最近、『卓球王国』を読まなくなった。
吉田海偉選手の「鬼のペンドラ」の連載も終わってしまったし、「4球目の極意」 も「練習革命」も終わってしまった。
新連載は私の興味をあまり引かない。

そんな中で「初心者のためのゲーム分析ABC」という新連載が10月号から始まった。わずか1ページの軽いものだが、 今までにないテーマを扱った連載で期待が持てる。

「初心者のためのゲーム分析ABC」は戦術の練り方を指南してくれるユニークな連載である。
卓球をやっていると、いろいろな場面で戦術という言葉に出会う(前記事「「戦術」の意味」)。しかも上のレベルになればなるほど戦術というのが試合の結果を左右するらしい。 が、それをどうやって鍛錬すればいいのかさっぱり分からない。戦術を考える手掛かりがあれば…という初中級者にうってつけの連載だ。


第一回にはこんなことが書いてあった。

基本戦術というのは、いわゆる「サービスからの3球目攻撃」、「レシーブからの4球目攻撃」などのことで、【中略】…というように具体的な得点パターンを用意しておくのです。そして、ゲーム分析は「自分の基本戦術でうまく得点できているかどうかチェックする」ことから始まるのです。

自分がどう戦いたいのか明確にになっていない状況ではそもそも分析のしようがありません。

そう言われると…私には「どう戦いたいか」という基本戦術がない。どこにレシーブを集めたいかという狙いもない。典型的な行き当たりばったりの卓球なのだ。これではいけない。そもそも私の卓球とはなんだろうか?

私のやりたい卓球は、威力はそれほどなくてもいいから、安定してミスなく攻撃できる卓球である。ペンホルダーなので、どちらかというとフォアハンドを気持ちよく振りたい。

そしてゲームのときに実際にどんなパターンで得点・失点しているかを数えてみたところ、衝撃の事実が分かった。私が気持よくフォアで攻撃して得点したのは、5ゲームマッチのうち、なんと2本だったのだ。というか、フォアに打ちごろのボールはほとんど来ないことが分かった。たいていはバック側を狙われるのである。そしてどのようなパターンで得点しているかを考察してみたところ、

・こちらのサービスに対する相手のミス
・こちらのツッツキに対する相手のミス
・こちらのバックハンドドライブ

というのが大きな得点源ということが分かった。私のフォアドライブの練習はこの試合では意味がなかったということになる。おそらく、レシーブやバックハンドでチャンスを作った上でないとフォアドライブを使うチャンスが訪れないのだろう。

こういう現実に目を背けているから、ちっとも上達しないんだろうなぁ。戦術云々の前に、まず己を知らなければ。
そういえば、以前xia氏のブログにも同じようなこと(得失点の原因をカウント)が書いてあった。

科学というものが、

分析 → 考察 → 仮説 → 実験(検証) → 総合

の順に進むとするならば、その最も初歩の分析がおろそかになっていては一歩も前に進めない。数を数えるという地道な作業をすっとばして、考察や仮説に進むというのでは本末転倒だ。単純にカウントすることが上達に与える影響は大きいと信じている(前記事「卓球のスコア分析」)。

【補記】
卓レポアーカイブに「三十六計と卓球」という荘則棟氏の連載が公開されている。兵法三十六計の故事を引用し、卓球に引きつけて論じたものである。
36kei-34-01

兵法三十六計というのを10計ほど読んでみたのだが、どれも相手を騙し、いかに意表を突くかという教えのようだ。個人的にはこのように裏をかくことばかりに意識が行っていると、逆に墓穴を掘るような気もする。荘氏はこの三十六計を卓球に置き換えて解説しているのだが、良くも悪くも古典――自分の経験によっては意味を見いだせるかもしれないが、一般的な人生訓のようなものばかりなので、私にはそれほど役に立たなかった。しかし、それでも心に残る言葉はいくつかあった。

・計略の秘密は、これらすでに公にされた物事の中に潜められており、公にされている事柄と相排斥するものではない。 したがって最も公にされている物事の中に、往々にして大変な機密的目的が隠されている。

・ぐしゃぐしゃに絡みついた紐を解く時、強引かつ盲目的に引っ張ることは禁物である。【中略】敵軍の優勢なところを避け、敵の最も弱い部分を打てば、【中略】自然と包囲網を解くのである。

読み物としてはおもしろいかもしれない。