全日本卓球選手権大会も最終日を迎えたが、大会前半を沸かせたのは張本智和選手だろう。高校生、それも全国上位の高校生にまで勝ってしまったのだから。

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私は実際に会場に行ってもいないし、ネットやテレビでの映像も一切観ていないので、卓球王国や卓レポのサイトなどで速報を見ているだけなのだが、卓球王国の速報にこんな言葉があった。

単純な技術力だけではなく、「勝ち方を知っている」というオーラを放っていた。
「まさに「怪物」。衝撃を与えた張本智和の全日本」 2015/01/14

これが張本選手が勝ち上がれた秘密か!「勝ち方」とはなんだろうか?この文章からすると、技術のレベルが高いだけでは全日本ジュニアレベルでは勝ち抜けず、技術力+「勝ち方」が備わってはじめて上位進出ができると読める。ジュニアとはいえ、全日本レベルの選手といえば、まぎれもなく上級者だと思われるが、その上級者といえども、「勝ち方」をよく知らない選手が少なくないということだろうか。
なるほど、ある程度までは技術が高い水準にあれば、試合に勝てるが、あるレベルからは技術だけでは勝てないということなのだろう。上級者でさえ「勝ち方」を知らない人がいるのだから、いわんや私のレベルをや。
そういえば、私も技術的に格下と思われる相手に勝てなかったりすることがよくある。「勝ち方」というのは何なのか。卓球の技術書やビデオなどでも聞いたことがない。なんとなく分かるような気もするが、はっきりわからない。これを知っていれば、格上の選手に勝てる可能性が高まるのなら、これはぜひ明らかにしておきたい。

おそらくこの卓球王国の記事を書いた人はそれを知っているはずだ。そこで、卓球王国の速報の記述をたよりに「勝ち方」というものが何なのかを探ってみた。

張本選手に言及している記事を時系列順に並べれば、次のようになる。



「張本、ジュニア1回戦は逆転で勝利」 2015/01/12
三重県ジュニアチャンプの辻(白子高)と対戦した張本は1ゲーム目序盤でリードを奪うもパワーでグイグイ押してくる辻の前にミスが目立ち、逆転でこのゲームを失う。しかしベンチで「しっかり回転をかけて繋いでいこう」とアドバイスを受け、落ち着きを取り戻し、2、3、4ゲームを連取。メディアの注目が集まる中、2回戦進出を決めた。

ここに書かれていることから「勝ち方」に関係しそうな部分をまとめると、

(A)相手に押されているとき、自分の戦い方に欠けているものが何かを判断し、自分の戦術を修正していく能力

ということだろうか。
 


「怪物・張本、2回戦でも圧倒的な力で快勝」 2015/01/13
ラリー戦での強さだけではなく、小学生とは思えないほどの威力を誇るドライブも魅力の張本。高校生を相手にノータッチで打ち抜く3球目ドライブを何本も決め、会場の度肝を抜いた。

上の記事は単に張本選手の技術力の高さに触れているに過ぎない。あるいは、

(B)「ノータッチで打ち抜く威力のあるドライブ」を打てるような場所に相手のボールを集める戦術

ということだろうか。



「ジュニア男子3回戦でスーパーシードが登場。張本も勝ち進む」 2015/01/13
相手がフォアを先に攻めて、張本を揺さぶろうとしても、前陣での正確なカウンターではじき返し、相手を逆に劣勢に追い込んでしまう。下回転系のサービスも抜群の切れ味だ。

(C)相手が張本選手を左右に揺さぶって強打で決める「必勝パターン」に引き込まれず、揺さぶられないように前陣で対処するという相手の戦術を封じる対応力

ということだろうか。



「ジュニア男子、張本は高校生の高取を下す」 2015/01/14
最終ゲーム、出足でリードしながら5ー4とされたところで、ベンチに入った父・宇さんがタイムアウト。ここから張本は、上から叩きつけるようなバックハンドを連発し、あまくなったサービスもレシーブからすかさず攻める。5点連取で10ー5とし、勝負を決定づけた。
ベンチでは不安げな表情も見せるのだが、コートでのメンタルの強さは恐るべきものだ。

(D)ギリギリの競った場面でも落ち着いて、精神的に崩れない集中力の強さ、甘いボールを見逃さない選球眼

ということだろうか。



「止まらない張本、ついにジュニアでベスト8入り!」 2015/01/14
松山の回転量の多いドライブに対し、この試合ではややカウンターのミスが出た張本だったが、終盤では無理せずブロックに切り替え、相手のミスを誘った。バックストレートに抜き去るカウンターバックドライブ、そして要所で見せるたたきつけるようなフォアフリックなど、小学生とは思えない高度なテクニックを披露し、見事ベスト8入り。

(E)ミスしがちな技術(カウンター)は封印し、別の戦術(ブロック)に切り替える臨機応変さ。そしてチャンスを逃さず得意技を打ち込む判断力

ということだろうか。

「まさに「怪物」。衝撃を与えた張本智和の全日本」 2015/01/14
小学生特有の早い打球点でのプレーが高校生達を苦しめるのは、他の小学生選手でも比較的よくある光景だが、張本はパワーの面でも高校生と互角に渡り合い、台上からの攻め、サービス・レシーブでも優位に立つという驚異的な実力を見せつけた。また勝負どころでの戦い方も高校生を上回る巧さがあり、松山戦でも相手にゲームポイントを握られた場面で、完璧に狙い澄ましたであろうカウンターを決めたり、相手の逆を突くストレートへのバックハンドで抜き去るなど、単純な技術力だけではなく、「勝ち方を知っている」というオーラを放っていた。

この記事の前半では張本選手の技術的な優位について総括している。後半「また勝負どころでの戦い方も」というところを見ると、

(F)「相手にゲームポイントを握られた場面で、完璧に狙い澄ましたであろうカウンターを決めたり」
(G)「相手の逆を突くストレートへのバックハンドで抜き去る」

とある。

これまでの記事にあるコメントからは以下の(A)~(E)の能力がうかがえた。

(A)・(E)自分の戦術を修正していく能力
(B)相手のボールを狙ったところに集める戦術
(C)相手の戦術を封じる対応力
(D)・(E)精神的に崩れない集中力の強さ、チャンスを逃さず得意技を打ち込む判断力

部分的に重なりがあるが、これと(F)(G)を突き合わせると、どのような能力が浮かび上がってくるのだろうか。

苦しい場面でも集中力を切らさず(D)、試合の流れを読み、相手の戦術に乗らず(C)、自分の戦術が有効かどうかを吟味し、戦術がマズければ修正(A)(E)、もっとも有効な戦術を臨機応変に選択(E)(B)、そして高度な技術に裏付けられた思い切った攻撃で得点(D)(F)(G)

といったところだろうか。

技術や戦術は持っているに越したことはない。しかしそれが適切な場面で使えなければ宝の持ち腐れである。
「勝ち方」というのはつまるところ、現在の状況や相手の能力、そして自分の能力や技術の引き出し等を勘案し、その場面で最善の戦術を選択できる、分析能力や立案能力といったことだろうか。戦術を知っているというよりも、状況に応じて戦術を編み出せるというところに重点がある気がする。

いろいろ考えてみたが、至極当たり前の結論に到達した。当たり前なのだが、それを私が練習でふだん意識しているかというと、そうではない。私程度のレベルのプレイヤーには、この当たり前な結論を常に意識して練習に取り組むのも意味があることではないだろうか。

【付記】
全日本男子シングルスの決勝のカードは、水谷隼選手 対 まさかの神巧也選手!
神選手もスウェーデンリーグに参戦して、「勝ち方」を磨いたのだろうか。
意外な対戦で、決勝が楽しみである。