先週、地域の卓球大会に出場した。
対戦の序盤で相手のロングサービスをバックハンドドライブで迎撃しようとしたところ、ミス。これは攻撃的な前に振るドライブだったのだが、初めて当たる相手のボールに私のドライブがうまく合わない。その後も数回試してみたが、あまりいい感触ではなかったので、前に振るバックハンドドライブは 封印し、もっぱら安定性を重視した上に振るバックハンドドライブを使うことにした。
まぁ、そんな中高年のレベルの低い試合の話は置いておいて、世界卓球2016 マレーシア大会がついに始まった。男子の試合は観損なったが、女子の試合は観ることができた(福原愛選手の試合は観損なったが…)。
初戦は対チェコ戦。石川選手が予想外の苦戦を強いられ、ハラハラした。一方、伊藤選手はイケイケ卓球で、相手を圧倒し、痛快だった。
次の対ブラジル戦。浜本由惟選手が世界選手権に初出場ということだったので、彼女には注目していた。「みうみま」の試合は観る機会が多いが、浜本選手の試合はあまり観たことがない。最近、メキメキと実力をつけてきているというので、どんなプレーをするか気になっていたのだ。
浜本選手は174センチの長身(日本代表の中では、吉村真晴選手に次ぐ長身)で、強打のスピードは一般的な女子選手よりもかなり速く見える。そしてその整った顔立ちは見ていて飽きない(どうでもいいか、そんなこと)。
浜本選手の相手はグイ・リンという選手。よく知らないが、かなり男性的なプレーをしてくる選手である。
浜本選手はグイ選手がガツンと切った深いツッツキを思い切りバックハンドで振り切って素晴らしいボールを打っていた。しかし、私は自分の試合中のプレーと重なって、ヒヤヒヤしながら観ていた。
「たぶん初対戦だろうに、あんなに深い、速いツッツキを思い切り振り切って大丈夫だろうか。いつかミスするんじゃなかろうか」
しかし、そんな私の杞憂をよそに浜本選手の勢いのあるバックドライブは次々と相手コートに突き刺さった。
ここで思った、私は前に振るバックハンドドライブが本当に打てるのだろうかと。
もちろん、練習中になじみの相手の打つツッツキを前に振るバックハンドドライブで強打するというのはできないことはない。というか調子が良ければ8割方入るのではないかと思う。しかし、試合では2割程度しか入らないのだ。こんな私は「前に振るバックハンドドライブが打てる」と本当に言えるのだろうか。
同様に試合でフォア前のショートサービスを浮かさず、キチッとストップできるかと聞かれたら…自信がない。
フォア前のショートサーブをストップすることの何が難しいのかといぶかる向きもあるかもしれないが、試合で初対戦の相手の出すフォア前サービスを確実にストップするのは私には難しい。何もよく切れたショートサービスというわけではない。相手がどんなサービスを出してくるか全く読めない場合は、ナックルに近い下回転のサービスでさえ、ミスしてしまう気がする。もちろん、コースの決まった練習なら、8割方入るボールである。
練習中に入るからといって、その技術が自分のものになっているとは言えないと思う。フォア打ち程度なら、初対面の相手だろうが、ボールのコースが荒れていようが、ネットにかけられようが、たいていのボールは返球できるだろう。その技術は自分のものとなっている証拠である。
一方、練習中ならできるのに、試合になるとできない技術というのは、本当には自分のものとなっていない技術である可能性が高い。それを、
「練習では8割方入るから、その技術は十分身についている。もっとレベルの高い、チキータやらカウンターやらの練習をしよう」
などと考えるのは心得違いだと思うのである。相手がどんなボールを打ってくるのか分からない状況でも8割方ミスせずできるようになってはじめてその技術は身についたといえるのではないか。
地域の大会でも、私よりもずっと上手で、ふだんは豪快な両ハンドドライブで派手なラリーをする人がフォア前のなんてことないボールを何度かミスしていた(ミスしないまでも、相手にチャンスボールを送っていた)のを見た。あんなに上手な人が、さほど難度の高くないボールでミスを連発するなんて…と驚いたが、派手なラリーは上手にできるが、地味なネットプレーの技術が身についていない人は案外多いのかもしれない。浜本選手のような日本代表選手、そこまでいかなくとも、県上位の上級者でもなければ、試合中のネットプレーで意表を突かれても、ミスせずキチッと返せる人は少ないのかもしれない。それはあたかもフォア打ちで、イレギュラーなボールが返ってきた時にもキチッと対応できるのに比定できる。
何が言いたいかというと、基本技術と言われるものを自分では身につけたつもりでいても、初中級者のなかには実際には身についていない人が多いのではないかということである。私だって練習中にコースが決まっているボールなら、チキータだろうがカウンターだろうが5割以上(8割方と言いたいところだが…)の確率で入れることができる。フォアハンドドライブやツッツキなら、8割方入れることができる。しかし、それが試合中では安定せず、相手によってはミスを連発するのが普通なのである。ツッツキ(またはストップ)、バックハンドドライブ(またはハーフボレー)、フォアドライブ(またはフォアロング)。この3つがどんな相手、どんな状況でも8割方入るようになれば、その技術は定着していると言えるだろう。しかし、そうでないなら、これらの基本技術(特に敬遠されがちなネットプレー)と言われるものを集中的に練習して身につけることが優先されるべきではないか。
以前、大島祐哉選手が『卓球王国』のインタビューか何かで、東山高校で3年間、基本的なフットワークの練習をひたすらしていたというのを読んだことがある。そのような基本練習を疎かにして、基本ができていないまま、全国大会とかで好成績を残してしまうと、次のステージに進んでしまい、伸び悩んでしまうといったことが書いてあったと記憶している。それはあたかも中学で数学とか英語の基礎をしっかり身につけないまま、高校でより高度な内容を勉強するようなものだろう。卓球で言えば、どんなところに打たれても、上記3つの技術でキチッと対応できるようになるまでひたすら練習するということである。「どんなところに打たれても」ということは、フットワークを鍛えることも意味する。
そう考えると、「基本技術」というのは実は高度な技術なのかもしれない。一般的にはサイドスピンブロックやチキータといった、ある種、曲芸的な技術が「高度」な技術とされているが、基本技術というのも、いつでも、どんな相手でも確実に打てるようになるためには、それこそ年単位の練習量が必要な高度な技術なのである。
話を浜本由惟選手に戻すと、
試合後に行われたインタビューで、インタビュアーに「試合に勝って、どうですか?」のような質問を受け、それに対して、緊張でシドロモドロになった浜本選手は満足に答えられない。インタビュー慣れしている他の選手は対戦を振り返って、そつなく、いろいろなコメントをしていたのだが、浜本選手は緊張で頭の中が真っ白になってしまったのか、何も答えられない。はにかみながら、やっと絞り出した「嬉しいです」という言葉が回りの温かい笑いを誘っていた。
かわいい…。
もしかして、このような感情が世間で言うところの「萌え」とか「キュン死に」とかいうやつなのだろうか。
ともあれ、浜本選手は実力的にもメディア受けという点からも将来性に満ちていると言えよう。
対戦の序盤で相手のロングサービスをバックハンドドライブで迎撃しようとしたところ、ミス。これは攻撃的な前に振るドライブだったのだが、初めて当たる相手のボールに私のドライブがうまく合わない。その後も数回試してみたが、あまりいい感触ではなかったので、前に振るバックハンドドライブは 封印し、もっぱら安定性を重視した上に振るバックハンドドライブを使うことにした。
まぁ、そんな中高年のレベルの低い試合の話は置いておいて、世界卓球2016 マレーシア大会がついに始まった。男子の試合は観損なったが、女子の試合は観ることができた(福原愛選手の試合は観損なったが…)。
初戦は対チェコ戦。石川選手が予想外の苦戦を強いられ、ハラハラした。一方、伊藤選手はイケイケ卓球で、相手を圧倒し、痛快だった。
次の対ブラジル戦。浜本由惟選手が世界選手権に初出場ということだったので、彼女には注目していた。「みうみま」の試合は観る機会が多いが、浜本選手の試合はあまり観たことがない。最近、メキメキと実力をつけてきているというので、どんなプレーをするか気になっていたのだ。
浜本選手は174センチの長身(日本代表の中では、吉村真晴選手に次ぐ長身)で、強打のスピードは一般的な女子選手よりもかなり速く見える。そしてその整った顔立ちは見ていて飽きない(どうでもいいか、そんなこと)。
浜本選手の相手はグイ・リンという選手。よく知らないが、かなり男性的なプレーをしてくる選手である。
浜本選手はグイ選手がガツンと切った深いツッツキを思い切りバックハンドで振り切って素晴らしいボールを打っていた。しかし、私は自分の試合中のプレーと重なって、ヒヤヒヤしながら観ていた。
「たぶん初対戦だろうに、あんなに深い、速いツッツキを思い切り振り切って大丈夫だろうか。いつかミスするんじゃなかろうか」
しかし、そんな私の杞憂をよそに浜本選手の勢いのあるバックドライブは次々と相手コートに突き刺さった。
ここで思った、私は前に振るバックハンドドライブが本当に打てるのだろうかと。
もちろん、練習中になじみの相手の打つツッツキを前に振るバックハンドドライブで強打するというのはできないことはない。というか調子が良ければ8割方入るのではないかと思う。しかし、試合では2割程度しか入らないのだ。こんな私は「前に振るバックハンドドライブが打てる」と本当に言えるのだろうか。
同様に試合でフォア前のショートサービスを浮かさず、キチッとストップできるかと聞かれたら…自信がない。
フォア前のショートサーブをストップすることの何が難しいのかといぶかる向きもあるかもしれないが、試合で初対戦の相手の出すフォア前サービスを確実にストップするのは私には難しい。何もよく切れたショートサービスというわけではない。相手がどんなサービスを出してくるか全く読めない場合は、ナックルに近い下回転のサービスでさえ、ミスしてしまう気がする。もちろん、コースの決まった練習なら、8割方入るボールである。
練習中に入るからといって、その技術が自分のものになっているとは言えないと思う。フォア打ち程度なら、初対面の相手だろうが、ボールのコースが荒れていようが、ネットにかけられようが、たいていのボールは返球できるだろう。その技術は自分のものとなっている証拠である。
一方、練習中ならできるのに、試合になるとできない技術というのは、本当には自分のものとなっていない技術である可能性が高い。それを、
「練習では8割方入るから、その技術は十分身についている。もっとレベルの高い、チキータやらカウンターやらの練習をしよう」
などと考えるのは心得違いだと思うのである。相手がどんなボールを打ってくるのか分からない状況でも8割方ミスせずできるようになってはじめてその技術は身についたといえるのではないか。
地域の大会でも、私よりもずっと上手で、ふだんは豪快な両ハンドドライブで派手なラリーをする人がフォア前のなんてことないボールを何度かミスしていた(ミスしないまでも、相手にチャンスボールを送っていた)のを見た。あんなに上手な人が、さほど難度の高くないボールでミスを連発するなんて…と驚いたが、派手なラリーは上手にできるが、地味なネットプレーの技術が身についていない人は案外多いのかもしれない。浜本選手のような日本代表選手、そこまでいかなくとも、県上位の上級者でもなければ、試合中のネットプレーで意表を突かれても、ミスせずキチッと返せる人は少ないのかもしれない。それはあたかもフォア打ちで、イレギュラーなボールが返ってきた時にもキチッと対応できるのに比定できる。
何が言いたいかというと、基本技術と言われるものを自分では身につけたつもりでいても、初中級者のなかには実際には身についていない人が多いのではないかということである。私だって練習中にコースが決まっているボールなら、チキータだろうがカウンターだろうが5割以上(8割方と言いたいところだが…)の確率で入れることができる。フォアハンドドライブやツッツキなら、8割方入れることができる。しかし、それが試合中では安定せず、相手によってはミスを連発するのが普通なのである。ツッツキ(またはストップ)、バックハンドドライブ(またはハーフボレー)、フォアドライブ(またはフォアロング)。この3つがどんな相手、どんな状況でも8割方入るようになれば、その技術は定着していると言えるだろう。しかし、そうでないなら、これらの基本技術(特に敬遠されがちなネットプレー)と言われるものを集中的に練習して身につけることが優先されるべきではないか。
以前、大島祐哉選手が『卓球王国』のインタビューか何かで、東山高校で3年間、基本的なフットワークの練習をひたすらしていたというのを読んだことがある。そのような基本練習を疎かにして、基本ができていないまま、全国大会とかで好成績を残してしまうと、次のステージに進んでしまい、伸び悩んでしまうといったことが書いてあったと記憶している。それはあたかも中学で数学とか英語の基礎をしっかり身につけないまま、高校でより高度な内容を勉強するようなものだろう。卓球で言えば、どんなところに打たれても、上記3つの技術でキチッと対応できるようになるまでひたすら練習するということである。「どんなところに打たれても」ということは、フットワークを鍛えることも意味する。
そう考えると、「基本技術」というのは実は高度な技術なのかもしれない。一般的にはサイドスピンブロックやチキータといった、ある種、曲芸的な技術が「高度」な技術とされているが、基本技術というのも、いつでも、どんな相手でも確実に打てるようになるためには、それこそ年単位の練習量が必要な高度な技術なのである。
話を浜本由惟選手に戻すと、
試合後に行われたインタビューで、インタビュアーに「試合に勝って、どうですか?」のような質問を受け、それに対して、緊張でシドロモドロになった浜本選手は満足に答えられない。インタビュー慣れしている他の選手は対戦を振り返って、そつなく、いろいろなコメントをしていたのだが、浜本選手は緊張で頭の中が真っ白になってしまったのか、何も答えられない。はにかみながら、やっと絞り出した「嬉しいです」という言葉が回りの温かい笑いを誘っていた。
かわいい…。
もしかして、このような感情が世間で言うところの「萌え」とか「キュン死に」とかいうやつなのだろうか。
ともあれ、浜本選手は実力的にもメディア受けという点からも将来性に満ちていると言えよう。
コメント
コメント一覧 (7)
コメントありがとうございます。
そうですね。緊張とかでふだんできることができなくなるということもあるでしょうね。
女子のインタビューはみんなテレビ慣れしていて、キチッと話すので、浜本選手の素人っぽさがとても新鮮でした。
特にバックは当たれば凄いけど基本的に当たらないような感じになってます(笑)
試合だと入れることを意識するので、スイングが少し小さくなっているため試合のほうが入るという現象が起こってますので、しろのさんもバックスイングを小さくとってみてはいかがでしょうか?
ブロックで当てにいってから振るというのを松平選手が言っていたような気がするので、ボールをブロックしにいくくらいで調度良いのだと思います
ホントは試合でも気持ち良くフルスイングしたいんですけどね(笑)
コメントありがとうございます。
「試合だと入れることを意識するので、スイングが少し小さくなっている」
というのは、なるほどと思いました。今度、気をつけてみます。
「ブロックで当てにいってから振る」というのも、すばらしいアドバイスです!
勉強になりました。
多くの読者がボンバードさんのコメントに目を通してくれたらと思います。
>先週、地域の卓球大会に出場した。
>対戦の序盤で相手のロングサービスをバックハンドドライブで迎撃しようとしたところ、ミス。
>これは攻撃的な前に振るドライブだったのだが、初めて当たる相手のボールに
>私のドライブがうまく合わない。その後も数回試してみたが、
>あまりいい感触ではなかったので、前に振るバックハンドドライブは 封印し、
>もっぱら安定性を重視した上に振るバックハンドドライブを使うことにした。
本記事冒頭のこの部分。
しろのさんはどういった意図でこういう試合の入りをされたんでしょう?
「対戦の序盤で」、「相手のロングサービスを」、「攻撃的な前に振るドライブ」で攻めるなんて、試合運びとしてはあまり上手とは言えないじゃないですか?
しかも「その後も数回試してみた」なんて・・・。
相手のプレーのレベルが自分よりも非常に下でなおかつそれが情報として持っている場合はなきにしもあらずな入り方ですが、「初めて当たる相手」と書かれていますし、それは違いますよね?
普通、試合の序盤では「もっぱら安定性を重視した」打法を使ってラリーを続け、「初めて当たる相手のボール」を一度でも多く受ける、、、というのがセオリーとしてありますよね。
もう一度聞きますが、どういう意図でこういった試合の入り方をされたんでしょう?このセオリーはしろのさんならご存知だと思うので、何か違う訳があったんだと思います。それをお聞かせ願いたくコメントさせて頂きました。よろしければお教え下さい。
長文失礼いたしました。
コメントありがとうございます。
序盤から強気で打っていくというのは、軽率のそしりを免れません。
お叱り、ごもっともです。
最後の練習で攻撃的なバックハンドドライブがけっこう入ったので、相手の甘いボールを打っても入るかも?という安易な気持ちだったんだと思います。それと、相手が格下のおじいちゃんだったので、たぶん勝てるだろうという気持ちもあったと思います。
以後、試合の序盤では
「もっぱら安定性を重視した」打法を使ってラリーを続け、「初めて当たる相手のボール」を一度でも多く受ける
を実践したいと思います。
なるほど、そういうことですね。
でもまあしろのさんはそこまで試合に出る方ではないと思うので、
あまり気にしなくてもいいんじゃないかと思います。