山口市 86
3 秋田市 83
4 松江市 82
5 鶴岡市 78
6 弘前市 77
7 高岡市 77
8 周南市 77
9 日立市 77
10 小金井市 76
11 鎌倉市 76
12 山形市 75
13 府中市 75
14 越前市 75
15 青森市 74
16 仙台市 74
17 盛岡市 74
18 福井市 73
19 国分寺市 73
20 米子市 72


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意外なのは14位と20位の「馬龍」である。日本でも人気が出そうである。
113-2

視聴率のほうはどうかというと、ビデオリサーチ社のデータ(関東地区)をみると、「番組平均世帯視聴率」というのが

11日は卓球女子S、3位決定戦が15.6%でトップ。
12日は卓球男子S、3位決定戦が15.7%でトップ。
13日は卓球女子T、ポーランド戦が17.6%でトップ。
14日は女子マラソンの22.6%には負けたものの、卓球女子T、オーストリア戦が19.1%で2位。
15日は卓球女子T、ドイツ戦が20.6%でトップ。
16日は卓球女子T、シンガポール戦が17.7%でトップ。
17日は卓球の試合がなかったため、バドミントン女子Sの15.4%がトップ。卓球女子T表彰式が10.9%。
18日のデータはまだ出ていない。

16日の3時から、あるいは朝7時からの男子Tドイツ戦の視聴率があまり出ていないのが残念である。男子の団体はのきなみ早朝の3時からだったため、不利ではあるが、女子と比べると、やはり注目度に差があると言わざるをえない。

このデータから卓球はオリンピックの中で最も視聴率がよく、魅力的なコンテンツに成長したと言える。
が、卓球はまだ伸びしろがかなりある。有力な若手がどんどん成長しているので、これからも卓球の人気は安泰だろう。卓球の競技レベルを向上させるとともに、一般人に卓球をアピールし、卓球で飯が食える人をもっと増やさなければならない。さらなる卓球の地位向上が期待される。

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【参考】
以下、NHKのリオ・オリンピック特設サイトのニュースから、卓球、テニス、サッカー、バドミントンのニュースを拾った。)

8/11:福原選手が3位決定戦で敗れる。
8/11:サッカー予選敗退決定(スウェーデンには勝利)
8/11:バド、高松ペア初戦勝利。
8/11:水谷選手、準決勝敗退。
8/11:バド、ミックスダブル初戦勝利。

8/12:テニス、ダニエル太郎3回戦勝利。
8/12:バド、男子ペア初戦勝利。
8/12:錦織選手、準々決勝進出。
8/12:水谷選手、銅メダル獲得。
8/12:バド奥原選手、初戦勝利。
8/12:バド、高松ペア、2勝目。

8/13:バド、男子ペア、2勝目。
8/13:バド、山口茜選手、初戦勝利。
8/13:バド、混合ペア、2勝目。
8/13:卓球女子団体、1勝目(ポーランド戦)。
8/13:サッカー女子、準々決勝敗退。
8/13:サッカー男子、帰国。
8/13:バド、高松ペア、混合ペア、準々決勝進出。

8/14:錦織選手、マレーに敗れる。
8/14:バド、佐々木選手、初戦勝利。
8/14:男子団体、1勝目(ポーランド戦)。
8/14:女子団体、2勝目(オーストリア戦)。
8/14:バド、男子ペア、準々決勝進出。
8/14:バド、山口選手、奥原選手、決勝トーナメント進出。

8/15:バド、佐々木選手予選敗退。
8/15:錦織選手、銅メダル獲得。
8/15:男子団体2勝目(香港戦)。
8/15:バド、ミックスペア、準々決勝敗退。
8/15:テニス、マレー選手が金メダル。
8/15:女子団体準決勝敗退(ドイツ戦)。
8/15:バド、高松ペア準決勝進出。

8/16:バド、男子ペア、準々決勝敗退。
8/16:男子団体、決勝進出(ドイツ戦)。
8/16:バド、奥原選手、山口選手、準々決勝進出。

8/17:バド、高松ペア、決勝進出。
8/17:女子団体、銅メダル獲得(シンガポール戦)。
8/17:サッカー女子、ブラジルが準決勝敗退。
8/17:女子団体、中国が金メダル。
8/17:バド、奥原選手、山口選手を破る。

8/18:サッカー男子、ブラジルとドイツが決勝進出。
8/18:錦織選手、早くも次の大会へ。
8/18:男子団体、中国に敗れ、銀メダル。