「水平打法ってなんですか?」
「え?なんのことです?」
「ほら、秋葉龍一っていう人の本でさかんに勧めてるじゃないですか。」
「その人誰ですか?」

私と指導者との会話である。この答えている指導者は全国の中高の指導者や理論に詳しい人なのだが、秋葉氏はほとんど知られていないらしい。あるいは秋葉(秋場)というのはペンネームで、本名では全国的に有名な指導者なのかもしれない。

秋葉龍一氏はネットで幅広く活動されている卓球研究家?であり、作家でもあるらしい。詳しいことはよく知らないのだが、氏の近著『卓球スピードマスター』を読んでみたので、その感想などを書いてみたい。

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前著『卓球パーフェクトマスター』で「水平打法」という打法を氏は提唱したが、あまりよく分からなかった。それがこの『スピードマスター』で詳細に解説されているというので読んでみたいと思っていた。

『パーフェクトマスター』ではDVDがついていたが、『スピードマスター』では残念ながらDVD等はついていない。その代わり1200円とかなり価格を抑えてある。

ある程度経験のある人を対象に書かれており、入門書によくある全くの初心者を対象にした「ラバーの種類」だの「シェークとペンの違い」だの「ルールの説明」といった基礎的なことは割愛してある。構成も紋切り型ではなく、打法、サービス、レシーブ、フットワーク、試合でのメンタリティー等、中級者以上がほしがっているポイントが押さえられている。レシーブ、フットワークがやや簡略にすぎる憾みがあるが、細かいところまで練られた構成で、カラーの連続写真に細かくコメントが付けられており、非常に分かりやすい。 

打法は、フォアドライブ、バックドライブ、ツッツキ、ブロック等、基本的な打法がひと通り解説されており、さらに「水平打法」の全貌も明らかにされている。「水平打法」とは、どうやら「ミート打ち」の一種らしい。回転を全くかけず、比較的低い打点で直線的に打ち抜く打法のようだ。詳細は本書に当たっていただきたい。

それよりも私が興味を惹かれたのは「戦術」の章である。
前記事「「戦術」の意味」で

使える戦術NO.01
「相手が自分のバックに横回転ロングサービスを出してきたら、それをフォアに速く返すと、チャンスボールが来やすいので、それをドライブで仕留めましょう」

のような「戦術」を私は期待していたのだが、上級者の考える「戦術」はそういうものではないと知った。
しかし、上級者のような分析ができない初中級者にとっては、「使える戦術」のようなとっつきやすい典型的なラリー展開、いわば「試験に出る卓球公式」のようなものがあればと思っていたのだが、『スピードマスター』にはまさに「試験に出る…」的な典型的なラリーのパターンが9つ紹介されているのだ。名づけて「進撃の戦術」。こういうふうに明文化してあるのは初中級者にはありがたい。ただ、これはあくまでも実戦を想定した「練習」であり、「必勝パターン」といった類ではない。

この「進撃の戦術」には例えば、次のような展開が写真付きで丁寧に紹介されている。

1.相手のバックにショートサービス
2.こちらのバックにツッツキ
3.相手のバックにバックドライブ
4.ブロックでこちらのバックに
5.回り込んで相手のフォアにドライブ

なるほど。いかにも私のレベルでありそうな展開である。この展開を何度も繰り返して、自動化するまでに精度とスピードを高めれば、初中級者の試合で使えそうである。

他にも
”打球ポイントは両つま先を辺とする正三角形の頂点”とか”サービスの時、相手を一瞥すれば、素早く3球目に繋げられる”といった他書にないアイディアが随所に散りばめられており、読み応えがある。

まだざっと目を通しただけだが、本書は価格以上に内容の濃い良書だと感じた。