卓球のプレーエリアには位置によって前陣、中陣、後陣というのがある。
卓球を初めたばかりで中陣、後陣でプレーする人はいないだろう。ほとんどの人は前陣である。
しかし、ある程度卓球歴が長くなってくると、前陣では物足りなくなってくる。「物足りない」というと、語弊があるが、最近の上手な学生とかをみると、中後陣から豪快なドライブを放ったり、とにかく台から離れて派手なプレーをしているのが目を引く。ああいうプレーをみるにつけ、中陣、後陣を試してみたいと思う。
しかし、いきなり後陣というのは敷居が高いから、まず中陣というのを試してみようと思い、数ヶ月来、できるだけ下がってプレーすることにしているのだが、やっかいなシチュエーションがある。ストップである。
サービス後にすぐに下がって大きな展開を期待していると、相手はつれなくもストップをしてくるのである。
「そりゃないよ。あなただって台上でチマチマよりもラリーのほうが好きでしょ?」
そう来られると、せっかく下がったのにまた急いで前陣に戻らなければならない。まるでドタバタ喜劇である。中陣でプレーするというのは、ストップに対する脆さという弱点を抱えることになるようだ。上手な人はどうやって中陣の展開に持っていくのか。言い方を変えれば、どうやってストップに対処するのか。
いろいろ試してみて分かったことは、前陣、中陣、後陣と言っても、必ずしもそこばかりでプレーするわけではないということである。前陣速攻の選手は「前陣を死守し、決して下がってはいけない」などと言われるが、中陣の選手は「中陣を死守し、前に出てはいけない…」とはならない。初めは前陣から始めて、ボールが長くなるにつれて中陣に下るということのようだ。当たり前のことかもしれないが、私はおろかにも前陣速攻の選手のように中陣の選手は中陣の位置をホームポジションとし、できるだけその領域を守っているものかと勘違いしていた。だから、相手にストップされかねない状況でも中陣に入ろうとしてしまったわけだ。
よく後ろに下がってプレーする選手でも、常に後ろに下がるわけではない。
下がって豪快なプレーをすることで有名な許昕 Xu Xin 選手も、上の動画のように3球目で決めに行くようなプレーをすると、後ろに下がる前にポイントが終わってしまう。美しい中陣プレーをするにはジワジワ(前記事「なりきりプロ選手」)とプレーしなければならないのだ。上手な選手はグルメである。まだ機が熟していなければ――3球目が絶好球でない場合は、打てそうなボールでも、がっついて決めに行かない。ほどほどの厳しいボールでジワジワと責め、相手が甘いボールを返すのを待つ。そして食べごろのボールが返ってきた時に初めてガツーンと決めに行くのだ。このジワジワこそが中陣でのラリーの醍醐味とでも呼ぶべき時間なのだ。ということは、3球目で決めに行かない卓球が中陣プレーへの第一歩なのかもしれない。
長くなったので、ここまでをまとめると、
・必要もないのに中陣に下がると、ストップをくらう。下がる必要がなければ前陣にいたほうがよい。
・3球目からいきなり中陣に行けるわけではなく、4球、5球とラリーを続けることによってジワジワと中陣でプレーできる。3球目で決めようとしてはいけない。
次にどうやって4球、5球と続ければいいのか。
相手に先に打たせるのが手っ取り早そうだ。といっても相手のサービスに対してフォア寄りに打ちごろの長さでツッツイたら、もちろん一発で持って行かれて、ラリーは終わってしまう。相手に一発で決められないように工夫する必要があるのだ。どんなボールなら一発で抜かれないで済むんだろうか?
中陣からドライブで豪快なラリーをしている人は、いろいろ工夫をしているんだなぁ。
私のようにたまたま後ろに下がってうまい具合に大きなラリーが続いたからといって、安易に後ろに下がって待つというのは、まるで株を守っている人のようだ。
上の動画は大きなラリーになった例。
許昕選手が3球目で相手のバック深くにボールを送り、樊振東選手に打たせてからラリーに展開している。
よくみると、3球目で一瞬ツッツくように見せかけて、フリックしているので、相手のタイミングを上手に外している。判断が遅れた+バック側に回りこんでのドライブなので、ほどほどのスピードのボールしか打てない。それを待ち構えて、ドライブで応じるということで大きなラリーに展開している。
そんなときに今回のトピックにちょうどピッタリのやっすん氏の下の動画が公開された。フォアドライブの引き合いに引きずり込むための工夫が紹介されている。
実演は4:00あたりから
普通に相手に打たせたら、どこに打たれるか分からず、危険極まりないので、相手が打ってくるコースを限定するために相手の判断を遅らせたり、余裕のないコースを狙うという戦略である。
A.相手のバックに打つと見せかけてフォアに送る(一瞬、判断を送らせて強打を打たせない)
B.相手に回りこませて、こちらのバッククロスに来たボールを相手のストレートに返す(移動に時間がかかって強打が打てない)
C.こちらがフォアで打てるときは、フォアドライブにサイドスピンをかける
なるほど。バック対バックからストレートに送ってフォアクロスのラリーに持ち込むというのが定石なのかもしれない。
他にも、こちらがサービスを持っている場合は以下の記事が参考になる。
「ロングボールに下回転系」というのは、速いナックルや横下ロングサービスのことと思われる。
こちらにサービスがあれば、フォア前にショートサービス(あるいはハーフロングサービス)で横上回転等のツッツかれにくいサービスを出し、払わせてからラリーに持ち込み、ときどき横下ロングサービスをバックに送るという戦術をすれば、一発で抜かれず、大きなラリーに持ち込めそうだ。
【まとめ】
中陣でプレーするためには、ある程度長いボールのラリーが続かなければならない。
そのために相手に一発で抜かれないための工夫が必要だ。
・フェイントなどで相手の判断を送らせて打たせる。
・相手に回りこませて打たせてからストレートを突く。
また、こちらからサーブしてラリーに持ち込むなら、
・短い横上回転などでツッツかせない。
・長い下系のサービスを出して、相手に持ち上げさせる。
などの工夫が有効だと思われる。
卓球を初めたばかりで中陣、後陣でプレーする人はいないだろう。ほとんどの人は前陣である。
しかし、ある程度卓球歴が長くなってくると、前陣では物足りなくなってくる。「物足りない」というと、語弊があるが、最近の上手な学生とかをみると、中後陣から豪快なドライブを放ったり、とにかく台から離れて派手なプレーをしているのが目を引く。ああいうプレーをみるにつけ、中陣、後陣を試してみたいと思う。
しかし、いきなり後陣というのは敷居が高いから、まず中陣というのを試してみようと思い、数ヶ月来、できるだけ下がってプレーすることにしているのだが、やっかいなシチュエーションがある。ストップである。
サービス後にすぐに下がって大きな展開を期待していると、相手はつれなくもストップをしてくるのである。
「そりゃないよ。あなただって台上でチマチマよりもラリーのほうが好きでしょ?」
そう来られると、せっかく下がったのにまた急いで前陣に戻らなければならない。まるでドタバタ喜劇である。中陣でプレーするというのは、ストップに対する脆さという弱点を抱えることになるようだ。上手な人はどうやって中陣の展開に持っていくのか。言い方を変えれば、どうやってストップに対処するのか。
いろいろ試してみて分かったことは、前陣、中陣、後陣と言っても、必ずしもそこばかりでプレーするわけではないということである。前陣速攻の選手は「前陣を死守し、決して下がってはいけない」などと言われるが、中陣の選手は「中陣を死守し、前に出てはいけない…」とはならない。初めは前陣から始めて、ボールが長くなるにつれて中陣に下るということのようだ。当たり前のことかもしれないが、私はおろかにも前陣速攻の選手のように中陣の選手は中陣の位置をホームポジションとし、できるだけその領域を守っているものかと勘違いしていた。だから、相手にストップされかねない状況でも中陣に入ろうとしてしまったわけだ。
よく後ろに下がってプレーする選手でも、常に後ろに下がるわけではない。
下がって豪快なプレーをすることで有名な許昕 Xu Xin 選手も、上の動画のように3球目で決めに行くようなプレーをすると、後ろに下がる前にポイントが終わってしまう。美しい中陣プレーをするにはジワジワ(前記事「なりきりプロ選手」)とプレーしなければならないのだ。上手な選手はグルメである。まだ機が熟していなければ――3球目が絶好球でない場合は、打てそうなボールでも、がっついて決めに行かない。ほどほどの厳しいボールでジワジワと責め、相手が甘いボールを返すのを待つ。そして食べごろのボールが返ってきた時に初めてガツーンと決めに行くのだ。このジワジワこそが中陣でのラリーの醍醐味とでも呼ぶべき時間なのだ。ということは、3球目で決めに行かない卓球が中陣プレーへの第一歩なのかもしれない。
長くなったので、ここまでをまとめると、
・必要もないのに中陣に下がると、ストップをくらう。下がる必要がなければ前陣にいたほうがよい。
・3球目からいきなり中陣に行けるわけではなく、4球、5球とラリーを続けることによってジワジワと中陣でプレーできる。3球目で決めようとしてはいけない。
次にどうやって4球、5球と続ければいいのか。
相手に先に打たせるのが手っ取り早そうだ。といっても相手のサービスに対してフォア寄りに打ちごろの長さでツッツイたら、もちろん一発で持って行かれて、ラリーは終わってしまう。相手に一発で決められないように工夫する必要があるのだ。どんなボールなら一発で抜かれないで済むんだろうか?
中陣からドライブで豪快なラリーをしている人は、いろいろ工夫をしているんだなぁ。
私のようにたまたま後ろに下がってうまい具合に大きなラリーが続いたからといって、安易に後ろに下がって待つというのは、まるで株を守っている人のようだ。
上の動画は大きなラリーになった例。
許昕選手が3球目で相手のバック深くにボールを送り、樊振東選手に打たせてからラリーに展開している。
よくみると、3球目で一瞬ツッツくように見せかけて、フリックしているので、相手のタイミングを上手に外している。判断が遅れた+バック側に回りこんでのドライブなので、ほどほどのスピードのボールしか打てない。それを待ち構えて、ドライブで応じるということで大きなラリーに展開している。
そんなときに今回のトピックにちょうどピッタリのやっすん氏の下の動画が公開された。フォアドライブの引き合いに引きずり込むための工夫が紹介されている。
実演は4:00あたりから
普通に相手に打たせたら、どこに打たれるか分からず、危険極まりないので、相手が打ってくるコースを限定するために相手の判断を遅らせたり、余裕のないコースを狙うという戦略である。
A.相手のバックに打つと見せかけてフォアに送る(一瞬、判断を送らせて強打を打たせない)
B.相手に回りこませて、こちらのバッククロスに来たボールを相手のストレートに返す(移動に時間がかかって強打が打てない)
C.こちらがフォアで打てるときは、フォアドライブにサイドスピンをかける
なるほど。バック対バックからストレートに送ってフォアクロスのラリーに持ち込むというのが定石なのかもしれない。
他にも、こちらがサービスを持っている場合は以下の記事が参考になる。
逆に自分がサーブする方で、相手がびびっているときは、どうすればいいでしょうか??
上回転系を中心にゲームを組み立てれば良いですね。
短い上回転系で攻めつつ、ロングボールに下回転系を使います。
ロングボールに下回転系??
ロングボールは基本的に上回転系です。しかし、なぜ下回転系なのでしょうか??
理由は、びびっている選手は判断が遅れるし、スイングも中途半端になるからです。
この時に注意したいことは、ロングボールに使う下回転系のサーブは、
回転量よりもスピード重視するということです。
「回転を見極める練習」「ロングボールに下回転系」というのは、速いナックルや横下ロングサービスのことと思われる。
こちらにサービスがあれば、フォア前にショートサービス(あるいはハーフロングサービス)で横上回転等のツッツかれにくいサービスを出し、払わせてからラリーに持ち込み、ときどき横下ロングサービスをバックに送るという戦術をすれば、一発で抜かれず、大きなラリーに持ち込めそうだ。
【まとめ】
中陣でプレーするためには、ある程度長いボールのラリーが続かなければならない。
そのために相手に一発で抜かれないための工夫が必要だ。
・フェイントなどで相手の判断を送らせて打たせる。
・相手に回りこませて打たせてからストレートを突く。
また、こちらからサーブしてラリーに持ち込むなら、
・短い横上回転などでツッツかせない。
・長い下系のサービスを出して、相手に持ち上げさせる。
などの工夫が有効だと思われる。
コメント
コメント一覧 (2)
ところで、wrmのやっすんさんの動画のコメント「A.相手のバックに打つと見せかけてフォアに送る(一瞬、判断を送らせて強打を打たせない)」というのは、レシーバー、つまりは自分がその打法ができれば、効果大だとは思いますが、逆モーションを入れるなどというのは、実際、試合形式で打球しているときには、「相手の打球した球がこうきたから、ひじは高めでボールの正面上あたりをラバーでこするように打つと・・・」と考えるぐらいが精いっぱいではないでしょうか。(一瞬、判断を遅らせて)とありますが、自分が打球するまでに「よし、この打法で相手の判断を、一瞬遅らせることができるぞ、しめしめ」なんて、考える余裕があるのでしょうか。
トップ選手は何を考えて打球しているのでしょうか。大変、興味がありますが、自分が相手の打球時から自分の打球時までに何かを考えて打球しているのかといわれれば、「えっ?」という感じですかね。
いや、やっすん氏の言われていることは至極、もっともであると感心しているところではあるのですが・・・。
コメントありがとうございます。
私も、おそらくとっさにフェイントなどできませんが、試合も中盤にさしかかり、ある程度相手のサービスやレシーブに慣れてきたら、可能なのではないでしょうか。
「あっ、あの構えのサービスは回転量もコースも変化に乏しいので、バックに打つとみせかけて、フォアに送ってやれ!」
のように同じようなサービスばかり出している人なら十分可能かと思われます。速いラリー中に逆モーションというのは中級者には難しいと思いますが、ボールの遅い台上だったら、逆モーションも可能かなと思います。