先日の練習でのこと。
相手のサービスをツッツキで返してからオールという練習だった。
相手のショートサービスを強弱おりまぜてツッツキで返球していたのだが、あるとき、驚くほど低くて速いツッツキが入ったので、 その感覚を忘れまいと何度も試してみた。
そのツッツキというのは、いわば「痙攣ツッツキ」である。
ラケットをほとんど動かさず、ボールを迎えて、打球の瞬間だけグッと力を入れて押し出すのだ。
速い!低い!深い!まるでぐっちぃ氏の極薄のツッツキのようなのだ。
「とうとうオリジナルの技を編み出した」
まぁ、こういうツッツキを使っている人は全国にいくらでもいるのだろうが、私の周りにはいなかったので、自分のオリジナルということにしておこうと思ったのだ。
その時の練習相手はかなり格上の人だった。にもかかわらず、私の新打法「痙攣ツッツキ」にはとまどっているようだった。
「この打法は、もしかしたら実戦でも十分使えるんじゃないですか? 上級者にも通用しますよね?」
「いやぁ、どうでしょうね…」
といって、相手はおもむろにサービスを出したのだが、私の痙攣ツッツキはミス。
もう一度出してもらったが、やはりミス。
「おかしいな、さっきはあんなに安定していたのに…」
「さっきまではずっと同じ長さのサービスを出していたから安定してたんですよ。サービスの第一バウンドの位置やボールのスピードを変えると、同じように安定して打つのは難しいですよ。」
かくして私の痙攣ツッツキはしばらくお蔵入りになってしまった。
--------
この経験から感じたのは、同じサービスでもバウンドの軌道やコースが変わればかなりちがったサービスになるのではないかということである。たとえば同じ順横下フォアサービスでも対角線ギリギリを使ったサービスとフォア前をかすめてミドルに落ちるショートサービスとでは、2種類の別のサービスと言ってもいいぐらいの違いがある。さらに高い打点からポテンポテンと落とすような短い順横下フォアサービスと、低い打点からトトンと素早く入る短い順横下フォアサービスは、対応する側からすればかなり違った印象を受けるのではないだろうか。それに「切る・切らない」という要素が加われば、バリエーションは一気に広がる。
以前、テレビ番組のインタビューでサービスの名手と言われる水谷選手に「1試合で何種類のサービスを使いますか」といった質問をしていた。 水谷選手は20種類ぐらいと言っていたように記憶しているが、何を以て別のサービスとカウントしているのだろう?同じ短い順横下フォアサービスでも、回転量・コース・軌道という3つのパラメーターを組み合わせれば以下の8種類が考えられる。
短い順横下フォアサービス(切る)フォア側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切る)フォア側・ネット際に落とす軌道
短い順横下フォアサービス(切る)バック側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切る)バック側・ネット際に落とす軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)フォア側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)フォア側・ネット際に落とす軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)バック側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)バック側・ネット際に落とす軌道
これら8種類がそれぞれ別のサービスと考えられるかどうか分からないが、対応する側にしてみれば、違う打法で返球しなければならないなら、別のサービスとみなしたほうがいいのではないだろうか。たとえばバック側に来たら速いチキータで返球できるが、フォア前に来たらストップでしか対応できない場合などである。
さらに長さの要素や横回転、上回転の要素を加えれば、フォアサービスだけで十分すぎるバリエーションがあることになる。
私はサービスが多彩な人というのは、逆横やバックサービスなど、完全に違う種類のサービスを駆使できる人のことだと思っていたのだが、順横フォアサービスしか出せない人でもコントロールが正確で、確実に出し分けられる人なら、そういう人もサービスが多彩といえるのではないだろうか。
1試合で
「短い順横下フォアサービス(切らない)・バック側・ネット際に落とす軌道」
を出した後に
「短い順横フォアサービス(切る)・バック側・ネット際に落とす軌道」
を出されたら、相手はレシーブで困惑すると思われる。同じようにバック側にくる短いサービスなので、同じような打ち方で対応しようとすると、浮かせたり、ミスしたりしがちである。フォア側とバック側のように全く違うコースよりも、同じコースで微妙に違う要素を組み合わせたサービスを出したほうが分かりにくいかもしれない。特に軌道の違いというのは気づかれにくいのではないだろうか。
一般的には
A1「短いサービス=ネット際に落とす」
B1「長いサービス=エンドラインにぶつける」
というセットになっているが、これを
A2「短いサービス=エンドラインにぶつける」
B2「長いサービス=ネット際に落とす」
のように逆の軌道で出してみたら、意外性がありそうだ(B2は長くて遅いサービスになるので使いにくいが)。
【まとめ】
初中級者はサービスにしろ、レシーブにしろ、微妙な違いを区別していない。回転やコースには大いに注目するが、微妙な長さの違いや軌道といったことには無頓着な人が多い。そして無意識のうちに、サーバーなら、同じような長さのサービスを出し続けて、相手に容易に対応されてしまうし、レシーバーなら長さや軌道が違っても区別せずに打ってミスしてしまいがちである(冒頭の私のミスのように)。サービスを構成する要素を細かく認識できればできるほど、実戦で有利に戦えると思われる。
相手のサービスをツッツキで返してからオールという練習だった。
相手のショートサービスを強弱おりまぜてツッツキで返球していたのだが、あるとき、驚くほど低くて速いツッツキが入ったので、 その感覚を忘れまいと何度も試してみた。
そのツッツキというのは、いわば「痙攣ツッツキ」である。
ラケットをほとんど動かさず、ボールを迎えて、打球の瞬間だけグッと力を入れて押し出すのだ。
速い!低い!深い!まるでぐっちぃ氏の極薄のツッツキのようなのだ。
「とうとうオリジナルの技を編み出した」
まぁ、こういうツッツキを使っている人は全国にいくらでもいるのだろうが、私の周りにはいなかったので、自分のオリジナルということにしておこうと思ったのだ。
その時の練習相手はかなり格上の人だった。にもかかわらず、私の新打法「痙攣ツッツキ」にはとまどっているようだった。
「この打法は、もしかしたら実戦でも十分使えるんじゃないですか? 上級者にも通用しますよね?」
「いやぁ、どうでしょうね…」
といって、相手はおもむろにサービスを出したのだが、私の痙攣ツッツキはミス。
もう一度出してもらったが、やはりミス。
「おかしいな、さっきはあんなに安定していたのに…」
「さっきまではずっと同じ長さのサービスを出していたから安定してたんですよ。サービスの第一バウンドの位置やボールのスピードを変えると、同じように安定して打つのは難しいですよ。」
かくして私の痙攣ツッツキはしばらくお蔵入りになってしまった。
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この経験から感じたのは、同じサービスでもバウンドの軌道やコースが変わればかなりちがったサービスになるのではないかということである。たとえば同じ順横下フォアサービスでも対角線ギリギリを使ったサービスとフォア前をかすめてミドルに落ちるショートサービスとでは、2種類の別のサービスと言ってもいいぐらいの違いがある。さらに高い打点からポテンポテンと落とすような短い順横下フォアサービスと、低い打点からトトンと素早く入る短い順横下フォアサービスは、対応する側からすればかなり違った印象を受けるのではないだろうか。それに「切る・切らない」という要素が加われば、バリエーションは一気に広がる。
以前、テレビ番組のインタビューでサービスの名手と言われる水谷選手に「1試合で何種類のサービスを使いますか」といった質問をしていた。 水谷選手は20種類ぐらいと言っていたように記憶しているが、何を以て別のサービスとカウントしているのだろう?同じ短い順横下フォアサービスでも、回転量・コース・軌道という3つのパラメーターを組み合わせれば以下の8種類が考えられる。
短い順横下フォアサービス(切る)フォア側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切る)フォア側・ネット際に落とす軌道
短い順横下フォアサービス(切る)バック側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切る)バック側・ネット際に落とす軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)フォア側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)フォア側・ネット際に落とす軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)バック側・エンドラインにぶつける軌道
短い順横下フォアサービス(切らない)バック側・ネット際に落とす軌道
これら8種類がそれぞれ別のサービスと考えられるかどうか分からないが、対応する側にしてみれば、違う打法で返球しなければならないなら、別のサービスとみなしたほうがいいのではないだろうか。たとえばバック側に来たら速いチキータで返球できるが、フォア前に来たらストップでしか対応できない場合などである。
さらに長さの要素や横回転、上回転の要素を加えれば、フォアサービスだけで十分すぎるバリエーションがあることになる。
私はサービスが多彩な人というのは、逆横やバックサービスなど、完全に違う種類のサービスを駆使できる人のことだと思っていたのだが、順横フォアサービスしか出せない人でもコントロールが正確で、確実に出し分けられる人なら、そういう人もサービスが多彩といえるのではないだろうか。
1試合で
「短い順横下フォアサービス(切らない)・バック側・ネット際に落とす軌道」
を出した後に
「短い順横フォアサービス(切る)・バック側・ネット際に落とす軌道」
を出されたら、相手はレシーブで困惑すると思われる。同じようにバック側にくる短いサービスなので、同じような打ち方で対応しようとすると、浮かせたり、ミスしたりしがちである。フォア側とバック側のように全く違うコースよりも、同じコースで微妙に違う要素を組み合わせたサービスを出したほうが分かりにくいかもしれない。特に軌道の違いというのは気づかれにくいのではないだろうか。
一般的には
A1「短いサービス=ネット際に落とす」
B1「長いサービス=エンドラインにぶつける」
というセットになっているが、これを
A2「短いサービス=エンドラインにぶつける」
B2「長いサービス=ネット際に落とす」
のように逆の軌道で出してみたら、意外性がありそうだ(B2は長くて遅いサービスになるので使いにくいが)。
【まとめ】
初中級者はサービスにしろ、レシーブにしろ、微妙な違いを区別していない。回転やコースには大いに注目するが、微妙な長さの違いや軌道といったことには無頓着な人が多い。そして無意識のうちに、サーバーなら、同じような長さのサービスを出し続けて、相手に容易に対応されてしまうし、レシーバーなら長さや軌道が違っても区別せずに打ってミスしてしまいがちである(冒頭の私のミスのように)。サービスを構成する要素を細かく認識できればできるほど、実戦で有利に戦えると思われる。
コメント
コメント一覧 (8)
おそらく書き間違いだと思うのですが
A2「短いサービス=エンドラインにぶつける」?
B2「長いサービス=ネット際に落とす」?
もしかしたら 短い→長いを長い→短いのパターンに変えたらセオリーと逆になるが効果があるということですよね。野球でいうと直球で追い込んでからフォークを投げるのが投球術のセオリーだとしたらフォークで追い込んでから直球で勝負するということですよね。こういうのって卓球戦術をセオリー的に考えているベテランの人には、意外と効くのではないでしょうか。逆にツッツキレシーブ主体に考えている初心者には1級目は効くけど2級目は効かないかもしれません。野球でいうなら変化球が打てないバッターは直球しか待っていないのでフォークで追い込んでからの直球勝負はリスクが高いのと同じような気がします。サービスって野球の投球術とどことなく似ていると思います。
ツッツキがかなり切れるようであれば、試合で非常に有効ですからね~
短いサーブであれば全ての回転をツッツキで返せるようになれば、レシーブで怖じ気づくこともないですからね
私は短い上回転をツッツキすることを練習しましたね
そうして全ての回転をツッツキ出来るようにしました
するとツッツキはバウンド直後でしないと安定しないということが判明しました
しろのさんの痙攣ツッツキもバウンド直後でやれば少し長さを間違えてもミスしないようになると思いますお試しあれ
コツはバウンド直後を薄く捉えることです!
上手くいくと上回転に対してはツッツキというよりストップになるくらい短く出せると思います
コメントありがとうございます。
ショートサービスは第一バウンドをネット際に落とすのがいいとされていますから、逆に自陣のエンドラインにぶつけるように出すと、相手はロングサービスだと錯覚するということを言いたかったんですが、おかしいでしょうか?
野球のピッチングとの類似の件、なるほどです。私は全く野球に興味がないのですが、投球からも何かがまなべそうですね。
ご教示、ありがとうございます。とてもわかりやすかったです。
打点の早さと薄く捉えるということを念頭におき、これからもツッツキ練習に励みたいと思います。
私の勘違い失礼しました。しろの様の伝えたかったのは、遠近感の錯覚を利用したサーブだったのですね。私の知る限りでは、遠近感の錯覚を利用したサーブを極めていたのはオウコウ選手だけだと思っています。(確信は持てないのですが) あの水谷選手でさえも「オウコウ選手のサービスが一番凄い。ラケットに当たるまでわからない。」とコメントしてたのですが、それは回転のことではなく、錯覚で軌道が読めない意味での発言だったと思っています。
ご返信ありがとうございます。
なるほど、こういうサービスは遠近感を利用しているんですね。
ボールがネット際に落ちたから、瞬間的に前に行くと、こちらのコートに入ってきたとき、意外に迫ってきていて打ちにくいとか。私の場合は相手がサービスしてもぼーっとしているので、あまり効かないと思いますが、上手な人はおそらくサービスがラケットから離れた瞬間に「ショートサーブだ!」のように反応するから、上のようなサービスが効くかもしれませんね。
コメントありがとうございます。
仲村氏は第一バウンド固定なんですね。
第一バウンドを通常と逆にするというアイディアは、昔上手な人から聞いたもので、もちろん私の独創ではありませんが、なんらかのお役に立てたなら、うれしいです。