練習では両ハンドが安定していたのに、試合になるとどちらも安定しない。

「今日は調子が悪い」

などと考えてしまうが、やはりそれなりの理由があるのだろう。
いろいろ考えた末に、確信した、私のミスのほとんどはボールを押すことが原因だと。

一番分かりやすい例としてフォアハンドドライブを取り上げよう。
フォアハンドドライブに関する私の理解の変遷は以下のようなものだった。

A:ラケットを上方向にスイングすると、スピードのある低いドライブが打てないので、前方向にこする。

B:しかし、このスイングだと、ボールが落ちてしまいがちなので、スイングスピードを上げ、ボールをラバーに押し付けるようにガツンとこする。

C:しかし、ガツンとこすると、ラバーがボールを掴む前にボールが弾き飛ばされてしまうので、オーバーミスを頻発する(前記事「これぞ四つのかなめなりける」「厚さ4ミリのドラマ」)。

D:そこでスイングは上方向に、できるだけボールを薄く捉えれば安定する(「前記事「45度にこすり上げる」「離合」)と気づく。

ボールを押してはいけない。ボールの威力をブレードまで到達させずに上方向に擦り上げなければならない。
そのことは重々承知していて、私はいつも押していないかどうかに細心の注意を払っていたはずである。にもかかわらず、私はボールを押していたのだ。

以下は丁寧選手のフォアハンドドライブである。
(1)
丁寧01

(2)
丁寧02

(3)
丁寧03

(4)
丁寧04

(5)
丁寧05

丁寧選手は前陣からやや下がった位置から前に踏み込んで強烈なドライブを放っている。
しかし、これはプロだからできることであって、われわれ初中級者が同じことをするとかなりの確率でミスをする。

なぜか。

身体全体が前に移動していることを放念しているからなのだ。
自分の身体が前に移動中ならば、いくらスイングが上方向でもボールを押してしまう。前に大きく一歩踏み込みながら、ラケットを真上――90度の方向にスイングしてみるといい。真上にスイングしているにもかかわらず、ボールは確実に押されてしまう。上級者は自分の身体がどの方向に移動しているかを把握しているので、前に踏み込むときはボールの押し具合を弱めたり、スイングの仰角を調整したりすることができるが、私は自分の体がどの方向に移動しているかなど気にしておらず、スイングの角度だけで押し具合を調整しようと思っていたのである。

だから想定していた位置よりも浅くボールが入ってきた時には夢中になって前に踏み込みながらドライブをし、ミスしてしまっていたのだ。ふだんと同じ下回転をふだんと同じように擦り上げたにもかかわらず。

ワンコースで相手にブロックしてもらい、フォアドライブを打つような場合なら、あまり動かずに打つことができるが、実戦では深浅さまざまなボールが来るので前後に動かされることが多い。それで前に踏み込みながらドライブを打とうとすると、自分の感覚よりも20~30%ぐらい余計にボールを押しながらドライブしてしまうことになるわけである。

前後に移動しながらボールの押し具合を調整しつつドライブを打つというのは難しい。
そこで初中級者におすすめしたいのが、止まって打つことである。

今度はツッツキの例で考えてみよう。
例えば、後ろで深いボールを待っている時に浅いツッツキが返ってきた場合、急いで台に寄るが、止まらずに前に移動した勢いのままツッツいてしまうと、たいていツッツキが長くなり、あるいはオーバーさせてしまう。移動しながらツッツキの押し具合を調整するなんてそうそうできることではない。そこで私は最近ツッツキを打つときは一度止まってから打球することにしている。

その際に重要なのは上半身と下半身がそれぞれ独立して動くことである。
まず、台から離れた位置にいて、浅いボールがきたら、下半身から台上に入る。そのときはまだ腕を伸ばしてはいけない。ツッツキでミスする人は台に近づきながら腕をいっしょに伸ばしてしまうのだ。そうではなく、ボールの落下点に十分近づくまで腕を伸ばさず、止まってから、たたんでいた腕を伸ばせば、ボールを無意識に押してしまうことがないので、ツッツキの安定感が増す。

ここまでが「止まって打つ」である。

だが、問題もある。短い距離を移動するなら大丈夫だが、ボールが浅いと判断してかなり後ろから急に台に近寄る場合は、急に止まるのが難しいということである。慣性によって体重の大部分が膝にかかるが、膝だけでは支えきれず、カックンと前のめりになってしまい、ピタッと止まれない。世間の人はどうやって止まっているのだろうか。

この問題をクリアしないと、止まってからスムースに打つことは難しい。

今後の課題である。

【まとめ】
前に移動しながら打つときは、知らず知らずのうちに余計にボールを押しているので、むやみにボールを押さないよう、一度止まってから打球したほうがいい。

【追記】150902
「止まって打つ」について思うところを書いたが、「止まらないで打つ」のほうはどうなったんだ、と訝しむ読者もおられることだろう。「止まらないで打つ」については、前記事「ワリヤゴナドゥ」をご参照いただきたい。